師尊が女体化する話 命知らずにも洛冰河に襲いかかった南方の魔族は修雅剣に一払いされ、情けない叫び声を上げてその場に倒れた。
返り血をまともに浴びた沈清秋は袖で顔を拭って振り返ると、洛冰河はぽかんとした顔でこちらを眺めていた。
視線は頭の先から足まで動き、足から上がって胸あたりで止まった。
「なにか師におかしなところでもあるのか?」
「あ、いえ、その……」
頬を染め視線の泳ぐ洛冰河の様子に首をかしげ、沈清秋は自分の胸元を見下ろす。
なっ!!なんじゃこりゃーー!!!!
いつもより開いた襟元から、大きくはないが張りのある膨らみが見えて沈清秋は思わず心の中で思い切り叫んだ。
さっき切ったアイツかー!!
沈清秋はさきほど切り捨てたそれを睨み付け、はっと手を伸ばして股のものを確認すると、がくりと肩を落とした。
「し、師尊?」
「どうやらさきほどの魔物の体液に女体化の作用があったようだ。しばらくすれば元に戻るはずだから安心すると良い」
落胆を悟られぬよう扇子を広げ、説明すると洛冰河はほっとしたように微笑んで沈清秋の手を取った。
「して、この弟子は『女体』を知らぬのですが、その乳房からは乳が出るのでしょうか?」
は?まてまて、なに言っちゃってんのこの子!男の身体なんだから出るわけがなくない?そもそもーー
「冰河、乳というのは子を育てる為にある。故に、子を成さぬと出ぬものなのだ」
「ほう、それは良いことを聞きました。ではーー」
沈清秋がしまったと心の中で悔やんだときにはもう遅かった。
握った手をぐいと引き、ひょいと横抱きにすると洛冰河は満面の笑みを沈清秋向けて言葉を続ける。
「効果の切れぬうちに、この弟子の子を成して貰いましょう」