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    限界羊小屋

    @sheeple_hut


    略して界羊です

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    限界羊小屋

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    モトリン クリア後世界
    ワンライテーマ「負傷」
    ちょいフレ->リン

    #モトリン
    motrin

    膿み傷んだ約束「リンドウ君」
    モトイを残して次の目的地に急ごうとするリンドウに声がかけられる。若干の苛立ちと共に彼は振り返った。
    「なんですか」
    「そこ......左の指、切ってる?」
    そう言って自分の薬指を立てて見せる。何気なく同じ場所を確かめたリンドウは、指の内側にぱっくりと開いた傷口を見つけた。痛みは感じていなかったが、目にしてしまうとなんとも痛々しい。
    「あれ...昨日まで無かったのに」
    「もしかして僕のせいかな?」
    「かもですね」
     今でこそ穏やかに会話を交わしているが、彼らは前日、ミッションのターゲットを巡って激しい争いを繰り広げた。甘いよリンドウ君、と馬鹿にしたような笑みを浮かべたモトイが有刺鉄線のサイキックを繰り出し、リンドウを締め上げる。ギチギチと食い込む金属の棘は少年の皮膚と精神を苛んだ。モトイのソウルが一旦使い果たされ、リンドウはなす術なくドタリと地面に落ちた。無意識に庇おうと地面についた左手に鈍い痛みが走り、ぬるりとした感触があった。
     サイキック自体は傷跡を残さないが、副次的な怪我は別のようだ。
    「手をついた時に石とかで切ったんだと思います」
    「そう。Sorry, ゴメンね」
     軽い謝罪がかけられる。温度の宿っていない瞳、形式的に引き下げられた眉。リンドウは沈んだ気持ちのまま、別に良いです、と言葉を返した。
     初めて顔を合わせてから昨日まで、彼の微笑みに心酔していた。敵対するチームのリーダー同士という関係でありながらも惜しみなく自分に助言を与え、優しい言葉や励ましで愛撫してくれる。切羽詰まった死神ゲームの最中であっても、今日は会えるだろうか、メッセージをくれるだろうかと考えている間は不思議に胸がときめいていた。そわそわと落ち着かず浮わついた気持ちになったが、決して嫌な不安ではなかった。
      -- 種が割れてしまえば馬鹿馬鹿しいもので、もうその笑みが自分を陥れ嘲笑うものでしかないと透けてしまっている。すまなさそうにしている顔つきも謝罪の言葉も単に形式的なものでしかないことは分かっていた。だから次の言葉を受けた時、リンドウはうまく反応を返せなかった。
    「バンドエイド、要る?」
    「...え?」
    「原宿のpharmacyだけステッカーが貼ってあるんだ、普段はメンバーに渡してたんだけど」
     そう言いながら胸元のポケットに手を入れ、白と赤の絆創膏を取り出す。
    「手、出して」
    「......」
    「大丈夫、もう騙さないから。信じてもらえないかもしれないけど」
    「い、いえ」
     おずおずと差し出された左手をモトイの大きな手が柔らかく掴んだ。絆創膏の覆い紙を剥がし、緩やかに薬指に一周させて傷口を包む。仕上げのようにじわりと軽く指で押さえつけて固定した。柔らかく、暖かな手。
    「これでよし。......僕からの、せめてものapologize」
     リンドウは指先をじっと眺める。くるくると試すように掌を回してみてから、平板な声で言った。
    「ありがとうございます。じゃ、俺先急ぐんで」
     モトイは人工的な微笑みを作って彼を送り出した。
    「頑張ってね、リンドウ君」

     その日、モトイは死神ゲームから脱落した。
     次の週には渋谷全体が崩壊の危機に陥った。
     次の次の週には全てに片がつき、リンドウは安全な代わりに退屈な学校生活に身を置いていた。

     相も変わらず絆創膏が残っている。教室の窓際、自分の席に腰掛けたリンドウは指先を陽光に照らすようにくるくると回しては見つめている。その姿を見咎めたフレットは、後ろの席からうんざりしたように声をかけた。
    「リンドウ...まだソレ治んないの?」
    「あぁ、うん」
     庇うように右手で指先を握り、隠す。
     フレットが知らない間に怪我をしたのか、友人の左手薬指にはいつの間にか絆創膏が巻かれていた。何の怪我かは知る由もなかったが、死神ゲームの中では買う機会もなかったから不審に思った。さりげなく友人に「どしたのソレ」と聞いてみても「ちょっと」とぼかされるばかり。そんなこともあって、その位置を離れない絆創膏が妙に気に障るのだ。
    「もう三週間くらいになるじゃん」
    「なるな」
    「ちょくちょく貼り直してるよね?」
    「うん」
    「本当に治んないの?」
    「......治ってない」
     リンドウは目を合わせずに答え、薬指を隠す右手がきゅ、と少し強く握られた。それを見たフレットは貧乏揺すりを止め、ハッキリと強めた語調で釘を刺した。
    「あのさ。あんまりつけすぎてるとかえって膿になるよ?」
    「知ってる」
    「治ったら早く取んないと」
    「分かってるって」
     分かってないじゃん。口に出さずに毒づく。それでもフレットは追及をやめ、パッと明るい声色を作って友人を労ってみせた。
    「ならいーけどさ!早く治るといいね」
     友人も綺麗すぎる微笑を返し、ありがと、と気のない返事を返した。そうして再び、うっとりとした表情で左手薬指を輪のように覆うバンドエイドを眺めている。その姿に内心で溜息を吐き、文句を吐いた。
     --未練がましいよ、リンドウ。
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    限界羊小屋

    DONE用語
    <キルドレ>
    思春期で成長が止まり決して大人にならない種族。一般人からは異端視されている。
    ほとんどが宗教法人か戦争企業に所属して生活する。
    <戦争>
    各国に平和維持の重要性を訴えかけるために続けられている政治上のパフォーマンス。
    暴力が必要となる国家間対立は大方解決されたため実質上の意味はない。
    <シブヤ/シンジュク>
    戦争請負企業。
    フレリン航空士パロ 鼻腔に馴染んだガソリンの匂いとともに、この頃は風に埃と土の粉塵が混じっていた。緯度が高いこの地域で若草が旺盛に輝くのはまだもう少し先の話。代わりのように基地の周りは黒い杉林に取り囲まれている。花粉をたっぷりと含んだ黄色い風が鼻先を擽り、フレットは一つくしゃみをした。
     ここ二ヶ月ほど戦況は膠着していた。小競り合い程度の睨み合いもない。小型機たちは行儀よく翼を揃えて出発しては、傷一つ付けずに帰り着き、新品の砂と飲み干されたオイルを差分として残した。だから整備工の仕事も、偵察機の点検と掃除、オイルの入れ直し程度で、まだ日が高いうちにフレットは既に工具を置いて格納庫を出てしまっていた。
     無聊を追い払うように両手を空に掲げ、気持ちの良い欠伸を吐き出した。ついでに見上げた青の中には虫も鳥も攻撃機もおらず、ただ羊雲の群れが長閑な旅を続けていた。
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    DONEモトリン
    AnotherDay次元

    最近はこの次元なら二人は幸せになれるのではないかと言う仮説が熱いです
    はじめての再会 友人はよく何かに没頭して周りが見えなくなる。そう珍しいことではないし、もう自分も慣れている。6割ほどの席が埋まっている休日のカフェで、丸いテーブルとコーヒーのマグカップ2つ分を隔てて彼は大判の本を開き、熱心に見入っていた。ページを繰っては、はぁ、と恋する乙女のような甘い溜め息を漏らしている。コーヒーに手を伸ばそうと彼が本を置いたタイミングでフレットはそっと話しかけた。
    「本当に”アナザーさん”?好きだね、リンドウ」
     マグカップからコーヒーを一口啜ったリンドウが目を輝かせて答える。
    「当たり前!お前も読んだだろ!」
    「う〜んまぁ、パラパラとは読んだけどさ……正直俺には刺さんなかったかなぁ」
     いいこと言ってるから!と半ば押し付けられるようにして彼と同じカラー本 ~ アナザーさん語録集 ~ を手渡された時は驚いた。特典のサイン会応募券のために3冊買って、もう1冊は抜かりなくガールフレンドへの布教に使ったのだという。手垢の付いていない新品の語録集は巻末の切り取り部分だけがなくなっていた。なお中身について特にコメントはない。
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