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    桧(ひのき)

    @madaki0307

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    桧(ひのき)

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    梵天軸武臣×堅気武道の恋人一歩手前な臣武

    花垣武道誕生日記念本 web公開 臣武分。
    明司武臣(初代副総長)15~17時の出来事。

    #臣武
    ministerialPower
    ##花垣武道BD記念

    その心、快晴なり 嗅ぎ慣れた雨の匂い。
     傘に絶え間なくぶつかる雫の音。
     雨男である彼の到来が故の驟雨という訳ではない。一日中ずっと雨模様なのだ。この国においては梅雨という季節のみ、その全ての老若男女が雨男雨女となる。


     煙草を咥えて煙を吐き出した。
     摘む煙草のその先で、橙の火が明るく燃えては勢いを失ったように黒く燻る。そしてまた火種は明るく。その繰り返し。明滅する灯火。なんとも己の人生のようではないかと自嘲した。
     ただの幼馴染というだけで日本一の暴走族の副総長に。そして〝軍神〟などと祀り上げられて。チームの解散後もその威を借りて享楽に耽ること数年。頂点まで上り詰めたらあとは落下するだけである。坂を転がり落ちるように底まで落ちた。
     借金苦を超えてどうにか這い上がり、今やヤクザ者。それも日本の闇を牛耳る梵天の相談役である。周囲のイかれ具合を見ると、己は比較的良識的な部類と言えよう。

     随分遠くまで来たものだと、夕方の雨空を見上げる。
     この生活は存外悪くない。仕事もそこそこに熟していれば金はたんまり手に入り、酒も浴びるように呑むことができるからだ。間諜に注意せねばならないが、夜遊びをしようと思えば選り取り見取り。四十路に足を踏み入れようとする年齢ではあるが、それでもまだまだ男盛りの年齢である。
     そうであるのに、ここの所は金や酒を手にしても女の柔肌に埋もれても、満足などできなくなっていた。
     
     鈍色の分厚い雲がかかり、雨はしとどに止むことも無く。まるでこの心のように晴れることはない。
     明司武臣はビデオ店の前で佇んでいた。入店する者も退店する者も刃傷の入った明司の明らかに堅気ではない姿に目を合わせないまま、そそくさ通り過ぎて行く。賢明だ。己のような裏社会の人間と関わって良いことなど無いのだから。

     煙は揺れ動く。もう何本目の煙草かわからない。灰が濡れた地面に落ちて水に溶けて行く。
     感傷に浸っていると、素っ頓狂な声がかかった。

    「あれ、明司さん」
     その発声の主こそが、明司の待ち人だ。
    「よ、武道。お疲れさん」
     店の裏口から出てきた花垣が、駅に向かう為に店の前を通ることになるのは知っている。
     にかり、と彼へと薄く笑みを向けて煙草を携帯灰皿に。
    「雨宿り、って訳じゃなさそうっすね」
     この男、元黒龍十一代目総長である。とはいえ、それはピンチヒッターのようにごく僅かな期間であった。
     花垣は彗星の如く現れて、十一代目という〝一〟を二つ重ねた数字を背負っていたのだ。
     〝一〟とはつまり、明司の幼馴染で黒龍初代総長の佐野真一郎を差す。そして花垣武道は奇しくも黒龍最後の継承者。何と不思議な縁であろうか。〝一〟で始まり、それが重なる頃に黒龍という族が真の意味で終焉を迎えるとは。
     その上、花垣という男は幸運な成り上がりの者であった。真一郎の実弟である佐野万次郎――現在の明司が忠誠を示す相手にあたる――が初代総長として起こした東京卍會の壱番隊隊長でもあったからだ。喧嘩の様子を当時は見た事が無かったが、何故この男が僅か四ヶ月程で隊長までに上り詰めることができたのか、明司は察してしまった。

     その契機こそ、明司が花垣に最初に出会った出来事が関係しているのだ。
     出会いは今から一年程前だろうか。今日のこの日以上に土砂降りの雨の中、花垣は路地裏で己の部下に殴られていたのだ。〝商売〟を邪魔しようとする一般人がおり、小癪なことに殴っても蹴ってもしぶとく喰らいついてくるのだという。
     何故そんな状況になったかと言えば、花垣が女を庇ったからだ。その女性というのが、重要で。梵天の傘下の店で働いている稼ぎ頭の嬢であった。
     明司は相談役ではあるが、彼も己の懐が寂しいのは辛い。更に一応部下も持つ身であれば、組織内でタダ飯食らいになる訳にはいかなかったのである。それ故に、緩やかにいくつかキャバクラやフロント企業を資金源にしていたのである。その店も明司が担当しており、その部下にみかじめ料の回収を行わせていた。そんな日に、それは起きたのである。

     みかじめ料を徴収しに来た部下は、売り上げが下がった事に業を煮やして、店長にどういうことだと詰問したらしい。経営が不振になれば自身達の懐に入ってくる資金も減るのだ。緩やかではあるが売り上げが下がり続けるその店に対して半ば脅す形になったのだろう。
     本来であれば、しっかりやれと発破をかけるのはよくあることなのではあるが、明司配下の店はキャスト達への対応や締め付けは比較的優しく。それ故に店側も慢心があったようだ。平凡な男であると自負する明司とは雖も、そこまで生温くはない。
     梵天への恐怖心も忠誠心も当然のように欠片も無かった売り上げトップの嬢が、部下による店長への凄みを目撃して腹を立てたのだ。今度はそれに対して、部下は舐められていると感じたらしい。彼女を引っ張って店の外に連れ出したのだ。
     そこに運悪く通りかかったのが、夜勤終わりの花垣武道。
     事情を知らない花垣は、当然、粗暴に扱う男から女性を守るように立ちはだかってみせた。そして嬢を逃がしたのである。部下の応援が来て「ちょっとこっちに来い」と路地裏に連れて行かれる様は宛ら漫画か小説の中の出来事のようであっただろう。

     この辺りで逃げ出さない辺り、肝が据わっている。

     憂さ晴らしもあったのだろうが、流石に事情も知らない堅気をその場で殺すわけにもいかず、暴行するだけに留めた部下達。だが花垣のまぁ倒れないこと倒れないこと。素手で行う喧嘩から離れて久しい彼らである。徐々に手を痛ませた部下は殴打する力を緩ませて行く。その耐久性と、殴られて慣れている様に固唾を呑んで気圧されるのだ。

     指示を仰ぎたいが為に呼び出された明司の目に飛び込んできたのは、顔面を血だらけにしながらも乱雑に前髪を掻き上げたその男の凄艶さ。伏せられたその視線が明司へと齎されると、心臓が大きな音を立てて爆発する。ドッドッと意味も分からず逸る鼓動は、果たして畏怖か、将又恋か。明司は背筋に雷が走ったかのような衝撃を味わった。

     やり返せば同じ穴の狢になると本能で理解していたのだろうか。人間としての一線を超えないように踏みとどまっているかのようにも見えた。決してやり返さずじっと耐え抜いたその雄姿。傷だらけで耐え抜く姿は佐野真一郎を彷彿としながらも、また異なる輝きがあった。
     その地べたを這いつくばってでも真っ当に生きてやるのだという気概を貫く花垣に、明司は久方ぶりに心が震えている事を知った。瑞々しく生命力が溢れる人物が、泥臭くも眩しく思えて仕方なかった。

     それが、明司と花垣の最初の出会いであった。

     今になって思えば、あの時の様子から察するに、万次郎が花垣を自チームに引き入れた理由も、彼が黒龍の十一代目になった理由も納得するのには十分である。


     丁重に己のセーフハウスへ連れて行き怪我の手当を施して。素性を尋ねれば名を花垣武道というではないか。元は東京卍會の隊長格で更に黒龍の十一代目だと知れば天を仰いで歓喜に沸いた。東京卍會の面々に関しては、梵天は関わってはいけないと暗黙の了解で首領からきつく言い含められている。だが、彼は黒龍の最後の継承者なのだ。誰にも文句は言わせない。戦略を張り巡らさせれば明司の右に出る者はいないだろう。交流を咎められても、いくらでも言い訳が出来る。

     昔年の輝かしい功績が明司と花垣を繋いだのかと思うと、仄暗い優越感と柄にもなく浮足立つ高揚感で綯い交ぜになっていた。黒龍時代の、あの熱く楽しい日々を思い出すからだ。

     その後も明司は折を見ては何かと理由をつけて花垣との交流を続けた。
     四十路に差し掛かる頃になってからの恋は非常に厄介であった。どのようにアプローチすべきかわからない。ブランド物に詳しくないからなのか、物も金も殆ど欲しがらず。金銭面に苦労していないと言えば嘘になるだろうに。毎度困ったように微笑んで断るのだ。
     達観した花垣は、その小さなアパートを己が世界だと決めて、静かに暮らしている。引っ越そうとも考えていないらしい。



    「今日は朝早かったんだろ?」
    「……もう。また見張りつけてるんですか?」
     しょうがないな、とでも言うように肩を竦めてみせた。花垣は、明司が堅気ではないのを当然分かっていて親交を持っているのだ。己の生活パターンが全て知られているのも把握して久しい。
    「朝七時から夕方十六時まで、三十分過ぎちゃいるが、ほぼ予定通り上がってんじゃねぇか」
     良かったな、と声をかける。
    「企画コーナーのレイアウト作成に朝から駆り出されたので、今日は意地でも時間通りに上がってやろうと思って」
     傘を並べて連れ立つ。空いた手を突っ込んだポケットの中。そこには、少し狭いセーフハウスの一つに立ち入る為の鍵が。
     誕生日に鍵を渡すだなんて。正気の沙汰ではないだろう。ましてや、此方は祝う側であるというのに、受け取って貰えたとしたら喜ぶのは明司の方であるのだから。

    「ポケットの中の、くれないんすか?」
     横目でちらりと此方見る花垣に、明司は思わず歩みを止めた。ちらりと蒼穹を覗かせて、そのまま外された視線。少し赤らんだ頬を傘で隠そうとする花垣を制して。
     悔し紛れに、それでも明司は完敗の意を示す。
    「年上には格好つけさせろよ」
     誕生日を祝うその言葉を紡いで、花垣を抱き寄せるのであった。





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    桧(ひのき)

    DONE五十路真一郎×四十路武道……と言いつつあまり年齢操作感の無い真武

    花垣武道誕生日記念本 web公開 真武分。
    佐野真一郎(初代総長)23~24時の出来事。

    ※本の中では4839字だったんですが、ポイピクでは5千字超えてしまっています。
    愛の特権 散々な一日だった。
     近年稀に見る程に、疲れた日であったとも言えよう。

     その地域のレンタルビデオ店のエリアマネージャーであるとは雖も、その日は久方振りの二日間連続での休暇であった。だが悲しい哉、脆くも崩れ去る。
     その店の社員は三人。本来、この日に出勤予定であった社員の家族が緊急入院したのである。良く言えば少数精鋭、悪く言えば人員が不足気味な職場である。故に急遽、花垣が休暇の予定を返上して勤務に入ることになったのだ。

     記念すべき四十歳になる日。世では『不惑』と定められる年齢になったが、物事に惑わされない精神を保つ事は難しく。感情に振り回されてしまうことも屡々。己の精神年齢は成長していないように思えて。ただ無意味に年齢だけを重ねているのではないかと、毎日思う。同棲して既に二十年を越した恋人からの十分大人になったよ、という言葉を胸に、今日も〝大人〟を演じるのだ。
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    ※武に前世の記憶がある
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    ※前世思い出す表現あり
    ※武愛され要素あり
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    ───────彼等に会えるように
    今日も武道は海を泳ぎ希望を胸に抱く。
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    「人柄が出てるな、ピアニストでもやって行ける音だが見たことねぇな」
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    いっぱい食べる君が好き
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     昼のピーク時間の混みどきも落ち着き、午後の人が空いて来た頃武道仕込をしていると、ドアが開く音がして店内に人が入ってきたのが分かり武道はカウンターに顔を出した。
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    「真一郎くん!こんにちは!あ、武臣さんにワカくんもいる!」
     金髪の少年の元気な声が響き、彼等は一斉に少年を見ると女性が居たら一目恋に落ちるような蕩けた笑みを浮かべた。
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