失くしてから知ること 昨夜、ついに舌を抜かれて私は人棍に成り果てた。
もう落とすものなどなく、鎖で繋がれてうごけぬまま霊力が尽きるのを待つだけ。
なのに、洛冰河は「また明日」と言い残した。
あやつが私を楽に死なせるはずはなく、その言葉の意味は分からないし考えたくもない。
落とされた腕や脚のあった場所はまだじくじくと痛み、ときおり訪れる眠気を吹き飛ばしてゆく。
うとうととしては痛みで目覚めるのをここに来てから幾度繰り返したかしれぬが、今日もそうするだけで刻は過ぎていった。
「師尊、お目覚めですか?」
洛冰河の声で夜が来たのだと知った。
眠れるわけがないと言いたくとも言えず、そのわざとらしい問いを無視する。
「さて、舌までも失くした師尊はこのあとどうなるとお思いですか?」
知ったことか。
ギッと睨み付けると、洛冰河はいままで見たことがないほど嬉しそうに微笑んだ。