お巡りさんこの男です「…ん……ここは………?」
猗窩座にとって、この世で最も愛おしく憎らしい男がゆるりと目を開ける。
不思議そうに辺りを見回し何かおかしい事に気付いたようだ。
「やっとお目覚めか?待ちくたびれたぞ」
「………………やはり、君か」
ぼんやりとしていた煉獄の瞳に炎が宿り、猗窩座を睨みつける。
「君、監禁は犯罪だぞ……わかっているのか?」
わかっている。
でもこうするしかないんだよ杏寿郎。
こんなに愛して、愛して、愛して、愛しているのに。
杏寿郎は俺を拒絶する。
杏寿郎は俺を受け入れない。
監禁でもしないと俺の提案を聞いてくれないだろう?
「そう怒るな…愛しているんだ。でも杏寿郎が俺を受け入れないから…っ!」
「…いや、これで受け入れるわけないだろう阿呆なのか君は」
「だったら…何で杏寿郎として生まれてくるんだっ!俺を拒絶するなら杏寿郎として生まれて来なければいいだろ…っ」
「うん。本当に君、そういうとこだぞ」
煉獄の冷静な言葉で猗窩座は我に返った。
このままでは、何時も通り振られてはい終了になってしまう。
「違う違うっ今の無し!ごめん…っ杏寿郎ぉ…言い過ぎた…いい提案があるんだっ本当にいい提案なんだっ!信じてくれっ今日の俺は一味違うんだ!!」
「はいはい。とりあえず聞いてやるから腕の縄を解け」
「き、聞いてくれるのか!?やった!よし、すぐ解くからなっ」
毎回激しい求愛をする猗窩座だが心底煉獄に惚れ抜いている為、大切にしすぎて18禁的な無体が働けない。
そのおかげで煉獄の貞操は今日も守られている。
猗窩座は以外とピュアな男であった………。
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振られ続けて50回目。
普段はめげない男も流石に落ち込み、ようやく考えを改めた。
この調子では煉獄と永遠に恋仲になれない…と。
「反省したんだ…強引に気持ちをぶつけてばかりじゃ駄目だって」
「………もう既にぶつけられているんだが」
優しく縄を解き猗窩座は真剣な表情で煉獄を見つめる。
「俺は杏寿郎と愛し愛される関係になりたい」
「それは一方的じゃ駄目なんだ」
「だから………二人だけの特別な呼び名がほしい!共に愛称で呼び合って親密になりたい…っ杏寿郎……いや…杏ちゃんっっ!!」
言った。
ついに言ったぞ…。
だが、杏寿郎……いや、杏ちゃんの反応が気になる。
ものすごい冷たい目で見られてたら…
え、どうしよう…
「…………君、悪い奴では無いのだがなぁ」
呆れたような、でも柔らかい。そんな声を猗窩座は初めて聞いた。
「きょ…杏ちゃん……?」
「ふふっそんな呼び方したの君が初めてだな…」
「は、初めて…っ俺が…初めてっっ嬉しい…お赤飯炊かないと…っ!!」
「もう…君は…そういうとこだぞ?」
「杏ちゃん…っ」
煉獄の声が更に甘みを増したような気がして、どうしようもなく猗窩座の胸はときめいてしまう。
「俺が杏ちゃんなら……君は……あっくん、かな」
あっくん!?
素晴らしい…見事だ…っ!
あっくんと杏ちゃん。
こ、こここれは…みゃ、脈有りなのではっっっ!?
「き、杏ちゃんっっ」
「なんだ?あっくん」
「……っ!杏ちゃんっ♡」
凄い。
凄いぞ愛称呼びの威力!
これが親密な関係!!
やはりお赤飯炊かないと!!!
「俺…幸せだ…杏ちゃんっ」
「それは良かった。では、俺のお願いも聞いてくれるか?あっくん」
煉獄からの初おねだりで猗窩座の脳内は今、お花畑状態だ。
「も、もちろんだ!杏ちゃんの為なら何でもっっ」
「そうか嬉しいぞあっくん。では…俺の携帯電話を返してくれるか?」
煉獄からの初上目遣いで猗窩座の脳内は今、お花畑を通り越してついにお赤飯を炊きだしてしまった。
「お安い御用だ!杏ちゃん♡」
「ありがとう。あっくん」
「でも携帯で何するんだ?杏ちゃん」
「ん?親密な俺達なら言わなくても解るだろう?…あっくん」
煉獄の甘い、甘い、笑顔で猗窩座の脳内に完璧なお赤飯が炊き上がりました。
そっか〜!
そうだよな〜っ!
俺達、親密な関係だもんなっ
こんなに相性ぴったりならもう、立派な恋仲なのでは?
携帯ってことはLINEのブロック解除してくれるのかなぁ♡
着信拒否も解除してくれるよな♡
幸せだな、俺♡
20時15分 素山猗窩座 確保ーーーー。