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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    さよなら大好きなひと

    三門市を出ていく水上と残されるおーじちゃん♀
    プロットとして手を入れていたんですが、書き上げる棋力じゃないや気力がなさそうなので。

    #水王
    waterKing
    #ニョタ
    gnota

     うっすらと予感みたいなものはあった。
     イコさんが大学卒業と同時に実家へと戻り、当然ながら生駒隊が解散することになって―水上隊として再編するかという話もあったがそれは当人が断り、現在はオッキーと海くんは別の隊に所属して生駒隊で磨いたその腕を存分にふるっている―、遠からず彼もこの街から去ることになるのではないかという予感。
     当たらなくても良かったのに、と王子は、すまん、と膝を正して畳に額をこすりつけるようにして土下座をする赤茶けたブロッコリーをただ見やるしかできなかった。
     水上もボーダーを辞めて、三門市を出ていくのだと言う。まるでかつての隊長の背を追うように。
     トリオンの減衰なんていう、ごくごくあり触れたつまらない理由で。
    「使いものにならへん駒は駒台にかて不相応や」

    →ちょっと前に時間戻る。
     王子隊作戦室:作戦会議が終わって。
    「ぼくとみずかみんぐってどういう関係に見える?」
    「どういう関係も何も恋人同士だろ」
     麗しの隊長の問いに、何を今更とばかりに呆れたというよりは怪訝そうに蔵内は告げた。
     一週間の大半を彼の部屋で暮らし、キスやハグをしている姿もキャンパスで見かけていたのだからそれも当然だろう、と王子だって思う。でも、一緒のベッドで寝ていても「眠る」以上のことはしたことがないと言ったらどんな顔をするだろうか。肝心かどうかは知らないが、未だに水上と王子はいわゆる一線を越えていない。高校の三年間、そして大学の四年を経ても尚、である。
     みずかみんぐは、ぼくのこと、本当に好きなのかな。

     そんな中、樫尾が二十歳の誕生日を迎える。
    「樫尾は海クンと一緒になるの?」
     そんなこと、まだ、考えてないですよ、とはにかむ隊の末っ子に少しだけほろ苦さと羨ましさを感じる王子。学生だからと余り身を飾ることをしなかった樫尾の指には真新しい指輪が飾られていて。
     あれは、ぼくにはとうとう与えられなかった幸せと約束のしるし。
    ←以上

     何の約束も飾られなかった指をぎゅっと膝の上で握って、王子は問う。
     もうあらかた片付いてしまった水上の部屋で。残されたのはずっと使ってきた古いちゃぶ台と、冷蔵庫や洗濯機や炊飯器などの家電。引っ越し先にはもっていかずにこちらで処分すると言う。
     ぼくみたいに、置き去りにされるのだ。
    『ぼくに、ついてこいとは言ってくれないのかい』
     喉まで出かかった言葉だった。しかしその問いは王子のプライドが呑み込ませた。だが放たれなかった分だけ体の深いところに落ちていき、臓腑を焼くかのようだった。
    「分かった。……それで、いつ? いつ、きみは三門市を出ていくんだい」
    「退役届が受理されて、記憶封印措置を受けてからになるから、たぶん、再来週くらい、には」
    「そう」
     今はフリーの正隊員とはいえ、それなりの立場にある以上組織の性質も鑑みれば、「辞めます」「はいどうぞ」というわけにもいかないわけで、少し前に例えばC級射手の育成から身を引いていたように、少しずつ水上は身辺整理をしていたのだろう。気がつかなかったのは、王子が目が眩んでいたから以外の理由なんてなかった。恋、というしごく単純で愚かで尊いものの。
    「大阪に、戻るの?」
    「実家に帰るつもりはあらへんけどな。ま、いちからっていうのも億劫やし、土地勘があるところがリスタートにはええ思うから、あのあたりをとりあえずの起点にはしようとかは考えとる」
     だったらさ、ひとつお願いがあるんだ、と王子。
    「この部屋、ぼくが、使っていいかな。ぼくが、このまま借りたい。ボーダーでやっていくには実家より便がいいし、改めて部屋を探すより……何年も暮らしたここが、やっぱり、楽、だし。もし、後に入居する人が、決まってない、な、ら、ぼくが、住む。住ませて」
     つっかえつっかえになる声が悔しくて、ただ悔しくて。こんなのちっともぼくらしくない。
    「分かった、大家はんに訊いとく」
    「あとひとつ、あとひとつお願いがある」
    「……なんや。俺に出来ることなら聞いたる」
     一晩だけでいい。ぼくを、きみのものにしてよ!
     ぽろぽろと、ぽろぽろと涙を伝わせる白くなめらかな頬に掌を寄せて、水上は囁いた。
    「それをしとうなかったから、俺は出ていくんや。……おーじは、俺なんかには勿体なさ過ぎる」
    「もっといい人を見つけろ、なんて言ったら……殺してやる」
     それもええかもな、と言いながら、三門市を去っていく男は自分にとってはこの世界で誰よりも誇り高く麗しい女の身体を組み伏せた。


     寝てるみずかみんぐの指のサイズをこっそり測って、出発の日に電車の扉が閉まる寸前、遊真がグラホでガレキ当てたみたいに顔面に向かって王子ちゃんは水上の薬指サイズの指輪(ケース入り)をぶん投げて渡すことになると思います。
     いつか絶対に戻ってきやがれ!!!来なければこっちから押しかけてやるからね!!って中指の代わりに薬指おっ立てて。


    ⇒どこかにねじ込みたい、水上の出立を知って、居酒屋だか宅のみで蔵内に絡み酒をする王子ちゃん。
    「きみと寝ちゃうのはたぶん簡単なことだけど、だからしたくない」
     きみはぼくにとって大事なひとだから。みずかみんぐとは別の意味で一番大事。
    「……おまえは残酷だな」
     酔い潰れた王子の髪をそっと撫でながら、蔵内はほろ苦い笑みを浮かべた。
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    palco_WT

    DONE遠征選抜の説明会後のみずかみんぐとおーじちゃん♀(半同棲)「お風呂いただいたよ、ありがとう」と脱衣所から出てきた王子は、オーガニックコットンのパジャマに、色白の肌がより生えるオフホワイトのカーディガンを羽織り、頬やうなじを淡いバラ色に上気させて何とも愛らしい風情で、畳の上に座りこんで遠征試験に関しての要綱に目を通していた水上の背中に、もたれるようにして膝を抱えて腰を下ろした。
     柔らかい背中の感触と、ふんわりとまとった甘い香りにもすっかり馴れてしもうたな、と水上はぼんやりと思った。今は湯にぬくめられた温かさとシャンプーの匂いにも包まれているけれど。
    「ねえ、みずかみんぐ」
    「なんや、二番隊隊長」
    「そう、それさ」と王子は背中合わせのまま、水上の片腕に自らの片腕を絡ませた。
    「きみはてるてるやカシオに水上隊長って呼ばれるのかい?」
    「……さあ。別にどう呼ばれたいとか全然考えてへんかったわ。実際、生駒隊《うち》かて『生駒隊長』ちゃうて『イコさん』やし。自分とこはどうなん」
    「王子隊のこと? それとも臨時隊のほう?」
    「王子隊」
    「そう言えばぼくもそう呼ばれたことは身内からはないな。ハッパかけてくれる時の弓場さんとか、実況の時くらいだね」
    「せやっ 5021

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    MEMO水王ちゃん♀一泊二日フェリーの旅ドラの音は出航の合図ではなく、出航時間が近づいたので船客と乗組員以外は船から降りろという意味だと聞く。聞きなれないその音が響いた数分後、控えめで上品な案内の声が改めて港から経つことを知らせた。
     奮発しただけあって、自分の古びたアパートなどよりも遥かにたっぷりとした広さと居心地の良さで出迎えてくれたスイートルームの客室の設備を確認していた水上は、手首の時計をちらと確認した。予定時間より三分遅れだ。
    「出航だって、みずかみんぐ」
     アナウンスを耳にした王子はぱっと顔を輝かせ、良人たる水上の袖をじゃれる仔猫がひっかくようにくいくいと引いた。
    「どうせなら港を離れるところを外で観ようよ」
    「外がええなら、そこからプライベートバルコニーに出れるで? スイートの特典やで」
    「もう、きみってばそういうんじゃなくてさ! いいからほら、さっさとカードキー持って」
     水上が扉の内側に挿したカードキーを手に取るのを確かめてから王子は、問答無用とばかりにその腕に自らの腕を絡めると、引きずるように船室を出て行った。はしゃぐ王子にこれだけは、と水上は手荷物の中からマフラーを何とか掴んで、その首と頭をぐるぐると巻 1390

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    MAIKING婚姻届けやから大事なひとに一筆もらう小話で、どないなっとん?と大学のラウンジで久々に顔を合わせた隊長に、茶のみ話のように振られ、ぼちぼちでんな、と水上はお約束のフレーズをとりあえず返した。
    「本籍地が大阪《むこう》なんですわ。なんで戸籍謄本を取り寄せ中です。ふたりだけのことなのに、色々とめんどくさいっていうんが正直なところですわ」
    「おまえと王子やったら籍なんてどうせもええと言い出しそうやけどな」
    「同じことをおーじにも言われましたわ。形だけのことならどうでもかまへんですけど、不便なこともようありますからそのあたりは。……どうせだから、ついでに本籍もこっちにしたろ思いまして」
    「ほうほう。とうとう自分もこっちに骨ぇ埋める気になったか」
     そうかそうかとしみじみと、そして嬉しそうに頷く生駒にほろりと笑みをこぼしながら、
    「で、ここで会えたが百年目、というわけちゃいますが、実は今日待ち合わせしてまでイコさんにお願いしたいのが、これなんですわ」
    と水上がさしだしたのは婚姻届けだった。
    「何、おまえ、俺と籍入れたいん?」
    「あんたならそういうボケはさむと思いましたよ。証人、お願いしてええですか」
    「俺でええの?」と彼は自分を指さして 950

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    MOURNINGさよなら大好きなひと

    三門市を出ていく水上と残されるおーじちゃん♀
    プロットとして手を入れていたんですが、書き上げる棋力じゃないや気力がなさそうなので。
     うっすらと予感みたいなものはあった。
     イコさんが大学卒業と同時に実家へと戻り、当然ながら生駒隊が解散することになって―水上隊として再編するかという話もあったがそれは当人が断り、現在はオッキーと海くんは別の隊に所属して生駒隊で磨いたその腕を存分にふるっている―、遠からず彼もこの街から去ることになるのではないかという予感。
     当たらなくても良かったのに、と王子は、すまん、と膝を正して畳に額をこすりつけるようにして土下座をする赤茶けたブロッコリーをただ見やるしかできなかった。
     水上もボーダーを辞めて、三門市を出ていくのだと言う。まるでかつての隊長の背を追うように。
     トリオンの減衰なんていう、ごくごくあり触れたつまらない理由で。
    「使いものにならへん駒は駒台にかて不相応や」

    →ちょっと前に時間戻る。
     王子隊作戦室:作戦会議が終わって。
    「ぼくとみずかみんぐってどういう関係に見える?」
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     麗しの隊長の問いに、何を今更とばかりに呆れたというよりは怪訝そうに蔵内は告げた。
     一週間の大半を彼の部屋で暮らし、キスやハグをしている姿もキャンパスで見かけてい 2210

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    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454

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    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983