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    inuparade

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    ポイピクが縦書き対応したらしいのでお試しにチェズモクの初夜前の小説を載せます

    #チェズモク
    chesmok
    ##BMB

    俺を殺すのはお前だけ「チェズレイ、お前さん、俺のことどうしたい?」
     長いキスが終わった後、俺はチェズレイにそう囁いた。本当はちゃんと声にしたつもりだったけど、乱れる息を整えながらではそう上手く喋れないものらしい。格好がつかないなとは思ったが、そんなの今更だ。
     時刻は真っ昼間、アジトのリビングのど真ん中。しかもソファやラグの上ですらなく、板張りの床の上と来たもんだ。格好つけるも何もあったもんじゃない。余裕なんて無かったんだから仕方がない。長い長い時間の果てにようやく心から触れ合えたのだから、そりゃあ少しばかり盛り上がっても当たり前だろうと大目に見てもらいたい。むしろ、今の俺が割と冷静なのを褒めて欲しいくらいだ。まあ、フローリングに押し付けられて悲鳴を上げる自分の身体が、無理矢理冷静にさせてきたといった所なのだが。寄る年波には勝てないものだ。
     このままこちらを食い破ってきそうなチェズレイの眼光を浴びながら、なるべく色っぽくならないように、ぐしゃぐしゃと頭を撫でて宥めた。チェズレイの髪が乱れるにつれ、眼光の鋭さが徐々に和らいでいく。それと同時に、チェズレイの眉根が不機嫌そうにしかめられていった。
    「……ぐちゃぐちゃにしたいですが、何か?」
     なんとまぁ、熱烈なこって。
    「あは、それは嬉しいけど、そうじゃなくて。抱くか、抱かれるかってことだよ」
     アホ毛を大分増やしてしまったチェズレイの髪を、今度は梳くように撫でつける。俺に降りかかる日の光を遮るその髪は、見惚れるぐらいにキラキラしていた。桃色の花弁に彩られた藤色の瞳も、光を遮ってなお濡れた涙にきらめいている。まぁ随分な色男だこと。そんな色男が、俺の言葉を受け俺の視線を感じ取って、満更でもないように少しずつ表情筋をとろけさせていく様は、愉快でたまらない。ものすごく嬉しくなってしまう。四十路も前にしてこんなにチョロくてどうするんだ、とは思わなくもないが、さっきのついでにそこも大目に見てもらいたい。
     興奮の余韻で未だに熱を持っているチェズレイの耳を、親指と人差し指で優しく揉んでやる。その熱は冷める様子がない。きっと先程の問いを反芻して、想像しているんだろう。俺に抱かれるところと、俺を抱くところを。
    「正直なところ、おじさんはお前さん相手ならどっち側でもぐっちゃぐちゃになっちまう自信があるよ」
     だから、お前さんがやりたい方を選びなよ。ダメ押しのようにそう続けると、チェズレイは少し困ったようにこちらを見つめてきた。俺はその顔に弱いんだと、何度言えば分かるんだろう。まぁ大抵は分かった上でわざとやっているんだろうが、今はそうではない気がした。
     チェズレイの、手袋が抜き取られた後の左手が、俺の頬にゆるりと這わされる。おじさん、今日も無精ひげ生えてるからさぁ。ジャリジャリして気持ち良くないと思うんだけど。
     形の良く薄い唇が、一瞬躊躇うように動いた後、呼吸と共に開かれる。
    「…………どちらも、は。ダメですか?」
     どちら、も? 思いも寄らない答えにきょとんとしてしまう。どちらも。どちらも想像したうえで、どうにもこの色男には甲乙がつけがたかったらしい。だから両方くーださい、ってか。こんなおじさんの身体を。場に似合わない子供っぽい可愛らしさを感じて、愛しさに笑いが込み上げる。その中で、チェズレイが追い討ちをかけるように目をきゅるきゅると潤ませるものだから、つい噴き出してしまった。
    「はは! はぁ……、お前さんらしいっちゅーか何というか。それはそれで良いんだけどね、いっぺんには出来ないからさ。先にどっちやりたい?」
     可愛らしい我が儘は聞いてやりたいところだが、なんせ俺の身体もコイツの身体も一つずつしか無いもんで。順番は決めなくてはいけない。
     俺の頬に添えられたチェズレイの左手に、そっと右手で触れる。無精ひげの生えた顔はどう考えても触り心地の良いものではないだろうと思うのに、チェズレイの指先は優しく優しくなぞり続けている。慈しむような、考え込むような手つき。
    「……抱く側でお願いします」
    「はいよ」
     たっぷりと考え込んでから、チェズレイはそう答えを出した。それを褒めるようにチェズレイの手をやんわりと握って、ふんにゃりと笑いかけた。チェズレイがそれに応じて微笑んだのを確認して、空いた方の手でチェズレイの肩口をとんとんと叩き、その場から退くようにお願いする。
     素直に立ち退いたチェズレイに『どうも』と言いながら、よいしょと上半身を起こす。あ、起き上がるだけで背中がゴリゴリいってる。凝った背中を労わるように擦りながら、俺の脇で膝をついているチェズレイの方を見上げる。
    「男同士でっていうのは、女の子とするのと違って準備がいるから。今はここまでね、エッチなニコルズくん」
     エッチ、と言われたのが不服なのか、チェズレイは少し細めた目で以ってこちらを見てくる。
    「……煽ったのはあなたでしょう」
    「煽らせたのはお前さんだろ? 我慢して、我慢」
     ていうか、ぶっちゃけおじさんの方が我慢してると思うし。そう続けると、チェズレイの口元が一瞬ピクリと引き結ばれ、誤魔化すようにすぐ緩められた。チェズレイ、らしくないじゃない。耳がまだ赤いよ。それだけ想われているということかな、と思うと気分が良い。
     気分の良さに任せて、立ち上がりついでにチェズレイの胸元をぽんぽんと叩く。
    「今日の夜、続きやっていいからさ」
     にっこりと宣言して、チェズレイの反応を見ずにリビング中央のソファへと舞い戻る。身体も少し怠いことだし、ちょっとばかし寝よう。後のことはそれから考えればいい。今、ソファの後ろでえらいことになっているであろうチェズレイを、どうリードしてやるのか。楽しみだなぁと思いながら、俺は目を閉じた。
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    DOODLEチェズモク800字。とある国の狭いセーフハウス。■たまには、


     たまにはあの人に任せてみようか。そう思ってチェズレイがモクマに確保を頼んだ極東の島国のセーフハウスは、1LKという手狭なものだった。古びたマンションの角部屋で、まずキッチンが狭いとチェズレイが文句をつける。シンク横の調理スペースは不十分だし、コンロもIHが一口だけだ。
    「これじゃあろくに料理も作れないじゃないですか」
    「まあそこは我慢してもらうしかないねえ」
     あはは、と笑うモクマをよそにチェズレイはバスルームを覗きに行く。バス・トイレが一緒だったら絶対にここでは暮らせない。引き戸を開けてみればシステムバスだが、トイレは別のようだ。清潔感もある。ほっと息をつく。
     そこでモクマに名前を呼ばれて手招きされる。なんだろうと思ってついていくとそこはベッドルームだった。そこでチェズレイはかすかに目を見開く。目の前にあるのは十分に広いダブルベッドだった。
    「いや~、寝室が広いみたいだからダブルベッドなんて入れちゃった」
     首の後ろ側をかきながらモクマが少し照れて笑うと、チェズレイがゆらりと顔を上げ振り返る。
    「モクマさァん……」
    「うん。お前さんがその顔する時って、嬉しいんだ 827

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。結婚している。■いわゆるプロポーズ


    「チェーズレイ、これよかったら使って」
     そう言ってモクマが書斎の机の上にラッピングされた細長い包みを置いた。ペンか何かでも入っているのだろうか。書き物をしていたチェズレイがそう思って開けてみると、塗り箸のような棒に藤色のとろりとした色合いのとんぼ玉がついている。
    「これは、かんざしですか?」
    「そうだよ。マイカの里じゃ女はよくこれを使って髪をまとめてるんだ。ほら、お前さん髪長くて時々邪魔そうにしてるから」
     言われてみれば、マイカの里で見かけた女性らが、結い髪にこういった飾りのようなものを挿していたのを思い出す。
     しかしチェズレイにはこんな棒一本で、どうやって髪をまとめるのかがわからない。そこでモクマは手元のタブレットで、かんざしでの髪の結い方動画を映して見せた。マイカの文化がブロッサムや他の国にも伝わりつつある今だから、こんな動画もある。一分ほどの短いものだが、聡いチェズレイにはそれだけで使い方がだいたいわかった。
    「なるほど、これは便利そうですね」
     そう言うとチェズレイは動画で見たとおりに髪を結い上げる。髪をまとめて上にねじると、地肌に近いところへか 849

    高間晴

    MAIKINGチェズモクの話。あとで少し手直ししたらpixivへ放る予定。■ポトフが冷めるまで


     極北の国、ヴィンウェイ。この国の冬は長い。だがチェズレイとモクマのセーフハウス内には暖房がしっかり効いており、寒さを感じることはない。
     キッチンでチェズレイはことことと煮える鍋を見つめていた。視線を上げればソファに座ってタブレットで通話しているモクマの姿が目に入る。おそらく次の仕事で向かう国で、ニンジャジャンのショーに出てくれないか打診しているのだろう。
     コンソメのいい香りが鍋から漂っている。チェズレイは煮えたかどうか、乱切りにした人参を小皿に取って吹き冷ますと口に入れた。それは味付けも火の通り具合も、我ながら完璧な出来栄え。
    「モクマさん、できましたよ」
     声をかければ、モクマは顔を上げて振り返り返事した。
    「あ、できた?
     ――ってわけで、アーロン。チェズレイが昼飯作ってくれたから、詳しい話はまた今度な」
     そう言ってモクマはさっさと通話を打ち切ってしまった。チェズレイがコンロの火を止め、二つの深い皿に出来上がった料理をよそうと、トレイに載せてダイニングへ移動する。モクマもソファから立ち上がってその後に付いていき、椅子を引くとテーブルにつく。その前に 2010

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    高間晴

    DONE手作りの栞とファーストキスのチェズモクの話。■眠れない夜、君のせいだよ


     何、読んでんだろ。
     チェズレイはよく本を読む。今日もリビングのソファで読書をしている。それをモクマはソファの背中側に回り込んで、膝の上に開かれたハードカバーのページを見てみる。だが、数行読んだところで、何のことなのか頭がこんがらがるような感覚に襲われたので読むのをやめた。
    「どうしました、モクマさん」
    「いんや。お前さんやっぱ頭脳派だな~って思って」
     チェズレイは薄く微笑むと栞も挟まず本を閉じてしまう。それを見てモクマは目を見開く。
    「ありゃ、お前さん栞挟まないの?」
    「ええ。どこまで読んだかは覚えていますので」
    「は~……じゃあおじさんの作った栞、いらないかあ」
    「栞?」
     チェズレイが小首を傾げてきたので、モクマは背後に持っていた手作りの栞を差し出す。受け取って、チェズレイはまじまじと見つめる。紫色の花を押し花にして作った栞を指差してモクマが説明する。
    「お前さんよく本読んでるみたいだから、どうかな~って思って作っちゃった」
     そこでモクマは少し照れくさそうに笑う。
    「昔におカンやイズミ様が作ってたのの見様見真似だけどさ、なかなかうまく出来てる 2411