限界羊小屋
DONEフレ<-リン FinalDay''のif【概要】仲間を失った辛さから幻覚に遊ぶようになったリンドウの話
ななや様よりタイトルを寄贈いただきました。
メリーメリーメランコリー**********
メリーデイズ
**********
オレンジティーソーダは夕暮れと同じ色をしている。炭酸水の中に放課後のカフェの活気が映り込み、オレンジ色がその中に染み込んでいる。柑橘の大きな塊がいくつも浮かんだ、黄昏色のそれをそっと啜ると、優しい甘みとともに口の中がパチパチと弾けた。その爽やかさを楽しみながら、目の前で繰り広げられる賑やかな会話を聞き流している。
学校でも家でもない隙間のような時間。この時間が好きだった。
『コレかぁ?MKNって奴の新作』
『さっぱり分からないな』
『ふむぅ……現代アート、理解するのは難しそうですな』
『……悪くねぇ』
かつて「ツイスターズ」で仲間だった6人と俺で、ベンチ際のテーブルを占拠している。テーブルの向こうの4人はビイトさんのスマホを覗き込み、ワイワイと賑やかに騒いでいる。見るともなく見ていると、目の前でひらひらと片手が振られた。その主である友人を見やる。いつもの人懐っこい笑顔でニカっと笑いかけてきた。
19652メリーデイズ
**********
オレンジティーソーダは夕暮れと同じ色をしている。炭酸水の中に放課後のカフェの活気が映り込み、オレンジ色がその中に染み込んでいる。柑橘の大きな塊がいくつも浮かんだ、黄昏色のそれをそっと啜ると、優しい甘みとともに口の中がパチパチと弾けた。その爽やかさを楽しみながら、目の前で繰り広げられる賑やかな会話を聞き流している。
学校でも家でもない隙間のような時間。この時間が好きだった。
『コレかぁ?MKNって奴の新作』
『さっぱり分からないな』
『ふむぅ……現代アート、理解するのは難しそうですな』
『……悪くねぇ』
かつて「ツイスターズ」で仲間だった6人と俺で、ベンチ際のテーブルを占拠している。テーブルの向こうの4人はビイトさんのスマホを覗き込み、ワイワイと賑やかに騒いでいる。見るともなく見ていると、目の前でひらひらと片手が振られた。その主である友人を見やる。いつもの人懐っこい笑顔でニカっと笑いかけてきた。
限界羊小屋
DONEフレ->リン 2w1dのif向き合って貰えない・逃げたいような向き合いたいような微妙感情の話
タイトル・テーマをななや様と共同で設定いたしました。
cry for the moon 狭い道のアスファルトから熱気が吹き出し、首元までじりじりと焦がされる。竹下通りを行き交う人々がゆらゆらと揺らいで見え、足元を水が逃げていく。雑踏とさざめく話し声、スクリーンの広告の音、それから車と電車の音が耳を満たす。
UGの存在である俺たちが熱中症や脱水症状で倒れてしまうことはない。そこだけは良かったが、やはり不快なものは不快だ。出もしない汗を拭こうと掌で額を拭って、前を向き直る。
先導する我らがリーダーは時折スマホを取り出し、歩きながら画面を弄っていた。危ないよ、やめなよと何度も注意しているのに全然治る気配がない。今一度声をかけようとして、飲み込んだ。こんな雰囲気の中で彼とお友達の邪魔をしたら、逆上されるのがいいオチな気がした。
9200UGの存在である俺たちが熱中症や脱水症状で倒れてしまうことはない。そこだけは良かったが、やはり不快なものは不快だ。出もしない汗を拭こうと掌で額を拭って、前を向き直る。
先導する我らがリーダーは時折スマホを取り出し、歩きながら画面を弄っていた。危ないよ、やめなよと何度も注意しているのに全然治る気配がない。今一度声をかけようとして、飲み込んだ。こんな雰囲気の中で彼とお友達の邪魔をしたら、逆上されるのがいいオチな気がした。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界大学生ネタ② R-15
【概要】酒飲んでゲームしてるだけ
ハングオーバー↓ウィークエンズ 待ち合わせて近くのスーパーで缶チューハイとワインと食べ物を買ってきたのが、2時間ちょい前。
乾杯、と言って缶とグラスを合わせたのが大体1時間半前。
で、現在、部屋の中にはピザの空き箱と赤ワインの瓶、ミックスナッツが少し残った木皿、それから何本もの空き缶がだらしなく林立していた。それらに取り囲まれるように二人でモニターの前に胡座をかき、コントローラーに電気信号を送っている。
スティックを右に左に傾けるたびに、物凄い勢いで青い針鼠のキャラクターが画面を走り回った。そのスピードに目を回したのか、青い服の剣士のキャラクターは爆弾を抱えたままソワソワと落ち着かない挙動を続けている。その隙を捉えて体当たりの一撃を叩き込むと、案外情けない悲鳴と共に剣士は画面外に消えて星になった。そうできたことに俺自身が一番驚いていた。驚きのあまりコントローラーを取り落としてしまい、慌てて拾った。
11053乾杯、と言って缶とグラスを合わせたのが大体1時間半前。
で、現在、部屋の中にはピザの空き箱と赤ワインの瓶、ミックスナッツが少し残った木皿、それから何本もの空き缶がだらしなく林立していた。それらに取り囲まれるように二人でモニターの前に胡座をかき、コントローラーに電気信号を送っている。
スティックを右に左に傾けるたびに、物凄い勢いで青い針鼠のキャラクターが画面を走り回った。そのスピードに目を回したのか、青い服の剣士のキャラクターは爆弾を抱えたままソワソワと落ち着かない挙動を続けている。その隙を捉えて体当たりの一撃を叩き込むと、案外情けない悲鳴と共に剣士は画面外に消えて星になった。そうできたことに俺自身が一番驚いていた。驚きのあまりコントローラーを取り落としてしまい、慌てて拾った。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界大学生ネタ①
【概要】雪の日の街角、飲み帰りにダウンしちゃったリンドウを助ける話
ストレイドッグ 駅の改札を出ると少しだけ雪が降っていた。クシュン、とくしゃみが出る。サークルの納め会で一日が過ぎていった。クリスマス前イベントのため3ヶ月ほど前からそれなりに忙しく、他大学からのメンバーとのプログラム調整や主催との連絡、練習用スタジオの予約など走り回っては、空き時間を練習に回していた。その甲斐あってか最後のOB挨拶まで手際よく終えることができ、一同は解放感を持って本日の納め会を迎えた。俺のショーケースにもミスはなかったし、全体的に満足のいく出来だったな、と振り返る。
そしてそれも片付けば今年の用事は大体終了になる。
3ヶ月分、学業が少々傍に追いやられていたことは否定できない。早く帰って課題を片付けてしまおう。クリスマスを2週間後に控え、街は少しずつ明かりを増やし始めている。強い寒気が関東を覆っていて、しばらくは気温が下がるそうだ。
11819そしてそれも片付けば今年の用事は大体終了になる。
3ヶ月分、学業が少々傍に追いやられていたことは否定できない。早く帰って課題を片付けてしまおう。クリスマスを2週間後に控え、街は少しずつ明かりを増やし始めている。強い寒気が関東を覆っていて、しばらくは気温が下がるそうだ。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界スイーツ男子会しながらフレットが籠絡作戦ネタバラシをする話
毒蛇とお茶会「トモナミ様の暗黒ショコラパンケーキ!二つ!」
口にするだけで恥ずかしくなるようなメニューを大声でオーダーするものだから、こちらまで血が上って熱くなってくる。ただでさえ、女性ばかりの店内で自分たちは浮いているというのに無駄に目立たないで欲しい。
「フレット...声大きい、ってば」
「そう?ゴメンゴメン」
もはや口癖のようになってしまったやり取りで彼を嗜め、向こうももはや馴れきった様子で頭を掻く。その左腕は見慣れた黒いリストバンドの代わりに、青い天然石がジャラジャラついたブレスレットで飾られている。かつて彼が馴染みだと公言していたガラガラのもので、UGにいた頃はRGを懐かしむように左腕につけっぱなしにしていた。戻ってきて以降に買い直したのだろう。
8407口にするだけで恥ずかしくなるようなメニューを大声でオーダーするものだから、こちらまで血が上って熱くなってくる。ただでさえ、女性ばかりの店内で自分たちは浮いているというのに無駄に目立たないで欲しい。
「フレット...声大きい、ってば」
「そう?ゴメンゴメン」
もはや口癖のようになってしまったやり取りで彼を嗜め、向こうももはや馴れきった様子で頭を掻く。その左腕は見慣れた黒いリストバンドの代わりに、青い天然石がジャラジャラついたブレスレットで飾られている。かつて彼が馴染みだと公言していたガラガラのもので、UGにいた頃はRGを懐かしむように左腕につけっぱなしにしていた。戻ってきて以降に買い直したのだろう。
限界羊小屋
DONEフレリン 本編前親友以上友達未満みたいな関係の始まりについての話
浮き立つ/浮き足立つ開け放して網戸だけにした窓から生温い空気が入ってくる。初夏の夜風がごうごうと低く唸って、下ろしたブラインドがカランカランと音を立てている。
上の空でシャープペンシルをカリカリと動かす、その脇に置いたスマートフォンがピコ、と音を立てた。少年の目線が一瞬でメッセージアプリの画面を追う。ゲームのキャラクターのドラゴンが吹き出しで喋っている。
『どこまで行った?』
アプリ越しに、先週発売したゲームの攻略の話をしていた。クラスの男子の大抵がプレイしていたため合わせるように買い遊んでいるが、実は彼自身あまり得意ではない。
『キングベヒーモスまで、あれ無理じゃん?』
『いや無理ではない 手伝う?』
『手伝って!』
『じゃ土曜日うち来ない』
12425上の空でシャープペンシルをカリカリと動かす、その脇に置いたスマートフォンがピコ、と音を立てた。少年の目線が一瞬でメッセージアプリの画面を追う。ゲームのキャラクターのドラゴンが吹き出しで喋っている。
『どこまで行った?』
アプリ越しに、先週発売したゲームの攻略の話をしていた。クラスの男子の大抵がプレイしていたため合わせるように買い遊んでいるが、実は彼自身あまり得意ではない。
『キングベヒーモスまで、あれ無理じゃん?』
『いや無理ではない 手伝う?』
『手伝って!』
『じゃ土曜日うち来ない』
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後江ノ島デートで二人の世界をちょっと広げる話 両片想いのままエンド
さよなら夏の日 二限終わり。今日の講習は午前中までだ、さっさと帰ろう。参考書とプリントを詰めた鞄を乱暴に背負って教室を出る。まだ1年ながら、夏季講習の類も補習も宿題も容赦がない。片付ける先から机の上に課題が積み重なってゆく。それでもこうして午前で講習が終わるだけ普段より有り難い。帰っても特にやることはないけど、これ以上積み上がることがないから余計に不安がらずに済む。
昼下がりの廊下で耳馴染んだ声を聞いた。
「おーす」
「おっす」
手を振って駆け寄ってくる友人に軽い挨拶を返した。初めて彼が名乗って以降、彼の自己紹介に倣って”フレット”と横文字呼びしている。彼のクラスも講習が終わったようだ。
お互い部活も入っていなかった。故に帰る時間はいつも同じで、自然と一緒にいる時間が増えていった。真っ直ぐ帰ってストイックに勉強。俺たちには未来がある。とはいえ、自習時間の間も疲れたら連絡を飛ばしあってる。
9887昼下がりの廊下で耳馴染んだ声を聞いた。
「おーす」
「おっす」
手を振って駆け寄ってくる友人に軽い挨拶を返した。初めて彼が名乗って以降、彼の自己紹介に倣って”フレット”と横文字呼びしている。彼のクラスも講習が終わったようだ。
お互い部活も入っていなかった。故に帰る時間はいつも同じで、自然と一緒にいる時間が増えていった。真っ直ぐ帰ってストイックに勉強。俺たちには未来がある。とはいえ、自習時間の間も疲れたら連絡を飛ばしあってる。
限界羊小屋
DONEフレリン 本編前リンちゃん呼びの由来とお台場デートの話
サイハテ紀行記 タンブラーに少し残ったショコラを前に、肘をついたリンドウは大きな溜息を吐き出す。フードコートは女子高生のグループや小さな子供を連れたパパさんママさん、それからせいぜい大学生と言った出で立ちのカップルに満ち満ちていた。正直言って自分は浮いている。
高校生にもなって親と、しかも母親と買い物というのは正直恥ずかしい。恥ずかしいが、カッコ悪くない程度に服を揃えておこうとすると高校生の小遣いでは太刀打ちできない。ECサイトでも使わせてくれればいいものを、母親は「見てみないと似合うか分からないじゃない」などと遅れたことを言ってお台場くんだりまでリンドウを引っ張ってきた。ついでに荷物持ちにする魂胆らしい。
高校生活が始まって1ヶ月と少し、クラスメイトの顔は大体覚えた。幸いにして今日は誰とも顔を合わせずに自分の買い物を終えることができた。シームレスに自分の買い物に連れ回そうとする母親に「俺休んでるから」と告げて1階のフードコートに逃げ込み、ドリンク一杯で暇を潰している。やることもなくスマホでネットニュースを検索していた彼の耳に、学校のどこかで聞いた声の呼びかけが届いた。
4870高校生にもなって親と、しかも母親と買い物というのは正直恥ずかしい。恥ずかしいが、カッコ悪くない程度に服を揃えておこうとすると高校生の小遣いでは太刀打ちできない。ECサイトでも使わせてくれればいいものを、母親は「見てみないと似合うか分からないじゃない」などと遅れたことを言ってお台場くんだりまでリンドウを引っ張ってきた。ついでに荷物持ちにする魂胆らしい。
高校生活が始まって1ヶ月と少し、クラスメイトの顔は大体覚えた。幸いにして今日は誰とも顔を合わせずに自分の買い物を終えることができた。シームレスに自分の買い物に連れ回そうとする母親に「俺休んでるから」と告げて1階のフードコートに逃げ込み、ドリンク一杯で暇を潰している。やることもなくスマホでネットニュースを検索していた彼の耳に、学校のどこかで聞いた声の呼びかけが届いた。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界RGに戻ってきたものの現実感がなく、二人で深夜をさまよう話
ナイトメアトラベラーズ『今夜暇?会える?』
『いつでも、渋谷駅でいい?』
簡単なメッセージのやり取りが夜の始まりの合図だった。そして、夜は二人の時間だった。
<午後11時50分 渋谷駅前>
リンドウの方が遠くに住んでいることもあり、駅前に着くといつも相手は先に待っていた。人が掃けて広々とした駅前広場で、忠犬の像に寄りかかりつまらなさそうにスマートフォンを弄っている。明かりを落とした広場は鮮やかさを失い、木々の影が歩道のタイルに落ちて白黒の模様をつけている。
「おーす」
「おっすー」
軽く手をあげて声をかけると相手はすぐに気が付き、嬉しそうに手を振り返した。袖が長めのシャツはリンドウが今まで見たことのないもので、まだ解れていない印象を受ける。真昼の渋谷を駆け回っていた頃よりは少しだけ暑さが落ち着いており、夜風の芯にはほんの僅かだけ涼しいものがあった。
14695『いつでも、渋谷駅でいい?』
簡単なメッセージのやり取りが夜の始まりの合図だった。そして、夜は二人の時間だった。
<午後11時50分 渋谷駅前>
リンドウの方が遠くに住んでいることもあり、駅前に着くといつも相手は先に待っていた。人が掃けて広々とした駅前広場で、忠犬の像に寄りかかりつまらなさそうにスマートフォンを弄っている。明かりを落とした広場は鮮やかさを失い、木々の影が歩道のタイルに落ちて白黒の模様をつけている。
「おーす」
「おっすー」
軽く手をあげて声をかけると相手はすぐに気が付き、嬉しそうに手を振り返した。袖が長めのシャツはリンドウが今まで見たことのないもので、まだ解れていない印象を受ける。真昼の渋谷を駆け回っていた頃よりは少しだけ暑さが落ち着いており、夜風の芯にはほんの僅かだけ涼しいものがあった。
限界羊小屋
DONEフレリン 2w6d後のifモトイさんの裏切りに落ち込むリンドウにエールを送る話
「明日がいい日になりますように」明日がいい日になりますように。レールに頭を押し付けながら、縋るように俺は呟いた。それは単なる習慣だった。辛いことや嫌なことがあった日は、お守りのようにその言葉を抱きしめていた。口に出してから、言わなければ良かったと後悔した。
明日なんか来なければいい。明日の方向を向きたくない。俯いて膝を抱えて、耳を閉ざしていたかった。
叶うなら……深く眠っていたい。
俺は目をつぶった。
「……?」
あれ……?
視界が急に白く明るくなる。
聴き慣れた渋谷の雑踏。しかし……全てが違っていた。
さっきまで俺は渋谷川のテラスに寄りかかって流れを見下ろしていた、はずだった。暑い一日は終わりに差し掛かろうとしていて、斜めの光が川面に反射して目に痛いほど煌めいていた。しかるに目の前にあるのは見慣れた犬の像だった。いつまでも帰ってこない主人をいまだに待ち続けている。その背中にまっすぐ陽光が当たっている。
8867明日なんか来なければいい。明日の方向を向きたくない。俯いて膝を抱えて、耳を閉ざしていたかった。
叶うなら……深く眠っていたい。
俺は目をつぶった。
「……?」
あれ……?
視界が急に白く明るくなる。
聴き慣れた渋谷の雑踏。しかし……全てが違っていた。
さっきまで俺は渋谷川のテラスに寄りかかって流れを見下ろしていた、はずだった。暑い一日は終わりに差し掛かろうとしていて、斜めの光が川面に反射して目に痛いほど煌めいていた。しかるに目の前にあるのは見慣れた犬の像だった。いつまでも帰ってこない主人をいまだに待ち続けている。その背中にまっすぐ陽光が当たっている。
限界羊小屋
DONEフレリン 2w6dのifリンドウの代わりにモトイさんに復讐してあげる話
友達想い「モトイさん……」
「信じてたのに、ってもう一回言いたいのかな」
継ぐべき言葉さえも奪われて、リンドウは黙って俯いた。 かつて彼を導く星座であったはずの"アナザー"の言葉は、今は彼を苛む刺にしかならなかった。端から見ていても分かるほど彼は傷ついていた。
ビイトもナギも、かける言葉が見当たらない。しかし、その姿に一番驚かされたのは親友であるはずのフレットだった。彼らの付き合いは、長いとは言えないもののそれなりに濃かった。その中で、彼がここまで感情を顕に見せたことはあっただろうか。
何から何まで気に入らない、と彼は思う。
こんなつまらない人間が、悪びれることもなく友人を傷つけているのが一番気に入らない。
10667「信じてたのに、ってもう一回言いたいのかな」
継ぐべき言葉さえも奪われて、リンドウは黙って俯いた。 かつて彼を導く星座であったはずの"アナザー"の言葉は、今は彼を苛む刺にしかならなかった。端から見ていても分かるほど彼は傷ついていた。
ビイトもナギも、かける言葉が見当たらない。しかし、その姿に一番驚かされたのは親友であるはずのフレットだった。彼らの付き合いは、長いとは言えないもののそれなりに濃かった。その中で、彼がここまで感情を顕に見せたことはあっただろうか。
何から何まで気に入らない、と彼は思う。
こんなつまらない人間が、悪びれることもなく友人を傷つけているのが一番気に入らない。
限界羊小屋
DONEフレリン 2w4dのif微妙距離感
A trip of half an hour 鈍痛がする。額から、膝のあたりから。とにかく身体の前面から。どういうぶつかり方をしたのだろう、と自分でも不思議に思いつつリンドウは道路から身を起こす。大通りの真ん中で少しばかり気を失っていたらしい。
信号が変わったのか、幾台もの車が迫ってくる。見ているうちにその一台が自分の体の輪郭に触れた。ボンネットが胸の辺りを通過し、羽根飾りで一杯のダッシュボードと前部座席が、その車内に充満したヒップホップらしき音楽が、後部座席に座った女性が、順番に自分の身体をすり抜けていく。別に痛くはないがあまり気分の良いものではない。自分を無視して居場所となる空間を侵されているような違和感があった。
未だに重い痛みが残る頭を抱えてのろのろと歩道に向かう。そうしている間にも何台もの車が勝手にリンドウを通り過ぎては、別次元から鈍色の排気ガスを吹きかけてきた。
2616信号が変わったのか、幾台もの車が迫ってくる。見ているうちにその一台が自分の体の輪郭に触れた。ボンネットが胸の辺りを通過し、羽根飾りで一杯のダッシュボードと前部座席が、その車内に充満したヒップホップらしき音楽が、後部座席に座った女性が、順番に自分の身体をすり抜けていく。別に痛くはないがあまり気分の良いものではない。自分を無視して居場所となる空間を侵されているような違和感があった。
未だに重い痛みが残る頭を抱えてのろのろと歩道に向かう。そうしている間にも何台もの車が勝手にリンドウを通り過ぎては、別次元から鈍色の排気ガスを吹きかけてきた。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界時間軸ごっちゃしてますすみません
本編後 - 本編前 - 本編中 - 本編後 の流れです
向日葵 枯れて焼けたそれが風に揺すられていた。
チチ、と声を上げて雀たちが項垂れた花芯の跡をつつくたび、何粒かの黒い種が地面に溢れる。足を止めてその様子をしばらく見つめていた。
「……ウ?」
白い植木鉢には雨が跳ね飛ばしたのだろう泥の筋がこびり付いている。
「リンドウ!リンちゃん!」
「あ、悪い」
水面を隔てたように遠くから聞こえていた声はだんだんと強さを増し、呼び掛けられていたことにようやく気づく頃には周囲にしっかり響く程度になっていた。大声に驚いたのだろう雀たちがご馳走を諦めて飛び去っていく。ぼんやりしていたことを軽く詫びると、相手の顔には困ったような微笑みが浮かんだ。
「ゴメン、ボーッとしてた」
「リンちゃんさ、たまにリンドウワールドに行っちゃうよね」
3068チチ、と声を上げて雀たちが項垂れた花芯の跡をつつくたび、何粒かの黒い種が地面に溢れる。足を止めてその様子をしばらく見つめていた。
「……ウ?」
白い植木鉢には雨が跳ね飛ばしたのだろう泥の筋がこびり付いている。
「リンドウ!リンちゃん!」
「あ、悪い」
水面を隔てたように遠くから聞こえていた声はだんだんと強さを増し、呼び掛けられていたことにようやく気づく頃には周囲にしっかり響く程度になっていた。大声に驚いたのだろう雀たちがご馳走を諦めて飛び去っていく。ぼんやりしていたことを軽く詫びると、相手の顔には困ったような微笑みが浮かんだ。
「ゴメン、ボーッとしてた」
「リンちゃんさ、たまにリンドウワールドに行っちゃうよね」
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界ワンライテーマ「壁ドン」
デート帰り山手線概念
時速60kmと5cm 環状線がぐらりと揺れ、車内の人混みが動く。自分もバランスを崩しかけたが、横に突かれたフレットの手に抑えられてその場に留められる。代わりにフレットはかなりツラそうな表情をした。
二人で遊びに行った帰りのこと。お互いの家までの線に乗り換える渋谷駅まで、鶯色の電車に乗りこんで立ち乗りしていた。……が、並走する線の人身事故とかで急に人が乗り込んできたのだ。休日の帰りの時間にも関わらず、車内は急にラッシュアワーのような混雑になる。瞬く間に俺とフレットは窓際に追いやられ、そうしている間にも次々と帰り道を急ぐ人々が乗り込んでくる。密着状態になるだろうな、と思ったところで、間一髪フレットが俺を庇うように窓に手をついた。これが壁ドンって状態か、とぼんやり思う。確かに、至近距離に相手の顔があると結構意識してしまう。
2458二人で遊びに行った帰りのこと。お互いの家までの線に乗り換える渋谷駅まで、鶯色の電車に乗りこんで立ち乗りしていた。……が、並走する線の人身事故とかで急に人が乗り込んできたのだ。休日の帰りの時間にも関わらず、車内は急にラッシュアワーのような混雑になる。瞬く間に俺とフレットは窓際に追いやられ、そうしている間にも次々と帰り道を急ぐ人々が乗り込んでくる。密着状態になるだろうな、と思ったところで、間一髪フレットが俺を庇うように窓に手をついた。これが壁ドンって状態か、とぼんやり思う。確かに、至近距離に相手の顔があると結構意識してしまう。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界ワンライテーマ「猫」
猫探しの休日 にゃーおん。
銀虎の猫が長い間延びした鳴き声を立てた。フレットの手からチーズの一筋を受け取り、食べ終えたところだった。
「リンドウもいる?」
フレットが裂けるチーズを器用に片手で割り、食べやすいように差し出す。それを見たリンドウは顔を顰めた。
「さっき猫撫でてただろ」
「左手だからダイジョブ」
そう、と言ってリンドウは大人しくチーズの一筋を咥え、そのまま口で千切る。もしゃもしゃと一片が飲み込まれていく様を見たフレットが笑った。
「リンドウもネコみたいじゃん」
チーズの最後の端まで飲み込んだリンドウが両手を頭の横に揃え、にゃあ、と戯けてみせる。カワイイカワイイ、と撫でようとした手をリンドウはパシリと弾き、そっちはさっき猫撫でてた方、と言ってそっぽを向いた。
2538銀虎の猫が長い間延びした鳴き声を立てた。フレットの手からチーズの一筋を受け取り、食べ終えたところだった。
「リンドウもいる?」
フレットが裂けるチーズを器用に片手で割り、食べやすいように差し出す。それを見たリンドウは顔を顰めた。
「さっき猫撫でてただろ」
「左手だからダイジョブ」
そう、と言ってリンドウは大人しくチーズの一筋を咥え、そのまま口で千切る。もしゃもしゃと一片が飲み込まれていく様を見たフレットが笑った。
「リンドウもネコみたいじゃん」
チーズの最後の端まで飲み込んだリンドウが両手を頭の横に揃え、にゃあ、と戯けてみせる。カワイイカワイイ、と撫でようとした手をリンドウはパシリと弾き、そっちはさっき猫撫でてた方、と言ってそっぽを向いた。
限界羊小屋
DONEフレリン クリア後世界ワンライのテーマ「バッジ」
バッジ操作デモが彼らの撮影動画だったら?というとこからの発展形
Forget me not.「リンドウと撮ったやつさ、全部消えてた」
「死神ゲーム」が終わって2日目の朝。早い時間の教室で、リンドウと一つの机に向き合っていた。机の上に載せたスマートフォンは何も変わらない渋谷の風景を映し出している。
「フレットも?俺も消えてた」
同意を返される。全く同じ状況らしい。
本来ならば動画に映っているのは、コートを風になびかせて鮮やかな斬撃を叩き込む新米サイキッカー・リンドウの姿のはずだったのに。
撮影会を始めたきっかけはほんのお遊びだった。バッジに念を込めることで「サイキック」が発動し、不思議な力で炎やら水やらを出して自在に操ることができる。サイキック能力を使って襲ってくる動物型の「ノイズ」を撃退する。まるで映画の主人公になったように感じて刺激的だった。試しに虚空に斬りかかるリンドウをスマホのカメラで撮影してみると、特撮を爆盛りにしたSF作品の主人公のようにバッチリ決まっていた。UGに来たばかりの頃はそれが新鮮で、豪華なイベントだなどとはしゃぎながらお互いの姿を撮りあっていた。
2051「死神ゲーム」が終わって2日目の朝。早い時間の教室で、リンドウと一つの机に向き合っていた。机の上に載せたスマートフォンは何も変わらない渋谷の風景を映し出している。
「フレットも?俺も消えてた」
同意を返される。全く同じ状況らしい。
本来ならば動画に映っているのは、コートを風になびかせて鮮やかな斬撃を叩き込む新米サイキッカー・リンドウの姿のはずだったのに。
撮影会を始めたきっかけはほんのお遊びだった。バッジに念を込めることで「サイキック」が発動し、不思議な力で炎やら水やらを出して自在に操ることができる。サイキック能力を使って襲ってくる動物型の「ノイズ」を撃退する。まるで映画の主人公になったように感じて刺激的だった。試しに虚空に斬りかかるリンドウをスマホのカメラで撮影してみると、特撮を爆盛りにしたSF作品の主人公のようにバッチリ決まっていた。UGに来たばかりの頃はそれが新鮮で、豪華なイベントだなどとはしゃぎながらお互いの姿を撮りあっていた。