夜霧より未定
咳き込み続ける浮竹をどうにか抱えて裏路地に入る。この辺りのはずなのだがと地図を見返すが何しろ勝手の分からぬ異国の地、読み方が合っているかどうかさえ不安で、さりとてこの格好で人に聞いて回ることもできず表音文字の並びに目を凝らしながら進むしかない。応急の薬が効いてもなお浮竹の肺は暴れている。然もありなんと睨み上げた空は濁った色をしていた。東梢局の何もなくただ広く山にさえ滲むような空はない。
「ああ、もう。何が挨拶さ……!」
吐き捨てること何度目か、置いて行けと訴える視線を無視すること数十分、ようやく目当ての通りに辿り着いて指定された通りに何故か水を撒き散らす装置を見つけた。なんでまたと見遣れば浮竹は最早難所を通り越していて虚な目でそれを見ている。
1983