Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    inuparade

    @inuparade

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 63

    inuparade

    ☆quiet follow

    ポイピクが縦書き対応したらしいのでお試しにチェズモクの初夜前の小説を載せます

    #チェズモク
    chesmok
    ##BMB

    俺を殺すのはお前だけ「チェズレイ、お前さん、俺のことどうしたい?」
     長いキスが終わった後、俺はチェズレイにそう囁いた。本当はちゃんと声にしたつもりだったけど、乱れる息を整えながらではそう上手く喋れないものらしい。格好がつかないなとは思ったが、そんなの今更だ。
     時刻は真っ昼間、アジトのリビングのど真ん中。しかもソファやラグの上ですらなく、板張りの床の上と来たもんだ。格好つけるも何もあったもんじゃない。余裕なんて無かったんだから仕方がない。長い長い時間の果てにようやく心から触れ合えたのだから、そりゃあ少しばかり盛り上がっても当たり前だろうと大目に見てもらいたい。むしろ、今の俺が割と冷静なのを褒めて欲しいくらいだ。まあ、フローリングに押し付けられて悲鳴を上げる自分の身体が、無理矢理冷静にさせてきたといった所なのだが。寄る年波には勝てないものだ。
     このままこちらを食い破ってきそうなチェズレイの眼光を浴びながら、なるべく色っぽくならないように、ぐしゃぐしゃと頭を撫でて宥めた。チェズレイの髪が乱れるにつれ、眼光の鋭さが徐々に和らいでいく。それと同時に、チェズレイの眉根が不機嫌そうにしかめられていった。
    「……ぐちゃぐちゃにしたいですが、何か?」
     なんとまぁ、熱烈なこって。
    「あは、それは嬉しいけど、そうじゃなくて。抱くか、抱かれるかってことだよ」
     アホ毛を大分増やしてしまったチェズレイの髪を、今度は梳くように撫でつける。俺に降りかかる日の光を遮るその髪は、見惚れるぐらいにキラキラしていた。桃色の花弁に彩られた藤色の瞳も、光を遮ってなお濡れた涙にきらめいている。まぁ随分な色男だこと。そんな色男が、俺の言葉を受け俺の視線を感じ取って、満更でもないように少しずつ表情筋をとろけさせていく様は、愉快でたまらない。ものすごく嬉しくなってしまう。四十路も前にしてこんなにチョロくてどうするんだ、とは思わなくもないが、さっきのついでにそこも大目に見てもらいたい。
     興奮の余韻で未だに熱を持っているチェズレイの耳を、親指と人差し指で優しく揉んでやる。その熱は冷める様子がない。きっと先程の問いを反芻して、想像しているんだろう。俺に抱かれるところと、俺を抱くところを。
    「正直なところ、おじさんはお前さん相手ならどっち側でもぐっちゃぐちゃになっちまう自信があるよ」
     だから、お前さんがやりたい方を選びなよ。ダメ押しのようにそう続けると、チェズレイは少し困ったようにこちらを見つめてきた。俺はその顔に弱いんだと、何度言えば分かるんだろう。まぁ大抵は分かった上でわざとやっているんだろうが、今はそうではない気がした。
     チェズレイの、手袋が抜き取られた後の左手が、俺の頬にゆるりと這わされる。おじさん、今日も無精ひげ生えてるからさぁ。ジャリジャリして気持ち良くないと思うんだけど。
     形の良く薄い唇が、一瞬躊躇うように動いた後、呼吸と共に開かれる。
    「…………どちらも、は。ダメですか?」
     どちら、も? 思いも寄らない答えにきょとんとしてしまう。どちらも。どちらも想像したうえで、どうにもこの色男には甲乙がつけがたかったらしい。だから両方くーださい、ってか。こんなおじさんの身体を。場に似合わない子供っぽい可愛らしさを感じて、愛しさに笑いが込み上げる。その中で、チェズレイが追い討ちをかけるように目をきゅるきゅると潤ませるものだから、つい噴き出してしまった。
    「はは! はぁ……、お前さんらしいっちゅーか何というか。それはそれで良いんだけどね、いっぺんには出来ないからさ。先にどっちやりたい?」
     可愛らしい我が儘は聞いてやりたいところだが、なんせ俺の身体もコイツの身体も一つずつしか無いもんで。順番は決めなくてはいけない。
     俺の頬に添えられたチェズレイの左手に、そっと右手で触れる。無精ひげの生えた顔はどう考えても触り心地の良いものではないだろうと思うのに、チェズレイの指先は優しく優しくなぞり続けている。慈しむような、考え込むような手つき。
    「……抱く側でお願いします」
    「はいよ」
     たっぷりと考え込んでから、チェズレイはそう答えを出した。それを褒めるようにチェズレイの手をやんわりと握って、ふんにゃりと笑いかけた。チェズレイがそれに応じて微笑んだのを確認して、空いた方の手でチェズレイの肩口をとんとんと叩き、その場から退くようにお願いする。
     素直に立ち退いたチェズレイに『どうも』と言いながら、よいしょと上半身を起こす。あ、起き上がるだけで背中がゴリゴリいってる。凝った背中を労わるように擦りながら、俺の脇で膝をついているチェズレイの方を見上げる。
    「男同士でっていうのは、女の子とするのと違って準備がいるから。今はここまでね、エッチなニコルズくん」
     エッチ、と言われたのが不服なのか、チェズレイは少し細めた目で以ってこちらを見てくる。
    「……煽ったのはあなたでしょう」
    「煽らせたのはお前さんだろ? 我慢して、我慢」
     ていうか、ぶっちゃけおじさんの方が我慢してると思うし。そう続けると、チェズレイの口元が一瞬ピクリと引き結ばれ、誤魔化すようにすぐ緩められた。チェズレイ、らしくないじゃない。耳がまだ赤いよ。それだけ想われているということかな、と思うと気分が良い。
     気分の良さに任せて、立ち上がりついでにチェズレイの胸元をぽんぽんと叩く。
    「今日の夜、続きやっていいからさ」
     にっこりと宣言して、チェズレイの反応を見ずにリビング中央のソファへと舞い戻る。身体も少し怠いことだし、ちょっとばかし寝よう。後のことはそれから考えればいい。今、ソファの後ろでえらいことになっているであろうチェズレイを、どうリードしてやるのか。楽しみだなぁと思いながら、俺は目を閉じた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍😍😍❤🙏💯💯🌋🌋🌋💘😭❤💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。戦いが始まる前に終わってしまった……■では、お手柔らかに


     チェズレイとモクマが生活をともにしているセーフハウスの地下には、フローリング材の敷かれた広い空間があった。そこにはジムよろしく壁に沿って懸垂器具やルームランナーが置かれている。
     そこでモクマは一人、Tシャツにスウェット姿で懸垂器具に両手でぶら下がる。腕を伸ばした形からそのままゆっくりと肘を曲げていく。ぎっ、と懸垂器具が軋んで肘が肩より下になるまで体を腕力だけで持ち上げる。それを無言で繰り返す。
     三十回を超えた頃、階段を降りてくるチェズレイの姿が目に入った。
    「お疲れ様です、モクマさん」
    「お前さんも運動かい?」
     そうモクマが声をかけたのは、チェズレイも動きやすそうなTシャツとジャージ姿でまとめ髪だったから。なんてことない服装だが、この男が着るとそのままランウェイを歩けそうだ。
    「ええ。戦うための肉体づくりは欠かせませんから」
    「お前さん努力家だもんねぇ」
     チェズレイはモクマの傍に近づいた。モクマは少し慌てて器具から降り、間合いを取ろうとして壁に張り付く。
    「そう逃げなくたっていいじゃありませんか」
    「いや、おじさん汗かいたから。加齢臭するとか言われた 871

    高間晴

    DONEお題箱からのリクで風邪を引くチェズと看病するモさんの話。チェズモク。■いちばんの薬


     とある国で拠点にしているビル。上階にある執務室にて。
     モノトーンでまとめられた無駄のないスタイリッシュなこの部屋は、組織を率いるチェズレイの好みに合わせたものだ。室内にはドアの前に一人、チェズレイの側近である黒服の男が控えている。そんな中でチェズレイは黄昏の景色が映る窓を背にして机に座り、部下から提出された麻薬の密輸ルートに関する資料に目を通している。
     ――頭が痛む。これはたぶん熱もあるなと、チェズレイはそんなことを頭の隅で考えながら、涼しい顔を崩さない。
     そこへノックの音と「チェーズレイ」と呼ぶ声がしたので、はっと顔を上げてしまう。黒服が心得たように黙ってドアを開ける。そこには予想通りモクマの姿があった。書類を手に机までグレーのカーペットの上を下駄で歩いてくる。顔を見るのは二週間ぶりだ。チェズレイはすぐさま目の前の愛しい相棒兼恋人にハグしたかったが、部下の手前、そういうわけにもいかない。
    「ただいま~。久しぶりだね」
    「おかえりなさい、モクマさん」
    「お疲れさん。これ、俺がニンジャジャンの仕事やりながら新しく手に入れた、人身売買に関わってる組織のリストね」 2295

    高間晴

    DONEモさんの好きな場所「海と雪原」を踏まえて、チェズモクが雪原の夜明けを見に行く話。
    巷で流行りの「おじさんが〇〇だった頃の話」構文が使いたかった。
    ■夜明けを見に行こう


     とある冬の夜更けに、二人で温かいカフェオレが飲みたいと意気投合した。ベッドから二人抜け出すと、寝間着のままでキッチンの明かりをつける。
    「……そういえば、前にあなた『ヴィンウェイにいたことがある』というようなことを言っていましたよね」
     コーヒーを淹れながらチェズレイが訊ねた。モクマはコンロから温め終えた牛乳の小鍋を下ろしながら「えー、そうだっけ?」と答え、火を止める。チェズレイはおそろいのマグカップにコーヒーを注ぎ分け、差し出される温かい牛乳の鍋を受け取る。その表面に膜が張っていないのは、二人で暮らすようになってからモクマが気をつけ始めたおかげ。モクマひとりで飲む分には膜が張っていても気にしないが、神経質なチェズレイはそれを嫌うためだ。
     チェズレイはモクマの記憶の引き出しを開けようと、言葉を続ける。
    「ほら、ここで暮らしはじめて間もない頃ですよ。ボスにヴィンウェイ名物を送るためにスーパーに行った日」
    「……んー? ……あ! あの燻製サーモンとナッツ送った、あの時の」
    「そうそう、その時です」
     チェズレイは鍋からコーヒーの入ったマグカップに牛乳を注ぎ、黄 3173

    高間晴

    DONEチェズモクワンライ「傷跡」。一緒にお風呂。■揃いの傷跡


    「はぁ~いい湯だ……」
     二十年に渡る放浪時代や、あのミカグラ島であった一連の事件。その間、ゆっくり湯に浸かるなんて考えられなかった。
     場所はヴィンウェイのセーフハウス、バスルーム。広々とした大理石調のサーモタイルが敷かれた空間。そこに鎮座する大きめの猫足バスタブに湯を張って、モクマは風呂の時間を楽しんでいた。
     実は家主から先ほど連絡があり、『帰りが少し遅くなります』とのことだったので先に風呂を済ませてしまおうと思ったのだ。
     ざば、と湯船から湯をすくって顔に浴びると、生き返るような心地がする。鼻歌でも歌いたい気分だ。ふと顔を上げれば、ラックにはチェズレイが使っているシャンプーや洗顔料、ボディソープのたぐいがずらっと並んでいるのが目に入る。マメな男だなぁ、なんて感想しか出てこない。
     そこへ声が飛び込んできた。
    「モクマさん、入ってもいいですか?」
     ああ、あれか。あの洗顔料、確か洗面所に置いてあるやつだったはず。忘れてたのを取りに来たのかな、なんて思ったモクマは軽く返事した。
    「はいよ。どうぞ」
    「では失礼して」
    「……って、お前どうしたの!?」
     モクマが驚い 1663

    ▶︎古井◀︎

    DONE #チェズモクワンドロワンライ
    お題「夢/ピアノ」
    ピアノを弾いたり聞いたりするチェズモクのはなし
     ピアノの美しい調べがモクマの鼓膜を揺らし、微睡のさなかに心地よく沈んでいた意識を揺り起こした。そっと目蓋をひらくと、目の奥に残る微かな怠さが、まだもうすこし寝ていたいと訴えている。
     なにか、ずいぶんと長い夢を見ていたような。輪郭を捉えていたはずの夢の記憶は、意識の冴えに比例するかのように、ぼんやりと霞む脳に絡まっていた残滓ごと霧散していく。もはや、それが悲しかったものか嬉しかったものなのかすら思い出せないが、そっと指先で触れた目尻の膚が、涙でも流れていたみたいに張り詰めていた。
     怠惰な欲求に抗ってゆっくりとシーツの海から身体を起こしたモクマは、知らぬ間にもぬけの殻と化していた、すぐ隣に一人分空いていたスペースをぼうっと眺める。今響いているこの音は、どうやら先に目覚めた恋人が奏でているらしい。
     音に誘われるまま、眠気にこわばったままの上半身をぐっと伸ばし、モクマはサイドテーブルに置かれていたカーディガンに袖を通す。モクマが何の気なしに足を下ろした位置に、まるで測ったみたいにきっちりと揃えられていたスリッパに、思わず笑みを漏らしながら立ち上がった。
     壁際のチェストの上でもうもうと 3916