A trip of half an hour 鈍痛がする。額から、膝のあたりから。とにかく身体の前面から。どういうぶつかり方をしたのだろう、と自分でも不思議に思いつつリンドウは道路から身を起こす。大通りの真ん中で少しばかり気を失っていたらしい。
信号が変わったのか、幾台もの車が迫ってくる。見ているうちにその一台が自分の体の輪郭に触れた。ボンネットが胸の辺りを通過し、羽根飾りで一杯のダッシュボードと前部座席が、その車内に充満したヒップホップらしき音楽が、後部座席に座った女性が、順番に自分の身体をすり抜けていく。別に痛くはないがあまり気分の良いものではない。自分を無視して居場所となる空間を侵されているような違和感があった。
未だに重い痛みが残る頭を抱えてのろのろと歩道に向かう。そうしている間にも何台もの車が勝手にリンドウを通り過ぎては、別次元から鈍色の排気ガスを吹きかけてきた。
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