初めてあれを見た時のことを未だに覚えている。心酔していた本居梅次とはまた違う、力のある文面。まだ自分の魅力に気づいてない、この原石を輝かせてみたい。そんな欲に駆られたのはそう遠くない過去のことだ。
「すみません、お待たせしました!」
「全くだな」
額に汗を浮かべながら焦った様子で駆け寄ってきた高杉にひとつ嫌味をこぼしてやる。すると、彼は苦笑いを浮かべ隣に腰を落ち着けた。
「酷いですよ、編集長。僕が忙しいのわかってるでしょう?」
「やかましい。それに、俺はもうお前の編集長じゃない。全く、うちの先生を持っていきやがって……」
「僕の先生でもありましたよ〜。なんたって担当でしたし、うちの子も先生のお気に入りですしね〜」
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