初めてのバレンタイン 「ティファリア!ハッピーバレンタイン!俺の愛情たっぷりのチョコを受け取ってください!」
前々から取っていた休みの日、リアンは部屋に私を招き入れて早々綺麗にラッピングされたチョコレートをそう言って私に手渡した。
「…リアンから?」
「あったりまえでしょ!俺はもらうより与えたい派だから☆」
ぱちん、とウインクをして言うリアンに思わず笑みがこぼれる。
「…開けてもいい?」
「勿論」
「チョコカヌレだ!」
中から出て来たチョコカヌレ。しかもフェンリル姿のリアンを模してトッピングされた様がとても可愛らしい。
「…食べるのが勿体無いかも」
「そんなこと言わずに食べて欲しいなぁ〜」
甘えるように言うリアンに思わず笑いながら私は鞄の中から長方形の箱を取り出す。
「リアン、私からも」
「…………えっっっっ」
「驚きすぎ」
おかしくて笑うと「だ、だって!」と焦ったような声が飛んできてまたおかしくて笑う。
「てぃ、ティファリア…つかぬことを聞くけれど…」
「うん?」
「これって……ほ、本命…?」
そんなリアンの言葉に思わずため息が溢れる。
「…リアンのバカ」
「ご、ごめっ……んっ!?」
少し腹立ってその唇を塞ぐ。すると少女みたいにリアンは顔を赤くさせた。
「てぃ、ティファリア…!?」
「…恋人なんだから、本命以外の何物でもないでしょ」
「っっっっそ…そう…でした…」
「わかったならよろしい」
その後丁寧にリアンは包みを外し、きらきらと瞳を輝かせる。
「リアンのみたいに可愛くもない普通の生チョコだけど…」
「嬉しい‼︎すっっっごく俺、今一番世界で幸せかも…」
「大袈裟すぎ…」
そう言って笑うとリアンがおもむろに立ち上がる。
「俺、お茶淹れてくる!ティファリアは待ってて!」
「え、ちょっと!」
一人残された事実と去っていったリアンの耳が赤く染まっていたことを思い出しておかしくなって笑う。
(本当…かわいい)
ふ、と笑みを浮かべて耳を澄ませる。リアンの足音が近づいている気配がしたーー。
-Fin-