Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    hagi_pf

    @hagi_pf

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🌂 🐳
    POIPOI 79

    hagi_pf

    ☆quiet follow

    雨彦さんがクリスさんの爪を塗ってイチャイチャしてるだけのいつもの雨クリ。ししんでんの後の話だけど本編一切関係ない。

    #雨クリ
    raincoatClipper

    「それじゃあ塗るぞ」
    「はい、お願いします」
     クリスの右手をそっと握り、やけに真剣な表情をしている雨彦に、クリスはこくりと頷いた。
     雨彦の手にはマニキュア用の小さな刷毛。クリスの指先はこれから、雨彦の手で彩られようとしている。


     事の発端は先日出演した映画。鬼を演じた二人は、その印として赤い角と爪を付けた。
     最近では男性でも、マニキュアなどで爪を彩る人が増えてきているが、まだまだその数は少ない。クリスもアイドルになって何度かマニキュアや付け爪を使用したが、未だに慣れてはいなかった。視界の端に映る鮮やかな赤に、不思議な感覚になったのも記憶に新しい。
     そんな撮影から少し経った今日、二人は仕事終わりにドラッグストアに立ち寄った。今晩は雨彦の家で過ごす予定で、足りない日用品なんかを買って帰るつもりだったのだ。
     そして化粧品コーナーを通りかかり、クリスは陳列された色とりどりのマニキュアに目を留めた。
    「古論?」
     予定外の場所で立ち止まったクリスに、雨彦も不思議そうな顔で足を止める。クリスの視線の先にあるものへと目線を向けても、その表情は変わらない。
    「マニキュアに興味があるのかい?」
    「ええ、自分で購入した経験はないのですが、先日の映画のことを思い出しまして」
     クリスは化粧品には詳しくない。母や妹がこういったものを度々購入していることは知っているが、どんなものがあるのかも、どれが良いのかもさっぱりだ。
     けれど数多く並んだ商品の中で一際目を引いたのは、青みがかった淡い紫色。小さな瓶を手に取ると、光の加減で控えめなパールが煌めく。
    「……雨彦、よければこれを、私に塗っていただけませんか?」
     それはほんの思いつきだ。雨彦の手で、どこか雨彦の瞳に似たこの色に彩られたなら、どんな心地がするのだろう。 
     雨彦の視線がクリスの顔から手元へと移っていく。目を瞬かせた雨彦は、隠しきれなかった照れのような感情をほんの少し滲ませて、わかった、と一言答えた。
     クリスは普段、海のような綺麗な青を好んで選ぶ。そんなクリスが時折こういった色を選ぶことの意味を、雨彦は知っているのだ。


     そんなこんなで、雨彦の家へと帰ってきた二人は、ソファに並んで座り向き合った。
     雨彦は購入してきたマニキュアの蓋を開けて、瓶の方をテーブルに置く。それからクリスの右手を取って、手元に少し顔を寄せた。
    「俺もこういったものは初めてだから、綺麗にできるかはわからないぜ」
    「ええ、構いません」
     出来映えなんかよりも、雨彦に塗ってもらうことに意味がある。そんなクリスの意思を察した雨彦は、手にした刷毛でまず人差し指を塗り始めた。付属品の刷毛は雨彦の大きな手で持つには小さすぎて、そのアンバランスさがほんの少しだけ面白い。
     はみ出してしまわないように慎重に、二度三度と刷毛を滑らせていく。たっぷりと時間をかけて人差し指を塗り終えた雨彦は、安堵したように小さく息を吐いた。
    「どうだい?」
    「……あ、はい。大丈夫です」
     雨彦を見守ることに夢中になって、反応がワンテンポ遅れてしまった。クリスが頷いたのを確認した雨彦は、再び手元に目線を落とす。
     最初こそ慎重になっていたものの、雨彦は手先が器用だ。あっという間にコツを掴んで、次第にペースを上げていった。
     じっとクリスの手を見つめ、集中している様子の雨彦を、つい見つめてしまう。視線の先で、自分の指先が少しずつ、雨彦の色へと変わっていく。雨彦の手で染められていくようなその感覚が、なんだかくすぐったい。
    「……よし、こんなもんか」
    「ありがとうございます、雨彦」
    「まだ乾いていないから、もう少しそのままでいてくれ」
     雨彦は満足そうに頷いて、刷毛を瓶に戻す。何かに触れてしまわないように気をつけながら、クリスは目の前に片手を翳した。部屋の明かりに照らされて、指先がきらきらと輝く。
     いつだったか妹が、好きな色が手元に見えるとテンションが上がるのだ、と話していたことを思い出す。その言葉の意味が今、ようやくわかったような気がした。
    「なんだか、落とすのが惜しくなってしまいそうです」
    「なに、何度でも塗ってやるさ」
     そう答える雨彦は、何だか機嫌が良さそうだ。状態を確かめるかのように、再びクリスのもう片方の手を取る。
    「こういうのも悪くないな」
     どうやら雨彦の方もお気に召したらしい。ふっと笑った雨彦は、クリスの手の甲にひとつ口づけを落とす。
    「あ、雨彦」
    「こら、動くな」
     驚いて思わず身体が跳ねてしまったクリスは、雨彦の言葉にぴたりと動きを止める。せっかく綺麗に塗られた爪を、すぐに台無しにしてしまうわけにはいかない。
    「良い子だ」
    「雨彦、待ってください……っ」
     クリスが動けないのを良いことに、雨彦は手に頬にと好きなようにキスをする。ぴく、と身体を震わせると、雨彦が小さく笑う気配がした。
    「もう少しだけ、このまま可愛がらせてくれ」
     そう囁く声は、クリスしか知らない甘さを含んでいる。
     マニキュアが乾くまでは、あと五分ほどだろうか。ほんの僅かな時間のはずなのに、身が持たない予感がする。
     クリスの指先とよく似た色が間近に迫る。その色の奥底には、深い愛と欲が入り混じっていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤☺☺☺☺👏👏👏👏👏👏😭🙏🙏💖💖💖☺💖❤❤😭😭😭😭👍👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    sy_leg

    MEMOノイくんにマウント取る大人気ない暁さんの話。
    暁理のつもりで書いたのだけれど暁さんも理人さんも殆ど出てこない上にそもそもコレは暁理なのか自信がなくなりました。
    「あーーーー終わんない!!」
     時空警察庁にある一室、特殊部隊に割り振られている事務室で真白ノイは大声をあげた。目の前にある端末には書きかけの報告書が表示されている。出動1回につき1通の報告書を提出する決まりになっているが、出動が続き未提出の報告書が溜まってしまっていた。今表示されているものが5つ目で、まだ残り6件分の報告書がある。
     ノイが報告書に追われているということは、バディである理人もまた同量の報告書に追われているということでもあった。大声をあげたことで理人に叱られるかと思ったが、声すらかけられないのでノイは拍子抜けする。
    「気が済んだなら報告書の作成に戻れ」
     ノイの視線に気付いたらしい理人はそこでやっと声をかけて来た。既に既定の勤務時間は過ぎてしまっているのだから理人の言うようにすぐ報告書の作成に戻るべきなのだが、ノイの気は重いままだし集中力も切れてしまっている。これらの報告書の提出期限は今日の2359までだが、まだ2000を少し過ぎたところなので余裕はあった。
    1367