みんなで一緒に日の出が見たい。
そうキーアが言い出したのは大晦日、あと数時間経てば年が明けるという時間だった。
「突然どうしたんだ?キーア」
キョトリとした顔でそう尋ねるロイドに、なんとなく、とキーアは返す。
そういえば、彼女が来てから、というより支援課が発足してから、みんなでゆっくり正月を祝った事などなかったかと思ったロイドは、ならみんなで明日の朝、見に行こうか、と言い置くと、ランディと共に深夜の巡回に出ていく。年末年始、特に今夜はトラブルも増えるだろうと、広域防犯課から手伝いの要請があったためだ。
後に残った面々は行ってらっしゃい、気をつけてね、と見送ると、日の出を見るためには早く寝ないとね、とキーアを寝かしつけにかかり、彼女も素直にそれを聞き入れる。
そして各々早めに就寝し、翌朝、5時過ぎには全員が仕度を済ませ、1階に集まっていた。
「ねえ、まだ?まだ行かないの?」
「う~ん、…キーア、ちょっと、待ってくれ。……さすがに、眠いな」
「帰ってきたの、2時過ぎだったもんな……」
「お疲れ様、ロイド、ランディも。まだ時間もあるし、温かいスープでも作って朝食にしましょうか?」
「助かる、お嬢。日の出を拝んだら帰ってもう少し寝たいな」
「同感だ。今日は俺たち午前は休みだからな」
「ロイドさんがそのような事を言うのは、少し珍しい気がしますね。まあ、ゆっくり休んでください」
待ちきれない様子のキーアは早くと急かすが、ロイドもランディもあまり寝ておらずぐったりとしている。
そのため、まずは朝食にしようとエリィが提案し、それにランディが乗って一行が支援課ビルを出たのは6時半頃だった。
空はほんのりと白み、しかしまだ日は昇っておらず、日頃あまり見たことのない空に興奮するキーアを宥めつつ、東、港湾区へと向かえば、考えることは皆同じなのか、そこには既に人だかりが出来ている。
「すごいわね。こんなに人がいるなんて思わなかったわ」
「予想外だったな。まあキーアはランディに肩車をしてもらえば、見えるだろう」
「ですね。私たちは、仕方がないので諦めましょうか」
「だな。ほら、キー坊。こっち来い」
「う、うん…」
みんなは見えないのに、自分だけ見るのは気が引ける。
そんなキーアの様子に苦笑する面々に、前にいた人が支援課だと気がつき声をかけてくる。
「おや、支援課の皆さん。お揃いで初日の出を見にいらっしゃったんですか?」
「ええ。こんなに人がいるとは思ってなくて、出遅れてしまいましたが」
「そうですか」
すると彼は周りの人に、ロイド達を前に行かせてあげてはもらえないかと声をかけ始めた。
それに驚いたロイド達は、自分たちが遅く来たのだから、と遠慮するが、周囲の人たちから押されるようにしてやがて一番前までたどり着き、ちょうどその瞬間に日が昇ってくる。
その光景に見惚れていれば、貴方たちがいたからこうしてこの光景が見られるのだ、だから特等席で見て欲しかったと周囲から声をかけられる。
その言葉に、決して自分たちだけの力ではないけれど、頑張って来て良かった、と思いながら、一同は太陽が昇っていくのを見守るのだった。