『あいつはとんでもない物を盗んでいきました』「僕にそんなお遊びに付き合えと?」
ジェイドは嫌そうな顔を隠しもしないで己より身長のいくらか低い上司に言った。
高身長で切れ長の瞳、そんなジェイドに自然見下ろされる形になった上司アズールは目を瞑ってはぁとため息をつく。
「僕を睨んだってしょうがないでしょう。だいたいお前はここに配属されたばかりで仕事内容に文句を言える立場じゃないんです」
「だとしてもこんなふざけた紙切れ一枚…警察ともあろう組織がこんなモノに振り回されるだなんてバカバカしい」
「ジェイド」
アズールは銀縁のメガネのブリッジをくいっと持ち上げ、ジェイドを冷静に見返す。言葉が過ぎるぞ。そんな牽制の籠った眼差しにジェイドはひと際目をぎゅっと瞑り、諦めたように小さく「分かりました」と呟いた。
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