歪んだ想い「きーよーまーろー、起きろー!」
毎朝繰り返される光景。もう何度目だろうか。顕現してから数年は経っているだろうから両手では足りないと思う。寝起きの悪い僕を彼はいつも通り起こしてくれる。僕と違って水心子は規則正しい。人間で言うところの早寝早起きを実践している。なので夜は寝るのが早い。寝顔を見れるのは嬉しいけどちょっと寂しい。
「水心子、おはよう」
「おはよう。清麿。」
朝の挨拶をして食事の場所に向かう。なんてことの無い光景。そういつも通り。今日は確か戦闘訓練と身体検査が入ってた気がする。戦闘訓練は気にならないけど、あぁ、でもちょっと心配。水心子は戦闘訓練が苦手らしい。敵をただ斬るだけなのに。どこかで聞いた話を思い出す。
「水心子は優しすぎる」
その優しさを僕は長所だと思う。ただその優しさは戦闘では命取りになる。ただここ最近は気合が入ってるというかなんというか。水心子なりに苦手を克服するように頑張っているんだと思う。なのでココ最近の彼の評価は最低ランクの不可から可に変わった。優に変わるのも時間の問題だと思う。
「清麿、ごめん、僕、油断してて」
「気にしないで。これは僕の自業自得だから」
戦闘訓練が終わって僕達は医務室にいた。理由は僕が戦闘中に負傷したから。手入れをすれば簡単に治るけど、僕はそれを拒否した。これもいつもの事。水心子が泣きそうな顔をして僕に謝ってくる。大丈夫だよなんて言いつつもそんな彼を見て僕の心の中は優越感で満たされていく。
今回の怪我はほんとに偶然。僕はいつの間にか歪んだ想いを水心子に抱くようになっていた。
水心子は優しい。自分のせいで僕が怪我をしたと知ったら罪悪感を感じてしまう位に。だから僕は彼の優しさを利用する。彼を僕でいっぱいにして離れられないよう追い詰めていく。コップに注がれた水が溢れるまであともう少し。