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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    palco_WT

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    婚姻届けやから大事なひとに一筆もらう小話

    #水王
    waterKing
    #ニョタ
    gnota
    #イコさん
    glycolicAcid

    で、どないなっとん?と大学のラウンジで久々に顔を合わせた隊長に、茶のみ話のように振られ、ぼちぼちでんな、と水上はお約束のフレーズをとりあえず返した。
    「本籍地が大阪《むこう》なんですわ。なんで戸籍謄本を取り寄せ中です。ふたりだけのことなのに、色々とめんどくさいっていうんが正直なところですわ」
    「おまえと王子やったら籍なんてどうせもええと言い出しそうやけどな」
    「同じことをおーじにも言われましたわ。形だけのことならどうでもかまへんですけど、不便なこともようありますからそのあたりは。……どうせだから、ついでに本籍もこっちにしたろ思いまして」
    「ほうほう。とうとう自分もこっちに骨ぇ埋める気になったか」
     そうかそうかとしみじみと、そして嬉しそうに頷く生駒にほろりと笑みをこぼしながら、
    「で、ここで会えたが百年目、というわけちゃいますが、実は今日待ち合わせしてまでイコさんにお願いしたいのが、これなんですわ」
    と水上がさしだしたのは婚姻届けだった。
    「何、おまえ、俺と籍入れたいん?」
    「あんたならそういうボケはさむと思いましたよ。証人、お願いしてええですか」
    「俺でええの?」と彼は自分を指さして、生身ではゴーグルに覆われていない目を大きく丸く見開いた。
    「二十歳以上でしょ、あんた」
    「えええ、理由、それだけ?」
    「……イコさんがええんですよ、言い出したのは王子です」
    「王子が? 隊長やから?」
    「生駒隊が俺の三門《こっち》での家族やから、て」
    「なんかこそばゆいのう」
     こわもての顔をはにかませながら、生駒は婚姻届けを引き寄せ、しみじみと眺め入った。
    「自分の結婚届よりも先なのが気に入らんが、喜んでならせてもらうで。おめでとうな」
    「イコさん時は俺が真っ先に署名させてもらいますわ」
    「おう楽しみにしとってや」
     予定はないがな、とからからと笑った。
    「ところでもうひとりは誰に頼むん?」
    「俺は弓場さんにお願いしたらって言ったら、あいつ妙に恥ずかしがるんですよ。なんでか知りませんが。だから蔵っちか羽矢さんちゃいますか。それか忍田さんとか」
    「俺らほんま世間狭いのう」
     笑いながら生駒は、筆のほうが相応しそうな豪放で尚且つ流麗な、剣筋を思わせる筆致で証人欄に生駒達人、としたためた。
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    MAIKING婚姻届けやから大事なひとに一筆もらう小話で、どないなっとん?と大学のラウンジで久々に顔を合わせた隊長に、茶のみ話のように振られ、ぼちぼちでんな、と水上はお約束のフレーズをとりあえず返した。
    「本籍地が大阪《むこう》なんですわ。なんで戸籍謄本を取り寄せ中です。ふたりだけのことなのに、色々とめんどくさいっていうんが正直なところですわ」
    「おまえと王子やったら籍なんてどうせもええと言い出しそうやけどな」
    「同じことをおーじにも言われましたわ。形だけのことならどうでもかまへんですけど、不便なこともようありますからそのあたりは。……どうせだから、ついでに本籍もこっちにしたろ思いまして」
    「ほうほう。とうとう自分もこっちに骨ぇ埋める気になったか」
     そうかそうかとしみじみと、そして嬉しそうに頷く生駒にほろりと笑みをこぼしながら、
    「で、ここで会えたが百年目、というわけちゃいますが、実は今日待ち合わせしてまでイコさんにお願いしたいのが、これなんですわ」
    と水上がさしだしたのは婚姻届けだった。
    「何、おまえ、俺と籍入れたいん?」
    「あんたならそういうボケはさむと思いましたよ。証人、お願いしてええですか」
    「俺でええの?」と彼は自分を指さして 950

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    palco_WT

    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454