いっぱい食べるお前に夢中 美味しさの秘訣は愛と下心。
さぁ今日は何を作ろうか?
「なぁ知ってるか杏寿郎?意中の相手に手料理を食べさせたがる奴の心理」
「知らん」
天気のいい週末。
公園で陽だまりの暖かさを感じながら俺が作った苺大福を頬張る杏寿郎。
何て愛おしい。何て幸せなんだ。
「手料理を食べさせることで身も心も自分だけのものにしたい。凄まじい愛と執着の表れなんだそうだ」
「俺その気持ち痛い程わかるんだ。この苺大福も杏寿郎の血となり肉となり…たまらんなぁほら、もっと一緒に食べよう」
己の手料理が煉獄を形造る一部になるのだと。猗窩座は蕩けきってだらしない顔で幸福と苺大福を味わっていた。
「猗窩座…」
「ん?どうした杏寿……っ」
煉獄の悩ましげな声と柔らかな唇。
何だ。今、何が起こった?
確か名前を呼ばれてそれから杏寿郎の顔が近付い…………。
そうか!夢だ夢だなこれは。
ハハっ目を開けたまま寝るなんて器用だな俺。
しかも最高に良い夢じゃないか。
感触まで感じるなんて……感触?
「ん…っ猗窩座?」
不思議そうに小首を傾げた煉獄の唇はしっとりと濡れている。夢などでは無かった。
「きょ…っきょうじゅろ…っっ」
杏寿郎が俺にキスを。
嘘だろうまさか…遂にこの想いが報われる時がっ!?
雨の日も風の日も、愛と下心を込めた手料理を貢いできて本当に良かった。
猗窩座の目頭が熱くなる。
「きょ、杏寿郎…っ♡」
「猗窩座……君、唇にあんこが付いていたぞ」
「………………………あん…こ?」
「うむ!もったいない」
「あんこ。あんこかぁ〜ハハっ…デスヨネ」
あんこが唇にな、うん。そうだよなそうじゃないと杏寿郎が俺にキスなんてしてくれる訳が無い。
なるほどこれがラッキースケベってやつか。
くそっ!それならば鬼のように苺大福を食らって唇だけじゃなく顔中あんこだらけにしたら杏寿郎はもっとキスしてくれるのでは?
この際ラッキースケベだろうが何だろうが満喫してやる!!
猗窩座はやけくそになり苺大福を鷲掴んだ。そして貪ろうとしたその時。
「猗窩座…俺は食べ物を無駄にするような奴は嫌いだ」
「………デスヨネ」
疚しい気持ちが表情に出すぎていたのだ。
それに気付いた煉獄の冷たい眼差しと声に猗窩座は竦んでしまう。
今、猗窩座に許されるのは大人しく苺大福を食べることだけである。
「ほら、もっと一緒に食べるのだろう?」
「……デスヨネ」
「ふふっ何か君は…苺大福に似てるな。そうしていると共食いしてるみたいで可愛らしいぞ」
それは、それは無邪気な可愛らしい笑顔。
そんな眩しい笑顔で苺大福をパクっと頬張る煉獄に猗窩座はクラクラしてしまった。
いや、似てるか?とか共食いってかわいいのか?とかそんなことはどうでもいい。
杏寿郎……可愛らしいのはお前だっっ!
くそっ俺はそんなお前にメロメロなんだよぉぉぉ!!!
「杏寿郎!明日は何が食べたい?」
「スイートポテト」
「了解っ♡」
さぁ戦いの火蓋は切られた。
次の決戦はスイートポテト。
猗窩座の手料理には煉獄への愛と下心がそれはもういっぱい、いっぱい詰まっているーーーー。