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    u_modayo

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    なんだかんだ一番仲の良かった鬼との再会です。
    原作と同じキャスティングにして見ました。

    #炭鬼舞
    charcoalGhostDance
    #長編進歩

    檸檬13   ⅴ. 本意


     それから、炭治郎は鬼殺隊の任務をこなすため各地を飛び回っていた。御館様より勅命を受けたとは言え、鬼の炭治郎が野放しにされると言うことはなく、柱が一名監視の役割として交代で同行することになっている。
     炭治郎としては折角仲良くなったら善逸や伊之助の二人と共に行動したかったが、こればかりは致し方ない。一般隊士では、怪しい動きがあった時に即刻首を刎ねられる技量と判断力を有しているのは、どうしたって柱の方だ。
     これまで三名の柱と行動を共にしてきた。初めは岩柱、次が水柱、霞柱と続き、今回で四人目の彼は炎柱である。
     特徴的な黄色と赤色の燃え盛るような髪に、何処を見ているか分からないギョロ目。耳がキーンとするような溌剌とした声でよく喋る男。炭治郎の彼に対する第一印象はそんな感じだったが、今はそれに〝そそっかしく騒がしい〟が加わっている。
     合流してからまだ半日と経っていないが、どうにも話が噛み合いづらい。匂い的に悪い人間ではないのは分かるのだが、掴みどころのない男だというのが炭治郎の炎柱に対する見解である。前の三名が無口・無表情・無愛想の三拍子だったこともあってか、会話を求めてくる炎柱に少し調子が狂う。食事の時もずっと美味い!と大きな声で言っているので、周りの視線に居た堪れない思いをしたのは記憶に新しい。

    「ところで竈門少年! 聞きたいことがあるのだがいいだろうか?」
    「……どうぞ。今度は何ですか?」
    「俺の生家である煉獄家では代々鬼殺隊に所属しているのだが、歴代の炎柱の書に君の日の呼吸に関して何か記述がないか調べてみた」

     炎柱の言葉に炭治郎は足を止めた。抜かるんだ山道にぐちゃりと足が沈む。

    「……何か見つかりましたか?」
    「いや! 何も分からなかった! だが、俺が日の呼吸について調べている事を知った父が激昂し、酷く取り乱していたんだ。少し、様子がおかしいくらいに」
    「そうですか。もしかしたら何か心当たりがあるのかもしれませんね」
    「ああ。だが、詳しい話を父から聞けるかどうかは分からない。父は母を亡くしてから変わってしまって……昔はあんな人ではなかったのだが」

     声量が僅かに落ちる。悩み事なんてなさそうなこの男でも気に病むことはあるらしい。

    「それからもう一つあるんだが、前に合同任務で一緒になった隊士の中に君と同じ苗字の少女が───」

     そこまで言って、炎柱は足を止めた。鬼の気配に気づいたのだろう。刀に手をかけ、真剣な顔つきになる。
     今更だが、今回炭治郎が調査している任務というのは、この山中を通った旅人や村人が行方不明になる事件である。被害者には女も子供もいて、いや寧ろ被害名簿を見るにその方が多いだろう。恐らく鬼の仕業だろうと今まで何人かの隊士が派遣されているわけだが、彼らもまた行方不明となっていた。故に、此度の柱を加えた人選となっているわけである。
     しかし、炭治郎が思うにその鬼はもうこの世には存在しない。何故ならこの山をテリトリーにしている鬼は、女や子供を食う事を嫌う鍛錬好きの戦闘狂だからだ。

    「やっぱり、一番最初に見つかるならお前だと思っていたよ───猗窩座」

     久しぶりに馴染みある匂いを感じた炭治郎は、無意識に口角をあげ、少し弾んだ声色で森の中に紛れる彼に投げかけた。
     すると、木の影から姿を現した猗窩座を見て、炎柱の纏う雰囲気が一瞬で張り詰めた。

    「上弦の……参!」
    「久しいな、炭治郎。髪型を変えたのか。俺はそっちの方が似合うと思うぞ」
    「久しぶり、猗窩座。褒めてくれてありがとう。お前は相変わらず鍛錬ばかりしているんだろう? 久々に相手になってあげようか?」
    「ああ。その前にそこの柱を殺してから、なっ!」

     ゴゥンッ!
     空気を切る音に合わせ、炭治郎は炎柱を横へ突き飛ばし、猗窩座の拳を受け止める。

    「何の真似だ、炭治郎。まさか本気で鬼狩りにくみしているわけではあるまいな? あの御方を裏切るつもりか?」
    「裏切る? それは違うよ、猗窩座。俺は見限られたんだ。お前は不要だと切り捨てられたんだから、どこで何をしていようが俺の勝手だろう」
    「炭治郎………お前は本当に、大馬鹿者だ」

     殴り合う最中、炭治郎と猗窩座は木のない開けた空間に出る。パッと見渡すとそこは寺院の境内のようだった。しかし、その一瞬の隙に猗窩座が距離を詰め、拳がモロに鳩尾に入る。

    「ガハッ! クソ……!」
    「なんだ情けない、勘が落ちたんじゃないか? 弱者の相手ばかりしているからだ」
    「うるさい。余計なお世話だ」
    「もう一発いいのをくれてやる。そしたら目も覚めるだろう」

     破壊殺羅針の構えを取る猗窩座。そして、傷を修復し終えた炭治郎が防御姿勢を取ったところに、真っ赤な羽織が視界を占領する。

    「炎柱ッ!?」
    「チッ。貴様の闘気は美しく興味があるが、生憎今は相手にしている暇はない。殺さないでやるから邪魔をするな」
    「竈門少年! 先程は助かった! 礼を言おう」
    「……別に。貴方を死なせたら俺の信用が落ちるから」

     構えを解いた炭治郎は、煉獄の隣に立ち刀を下ろすように手を添える。

    「庇ってくれてありがとうございます。でも貴方は下がってて下さい。猗窩座の相手は俺がします」
    「そう言うわけにはいかない!」
    「人間の貴方が無駄に怪我をする必要はないと言っている。前の柱も大人しく待機していた。貴方も安全なところで見ているだけでいい」
    「……! なるほど、君は俺の心配をしてくれているのか! 優しいんだな!」
    「…………」

     ダメだな。話が全然通じていない。

    「まあ何でもいいですけど、早く向こう行っ」

     早々に説得を諦めた炭治郎が蹴飛ばしてでも炎柱を戦線離脱させようとした時、一足早く猗窩座が攻撃を仕掛けてきた。マズいと思うも、炎柱は既に抜刀しており、炎が猗窩座の腕を真っ二つに裂く。
     空中で身を翻し距離を取った猗窩座は、傷を瞬時に修復して再び炭治郎を見やる。

    「炭治郎、俺はあの御方の命でお前を探しにきたんだ。あの御方はお前を見限ったわけじゃない。大人しく着いて来い!」
    「! ……ッ、お前はあの時あの場に居なかったから、そんな酷いことが言えるんだ。無惨様はもう、俺の事なんて……」

     ギリッと下唇を噛み、それからゆっくり息を吐く。
     腰の鞘に指をかけ、炭治郎は漸く刀を抜いた。

    「! お前その刀……」
    「いつもみたいに簡単に首を落とされてくれるなよ。今までのなまくらと違って、これに斬られたらお前は消し炭だ」

     言いながら刀を前に構え、目の前の敵を見据える。

    「……ねぇ猗窩座、俺ね考えたんだよ。どうしたら後腐れなく死ねるのかなって。不用品だって壊れ方くらい選びたいじゃない。それでね、思ったんだ」

     しかし、すぐに肩の力を抜いた炭治郎は、家族に向ける表情になってポツリと溢した。

    「どうせ死ぬなら大好きなみんなに殺されたい」
    「………」
    「鬼狩りになれば、俺は皆んなの敵になる。俺のこと殺してよ、猗窩座」
    「……お前はそれでいいのか」
    「うん。だって、あの御方に必要とされなくなった鬼なんて、生きてる価値ないでしょう?」
    「…………………はぁ、分かった」

     長い逡巡の末、諦めたように頷いた猗窩座に何処か懐かしさを覚えながら、炭治郎は肺に空気を送り込んだ。




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