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    柚月@ydk452

    晶くん受け小説

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    柚月@ydk452

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    ミス晶♂短編

    ミスラが晶くんにマナ石を食べさせる話

    #ミス晶♂
    #ミスラ
    mithra
    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #魔法使いの約束
    theWizardsPromise

    冷たい温度冷たい温度

    「今晩は、眠れそうな気がします。」
    夕食後、談話室で晶の膝を枕に、ソファでごろりと寝そべっていたミスラが呟く。晶がその柔らかな髪を梳く度に、目を細める彼はまるで猫のようだ。
    今この部屋には、二人しかいない。そのせいかいつもより静けさを感じるが、不思議と気まずさはなかった。もう短くもない時間を共に過ごしているお陰だと、そう思いたい。
    晶はミスラの言葉に、視線を賢者の書から動かす。
    「それは良かったです。もう部屋に戻りましょうか?」
    「俺は別に、ここでも良いですけど。」
    「駄目ですよ。ちゃんとお風呂に入って、着替えて寝た方が、絶対気持ちが良いです。」
    「面倒だな…。」
    魔法一つで、体を綺麗にすることも、着替えることも容易いが、今はそうした気分じゃないらしい。うだうだと晶の膝の上でごねる彼だったが、ようやく身を起こす。
    「今日は、ミスラの部屋に行きますから。」
    「そうしてください。あなたの部屋は、悪くないですけど、すぐ誰か来そうで落ち着かないんですよ。」
    「それはすみません…。」
    「さっさと準備して、来てください。」
    ミスラの催促に、晶も慌てて書類を片付ける。これは急いで、就寝準備をしなければならない。それじゃ、と立ち去るミスラを見送ると、晶もまた自分の部屋へと帰っていった。



    「ミスラ?いますか?」
    こんこん、とミスラの部屋のドアを叩く。廊下は静まり返り、部屋の主人は顔を出さない。それほど大きな声ではないものの、気配に敏感な北の魔法使いならば気付くはず。
    気が変わって、散歩にでも行ったのだろうか。あるいは、厄災の傷そのものが、奇跡的にも緩和されたのか。
    部屋の前でうんうん唸る晶だったが、このまま悩んでいても仕方ない。
    くるりと踵を返そうとした、その時。

    ーパキンッ。

    何かが割れる、音がした。
    よくよく耳をすませれば、ガリッと噛み砕く音も続く。それは、扉の向こうからだ。
    そっと触れたドアが、まるで晶を迎えるかのように、キィ、と開いていく。

    「…ミスラ」

    無造作に開かれたカーテンの隙間から、大いなる厄災が顔を覗かせている。
    暗闇にも関わらず、晶の目はミスラを捉えていた。溢れる月光に照らされて、彼は窓枠に腰掛けている。ただそれだけなのに、抗い難い魅力を放っていた。その指先がぴくりと動くと、彼はようやく晶の方へと顔を向ける。
    「…遅いですよ。」
    不機嫌そうに呟き、戸口に突っ立っていた晶をぐいっと引き寄せる。背後で閉まる扉の音で、ようやく晶は現実に引き戻された。
    「す、すみませ…うわっ。」
    「あぁ、良いですね。温かいと、よく眠れそうです。」
    風呂上がりだった為か、いつもよりも高い体温に満足したらしい。そのまますりすりと晶の首元へと、顔を寄せる。
    いつものように抱きかかえようとして、晶はふとその口元に目を見遣った。
    先程聞こえてきた音の正体について、何故かふと、気になった。
    「ミスラ、さっき、何かを食べていましたか?」
    「はぁ、マナ石ですけど。」
    至極当然のように返された答えに、晶は沈黙した。魔法生物、あるいは、魔法使いの成れの果て。彼らはそれを糧にして、生きている。
    それが、ただの人間である晶との、相違点。
    返答のない晶に、何を思ったのか。
    「あなたも、食べたいんですか?」
    「へ?いや、その、人間は食べられないはずなんじゃ…。」
    「はぁ、そうでしたね。でも、味見くらいなら、してみます?」
    「え、味見…?」
    ポケットの方にごそごそと手を遣ると、ミスラは晶の上に覆い被さる。いつの間にか、晶は彼を見上げていた。長い手足はまるで檻のように晶を閉じ込めていて、眼前には端正な顔立ちが迫っている。
    その口元には、煌めく石が半分顔を出していた。
    「ふぁい、ほうほ。(はい、どうぞ。)」
    「あ、待っ…!?」
    戸惑う晶の口に、冷たい石が、差し込まれた。
    味も匂いもない、ただの異物に、拒否反応を示すのは必然だろう。
    だが晶は、舌がその存在を確かめる前に、別の事に意識を持って行かれた。
    やわらかな温もりが、唇に当たっている。
    本人は味見なんて称しているが、まごう事なきキスだ。マナ石を介して、ミスラの口付けは角度を変えながらも続き、終わらせることができない。5秒、10秒と経った頃から、数えるのをやめた。

    やがて唐突に、二人の温度に染まった石は、ミスラの舌に絡め取られる。

    パキンッ、と乾いた音が、また響いた。

    「味見、できました?」
    「…はぁ、もう、十分です…。」
    息も絶え絶えにそう呟く晶を、ミスラは常と変わらず気だるげな表情で見下ろした。月光に煌めくマナ石は、もうない。
    けれど唇に残った温度は、まだ冷めそうになくて。
    真っ赤になる晶を見て、ミスラは至極満足そうに、無邪気に笑った。
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