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    ナンナル

    @nannru122

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    ナンナル

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    お弁当屋さんのバイトさんは、俳優さんのファンサにドキドキする。(小話)
    本編ではないです。前に落書きしたのを元にリハビリ目的で書いてます。11話、12話くらいの後の話なので、多分繋がってないところがあるかと思います。ご注意下さい。

    メイ()テイ×!小話「お兄ちゃん見てみてっ!」
    「む…?」

    目の前に広げられた雑誌に目を向けると、見慣れた人が写っている。妹が大ファンで家の中や自室にも沢山のグッズが飾られている、今若者に大人気の俳優だ。そして、オレのバイト先のお得意様で、オレが密かに片想いしている神代類。

    「あのね、今応募した人から抽選で類さんのサイン色紙が当たるのッ!」
    「おお、そんな企画があるんだな!」
    「だからお願いッ!お兄ちゃんのお名前貸してっ!!」
    「それくらいなら構わんぞ」

    雑誌についている応募用紙に住所や名前を記入していく。それを咲希に手渡すと、嬉しそうに笑って礼を言われた。咲希の一生懸命な姿を見るのは好きだ。最近は一歌たちとバンドの練習も頑張っているらしい。目標は神代さんのドラマの主題歌を歌うこと、だったか。以前そんな話をしていたなぁ、と思い出して、つい口角が上がる。そんなオレに気付かず、咲希は足早に部屋へ戻って行った。

    「しかし、サイン色紙もしているのか、神代さん……」

    改めて、凄い人と知り合いになったのだな、と思ってしまう。本来、オレが神代さんと知り合いになるなんて有り得ない事だ。もっといえば、連絡先の交換や個人レッスンに遊園地へお出かけとか、色々すごい体験をしている。神代さんは神代さんで、オレのどこを気に入ったのか、とても良くしてくれるしな。
    ぺたぺたと音を立てながら自室へ向かい、ベットに腰かける。スマホを開いて、メッセージアプリを起動させると、当たり前のように出てくる『神代さん』の文字。

    「……サイン、か…」

    咲希が喜ぶならと名前を貸したが、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、残念に思ってしまった。あれだけ本人に会っているが、最近オレも神代さんのグッズとかを少し集め始めてしまっている。咲希には内緒で、だ。

    (まぁ、咲希が知っても、神代さんの話を今以上に聞かされて、喜ばれるだけだろうけれどな…)

    内緒にしているのは、恥ずかしい気持ちと、ほんの少しの罪悪感からだ。オレよりもずっと前から神代さんを追いかけている咲希ではなく、オレが神代さんとの特別な時間を貰っていることに対しての。神代さんに出会い、神代さんを好きになってからグッズを集めるようになった、なんて安易なところも恥ずかしいしな。

    はぁ、ともう一度溜息を吐いて、大学の資料へ目を向けた。

    ―――

    それから数ヶ月後。咲希が「当たらなかった〜」と残念そうに肩を落として帰ってきた。どうやら惨敗らしい。落ち込む咲希を宥めながら、ほんの少し残念な気持ちを心の奥に押し込んだ。もしかしたら、なんて、思ってしまったからな。応募券を選ぶのはスタッフで、神代さんじゃないんだ。それに何千、何万とある応募券からオレの名前を探すなんてできるわけがないのだから、当然だろう。そうは思っても、心のどこかで当たるかもしれないと期待していた分、少し残念で、咲希にバレないようにオレも肩を落とした。

    ―――

    「司くん、はいこれ!」

    それが、三日前である。
    月曜日に学校へ行くと、えむが笑顔で袋を差し出してきた。薄くて少し固めのものが入っている袋を呆気と見ていると、えむは「開けてみて!」と嬉しそうに言う。言われるまま開けてみると、中から出てきたのは『神代類』の文字。

    「………は…?」
    「この前雑誌の応募企画を見てね、応募してみたんだけど、当たったから司くんにあげるー!」
    「い、良いのか?!」
    「うん!当たったら司くんにあげよーって思ってたから、貰って!」

    えむが輝いて見える。袋の中は、咲希が惨敗した『神代類のサイン色紙』だ。四角い色紙に、神代類の文字がかっこよく書かれている。前にアドレスを貰った時も思ったが、神代さんは字が綺麗だ。えむに深く頭を下げてお礼を言うと、嬉しそうに笑顔が返ってくる。流石えむ、誰もが知る強運の持ち主である。騒ぎになる前に、と袋にそれをしまって、鞄に丁寧にしまう。まさか手に入ってしまうとは思わなかった。気付くと心臓はドキドキしていて、頬が熱い。手の甲を頬に当てて冷やしていると、ふと、咲希の顔が浮かんだ。

    「……えむ、」
    「なぁに?」
    「これ、妹の咲希に譲ってもいいだろうか?」
    「ほぇ?あたしは良いけど、司くんはいいの?」
    「咲希が当たらなくて落ち込んでいたからな。オレは、本人と話が出来てしまうし、咲希が喜ぶなら、譲ってやりたいんだ」

    本当は、部屋に飾って置きたいくらいだが、咲希に渡せば喜びそうだからな。事情を話すと、えむは笑顔で頷いてくれた。咲希ちゃんによろしくね、との事だ。その後、チャイムが鳴ってしまったのでお互い手を振って席に着いた。
    家に帰ってから咲希にそれを渡すと、ものすごく喜ばれた。泣く勢いで喜ぶ咲希に、渡して良かったと、本当に思った。

    ―――

    「おまたせしました、神代さん!」
    「お疲れ様、天馬くん」
    「神代さんも、お疲れ様です」

    バイト帰り、店の外で待ってくれていた神代さんの隣に並ぶ。マスクや眼鏡、帽子にコートと色々着て素顔を隠しているけれど、かっこよさは隠しきれていない。眼鏡から覗く月色の瞳が細められて、ドキドキした。今日は少しだけ早く上がれたので、お店が所々開いていて道は明るい。そこを神代さんと何気ない話をしながらゆっくり進んでいく。と、良く行く本屋が見えた。店先に並ぶ雑誌コーナーで足を止めると、神代さんも立ち止まってくれる。

    「この雑誌、今日発売なんですね」
    「あぁ、そういえば、寧々がそんなことを言っていたね」

    神代さんが表紙にドンッ、と載った雑誌を手に取る。来年映画の出演が決まっているとの事で、今色々な所で神代さんが特集されている。この雑誌はファッション誌のようだ。春物のトレンドやらなにやらが載っているらしい。本人が隣にいるが、店先に出ているのはこれが最後のようで、気持ちが揺らぐ。神代さんが表紙ということで、無くなるのが早そうだ。明日まで残っているとは思えない。かといって、ほかの店にあるかもわからんし…。数秒悩んで、ちら、と神代さんを見る。別の雑誌を手に取って眺めている神代さんが、オレの視線に気付いてこちらを向いた。

    「どうかしたかい?」
    「…すみません、少し待っていて頂いてもいいですか?」
    「構わないよ」

    優しく笑ってくれる神代さんに一礼して、残り一冊の雑誌を手に取る。そのままレジまで向かって、持っていたお財布からお金を取りだした。薄いビニール袋に入れてもらったそれを受け取って、足早に神代さんの元へ戻る。「おまたせしました」と声をかけると、神代さんは気にしないで、と返してくれる。

    「ふふ、その撮影の時、デートの待ち合わせ、がコンセプトだったんだよ」
    「そ、そうなんですねっ!その、オレ、ファッションとか、全然分からなくて勉強しようかと思いましてっ…!」
    「そう。それなら、今度一緒に服でも見に行くかい?」
    「え、…あ、はいっ!是非っ!」

    さらっと、また会う約束を提案してくれる。こういう所が大人っぽくてすごい。平常心を心掛けていても、神代さんの前だと言葉が上手く出てこなくて、何だか恥ずかしかった。ぱたぱたと手で熱くなった顔を少し仰いで、視線を逸らす。お店が沢山並ぶ所から、住宅街の方へ来た。家まであと少しだ。何か話題はないだろうか、と思っていると、ふと、咲希の顔を思い出した。

    「そういえば、神代さんのサイン色紙を友人に貰ったんです」
    「あぁ、少し前にあった企画のやつだね」
    「はい。妹が神代さんのファンで、応募してたんですけど当たらなくて…。そしたら、えむ…、一緒にあの店でバイトしてる友人が当たったからってオレにくれて」
    「今回応募数が多くて倍率が高かったって聞いてるけれど、当たるなんてすごいね」

    くす、と笑う神代さんに、オレも苦笑を返す。それはそうだ。何せ神代類のサイン色紙なのだから。やはり倍率が高かったのだな。咲希が当たらなかったのも仕方ないだろう。むしろ、えむがそれで引き当てたところの方が本当に凄いな。改めてえむの強運に感心する。

    「それで、妹に譲ったんですけど、凄い喜んでましたよ。今リビングに額縁に入って飾ってあります」
    「おや、譲ってしまったのかい?」
    「妹は幼い頃からずっと神代さんのファンですからね」
    「それは嬉しいね」

    神代さんが目を伏せて笑う。ぎゅ、と手元の袋を抱き締めて、オレも笑顔を返した。
    欲しくないと言えば嘘になる。けれど、咲希の方がオレより神代さんを好きだ。恋愛感情とかでは無いとは思うが、幼い頃から追いかけているのは咲希の方だ。だから、オレよりも咲希の方が持つに相応しいだろう。

    「妹の部屋はすごいですよ。ポスターとか、グッズが沢山あって…」
    「それはなんだか恥ずかしいね」
    「神代さんの凄いところとか、出演してるドラマや映画とか、何度も聞かされて、それでオレも詳しくなったんです」

    次から次に出てくる言葉が止まらない。神代さんが相槌を打ってくれるけれど、何を言っているのか自分でも分からなくなってきた。何故、妹の神代さんへの情熱を話しているのだろうか。ぎゅ、と更に強く手元の袋を抱き締める。家が見えてきて、そろそろこの時間も終わりだ。話の切り方が分からなくて、視線が泳いだ。咲希の話が絶えず口から出てくるオレの肩を、神代さんがぽんと叩く。

    「天馬くん」
    「あ、…」
    「天馬くんは、妹さんと仲が良いんだね」
    「…そう、ですね。大事な妹です」

    神代さんの言葉で、さっきまで飛び出していた言葉がどこかへいってしまった。ホッと一つ息を吐いて、前を向く。家はもうすぐそこまできていて、ほんの少し残念な気持ちになってしまった。もっと、話したい事が沢山あるのだがな。

    「また今度、妹さんの話も聞かせておくれ」
    「はい、すみません、オレばかり喋ってしまって」
    「構わないよ。その代わり、後で君の予定を教えてくれないかい?一緒に服を見に行く日を決めたいからね」
    「はい!」

    家の前まで来ると、神代さんが立ち止まる。オレも立ち止まって、神代さんに向き直った。オレより身長の高い神代さんが、マスクをズラしてふわりと笑う。それに胸がドキドキして、視線が泳ぐ。顔は絶対赤くなっているだろうが、隠すと余計に不審がられてしまうので耐えた。すると、目の前に神代さんの手が差し出される。

    「さっき買った本、少し貸してくれないかい?」
    「? 構いませんが…」

    差し出された手に首を傾げて、ガサガサと袋から雑誌を取り出す。表紙を上にして神代さんに渡すと、神代さんはにこっと笑った。そうしてコートのポケットに手を突っ込んでなにやら探している。何故かドライバーとかハサミが見えた気がするが、気の所為だろうか。何をするのか分からなくてじっとポケットを探る手を見つめていると、マジックが飛び出してくる。

    「この前使ってからずっと入ったままだったんだよね」
    「神代さんのポケットは、四次元ポケットですね」
    「ふふ、寧々にも良く言われたよ」

    きゅぽ、と口で蓋を外した神代さんが雑誌の表紙にそれを向ける。なんというか、大雑把というか雑な仕草と言うと聞こえは悪いが、神代さんがやると絵になるな。普段なら、口で蓋を咥えるな!と怒ってしまいたくなるが、神代さんがやると、そんなことどうでも良くなってしまう。ぽけ、とその表情を見つめていると、不意にこちらへ月色の瞳が向いた。くすっと笑われて、ぶわわっと顔に一気に熱が集まる。見惚れていたのがバレて、気恥しい。パッと顔を逸らすと、マジックの蓋を閉める音が聞こえる。

    「はい」
    「……え、…」

    手渡された雑誌の表紙に、思わず目を疑う。綺麗な字で書かれた『神代類』の文字。表紙の神代さんを邪魔しない良い感じの場所に書かれていて、最初からこの一枚だったのでないかと思う程だ。バッ、と顔を上げると、神代さんがにま、と笑う。

    「すまないね、企画用にちょっと練習させてもらったよ」
    「だ、だって、…企画、終わって……」

    はく、はく、と開いた口が塞がらなくて、手元の雑誌と神代さんを交互に見やる。

    「要らなかったら、妹さんに譲ってもいいからね」
    「た、大切にしますッ!」
    「ふふ、それは嬉しいね」

    マスクをつけなおして、神代さんが笑う。譲れるわけが無い。これは、『オレ宛』だ。

    「それじゃぁ、後で連絡するね」
    「あ、ありがとうございましたっ!」
    「うん。お休み、天馬くん」
    「お休みなさい、神代さん」

    ひら、と手を振って踵を返す神代さんを目で見送って、フラフラしたまま家の中へ入る。「ただいま」と一言呟いて、早足で部屋へ向かった。途中で咲希に呼ばれた気がしたが、それに応える余裕もなかった。自室のベットに腰掛けて、胸元に抱えた雑誌を恐る恐る見る。背表紙は最近名前が出始めたアイドルグループが映っている。その雑誌をくるりと表へ返すと、さっきまで一緒にいた神代さんの姿。その傍に書かれた『神代類』の名前。それと、『天馬くんへ』と書かれた宛名。

    「………これは、ずるいっ…!」

    きゅぅう、と胸が煩くて、顔がこれ以上無いほど熱い。こんなものを咲希に渡したら大変な事になる。渡せるわけが無い。これは、オレの為に神代さんが書いてくれた、『オレ宛』のサインだ。

    「……これが、ファンサと言うやつか…」

    現役の人気俳優は凄い。改めて、神代さんが人気の理由が分かった気がした。

    そんなある日の話。

    ーーー
    (ここから別の話)


    「…むむむ……」

    じーっと少し離れた位置にあるお店を見つめる。人が多い。平日ではあるが、お店の周りには人が集まっていた。大きな音楽と沢山の機械が詰め込まれた店内はファンシーなぬいぐるみやお菓子で彩られている。所謂ゲームセンターだ。UFOキャッチャーのコーナーで、店先にある台に女性客が集まっていた。本日プライズ化されたぬいぐるみの為だ。

    「………近寄れん…」

    かれこれ三十分ここにいる。目的は、女性客が集まる台の景品だ。人気俳優神代類をモデルにした小さなぬいぐるみ。あれが欲しい。が、流石に女性客が多過ぎて近寄れない。ゲームセンター自体にあまり行かないので、やり慣れていないこともあって近付き難かった。だが、SNSで見たぬいぐるみが神代さんの特徴をよく捉えていて可愛らしかったのを思い出すと、このまま帰るという考えも飛んでいってしまう。どうするか、と一人悩んで腕を組んでいると、不意に後ろから肩を叩かれた。

    「司先輩、どうしたんですか?」
    「おお!冬弥ではないか!久しぶりだな!」
    「お久しぶりです」

    振り返ると、昔から良く一緒に遊んだ冬弥がそこにいる。親同士が親しく、咲希と三人でよく遊んだものだ。一つ年下の弟の様な存在に、笑顔を向けると、首を傾げられた。

    「こんな所でなにをなさっているのですか?」
    「あぁ、ちょっと、戦場に赴くか悩んでいたのだが…」
    「……戦場、ですか?」

    ちら、とゲームセンターを見ると、冬弥も視線の先に目を向ける。そうして、オレの言葉の意味を察してくれたらしい冬弥が、「あぁ、」と呟いた。

    「何か欲しいものがあるんですか?」
    「そうなんだ。だが、オレもあまりやった事がないのと、人が多くてな…」
    「それでしたら、俺が取りましょうか?」

    笑顔で提案してくれた冬弥に、思わず期待の目を向けてしまった。だが、冬弥の力を借りて良いものだろうか。神代さんのグッズは欲しい。が、オレ自身の力で取らずして、果たして手に入れたことになるのか…。

    「すまん、これは自分で取りたいんだ」
    「そうですか。差し出がましいことを言ってしまい、すみません」
    「いや、冬弥のせいではないぞ?!これはオレの戦いであるというだけで…。そうだ、オレに取り方を教えてはくれないか?」
    「俺でよければ、是非お手伝いさせてください」

    ふわりと笑う冬弥に礼を言って、オレは決意を固めた。冬弥がいるなら、心強い。女性客が集まる台の方へ踏み出して、その列に並ぶ。人が多くてそわそわしながらも、冬弥から取り方のレクチャーを受けながら待った。やっと自分たちの番が来て、台の前で深呼吸をする。お金を投入すると、機械から明るい音楽が流れ始めた。

    「た、たしか頭の方を狙うんだったな」
    「はい」
    「のわ、こ、こんなに動くのが早いのか?!」
    「少し行き過ぎてしまいましたね」
    「…ぐぬぬ、これは難しいな…」

    ズラリと並ぶ神代さんに似たぬいぐるみ達。それがこちらを見ているようで少し気恥しい気がしてしまう。が、ここで逃げる訳にもいかない。ちゃりん、ともう一度お金を投入して、アームをよく見ながらボタンを押していく。ぽちぽちと押しながら、ぬいぐるみの頭を少し持ち上げた。が、少し動いてその場で止まってしまう。

    「む、難しいな…」
    「頑張ってください、司先輩」
    「あぁ!」

    その後も、冬弥からのアドバイスを聞きながら、何度も挑戦する。
    何回かズラす事を繰り返すと、ぬいぐるみが転がって穴に落ちた。パンパカパーン、と祝福するような音楽も機械から流れ出し、下の取り出し口にぬいぐるみが転がる。

    「と、取れた!取れたぞ!冬弥!」
    「やりましたね、司先輩」
    「あぁ、手伝ってくれたこと、感謝するぞ!」

    後ろに人がいるため横へ避けて、冬弥にもう一度お礼を伝える。スタッフの人が袋を持ってきてくれて、それにぬいぐるみを入れた。抱っこできるくらいの大きさだ。袋に入れたそれを抱えて、達成感につい頬が緩んでしまう。

    「良ければ、これもどうぞ」
    「へ…?」
    「今回のものは二種類あるみたいでしたので、保存用にも是非」
    「あ、あの短時間で二つ取ったのか?!」
    「一人一種類ずつとの事でしたので、これしかお譲り出来ませんが…」
    「十分だ!本当にすまんな、冬弥」

    袋に入った神代さんのぬいぐるみ。顔が笑顔のものとキリッとしたものの二つあったようで、その二つが袋の中に入っていた。冬弥の才能に改めて驚かされる。

    「ですが、司先輩も神代さんのファンだったんですね」
    「あ、…あぁ、そうなんだ、最近、咲希につられて、な…」
    「そうでしたか。本当にお二人は仲が良いんですね」
    「は、はは…まぁ、な…」

    キラキラした顔でオレを見る冬弥からそっと顔を逸らす。言えない。神代さんに片想いしているから、ついグッズにも手を出し始めた、なんて言えるわけが無い。仕方がないだろう、本人がかっこいいのだから。それに優しいんだ。惚れるなという方が無理な話だ。
    貰ったぬいぐるみの袋も抱えて、冬弥と家へ向かう。なんとか神代さんの話から逸らして、最近の話をした。冬弥はグループで音楽活動をしていて、最近はCDも出し始めている。雑誌に載ったこともあり、かなり有名になってきていた。その為、最近は仕事が忙しいらしく全然会えていなかったからな。主に冬弥の仕事の話を聞きながら、家までの道を歩いて帰った。そうして、分かれ道でもう一度お礼を言って別れた。自分で取ったぬいぐるみと、冬弥のくれたぬいぐるみを大事に抱えて。

    被った方は咲希に譲り、後日二人で冬弥の家へお礼を言いに行った。

    ―――

    『あの青柳冬弥くんが神代類のファン?!』

    そんな噂がSNSで騒がれるようになるのがその一ヶ月後。司の為にゲームセンターで神代類のプライズ商品を片っ端から取り始め、限定グッズなんかにも応募する姿が見られるようになり、一部のファンからあらぬ誤解を受けているが、司はその事を全く知らない。
    後に彰人により、この騒動は静かに収まっていくのであった。
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    Replies from the creator

    ナンナル

    CAN’T MAKE銀楼の聖女

    急に思い付いたから、とりあえず書いてみた。やつを一話分だけ書き切りました。
    ※セーフと言い張る。直接表現ないから、セーフと言い張る。
    ※🎈君ほぼ居ません。
    ※モブと☆くんの描写有り(性的な事は特になし)
    ※突然始まり、突然終わります。

    この後モブに迫られ🎈君が助けに来るハピエンで終わると思う( ˇωˇ )
    銀楼の聖女『類っ、ダメだ、待ってくれっ、嫌だ、やッ…』

    赤い瞳も、その首元に付いた赤い痕も、全て夢なら良いと思った。
    掴まれた腕の痛みに顔を顰めて、縋る様に声を上げる。甘い匂いで体の力が全く入らず、抵抗もままならない状態でベンチに押し倒された。オレの知っている類とは違う、優しさの欠片もない怖い顔が近付き、乱暴に唇が塞がれる。髪を隠す頭巾が床に落ちて、髪を結わえていたリボンが解かれた。

    『っ、ん…ふ、……んんっ…』

    キスのせいで、声が出せない。震える手で類の胸元を必死に叩くも、止まる気配がなくて戸惑った。するりと服の裾から手が差し入れられ、長い爪が布を裂く。視界の隅に、避けた布が床へ落ちていく様が映る。漸くキスから解放され、慌てて息を吸い込んだ。苦しかった肺に酸素を一気に流し込んだせいで咳き込むオレを横目に、類がオレの体へ視線を向ける。裂いた服の隙間から晒された肌に、類の表情が更に険しくなるのが見えた。
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    ナンナル

    DOODLE魔王様夫婦の周りを巻き込む大喧嘩、というのを書きたくて書いてたけど、ここで終わってもいいのでは無いか、と思い始めた。残りはご想像にお任せします、か…。
    喧嘩の理由がどーでもいい内容なのに、周りが最大限振り回されるの理不尽よな。
    魔王様夫婦の家出騒動「はぁあ、可愛い…」
    「ふふん、当然です! 母様の子どもですから!」
    「性格までつかさくんそっくりで、本当に姫は可愛いね」

    どこかで見たことのあるふわふわのドレスを着た娘の姿に、つい、顔を顰めてしまう。数日前に、オレも類から似たような服を贈られた気がするが、気の所為だろうか。さすがに似合わないので、着ずにクローゼットへしまったが、まさか同じ服を姫にも贈ったのか? オレが着ないから? オレに良く似た姫に着せて楽しんでいるのか?

    (……デレデレしおって…)

    むっすぅ、と顔を顰めて、仕事もせずに娘に構い倒しの夫を睨む。
    産まれたばかりの双子は、先程漸く眠った所だ。こちらは夜中に起きなければならなくて寝不足だというのに、呑気に娘を可愛がる夫が腹立たしい。というより、寝不足の原因は類にもあるのだ。双子を寝かし付けた後に『次は僕の番だよ』と毎度襲ってくるのだから。どれだけ疲れたからと拒んでも、最終的に流されてしまう。お陰で、腰が痛くて部屋から出るのも億劫だというに。
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