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    hagi_pf

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    同棲している雨クリ宅でそらくんの誕生日を祝う特にイチャイチャもしてないやつ

     誕生日を祝われるというのは、この歳にもなると少しこそばゆい感覚もあるが、やはり嬉しいものだ。
     応援してくれるファンや事務所の仲間たち、そしてプロデューサー。彼らからの祝いの言葉や贈り物で、心も荷物もいっぱいになっていくのは、悪い気がしない。
    「想楽、誕生日おめでとうございます!これは私と雨彦からです」
    「北村、おめでとさん」
     だがそんな中でもやはり、雨彦とクリスに祝われるのは、想楽にとって特別なことだった。
    「二人ともありがとうー」
     お礼を言って、クリスからプレゼントを受け取る。二人からのプレゼントは回数を重ねるごとに、二人の色が強く出たものから、より想楽が好むものへと変わっていった。今年はどんなものを選んでくれたのか、一刻も早く確かめたくなってしまう。
     そんな想楽の様子を確認したクリスは、ちらと何かを促すように雨彦の方を見た。
     まだ何かあるのだろうか、と不思議そうな顔をしていると、雨彦はふっと笑って懐から白い封筒を取り出す。
    「これも、お前さんにだ」
    「え、何だろうー?」
     手渡された封筒を開けると、二つ折りのバースデーカードが入っていた。カードに書かれていたのは、二人からの誕生日を祝うメッセージと、何らかの日時と場所。スケジュールを確認すると、その日は三人ともオフの予定になっている。そして場所は、雨彦とクリスの暮らすマンション。
    「事務所でのパーティーも良いですが、改めて三人で想楽の誕生日を祝いたいと思いまして」
    「もちろん北村が良ければだがな」
     そう言って微笑む二人の表情は、どこか似ていた。
     想楽の答えは、考えるまでもない。
    「ふふ、そんなの、断る理由がないよねー」



     当日、約束の10分前にマンションにたどり着いた想楽がインターフォンを鳴らすと、雨彦が出迎えてくれた。
    「北村、良いタイミングで来たな」
    「雨彦さんが出迎えてくれるの、珍しいかもー」
     この家を訪れる時はいつもクリスが嬉しそうに出迎えてくれていたので、想楽は少し驚いてしまう。
     雨彦の話では、毎度雨彦が出ようとする前にクリスが玄関に向かっていってしまうのだとか。それだけ歓迎されているというのは、想楽にとっては嬉しいものだ。
    「古論はキッチンでちょいと格闘中でな」
     雨彦に促されるまま足を踏み入れると、ふわりと良い香りが漂ってくる。
    「クリスさん、来たよー」
    「想楽、お迎えできずすみません!」
     リビングに入り、キッチンで忙しなく動くクリスに向けて声をかけると、エプロン姿のクリスがキッチンから顔を覗かせた。
    「座って待っていてくださいね」
     そう言いながら、クリスはテキパキと何か調理しているようだ。
     クリスの邪魔をしないように、想楽はそのままダイニングテーブルの方へ向かう。初めて訪れた際は緊張したこの家も、今ではすっかり勝手知ったるなんとやら、だ。想楽の定位置だってもう決まっている。
     いつもの席に座ると、そこには既にサラダやオードブルが並んでいた。
    「お前さんを祝う料理だからって、随分とはりきっちまってな」
     俺のことも朝から放ったらかしだ、と冗談めいた顔で笑う雨彦に、想楽は思わず苦笑する。
    「雨彦さんははりきってくれてなかったんだー?」
    「おっと、そう来たか。なら北村には古論が来るまで、俺の今日のはりきり具合を聞いてもらおうじゃないか」
    「えー、それは遠慮しておこうかなー」
     軽口のようなやりとりは二人の日常茶飯事だ。
     そうこうしているうちに、クリスが大皿を手にキッチンから戻ってくる。
    「ふふ、雨彦も今日はいつも以上に料理に力が入っていたんですよ」
     そう言って微笑ましそうに笑うクリスには、想楽も雨彦も敵わない。
    「バラされちゃ仕方がないな」
    「それは心していただかないとだねー」
     クリスが席について、三人は顔を見合わせる。
    「それでは改めて。想楽、誕生日おめでとうございます」
    「誕生日おめでとう、北村。ケーキもしっかり用意してあるが、それは後でのお楽しみだ」
    「ありがとうございますー。二人にこうやって祝ってもらうの、やっぱり嬉しいかもー」
     普段は素直に言えない言葉が、自然と口をついて出る。二人はそれをからかうでもなく、静かに頷いて受け止めてくれた。
    「ではいただきましょうか!」
     クリスの声と共に、三人だけのパーティーが始まる。
     この一時も、想楽にとってかけがえのない思い出の一つになるような、そんな予感がした。


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