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    ナンナル

    @nannru122

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    POIPOI 77

    ナンナル

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    電車で女の子を助ける🎈くんと、助けられた女装🌟くんの話。

    犯人探し※注意※

    ・女装あり。捏造過多。痴漢、ストーカー等のモブ出てきます。続きはのんびり予定。

    いつもの如く、雰囲気で流し読みして下さい。

    ーーーーーー



    【犯人探し】

    プァン、と耳に響く音と共に重い音が近付く。見慣れた車体には今日も人が押しつめられていて、疲れそうだ。ぼんやりとそれを眺めながら、開いたドアの中へ人並みに紛れて乗り込む。案の定ギュウギュウに詰まった車内は身動きがしづらい程苦しい。この電車は基本片方のドアしか開かないので反対のドア付近まで行ってしまえば、殆どその場所から動くことはなくなる。今日もそちら側へ流されて何となくドア付近で目的地に着くのを待った。ガタンガタンと揺れる車内をぼんやりと眺める。スーツを着た男性が大半で、ちらほらと私服の女性の姿。子どもは今日は居ないようだ、なんて思っていれば、僕の少し前の方に女子高生が立っていた。あれは、宮益坂高校の制服かな。キラキラ光る金の髪は、毛先にかけて桃色にグラデーションがかかっている。染めているのだろうか、とても綺麗だ。ツインテールのその髪は毛先にかけてくるくると軽くウェーブがかかっている。こういう女の子も居るんだね。なんて思いながら、僕は首を傾ぐ。

    (…身長、高いな…)

    僕の身長は180cmで高い方だと思っている。そんな僕とそこまで変わらなさそうな背丈の少女だった。多分170はあると思う。女性にしては高いな、とそれが印象的だった。何となく目が離せなくなって、斜め後ろからそっと伺っていれば、何だか震えている気がする。体調でも悪いのだろうか。学生鞄を前に持って少し背を丸めているその子は俯いているようだ。視線を少し下げていけば、細い体にクリーム色のカーディガンを纏っていて、スカートは少し短め。白い太腿を半分ほど晒していて、白い靴下を履いていた。

    (あれ…?)

    ふと、違和感を感じて視線を上げる。車内の人は多くてどこかしらぶつからざるを得ない状況だ。その少女の後ろに立つ男も、片手で吊革を掴んで立っていた。僕より少し低い位置に頭がある。僕側、左手で男は吊革を掴んでいて、右手側は見えない。けれど、彼女の腰辺りを見ていると骨張って大きい手がちらちらと見え隠れしている。肌の色がどう見ても少女より濃い。その手が少女をスカートの上から撫でているのが見えてしまった。

    (これは、つまり…)

    小刻みに震える少女の姿に納得が行く。掌で感触を楽しむように撫で、時折丸めるようにして揉む様子が窺えて確信に変わった。こんな朝から痴漢って、本当にいるんだね。男の手が、下へと下がっていき、スカートの裾をたくし上げていくのを見て、僕は思わずその手を掴んだ。

    「何しているんですか?」
    「なっ、なんだいきなりッ…?!」

    声を少し抑えて掴んでいる手の主へ顔を向ける。すると男は引き攣った顔で僕を見て、慌てて睨んできた。誤魔化すように少し怒ったような表情だ。荷物は網棚の上に乗せているのだろう、手には何も持っていなかった。

    「彼女が怖がっているので、やめて頂きたい」
    「な、ななんのことだかッ…」
    「それとも、僕と一緒に来てくれますか?」

    ジッと男の目を見ていれば、視線がそらされる。タイミング良く電車が止まって、反対側のドアが開いた。ざわざわと騒がしくなっていた車内の人達がぞろぞろと降りていく。どうやら乗り換え駅のようだ。バッと腕を振りほどかれて、男は逃げるように降車していく。僕は小さく息を吐いてから、人並みに紛れる前にと、先程の少女の横へ移動した。グイグイと後ろから押されるのをその子と一緒に流され、ドアの側まで来る。いきなりで怖がらせるかもしれないけれど、僕は彼女をドアに寄りかからせて、自分の体で周りから壁を作るように正面に立った。片手はドアについて、もう片方の手で鞄を持ち直す。

    「大丈夫?」
    「え、あ、あぁ…」

    びくりと肩を揺らした少女は、顔を上げた。ぱちりと目が合う。髪色によく似た、琥珀のような瞳が僕を映す。あ、目、大きいな。思わずぱちぱちと目を瞬いた。とても、綺麗な顔をしている。大きな瞳がキラキラしていて、ふわふわの髪が顔を両側から少し隠している。細い体は肌が白くて、大きめのカーディガンが彼女を更に細く見せていた。鞄を抱えるようにして力の入っている体は少し縮こまっている。怖かったのか、はたまた今の状況に緊張してしまっているのか、その体は小さく震えていた。安心させるように、僕はふわりと笑う。

    「僕は神代類。いきなりごめんね」
    「ぁ、いや、助かった…その、感謝する…」
    「どういたしまして」

    話し方が独特な子だな。女の子にしては、少し低い声が印象的だ。しどろもどろに言葉をつむぎながら、視線が右往左往している。ギュッと更に強く鞄を抱える手に力が入っている少女は、ちらりと上を見た。僕の後方、多分電光掲示板だろう。その目がキッと少し睨むように細められた。

    「助けて貰って申し訳ないが、出来れば位置を代わってはもらえんか?」
    「…良いけれど、この方が安全じゃないかい?」

    僕が盾になっていれば、もう襲われる事はないと思うけれど。首を傾ぐ僕に、その子は少し戸惑った後グイッと僕の腕を引いた。内緒話をするように、前のめりになる僕の耳元へ顔を近付ける。

    「すまんが、やらねばならん事があるんだ。
    助けてもらった礼はしたいので、後でしっかり説明させてくれ」
    「ぇ…あ、うん…」

    呆気に取られて、頷いてしまった。その子は僕の腕をそのまま引いて、僕と位置を入れ替える。キィーッとブレーキ音が響いて、電車が止まった。ドアが開くと、ぞろぞろと人が入れ替わる。その子はちらちらと背を向けたドアの方を見ながら、誰かを探しているようだった。黙ってそれを見つめていれば、ドアがゆっくりと閉まる。また、ガタンガタンと重たい車両を走らせる音が聞こえ始めた。キョロキョロと周りを見ていたその子が、はぁ、と溜息を吐く。安心したようなそれでいて、悔しそうな、なんとも言えない顔だった。パッとその顔が上がって、僕とまた目が合う。

    「すまなかったな、無理を言って」
    「い、いや…それはいいんだけど…」
    「その制服、神山高校だろ?
    先程のこともあるしな、駅に着いたら少し時間をくれないか?」
    「う、うん…構わないよ」

    最初の時と印象が変わる。さっぱりした性格のようだ。それでいて、男の子のような話し方をする。先程男に襲われていたのが嘘のようなその様子に呆気に取られてしまう。そんな僕に気付いたその子は、困ったように眉を寄せた。

    「それにしても、さっきは本当に助かった」
    「それは良かった」
    「生憎とああいうのに慣れていなくてな、困惑してしまって…」
    「それはそうだろうね」

    それは慣れの問題ではないと思うよ。少なくとも、慣れていいものでもないだろう。少し眉を寄せたその顔は、どこか悔しそうに見えてしまって、僕は首を傾ぐ。何故彼女は、こんな顔をするのだろうか。そして電車が駅に着く度に周りを見ているのは、何故だろう。ガタンっと大きく車体が揺れる。どうやら曲がり道のようだ。ぐらりと後ろへ僕の体が少し傾く。人並みに押され耐えきれなかったのだろう、彼女の体がこちらへ倒れ込んできた。僕の肩に彼の顔が当たる。

    「わぷ…」
    「大丈夫かい?」
    「す、すまん、平気だ…」

    慌てて顔を離したその子だけれど、傾いた時乗客がが動いたため彼女が僕から体を離すほどの隙間は無くなってしまったようだ。どうしよう、と視線を下げるその子の顔は混乱している。目的地までまだ少しあるけれど、重い訳では無い。僕は片手で彼女の肩に触れて、顔を上げたその目に笑いかける。

    「気にしなくていいよ」
    「…す、すまん…」

    そうして、たまに会話をしながら目的の駅で僕らは降りた。


    ーーーーーーーーーー


    「まずは、助けてくれてありがとう、類」
    「どういたしまして」

    何度もお礼を言われて律儀な子なんだな、と感じる。改札を出て、通学路を歩く。宮益坂は途中の道で行き先が分かれるはず。人の通りが疎らになってきた。サラリーマンはこっちの方に来ないので、周りを歩くのは学生がほとんどだった。

    「それよりも、君は…」
    「そういえば、名乗っていなかったな」

    誰かを探していたのか聞こうとした僕の言葉に、彼女は思い出したように目を瞬く。はたと気付いたのだろう、立ち止まって僕の方へ体を向けると、右手を胸の前へ、左手は高々と上げた。

    「オレの名前は、天馬司だ!」
    「…ん?」
    「天翔るペガサスと書き天馬、世界を司ると書き司!」
    「えーっと…」

    とても大きな声に耳がビックリしているのか反響している。ジンジンと痛む耳に届いた声はやはり少し低い。けれどそれ以上に気になる単語が聞こえた気がして、僕は首を傾ぐ。

    「…オレ?」
    「あぁ、オレは神山高校の二年生だ」
    「待っておくれ、ちょっと整理させてもらっていいかい?」

    仮に女子が『オレ』を使っていても悪い訳では無い。訳では無いが、ちょっと違和感がある。そういえば、声が低いとは思っていたけど、まさか、そんな事あるのかな?どう見ても宮益坂の制服であって、僕とは違う制服を着ているのも分からない。

    「えっと、君は神山高校の生徒…なのかい?」
    「そうだ、類と同じ高校だぞ」
    「…その制服は、…?」
    「あぁ、これはちょっと事情があってな。
    妹の制服を借りているんだ」

    ぷちぷちとカーディガンのボタンを外す司くんが、前を開ければ少しキツいのだろう。制服はぴちっとしている。無理矢理着ているのかな…。肩幅が合っていないのと、丈が少し短くてお腹が見えてしまっていた。慌てて隠して、と伝えれば司くんはカーディガンのボタンを留め始める。カーディガンは大きめのを着ているから、上手く誤魔化せているようだ。スカートの丈が短いのも、そういうことだろうね。むしろお腹周りはキツい様子がなかったから、本当に細い様だ。

    「もう1つ、聞いていいかい?」
    「なんだ?」
    「…えっと、司くんは…男の子、かな?」
    「そうだぞ?」

    こてっと首を傾げる司くんは平然と頷いた。予想通りの返しに、思わず足元から頭までを見る。細い体と白い肌、似合っている女子制服と、毛先だけ緩いウェーブのかかったツインテール。どう見ても女の子だ。高過ぎる身長を見なければ。ふわふわの髪を見る僕に気付いた司くんは、「あぁ、」と呟きながらその髪に触れた。

    「すまんな、事情があって、今はこういう格好をしているんだ」
    「…んー、それは、僕が聞いてもいい話かい?」
    「…そうだな…」

    司くんが顔を少し俯かせる。そうして、パッと顔を上げると頷いて見せた。

    「ここでは話しづらいから、お昼休みに屋上に来てくれんか?」
    「分かったよ」
    「オレは着替えてから学校に行くので、先に行っていてくれ」

    すぐそばの公園を指差す彼に頷いて、僕は学校に向かった。振り返った時には、彼は公園のトイレに駆けて行ったので、もしかしたら今日が初めてでは無いのかもしれない。後ろ姿が見えなくなった後、僕はゆっくりと足を進めた。

    「天馬、司くん…か…」

    同じクラスでは無いはずだ。でも彼は神山高校の2年生と言っていた。僕と同じ学年なのは確かだろう。屋上は普段あまり人が来ないので、僕もよくお世話になっている。そこを指定したという事は、あまり広まりたくない話なのだろう。
    僕はお昼休みを少し楽しみに、授業を受けた。

    ーーーーーーー

    「待たせたな、類」
    「…本当に男の子なんだね」

    屋上のドアを潜って入ってきた司くんは、朝と全く別人だった。金色の髪に毛先のグラデーションは朝よりも夕焼け色に近い色味に染まっている。男の子らしいショートカットは、少し勿体なく見えてしまった。細い体はそのままに制服は僕と同じ神山高校の男子制服を纏っていて、どこからどう見ても男子高校生だ。ただ、大きな琥珀の瞳は朝見た彼と同じで、中性的な顔立ちだからこそ、朝違和感を感じることなく接せれたのだと思った。

    「なんだ、疑っていたのか?」
    「ふふ、結構似合っていたからね」
    「あまり嬉しくはないんだが…」

    むすっと頬を膨らませた彼は僕の隣に腰を下ろして、持ってきたお弁当箱を開き始めた。片手に持ったゼリー飲料を僕も口に流し込む。今日は話を聞きながら作業でもしようと思い、近くには大きな手提げも準備している。ゼリー飲料を適当に飲んで片付けてから、僕は司くんがご飯を食べる間作りかけの装置を取り出した。ドローンの調整をして、その後は次に行うショーの演出装置を完成させたい。ドライバーでネジを回す僕をちらりと見た司くんは黙って僕の手元を眺め居てるようだった。カチャカチャ、と機械を弄る音が静かな屋上に響く。校庭で遊ぶ男子の声が時折聞こえて来るけれど、それ以外は風が吹くくらいだった。食べ終わった司くんが、お弁当箱を綺麗に片付けた。

    「ご馳走様でした」
    「本当に君は、律儀だね」
    「む?何の話だ」
    「こっちの話さ」

    礼儀正しいな、とぼんやり思いながら、僕は手を止める。たぷたぷとスマホを操作する司くんが、僕へ話しかけてきた。

    「どこから説明すればいいか…。
    オレには妹がいるんだがな」
    「…へぇ、可愛いね」
    「そうだろう!自慢の妹だ!」

    司くんがスマホ画面を僕に見せてくれる。そこには司くんと司くんより背の低い少女が映っていた。僕の言葉に、ふふん、と胸を張る司くんは誇らしげだ。僕はまじまじとその画面を見る。どう見ても、今朝見た司くんにそっくりだった。薄桃色のグラデーションしたツインテールの髪も、制服姿も、笑う顔は司くんと瓜二つで兄弟だとすぐに分かる。

    「もしかして、司くんは妹さんのフリをしていたのかい?」
    「そうだ」
    「…そぅ…」

    もしかして、車内で名前を言わなかったのはその為だろうか。妹さんのフリをしているのに、兄である司くんの名前で自己紹介が出来ないから…。

    「妹は咲希と言うんだが、最近家にひきこもってしまってな」
    「え…」
    「数ヶ月前から、ストーカーに付け狙われているそうだ」

    思わず息を飲んだ。スマホ画面を見つめる司くんの表情が、くしゃりと歪む。悔しそうなその表情に、僕は手を握りしめた。なんとなく、分かってしまった。司くんが何故あの格好をしていたのか。

    「警察は中々取り合ってくれなかったそうでな。
    オレも話を聞いたのはついこの間なんだ。
    情けない事に、咲希が引きこもるまで、その事実に気付けなかった」
    「…そう、なんだね」
    「…だから、オレは犯人を捕まえたいんだ」

    司くんの手元の画面が消える。彼は空へ決心したような顔を向けていた。やっぱり、妹さんの囮役だったのか。僕は手に持っていた機械を横へ置く。確かに、家族が引きこもれば心配にもなるだろう。司くんはペットボトルのお茶を一口飲んで、僕へ笑って見せた。

    「しかし、いざ自分が触られると怖くなるものだな。
    正直、類があの場に居合わせてくれて、声をかけてくれて、とても安心したぞ」
    「それは良かった」
    「咲希も、同じ思いをしたのだと思うと、やるせないな…」

    表情は笑っているのにどこか暗い司くんの横顔に、僕は口を引き結ぶ。なんと言えばいいのだろうか。あの時、震える司くんを見て助けなければと思った。結果的に、彼は助けてもらえて良かったと僕に言ってくれたんだ。僕のした事は間違いではなかった。けれど、この先司くんは犯人が見つかるまでこの囮役を続けるのだろう。怖い思いを隠して。

    「…僕にも、協力させてくれないかい?」
    「…ぇ…」
    「司くんが、犯人を捕まえるまで、僕にも協力させてほしいんだ」

    司くんが、目を丸くして僕を見る。琥珀の瞳が一瞬きらりと光った。すとん、と自分で言った言葉が僕の中に静かに落ちる。そうだ、僕が守ってあげればいい。彼が怖い思いをするのなら、それを耐えると言うのなら、僕が傍で支えてあげればいい。

    「僕はそれなりに力もあるからね。
    犯人を見つけた時に捕まえるなら、人手は多くて損は無いでしょ?」
    「し、しかし…類を巻き込むことになるぞ…?」
    「それくらい構わないよ。
    司くんがまた襲われるなら、僕がすぐ助けてあげる」

    だから、ね。僕は笑ってみせる。呆気としていた司くんが、きゅ、と唇を噛んだ。耐えるような、堪えるように表情に、彼がずっと不安だったのだと知れた。それはそうだ、妹さんが塞ぎ込んでしまって、きっと苦しかったのは助けられなかったと罪悪感に苛まれていた司くんも同じだろう。

    「…すまん、よろしく頼むぞ、類」
    「ふふ、お安い御用さ」

    こうして僕と司くんの犯人探しは始まったのだ。
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    Replies from the creator

    ナンナル

    CAN’T MAKE銀楼の聖女

    急に思い付いたから、とりあえず書いてみた。やつを一話分だけ書き切りました。
    ※セーフと言い張る。直接表現ないから、セーフと言い張る。
    ※🎈君ほぼ居ません。
    ※モブと☆くんの描写有り(性的な事は特になし)
    ※突然始まり、突然終わります。

    この後モブに迫られ🎈君が助けに来るハピエンで終わると思う( ˇωˇ )
    銀楼の聖女『類っ、ダメだ、待ってくれっ、嫌だ、やッ…』

    赤い瞳も、その首元に付いた赤い痕も、全て夢なら良いと思った。
    掴まれた腕の痛みに顔を顰めて、縋る様に声を上げる。甘い匂いで体の力が全く入らず、抵抗もままならない状態でベンチに押し倒された。オレの知っている類とは違う、優しさの欠片もない怖い顔が近付き、乱暴に唇が塞がれる。髪を隠す頭巾が床に落ちて、髪を結わえていたリボンが解かれた。

    『っ、ん…ふ、……んんっ…』

    キスのせいで、声が出せない。震える手で類の胸元を必死に叩くも、止まる気配がなくて戸惑った。するりと服の裾から手が差し入れられ、長い爪が布を裂く。視界の隅に、避けた布が床へ落ちていく様が映る。漸くキスから解放され、慌てて息を吸い込んだ。苦しかった肺に酸素を一気に流し込んだせいで咳き込むオレを横目に、類がオレの体へ視線を向ける。裂いた服の隙間から晒された肌に、類の表情が更に険しくなるのが見えた。
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    ナンナル

    DOODLE魔王様夫婦の周りを巻き込む大喧嘩、というのを書きたくて書いてたけど、ここで終わってもいいのでは無いか、と思い始めた。残りはご想像にお任せします、か…。
    喧嘩の理由がどーでもいい内容なのに、周りが最大限振り回されるの理不尽よな。
    魔王様夫婦の家出騒動「はぁあ、可愛い…」
    「ふふん、当然です! 母様の子どもですから!」
    「性格までつかさくんそっくりで、本当に姫は可愛いね」

    どこかで見たことのあるふわふわのドレスを着た娘の姿に、つい、顔を顰めてしまう。数日前に、オレも類から似たような服を贈られた気がするが、気の所為だろうか。さすがに似合わないので、着ずにクローゼットへしまったが、まさか同じ服を姫にも贈ったのか? オレが着ないから? オレに良く似た姫に着せて楽しんでいるのか?

    (……デレデレしおって…)

    むっすぅ、と顔を顰めて、仕事もせずに娘に構い倒しの夫を睨む。
    産まれたばかりの双子は、先程漸く眠った所だ。こちらは夜中に起きなければならなくて寝不足だというのに、呑気に娘を可愛がる夫が腹立たしい。というより、寝不足の原因は類にもあるのだ。双子を寝かし付けた後に『次は僕の番だよ』と毎度襲ってくるのだから。どれだけ疲れたからと拒んでも、最終的に流されてしまう。お陰で、腰が痛くて部屋から出るのも億劫だというに。
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