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    つつ(しょしょ垢)

    @strokeMN0417
    げんしんしょしょ垢。凡人は左仙人は右。旅人はせこむ。せんせいの6000年の色気は描けない。鉛筆は清書だ。
    しょしょ以外の組み合わせはすべてお友達。悪友。からみ酒。
    ツイに上げまくったrkgkの倉庫。
    思春期が赤面するレベルの話は描くのでお気をつけて。

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    POIPOI 41

    未来捏造型モブ視点ショショ。
    モブを草国の人にすると驚きの言い回しのめんどくささ。(草国への熱い風評被害)

    ##小話

    石癒石癒

    その日その洞窟に辿り着けたのはクラクサデビナリの思し召しに違いないと感謝の祈りを捧げずにはいられなかった。

    故郷スメールを離れて幾数年、因論派の学者として名を上げんと隣国璃月の歴史を研究し続けるも三千年を超える歴史は簡単に紐解けるものではない。モラクス、おっと、璃月の礼儀に倣うなら岩王帝君を始めとして仙人、七星、魔神戦争と興味は尽きないものの、それらを全て研究していてはそれこそ岩王帝君の寿命が必要だろう。
    そんな彼はすでに数百年前に高天に昇ったが、いやはや人々の心の中にはいまだ生き続けているようで、研究者としては彼にまつわる物語が尽きないというのは幸いなことだ。
    年月が経つにつれ否応なしにも変遷していく物語がどれほど史実と乖離していくのか、研究のテーマとしては悪くはないがいかんせん先にも言った通り膨大すぎる。論文として提出するには研究費も寿命も足りない。
    そこで私の心をスメールから璃月に吹き飛ばす原因となった一冊の書、『空遊餓鬼布施法』の史実との解離性及び信憑性をテーマに絞り込み、単身璃月に乗り込んだのである。

    とある一人の夜叉が業障という謎の苦しみを抱えながらも璃月を護りぬいている。

    幼心にも感動したものだがそもそも業障とは 何故一人なのかとも幼心に疑問を抱き、璃月歴史学を選考するも夜叉、仙人と言った概念はすでに過去のものであり、そもそも存在したのかさえも怪しいなどと言われる始末。
    現在の璃月には数人の半仙がいるぐらいで、仙人はすでに俗世との関わりを断っている。凡人が会いに行くのはかつて仙人が俗世に関わりを持っていた頃よりも難しいだろうと。
    それでも何かしら足跡があって然るべき。何せ岩王帝君は歴史の神でもあるのだから

    と意気揚々とスメールを発ったものの、現地の歴史書を紐解いたとて夜叉に纏わる話は少なく、人々に話を聞いても仙人はもはや璃月をどこかで見守っているだろうぐらいの感覚で、かつて仙人が住んでいたらしいという住処を死に物狂いで尋ねてみるももぬけの殻、キングデシェレトの遺跡でもまだ碑文の一つや二つが見つかるというのに何もない。石碑はあっても詩文めいた言葉が二、三行。訳してしまえば立入禁止としか意図を組めないものが多く、凡人が迂闊に仙人の世界に立ち入らないよう戒めているだけのようだ。
    神の目を持っていないから何も見えないのだろうか しかし神の目を持つ冒険者を雇うには研究費が危うい…。
    さらにはようやく面会の約束を取り付けた七星の秘書という女性がいうには、件の夜叉はすでに数百年前に消息を絶ったというではないか。
    その夜叉に会えれば一気に研究が進むと思っていたがそこまで甘くはなかった。秘書に夜叉の詳細を尋ねようとしたが、彼のことを話すのは彼の意思に反すると頑なに…どこかしら幼子が親に叱られるのと同じような幼稚な怯え方で話を切り上げられてしまった。数千年を生きるという仙人の、正確には彼女は半仙らしいが、それには似つかわしくない振る舞いだ。もしかすると彼とそういう契約を結んでいるのかもしれない。

    しかたなく地道にかつて夜叉の生き残りがいたという望舒旅館での聞き込み、周辺でかつて夜叉に助けられたという逸話を拾い集め、地図に印をつけていくこと数年、研究費を節約するために冒険者たちから寄せられる歴史書を解読してやり小銭を稼ぐ日々。もっともこれは情報収集もできて一石二鳥でもあった。まぁたいていは何気ない日記や書付のようなもので宝の地図なんてものはない。激高した冒険者をなだめる話術もなんだか板についてきた。

    そんなある日、望舒旅館名物の杏仁豆腐を流し込みながら地図を眺めていると、印の奇妙な集合に気づいたのだ。
    助けられた、姿をみた、その集合体が次第に軽策荘の北西に偏り…消えた。そんな感じがした。
    妙な胸騒ぎがして一気に杏仁豆腐を飲み込むと支度もそこそこに軽策荘へと向かった。

    軽策荘の北西。滝のわきに洞穴があり、地元の人に聞いてみると過去に岩王帝君が螭を封じたという神聖な地であり同時に忌むべき洞窟でもあるため滅多なことでは近づかないらしい。それ幸いと宝盗団が入れ代わり立ち代わり根城にすることも多く、定期的に千岩軍が見回りに来るが、ここ数年は宝盗団も居つかず、千岩軍も遠目に魔物が住み着いていないかを確認する程度だとか。
    宝盗団も魔物もいないなら幸いと、まあ、螭の呪いというかそれこそ業障…幼き日には理解できなかったが学者の道を志してからは多少なりとも学んだのだ…生あるものへの執念、怨念に巻き込まれる可能性は否めないが、宝盗団が根城にするぐらいなら雨露が凌げる程度の何もない洞窟なのだろう。

    そして冒頭に戻る。

    私の目の前には木の根に包まれた巨大な石珀が宙に浮かぶようにしてあった。ゆうに大人二十人がかりでようやく囲めるだろうかという大きさだ。太陽の光が洞窟の天井の僅かな隙間からしか差し込まないというのにうっすらと黄金色の光を放っている。
    学者が勘などという目に見えない、立証もできないものを根拠にするのは低俗極まりないが、私にはこれが消えた最後の夜叉に纏わるなにかだと思えて仕方がなかった。
    ふらふらと吸い込まれるように前に前にと進むと突然男の声に呼び止められた。
    すわ宝盗団かと情けない悲鳴を上げると、男は驚かせるつもりはなかったと非礼を詫びてきた。
    ゆっくり冷や汗を感じながら振り返ると、いつの間にか長身の…そう、私とてスメール人の平均よりは背が高いと自負していたがそれより拳一つは優に高い、見下ろされるなど久々の感覚に素直な劣等感に襲われるような男がいた。
    レンズの厚いメガネにぼさぼさの長い前髪が表情を消している。本を片手にしているのが場にそぐわない。
    こちらを値踏みするようなわずかな首の動きに不快感を感じるが、それ以上に不思議と喉の奥を締め上げられるような威圧を感じていた。
    「すまない。その姿、スメールの学者殿とお見受けする。てっきり宝盗団があれを傷つけに来たのかと用心してしまった」
    緊張感が一気に緩み、男は柔和な笑顔を向けてきた。とはいえぼさぼさ前髪のせいで今一つ感情が測れない。
    「いや、こちらこそ、その、無断で 入ってきた…ということになるのだろうか 軽策荘の人たちはここに人がいるとも、こんな石珀があるとも言っていなかったので…」
    やましいことは何もないのだが、一般に学者が物事に首を突っ込むと嫌がる人間は少なくない。民俗学の研究ともなればよくある話だ。謂れを調べるために立ち入った場所が地元の人間にとって特別な日の特別な人間しか入ってはならない場所だったために追い出されたなんて同僚の話は尽きることないし、同時に学者の面汚しでもある。
    謂れには根拠があるもの、意味があるもの、無意味どころか害悪ななど様々だが、ひとまず地元の民が大切にしてきた想いは尊重すべきものである。
    と、まぁ、そんな面汚しになってしまったやもと…背中にたらたらと汗が流れる。
    「ああ、ここは俺の一族が代々密かに守っている場所で、軽策荘の人たちにもあまり知られていない。もとより螭の業障を畏れて近づこうともしないから、案外俺がここにいることも知らないかもしれないな」
    声の感じからすると自分より少し年若い感じで…身なりは清潔感と、それこそ学者然とした整ったもので、こんな洞窟で過ごすには場違いな雰囲気…いや、「宝物を守る」という点においては驚くほど似合っているような気もする。
    何せ完全に場を掌握されている。これはかつて卒論審査会に呼び出されたときのような、研究費申請のために賢者に呼び出された時というかそんなときの緊張感に似ている。何者なんだこの男は。
    「だ、代々あの、その大きな石を守っていると…その、どれくらい…」
    冷静さを取り戻そうと、頭に浮かんだ疑問をそのまま口にした。もう少し練った質問がしたかったのだが学者として情けない限りである。
    「記録によれば458年、俺で9代目だな」
    いつの間にか青年は洞窟の隅にあるテントの下で読書を始めていた。簡素なテーブルに上に置かれたランプが男の横顔を照らす。ぼさぼさ前髪の下に生える鼻はすっと通っていて、姿勢もまるでモデルのようによい。いわゆる美青年の素質があるのかもしれない。ぼさぼさ前髪がすべてを台無しにしているが。
    「その、あなたはここでずっと…」
    「日がな一日、本を読んでどうやって生活しているのか」
    心を見透かされた。というか当然だろう。巨大な石を見ているだけで人間生活はできない。そんなことできるなら私だってとっくにやっている。
    「なに、貴殿と同じく学者だ。本を数冊出版して幸い多くの人々の目に留まり、飛雲商会からもらう印税で生活できている」
    なんて羨ましい…いやいや、印税生活を夢見ていないといえば嘘になるが、それほど人々の注目を浴びるような研究を発表できているという事実に単純に嫉妬してしまう。
    同じ学者という身分に、それもちょっと自分より先をいく生活をしているという嫉妬に煽られて平常心どころか競争心もむくむくと沸いてきた。
    「本を出されているとは、私も一介の学者、分野が異なるかもしれませんが研究書とあれば一度はお目にかかったことがあるかもしれません。名前をお伺いしても」
    「研究書とは一言も言っていないな。俺が出したのは演劇の台本だ。スメールでもたびたび公演しているが雅号を使っているから本名を名乗ったとてお分かりにはならないだろう」
    揶揄うつもりは全くないない、至極真面目な回答。知論派の賢者を彷彿とさせる。
    半笑いで返答するのが精いっぱいで、それよりも肝心なことを聞かねばならないという使命感を頑張って奮い起こす。
    「ところでこの石はいったいなんなのでしょう。ああ、わたくしはスメールのヴァフマナ学院所属の学者で璃月には夜叉の研究のために来たのです。『空遊餓鬼布施法』という本をご存じでしょうか。あれは璃月ではあまり流行らなかったようですがスメールではそれなりに流布しておりまして、こちらの史実性について多少なりとも研究している身でして…」
    名状しがたい不安に押されてつらつらと語ると、青年は形の良い顎をひと撫でし本を傍らの簡素なテーブルの上に置いた。
    「その夜叉の物語はいくつもある。しかし史実通りに的確に記述された書は残念ながら存在しない。何故なら夜叉の最期はすべてが悲惨なものであり、巻き込まれた人間がその記録を残すことを良しとせず、夜叉自身も望まなかったからだ」
    青年の言葉は一度も聞いたことがない「事実」だった。それゆえに体が震えるほどの衝撃を受けた。どんな璃月の歴史学者だってそんなことは言っていなかった。この青年は…本物だ。
    「し、しかし、夜叉が望まない、記録がない、ないことを証明とはすなわち悪魔の証明とはいうやつです。あなたはなぜそのような理論にいたったのか。ぜひこのような場所ではなく、表の、軽策荘の茶室を借りましょう 少しお時間を、ああ、タダとは言いません。ご入用であれば情報提供料としていくらかのモラは…」
    興奮して早口になる私をなだめるように男はすっと手を挙げて制した。
    「申し訳ないが、そろそろ約束の刻限なのだ」
    「あ、ああすみません。先約があったのですね。でしたら後日改めて」
    「申し訳ない」
    青年はすっと私の横を通り過ぎた。私の熱意を真っ向から無視されたようで、多少の苛立ちを覚える。
    「あなたも学者なら、少しぐらいは私の話を聞いていただいても…」
    振り返ると、目に留まったのは青年の後ろ髪…思ったよりも長く腰まであったそれは先端が…石珀色の輝きを宿していた。
    再び私は喉の奥を締め上げられるような威圧を覚えた。

    ここにいてはいけない、見てはいけない、触れてはいけない。
    クラクサデビナリよ、どうかお守りください。
    異郷の地で私は禁忌に触れてしまったのでしょうか…

    「異郷の学者よ」
    青年の声に我に返る。
    気が付くと、そこには何もなかった。
    そう、何もなかったのだ。
    あの巨大な石珀が、消えている…
    「すまないがこれから俺は待ち人と過ごす時間を取りたいのだ。貴殿との話ができるのは…うむ、数十年か数百年後か」
    「〇〇様、凡人はそれほど待てませんよ」
    凛とした少年の声が誰かを呼んだようだったが、よく聞こえない。だが青年を呼んだことには間違いないらしく、ははっと苦笑い一つ残して青年の姿が掻き消えた。

    何も、なくなった。
    あの青年は そしてあの少年の声はどこから
    足元に転がる小さな石珀だけが私を現実に留めた。慌ててそれを握り締めると洞窟から逃げるようにして飛び出した。

    己の身に降りかかったことがあまりにも現実離れしており、理論で説明つかないことに心が持ちそうになかった私は藁にも縋る思いで草神様をお尋ねすることにした。石珀とともに、理路整然とは程遠くそれでも顛末を事細かに数十枚にわたるレポートとして提出したのが功を奏したらしく、帰国してわりと早い段階でお目通りが叶った。
    「あなたが会ったのはおそらくだけど仙人ね。残念だけどこれ以上のことは私にも言えないの」
    契約だから、というあたりさすが契約の神の使いたち。仙人といえどもそこは譲らないのか。
    「言える範囲でというのなら…その洞窟にいた青年が仙人で、身分はあなたを警戒させないためにその場でついた嘘ね。石珀の中にいたのも仙人で青年の仲間。彼の傷を癒すために、私も少しお手伝いしたの」
    「クラクサナリデビ様が」
    「そう。石珀の仙人は普通では癒せない傷を負っていて、数百年前に斃れそうになったの。でももう一人の仙人がどうしてもそれだけは防ぎたくて、傷が癒えるまで封じることにしたの。私やほかのひとたちの力を借りてね。傷が癒えたから、二人ともその場を去ったのではないかしら」
    はぁ…と気の抜けた返事をしてしまった私に、草神様はとても愛らしい笑顔を向けてくれた。
    「あなたの書いた報告書、もう少しまとめれば十分に次の学会のレポートとして通じるわ。『空遊餓鬼布施法』がどうして史実と乖離してしまったのか。璃月に史実通りの夜叉の史書がないのか、ないことの証明について触れた記述は教令院の記録にないことよ」
    頑張って、と握りこぶしを作られては私も張り切るしかないだろう。
    少なくとも私は現在璃月の表舞台に出ない仙人と接触したのだ。これはほかのどんな学者たちにも真似できまい。そう思えばふつふつと自信が湧いてきてその足で私は原稿用紙と新しいインクを買いに出かけたのだった。


    「こんな感じでよかったかしら」
    「十分だ」
    鈴を転がすような愛らしい声に、重々しくも凛然とした声が応える。
    「あなたほどの知略の持ち主でも誤ることがあるのね」
    影から現れたのは先ほどの青年だった。しかし不揃いに垂れ下がっていた前髪はどこにもなく、代わりに整えられた前髪の下にある先の石珀の如く美しい双眸と精悍な顔つきは美丈夫と言って差し支えない。
    こてんと首を傾げる草神の仕草に敵わないなと言わんばかりに笑う。その雰囲気には先の偽りの姿である若輩の学者などという言葉では足りない老成さがにじみ出ていた。
    「もう少しちゃんとあしらうつもりだったのだが、学者殿の学問への熱意と夜叉の話をされてすこし揺らいでしまった」
    「揺らぐことなき千岩をも揺るがす一陣の風。彼はもう元気なの」
    すっと草神の前に籠いっぱいのナツメヤシキャンディが差し出される。
    久方ぶりに見た元岩神の想い人の変わらぬ美貌に草神は花がほころぶように笑った。
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