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    🎍❄🍯🐶が来世で兄弟してる話
    進歩!

    #来世兄弟
    brothersInTheAfterlife
    #リビルディング
    rebuilding

    来世兄弟1 柔らかですべすべともしている……シーツかな、それに包まれている、と思う。気持ちが良くて暖かで、抜け出したくないなあ。でもそんな訳にはいかなくて。この居心地の良い離れ難い場所でも、抜け出さなければいけないときはある。それが今。
     仕方ない。目覚めるか。意を決して瞼をこじ開ける。
    「あ、おはよう」
     目に飛び込んできたのは綺麗な顔。美人と言われれば頷かれる、でもどこか甘さを含んだ顔。
     オレはこの顔を知っている。
    「みつやくん」
    「ん。ご飯できてっから。遅くならない内に下降りてこいよ」
     そのまま三ツ谷くんはドアを潜って出ていった。
     ベッドから上半身を起こして伸びをする。だんだん覚醒してくる脳。なんで三ツ谷くんがウチに居るんだ、と思っていたけれど段々思い出してきた。
     ああそうだった。
     オレたち、いま家族なんだった。

     階段を降りてドアを一枚開けるとそこは家族の憩い場、リビングダイニングになっている。三ツ谷くんはエプロンを付けていて洗い物と弁当作りを並行してくれていた。毎度のことながらいつも助かってます。
     ダイニングテーブルに目を向けるとぼーっと座っているだけの美丈夫。三ツ谷くんとはまた違った美の化身がそこにいた。毎度のことながら朝はずっとこんな感じ。起きてはくるけれど、覚醒せずに椅子にずっと座っている。これがウチの最年長であり長男なんだけれど。
    「イヌピーくんおはようございます」
    「……花垣か、おはよう」
    「はい」
     目が開ききってはいないけれど、こちらを向いて返事をしてくれた。これがイヌピーくんの通常運転なので気にしない。むしろ起きているだけ儲け物、ってやつ。
     三ツ谷くんとイヌピーくんは此処にいるけれど残る1人が見当たらない。まだ起きていないってことはないと思う。起きていなかったら三ツ谷くんの大声が飛ぶか、オレに起こすよう頼んでくるはずだから。
     じゃあ洗面所にでも居るかな。あいつの洗面台使用時間は割と長い。家族の中で2番目だから。1番は三ツ谷くん。ダントツ最下位はイヌピーくん。
     テーブルについて三ツ谷くんが用意してくれた朝食に手をつける。今日はパンとサラダ。三ツ谷くんの中では手抜きらしいんだけれど旨い。マジで頭上がらない。毎日用意する、という大変さを知っているので。
     イヌピーくんがあれから船を漕ぎ始めたのでイヌピーくんの口にトーストを突っ込む。食べれば覚醒するから。
     右手は自分の、左手は自分のトーストを食べていると廊下のドアが開いた。ようやくキマったんだろう。先制して声をかけた。
    「おはよ、千冬」
    「おはよ、相棒」
     洗面台で自分の髪型と格闘していた千冬。これで4人。全員同じ屋根の下で暮らす家族。


     タイムリープをしたのか、それとも所謂転生、ってやつをしたのかは正直オレにはわからない。けれど気づいたらオレはこの家に住んでいて3人の家族が居た。
     長男のイヌピーくん、次男の三ツ谷くん、三男と四男の双子でオレと千冬。どっちが上とかは分からない。だって気付いたらこんな状況だったから。赤ん坊のときから記憶があるわけではない。急に人格が変わったように記憶も塗り替えられたから。それは他の3人も同様で、だから誰も分からなかったんだ。どうしてこうなっているのか、とかオレと千冬のどっちが兄なのかっていうのも。
     それを深刻な問題にしているのはオレと千冬だけだったけれどね。イヌピーくんと三ツ谷くんはどうでもよさそうだった。そりゃ当事者以外にとってはどうでもいいことですもんね!!
     でも何も分からないとは言ったけれどわかることもある。この家の事情。オレたちは母親が違う、らしい。末っ子双子は同じ母親から生まれたらしいんだけれど、長男、次男、末っ子は母親が違う。父親は同じ。種馬か? と思ったんだけれど、まあ、そこはどうでも良かった。それを複雑だな〜とは思うけれどどうにも他人事に思えたから。オレたち全員中身は成人済みの大人だったし。
     ……あぁ、そうだ。それと大人のオレたちの記憶も穴があったりする。死んだのか死んでいないのか、死因は、とか。でもかつて特攻服着ていた時の共通の記憶はあるからそこまで困りはしなかった。大人になって働いていた頃の記憶も割とあるし。それにオレ以外にも何故かタイムリープして無かったことになった世界の記憶も持っていたり、ね。
     今は未成年の身体に収まってしまっているから、金さえあれば良かった。異母兄弟たちがどうしてこの一つの家で暮らしているのかも分からないけれど金とか諸々は不自由なく揃えてくれているらしいから、オレたちは深入りすることをやめた。この状況だけでも「なんで?」ってことが多いのに更に複雑な家庭環境を深掘りするのは自殺行為に等しい気がする。三ツ谷くんが「ま、いっか」と言ったのもあってオレたちは全員気にしないことにした。この家の決定権は基本的に次男の三ツ谷くんにある。イヌピーくんは投げっぱなし状態だし。
     そんな感じでオレたちは特に状況を把握することもなく、だらだらと与えられた家で過ごしている。言い忘れていたけれど全員小学生。……あ、あと名字も違う。全員前と同じ名字を名乗っている。戸籍上は同じ父方の“松野”らしいんだけれど、千冬以外は母方の名字を名乗っている。なんでかって? オレたちが乗り移る前のオレたちに聞いてほしい最初からこうだったんです! まあでもわかりやすいし呼び易いから個人的には助かっているけれどね。
     そんな感じでオレたちは一つ屋根の下、今を生きている。

    「「ごちそうさまでした!」」
    「美味かった」
    「お粗末様でした。そりゃあよかった。洗い物は水に浸けとけ」
    「はあーい」
    「いつもありがと三ツ谷くん!」
    「助かる」
    「これがオレの仕事だから気にすんな。そろそろ家出るぞ」
    「イヌピーくん行きますよー」
    「ちょっと待て」
     朝食を全員同じタイミングで食べ切り最後の支度をする。いつも朝は賑やかだ。
     これが日常。新しい環境と新しい家族。産まれ直して得たこの場。なにがどうしてこうなったのかは分からないけれど、精一杯与えられた環境を生きている。
     他の人たちがどうなっているのか、とかは気にならないと言って仕舞えば嘘になるけれど。今は覚醒したばっかりだから何も考えないようにした。みんなも敢えてその名を出すことはなかった。



     そんな日々はある日突然終わりを告げる。三ツ谷くんがなんとも言えない顔をして帰ってきたから。
     一学年の下のオレと千冬は時間割の関係で早めに帰宅していた。千冬と2人で遊んでいたところ三ツ谷くんのご帰宅。
    「三ツ谷くん?」
     いつもならすぐにただいま、とか言ってくれるのに反応すらなかったものだから声をかける。それに「あー」と声を漏らすけれど、変わらず煮え切らない様子。三ツ谷くんのこんな様子は珍しいものだから思わず2人顔を見合わせる。
     それは暫く続いたが、三ツ谷くんが重たげに口を開く。
    「……あのさ、ここがオレたちが生きてたより未来、ってのは知ってたよな」
    「そうっすね」
     今生きている年代がかつて生きていた年代より先なことは知っていた。テレビをつければ嫌でもわかるし、携帯がスマホになってたりするし、しらない技術もいっぱいあった。だからそう判断するのはおかしくはない。
     でも三ツ谷くんがこれを言ってくるってことは何かあったんだろう。ウチの頼れる次男は冗談は言いこそすれ、タチの悪いものは言ってこないから。
    「今日パソコンの授業あって、なんか検索してみようってなってさ」
     試しに自分の名前入れてみた、とのこと。戸籍上の松野隆ではなく三ツ谷隆で。
    「……したら、なんか、その」
     死亡記事出てきた。
    「え」
    「しッ!?」
    「……みる?」
     オレと千冬はぶんぶんと首を縦にふる。というかこの家にはパソコンもスマホもないけれどどうするんだろう、と思ったらプリントしてきたものを見せてくれた。先生の目を盗んでプリントするの大変だったんだからなー? と笑う三ツ谷くん。
     そのまま見せてもらうとそこには【三ツ谷隆 事故死】と書かれたネット記事。載せられている顔写真も大人になった三ツ谷くんそのもの。間違いないものだった。
    「う、わ」
     千冬が思わず声を漏らす。自分の死亡記事なんて見て気を良くする人はいないだろう。
     本人でないオレたちだって受けた衝撃はなかなかのものだった。
    「……あとさ、申し訳ねえんだけれど」
     恐る恐る口を開く三ツ谷くん。罪悪感が顔に浮かんでいる。
    「もしかしたらーって思ってお前らのも検索した、んだよな」
     そしたら死んでた。だって。
    「「……は!?!?」」
     訳がわからなかった世界がまた更に分からなくなった。

     三ツ谷くん曰く。
     パソコンの授業で自分の名前を検索したら死亡記事が出てきた。その“自分”はデザイナーで数々の賞を取ったり作品を残していた。残した作品は自分にとっては見覚えはなかった。けれど、自分が作りそうなものではあった。
     またもしかして、と思い現世の兄弟たちも調べてみると出てくる死亡記事。オレや千冬は世間に大体的に名を残すようなことをしていなかったらしいけれど、どうやら死んだ原因がどうもアレだったらしい。
     オレと千冬、あとまだ帰宅していないけれどイヌピーくん。それに三ツ谷くんも全員同じ死因。
     爆弾テロでの死亡。
     正直その記憶なんてないものだから「え、まじ? この現代日本で?」というのが先行した。というかテロって。テロ!?!?
     千冬も何も言えなくなっている。そりゃそうだ。テロなんてオレたちが生きていたときですら非現実的、どこか遠い世界の話でしかなかった。死とは割と近いところにあったけれど。やっぱり空想上に思えてくる。
     それに。
    「……オレたちが生きていた世界の地続き、ってことだよな」
     千冬が言う。今まで確信は無かった。違う世界なのかもとも思っていた。けれどこれで少しは考えてしまう。オレたちが生きていたであろう世界の続きの世界なのかもしれないって。
     オレたちにはその辺りの記憶がないから、あくまでも予想でしかないけれど。
    「イヌピー帰ってきたら、ちょっと外出てみるか」
     三ツ谷くんの言葉に頷いた。今までずっとこの家の中に居た。この4人でいればいいと思っていた。でも、そろそろ外に顔を向けてみてもいいのかもしれない。

     帰ってきたイヌピーくんにも同じことを話す。表情は変わらなかったけれど、多少なりとも驚いていた。そりゃそうだ。所謂同じ世界にそのまま転生をしているのかもしれないと言われたら。それに以前の死因だって。
     そのまま外に出てみる、というのには反対せずむしろ早く行こうと急かしたのはイヌピーくんだった。
     パソコンとスマホどちらもオレたちは所持していない。けれどそんなオレたちでも使える場所がある。学校はもう終わっているから違う場所。地域の子どもたちの味方である公立図書館。
     前生きていた頃は本と、あってもビデオ再生機くらいだった。でも今はパソコンも普通に置いてある。うーん現代の進歩。
     イヌピーくんが代表してキーボードを打ち込む。最初に打ち込む文字は“梵天”。かつての現代で最大犯罪組織として存在していた名前。オレがどうしても、と押した。全員梵天の記憶はあるらしくて賛成してくれた。
     オレにとっての最後の記憶は全員生きていて、マイキーくんも表の世界に生きていたから、恐らく大丈夫だとは思うけれど。
     結果は該当無しだった。それにほっと一息をついたけれど、イヌピーくんが待ったをかける。
    「東京卍會が出てきたが」
    「え?」
     指し示されたデスクトップを見るとそこにはばっちり【東京卍會】の文字があった。サーっと血の気がひく。もしかして最初の頃みたいに東京卍會が裏世界のトップに立っちゃった未来……!? と思ったけれどどうやら違うらしい。千冬に肩を叩かれ現実に戻される。
    「今では様々な業界に手を広げ躍進する東京卍會グループ……」
     三ツ谷くんが記事を読み上げる。……なるほどな。
    「東卍は一大グループ企業になってるってことか」
     そのまま【東京卍會】と検索ワードにいれてウェブサイトに辿り着く。
    「あ、副社長ドラケンだ」
    「マジ? ほんとだ。まあ妥当か」
    「場地さん専務!?!?!?」
    「え場地くんが!? ……マジだーー!!!!」
    「ま……ッ、に、にあわ……ククッ」
    「笑い堪え切れていないぞ三ツ谷」
    「まってマジで面白い」
    「一虎くん常務じゃん」
    「一虎くんに常務できんの!?!?」
    「なれてるってことは出来てんじゃねえのかな」
    「ココは……CFOか」
    「「「似合う〜〜」」」
     ウェブサイトの企業概要は流し見して早々に役員一覧を見た。そこには見知った名前が並びに並んでいる。系列会社に天竺の名を見つけ、社長にはばっちりイザナくんの名前もあった。真一郎くんとか初代黒龍の方々の名前はなかったんだけれどなにしてるんだろうか。
     並んだ役職と名前がどうも一致しなくて思わずツッコミを入れたり笑いが漏れる。場地くん専務にみんな死んだけれど。どの世界でも中学校は留年していたからちょっと心配にはなる。けれどあの場地くんだから持ち前の男気やカリスマでどうにかしているんだろうな。それか常務の一虎くんのサポートが大きかったりするのだろうか。実在をちょっと見てみたい。
     まあ一虎くんの常務もちょっと心配にはなってる。でも場地くんよりかは想像できる。千冬がちょっと渋い顔をしていたけれど。
     ココくんのCFOは完璧すぎて逆に何も言うことはないです。
     そのままオレたちは東京卍會の事業内容を見て行った。
     見るともういろんなものに手を出していることが分かる。バイクファッション芸能界飲食エトセトラ。イザナくんの会社の方を見ていると児童福祉事業だったりこども服関連だったり。見てみると各々やりたいことをやっているということが見て取れる。東京卍會という会社がここまで手を広げているのも、仲間達の夢ややりたいことを優先にして考えた結果なんだろうな。マイキーくんらしい。
     あ、誰も口にはしなかったけれど代表取締役社長はマイキーくんでした。そりゃそうだ。マイキーくんはみんなのことが大好きだから。オレがマイキーくんの何を知っているのかと言われてしまえば何も言い返せないが。
     そのままウェブサイトを見ていると気になる項目があった。
    「“遠くに旅立って行った仲間たちへ”……?」
     企業概要、事業内容、お問い合わせ、採用内容と並ぶ中にそれはあった。あからさまに違うその項目から目を離せない。イヌピーくんは誰に聞くまでもなくそれをクリックした。
     出てきたページは白い背景に手紙のような文章体。……いや、まさしく手紙そのものだった。
     “旅立った4人の仲間たちへ”
     その文言から始まる文章はこうだった。
     “今は遠くへ旅立った、その命の灯火が絶えてしまった友人たち。あれは突然の出来事だった。これから更に発展させていこうとしたときだった。
     たまたま集っていた4人が、たまたまそこにあった爆弾によって命を散らした。そう聞かされた時、夢や幻だとしか考えられなかった。耳も目も疑った。けれどそれはどうしようもなく現実そのものだった。誰も仕事が手に付かなくなった。日常生活ですらもまま成らなかった者もいる。
     このまま投げ出してしまいたくなった。ぽっかりと穴が空いてしまった、虚空のようになってしまった。この世に留まっている意味すらないのでは、と考えたこともある。
     けれどそれは違うのだと思い直した。オレたちは前を向かなくてはならない。
     あいつらに助けられた分、生きていく。残した世界を歩んでいく。この世界を発展させる。それが残された者の使命だから。
     敬愛する4人の友人たち。また来世で。”
    「「…………」」
     そのページにはその文章だけが存在していた。
     誰も声には出さずに、ただ淡々と読んでいた。ここに居る全員、暫く声を出すことが叶わなかった。
     なんだろう。なんて言ったら良いのだろう。現にオレたちは爆破テロによって死んだんだろう。その辺りの記憶は再三になってしまうけれど無い。だから他人事の様に思える。
     本来ならこれらの言葉は胸に響いて仕方がない筈なのに。
     どうしても、それは。他人に向けられたものだとしか、思えなくて。
    「ちゃんと昇華されてるんでしょうね」
     千冬がそのまま続ける。
    「恐らく前のオレたちが死んで10年以上は経ってます。イヌピーくんなんて来年は中学生だし。……いつかのマイキーくんが梵天の首領となってた頃みたいに、思い出話に昇華する」
     いつか人は受け入れられなかったことでも受け入れてしまう。真一郎くんやエマちゃん、場地くん、ドラケンくんが死んだときもあった。でもその過去の未来では受け入れて前を向いて生活をしていたときもあった。
     10年なんて月日が経ったら昇華するなんて割と容易いのかも、って。


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    PROGRESSリビルディング12話/久々更新で申し訳。🈁🐶につなげたい話。ちゃんと終わらせたいので少し駆け足気味になります。
    来世兄弟12「た、だいまっ!」
    「うお、おかえり」
     夕食の準備をしていたら青宗が勢いよくドアを開けて飛び込んできた。肩を思いっきり上下させて呼吸を整えている。全力疾走してきたということか。けれど青宗がこうなるってことは何かがあったんだろう。
     菜箸を置いて青宗の方へ近寄り片手を差し出した。
    「どうしたんだよ」
     青宗は素直に右手を乗せて顔を上げる。その顔は汗で塗れていた。白い肌のせいか一層赤く見える。少しだけその体勢のまま息を整えて口を開けた。
    「いや、……ココが」
    「あー」
     成程な。大体を理解した。
     青宗はオレたち兄弟の中で一番旧友たちと関わりたくないと思っている人間だろう。だから色々と慎重に考えていたのはなんだかんだ青宗だし、オレが考えて導いても最終決定権は青宗だった。特にココくんに対しては、青宗自身のことを完全に忘れて欲しいようでチラつかせるようなこともしない。すれ違うことも許さない。あの業務用スーパーで出会ったのも偶然からきた割とやばいハプニングだったけれど、どうにか切り抜けたし。
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