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    夢魅屋の終雪

    @hiduki_kasuga

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    夢魅屋の終雪

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    曦澄現代AUクリスマスアンケSS
    息の詰まる実家から飛び出した澄。

    #曦澄
    #創作モブ
    originalMob

    【曦澄】クリスマスまで6日【腐向け】藍曦臣と姉の江厭離が会っているころ、
    江晩吟は不機嫌そうに目の前で課題をこなしている友人を睨みつけていた。

    「お前、俺の味方じゃないのか」
    「貴方の味方ですけど、社長には逆らえませんよ。
    私は、使用人のサラブレッドですから」
    「っち」

    この友人は、母の虞家からの使用人と江家の使用人の息子である。
    それ故に、彼は使用人としての立場を十分なほどに理解していた。

    「絶対にお前は俺の秘書にしてやるんだからな。そしたら、俺に逆らえない」
    「楽しみにしてますね」

    江家を継ぐことになんの違和感を持っていないのだな…と、友人は思う。
    なんせ自分を秘書にするんだと言って聞かないのは、子供の頃からなのだ。
    それなら魏無羨はどうなるんだ?と疑問に思ったけれど、隣にいると言う事を信じて疑っていなかった。
    しかし、成長するに連れて義兄と江晩吟との扱いに違いがある事をどちらも感じていた。
    まるで魏無羨は、いつかはこの家を出ていくのだと言わんばかりに外に対する事に許可を出していた。
    対して江晩吟には、外に出ることを許さないとばかりに厳しく育て中に留めていた。
    今回、藍家へのルームシェアは四年間の猶予といった所だった。

    パーティーの後連れ帰られてから、友人が江晩吟の側を離れない。
    問いただせば、江楓眠からの命令である事がわかった。
    逆らえないのにどうやって、父を説得するのだ。

    「晩吟、課題は?」
    「おわった」

    帰ってきてから、やる事がないのだ。
    藍家にいた時は、家政夫の手伝いをしていた。
    けれど、実家では大学から帰れば使用人には部屋の掃除を済まされている。
    キッチンに入ろうものなら、料理人に困惑されてしまう。
    たった1日だが、藍家は家訓は多いが自由が効いていた気がする。
    自分のことは、自分でさせて来れていた。
    食事に至っても、味が濃く感じる。食べながら喋っていいはずの食卓には、家族揃って食事というのがない。

    クッションを抱き抱えて、課題をこなしていく友人を恨みがましく見つめた。
    こいつだけでも、食事を一緒にしてくれればいいのに……。
    いつから静かなのに、誰かと食事を取ることに慣れてしまったのだろう。
    藍家だったら、誰かしらは一緒に食事をしていた。
    食事の後は、今日の出来事を互いに話していたのだ。
    その後は、各々自由に過ごしていたけれど誰かがソファーに座ってれば隣に座っていた。
    堅苦しいのかと思っていた藍啓仁もテレビをつけて、バライティを見ていても叱咤されない。
    それどころか「こういうのが、若者はいいのか」と問いかけてきて「そうですね」と返す。
    誰もが笑いどころは一緒じゃないけれど、いつの間にか同じテレビを見ていた。
    けれど江家には、それがない。
    ソファーでテレビを見ていても、もう隣に座ってくれる人はいない。
    友人もこの家の中では、隣に座って来れないのだ。

    せっかくの土曜日だ。聶の精肉店で、家政夫のお使いをする日だった。
    もうすぐセールが始まる時間だな、今日は誰があの人について行くんだろう?
    藍先生かな?

    なんて、妄想すればするほどたった半年間だったとはいえ、藍家が恋しくなる。
    こちらにきた時は、スマホくらいしか持っていなかったけれど
    大学の教科書やノートパソコンは、家政夫によって昨日のうちに渡されている。
    それらは、使いおわったらカバンに押し込んだままだ。

    藍啓仁は、家族での会話が足らないと言っていた。

    確かにその通りだと思うけれど、江楓眠は何も聞き入れて来れない。
    藍曦臣が、自分に手を出すなんてことはあり得ない!と告げた所で、聞く耳を持って来れなかった。
    あの人には好きな人がいるんだと言ったら、微妙な顔をされて眉間に皺を寄せていた。

    早くあの堅苦しくて家訓の多い家に、戻りたい、帰りたい。
    江家は自由に見えて、居場所がないようにも感じる。
    甘えた考えなのかもしれない。自分の家は、ここなのに他人の家に帰りたいだなんて思うのは……。
    でも、居場所を作って来れていた姉も義兄もいないのだ。
    友人だって、この家に住んでいるわけじゃない。父の命令で、ここにいるだけだ。

    今頃、藍曦臣はどうしているだろうか?

    そう考えると、再びため息が出てしまった。
    何度目かのため息をした時、パタンと本が閉じられる音が耳に届く。

    「まるで恋煩いですね」
    「はぁ?」

    恋煩い?それは、藍曦臣が食事も出来ないほどに思い煩っているやつか?

    「恋しい恋しいとため息をつかれてしまってはね」
    「別に、恋しいだなんて……」
    「本当に?誰を思って、ため息をついてたか言えますか?」

    友人の言葉に、江晩吟は口を閉ざした。
    誰を思ってため息をついていたか?藍家ーーー藍曦臣の事を思っていた。
    自覚すればするほど、顔が赤くなる。
    金曜日に、あの人が手を繋いでくるからだ、あの人が瞼に口づけをするからだ。
    思い出しては、会いたい話がしたいソファーで並んでテレビが見たい。我慢してた欲が溢れてくる。

    「お茶、淹れてきますね」

    友人は、そう言って立ち上がる。
    部屋から出ていくのを見届けて、江晩吟は避難用の靴を取り出して鞄を担いだ。
    今、藍家に帰ったら迷惑になるかもしれない。
    それでも、この家にはいたくなかった。
    自由なはずなのに、自由じゃない。
    息がしやすい場所を見つけてしまっては、息がしづらいこの場所にはいたくない。

    藍曦臣に、好きな人がいると解っていても、あの人の傍がいい。
    江家を継ぐのは、嫌じゃない。その為に、努力をしてきた。
    魏無羨に勝つことはできなくて、母の期待に応えられないけれど。
    誰かの安全と命を守っている父の仕事を、尊敬している。そして、自分でもそうなりたいと思っていた。

    だけど、もうーーー…

    江晩吟は、靴を履いて部屋の窓から飛び出していた。
    子供の頃から暮らしていた家なのだ、どこを通れば誰にも見つからないなどと言う事は解っていた。
    後で、友人にはスマホで謝ろう。
    彼なら「仕方ないですね」と笑ってくれるだろう……。

    ーーー誰もいなくなった江晩吟の部屋で、友人は肩をすくめていた。
    こうなる事は、解っていた。しかし、早すぎた。

    「……観世、澄はどこにいる?」

    一緒に来ていた江楓眠に、友人は向き合う。

    「社長なら、心当たりがあると思いますよ」
    「……あの子もか」

    落胆した江楓眠の声に、友人は憐れみを感じる。
    言葉たらずのこの家族は、屈折しすぎるか思いが大きすぎて相手に見えない愛情しか渡さない。

    「失礼ながら社長。晩吟は、江家を継ぐ事は嫌っていませんよ。
    社長の事も夫人の事もお嬢様の事も魏兄さんの事も、大好きです。
    でも、少しだけ自由にしてあげてはくれませんか?」


    ▼△▼△▼△▼△▼


    「え?えええ?」

    江厭離とカフェでお茶をしていた藍曦臣のスマホに、江晩吟から電話がかかってきた。
    今朝とは違って普通の声で話していて、彼の後ろに流れるノイズは外のようだった。

    「待って、晩吟。飛び出してきたって?ご実家を?」

    電話口で慌てながら、彼の姉をチラチラと見る。
    藍曦臣の言葉で、大体察しがついているのか「あら」と呟いている。

    「迎えにいくから、どこかわかる所にいてくれるかな?」

    電話を終えると藍曦臣は、江厭離に向き直る。

    「晩吟が、家出しました」
    「あら、早いわ」

    いつもなら、もう少し我慢できるだろうに……と言いたげである。

    「誰かが、そんなに恋しいのかしら」
    「……晩吟の友人がですか?」
    「阿澄も鈍いと思いましたけど、藍さんも鈍いんですね」
    「え?」
    「観世くんの事が好きなら、晩吟は家出なんてしませんよ。側にいるはずですから」
    「では、誰が?」

    藍曦臣は、首を捻る。
    まさか、叔父だろうか?それとも再従兄?可能性を考えると、焦ってしまうのか自分が候補に上がらない。

    「藍さん」
    「はい?」
    「クリスマスを待たないで、告白してしまえば簡単だと思いますよ」

    当たって砕ける事は、ないと思います。と、江厭離は笑って言った。


    ▼△▼△▼△▼△▼


    藍曦臣は、江晩吟がいる店へとやってきた。
    なんで、聶精肉店で待ってるだなんていうのだろうか。
    薄着で鼻と耳を赤くしながら、彼は待っていた。本社ではないから、聶兄弟はいない。
    大きなカバンと買い物袋をぶら下げて、こちらを振り向いた。

    その時に、花が咲くような笑顔を向けたのだ。
    安堵したような顔で、それでいて迷子の子供のように泣きそうな顔を見せる。

    「曦臣さん、見てくれ。セールに間に合った」
    「うん、よかったね」

    顔を赤くしながら笑う江晩吟に、何を言えばいいのかわからなくなる。
    つけていたマフラーをかければ「流石に持ってるよな」と呟く声が聞こえた。

    「晩吟、楽しみにしていますからね」
    「え?」
    「私のために作ってくれるマフラー…」

    藍曦臣は江晩吟の冷たくなった手をとって、その場から歩き出す。

    「帰りましょう」
    「どこに?」
    「それはーーー…」
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     藍曦臣は眠っただろうか。
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