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    bell39399

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    れんごくばんちゃん9日目。ぎぃぎぃ!

    ベンウィックに台所はあるのか…
    あるんですよ。だってバンのおうちだもん!

    バンさんRE:BORNく! 朝、エレインが目覚めた時、隣にバンの姿がなかった。一緒になってからは先に起きて朝餉を用意することなどもあるのでさほど珍しいという訳ではないが、なにせあの姿である。
     でもひょっとしたら、寝て起きたら元に戻ったのかもしれないわね。
     そんな淡い望みを抱きつつ厨房に向かったが、そこにいたのは確かにバンだがやっぱり獣の姿のままだった。
    「おはよう、バン。気分はいかが?」
     エレインが挨拶をすれば振り返り、嬉しそうにギィギィ鳴いて鼻面を押し付けてきた。
    「そうなのね、良かった。……え?」
     気分はいいらしいが、困っているらしい。どうしたのかと思ったが、理由はすぐに判明した。手が大きすぎナイフが持てないのだ。爪の先っぽでじゃがいもをつまんで、もう片方の手の爪でコリコリ皮を引っ掻いている。
    「皮剥きね、任せて頂戴! え、いやあね、出来るわよそのくらい。大丈夫だってば、危なくないってば」
     バンは渋々エレインにナイフを手渡し、穴が空くほど彼女の作業を見つめ、見守った。
     しょり、しょり。
     エレインはバンがいつもしている手つきを真似して、ゆっくり、ゆっくり、じゃがいもの皮を剥く。
     しょり、しょり……
    「……ねぇバン。私、皮付きのお芋も好きなのよ!」
     
     結局、バンが細かい作業ができないので、ちょっと懐かしい食卓になった。最低限の調理。森から摂ってきた木の実たち。
    「ふふっ。最近バンが作る美味しいご飯ばかりだったから、ちょっと贅沢になってたかも。でも、こういうのもたまには面白く感じるね……」
     エレインの脳裏にあの、得難い七日間の思い出がほのかに過る。あの頃は贅沢どころか食糧の摂取さえろくにしないで済んだのだが、バンが来てからは一緒に木の実や彼が作った簡単なスナックを口にしたりもした。
     思えばあれが私とって、初めて口にした【料理】だったわね。
     エレインが少しだけノスタルジックな想い出に浸っている横で、バンは摂ってきたうさぎを丸ごと口の中に放った。
    「うぎ」
    「やっぱり調理したほうが美味しいって? そうね、バンのお料理は最高だものね!」
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    bell39399

    MAIKINGバンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく
    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
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