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    リビルディング/🐶の話。🥥のことばっかり考えてる。
    ❄️の話より少し前。支部に上げる際色々直す可能性あり。

    #来世兄弟
    brothersInTheAfterlife
    #リビルディング
    rebuilding

    来世兄弟6 新しい人生を生き直す。それは中々悪くないものだと、そう感じている。
     生き直しというものはなんとも不思議なもので、同じ名前や同じような身体を持っていても環境も時代も何もかもが違う。
     名字は違う。この身体に通っている血も異なっている。なのに身体は前と同じというものは不思議で。
     様々な不思議に囲まれながら今を生きている。
     弟であったオレは今では4人兄弟の長男というのも中々。役目を次男に投げているのは置いておいて。
    ……あぁ、身体は同じと言ったのは訂正。火傷跡は存在していない。当たり前だ、火事に焼かれていないから。
     限られた資源と金で慎ましく生きる。親が居ないのも問題はない。一応親権を持っている父親の遠縁らしい人とは折り合いが悪く全く会っていないけれど、この兄弟4人で暮らしている日々は本当に悪くない。何なら楽しいとまで言える。
     元仲間、現家族が好きだ。好きで、愛しくて、守っていこうと。長男だからなのか。いや、普通に。そう考えていて。コイツらにはぜってぇ不自由させねえって決めたから。
     オレは特になにがやりたい、とかそういうのは無かったし、漠然とまたバイクに関わるなにかがしてえな程度だった。バイク今持ってねえけど。維持費もかかるし今持とうとは思っていなかった。いつかは欲しい。
     だから学校がどこが良いとかは無くて。普通に近くの学校行けばいいか、と。近かったら兄弟たちに何かあればすぐに分かる。
     隆が行きたそうにしている学校があるのは知っていた。服飾に滅茶苦茶強い中高一貫校。高校からの編入は出来ない学校で、入学するには中学から入学するしかない。もちろん私立。
     私立ってのは学費が高え、あと聞いた話だと制服も公立と比べたら高くなる場合が多い。セーターとか指定が多いから。
     口ではオレと同じ学校に行くって言ってるけれど、あれは家族を考えてのことだ。隆は今回こそと頑張って身長を伸ばそうとしているけれど、まあオレよりかは小さめで止まると思う。言わねえけど。大きくなろうが小さくなろうが、どちらにしろ最初の方はオレのお下がりの制服が使えるから、とかなんとか。
     オレはやりたいことが高校に上がってバイトという形でもできるから良いけれど、隆は今年中に決めねえと取り返しがつかないだろう。
     正直な話、隆があの私立中に行くと金は厳しくなる。生活はできるが贅沢はできねえ。双子のこれからの学費も、まあオレが死ぬ程バイト、そのあと高卒で就職すればいけるかな程度。
     ……やっぱ金、でけえな。ダイニングテーブルに通帳を乗せて睨む。
     金のことを考えると自然とココを思い出す。今になって実感する、ココの金を稼ぐ才能は天賦の才脳だったと。離れた記憶もあるけれど、この軸ではずっと一緒にいたからちゃんと気付いてはいなかった。自分がこの状況になって漸く気付く。狙われるのも分かってしまった。
     同時にココに甘えっぱなしであったことも。共に居てくれたことの有難み。金があるからじゃない。1種の安定剤のようにも感じていた。
     この前、隆と共に出掛けた先でココに会った。一目見ただけで安心していた自分がいた。何かが落ち着いた気がした。
     隆は引き離したことに謝っていたけれど、あれはあれで助かっていた。あのままだったらココに声を掛け、手を取っていた。
     もうオレは過去の亡霊であるのに。記憶上の存在である筈なのに。そうでなければ。
     赤音が死んでしまった時の記憶を思い起こす。あのときはココは引きずっていた。赤音はずっとココの中に残っていた。
     オレは重石になってはいけない。
     昇華しているのは良いことだと思った。そう、そのまま忘れてくれれば良い。赤音と幸せにでもなってくれていれば更に良し、なんて。
     ……オレは金のことを考えると常に思い出すが。いや、ココ=金ということではなく連想ゲームのように出てくるだけで。なんで言い訳してるんだ? 誰に。
     まぁ、目先の問題は金だ。オレのメンタルは置いておく。またどこかで偶然見ることができればそれで良いし、今は家族でも少しは落ち着けるから。
     まだ中学生の身だと何も出来ない。援助を募ることもできない。親族の類は居ない様なものだ。親権を持っている親戚はオレたちに興味がない。
     今回はアングラなことには突っ込まないと決めている。オレ1人だったのなら遠慮なく突っ込んだ。でも今は長男だ、弟達が居る。長男は家族を守るものなんだろう。
     所謂品行方正、とまではいかないけれど学校では大人しくしているつもりだ。オレが何かをすれば下にも迷惑がいく。噂はなんとやら。
     絡んできそうな奴は前世やらの記憶で何となくわかる。それを避けていれば問題は無かった。
     ココの稼ぎ方は裏に片足踏み入れていた。だからそういう稼ぎ方もできない。もしやったとしてもココみたいに上手くはいかねえだろうけれど。
     あと話が少し変わるが必要なものを考えると携帯が必須だと感じる。スマホまではいかなくていい、通信機器がいる。周りの友人たちは殆ど持っている。持っていない方が珍しい。小学校時代もだ。
     不便だなとは家族は言わねえけれど思っている。……通信費、な……。
     結局金、金、金。……ハァ。あと契約がいるんだろう、親の許諾も要るだろうな。まだ義務教育中だ。
     そういえば前回はどうしたんだっけ。……ココだな。
     クソ、結局これか。
     どれだけココに頼り切っていたのか、その事実ばかり思い起こされる。嫌になる。この事実に。今までの記憶も思い起こして。
     ……ハァ。ため息が止まらない。
    「……どうしたのそんなため息ついて」
     声がした方を見ると武道。もうそんな時間だったか。
    「おかえり」
    「ただいま」
    「千冬は?」
     いつもセットな2人だから思わず聞く。今日は空手教室の日だった気がする。
    「なんか行きたいところがあるんだって」
     だから武道だけ先に帰宅したのか。珍しい、千冬が武道を置いていくなんて。どちらかというと千冬が武道に引っ付いていることが多かったから。
     双子も前と変わらないように見えて、関係性は割と新しいものになっているように思える。ずっと一緒、どこにいくにしても。相棒と呼んではいるけれど、どちらかと言うと片割れと呼ぶことが正しいように思う。
     いつかの決別するオレとココのように。でも、オレたちとは違うような。なんとも上手く言えないけれど。結局どっちなんだ、という。
     武道が後から覗き込んでくる。少し汗の匂いがする。空手で汗をしっかりと流してきたみたいで何より。
    「せい兄、お兄ちゃんみたいなことしてる」
    「は? お前らの長男だが?」
    「いやそうなんだけど」
     思わず凄んでしまった。正真正銘お前達の長男なんだが。
    「割とたか兄に投げていることが多いからなーって思って」
     否定できない。オレがやっていることなんて隆と比べたら些細なことであるのは確かではあるが。
    「でもちゃんと知ってるから、オレも千冬も。せい兄がオレ達のこと考えてくれてるって」
     武道が笑う。
    「いつもありがと!」
     ……これ、だな。現世になっての1番の収穫。
     武道のまだ一度も染めていない癖毛を両手で掻き回す。やめて、と聞こえるがやめない。暫くこうされていろ。
     前の人生の有り難みも、隣にいた存在も惜しんでも戻らない。昇華するべきなんだ。あいつが前を向いているのなら。
     ありがとう。口にはまだ出せないけれど、弟でしかなかったオレを兄にさせてくれて。
     1人じゃねえんだ、大丈夫。4人。次はオレがどうにかしてやる、弟たち3人を。ココにしてもらっていたことを弟達に還元できれば。
     まずは隆、だな。
    「せい兄離して!」
    「もうちょっと」
    「もー!!!」
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    PROGRESSリビルディング12話/久々更新で申し訳。🈁🐶につなげたい話。ちゃんと終わらせたいので少し駆け足気味になります。
    来世兄弟12「た、だいまっ!」
    「うお、おかえり」
     夕食の準備をしていたら青宗が勢いよくドアを開けて飛び込んできた。肩を思いっきり上下させて呼吸を整えている。全力疾走してきたということか。けれど青宗がこうなるってことは何かがあったんだろう。
     菜箸を置いて青宗の方へ近寄り片手を差し出した。
    「どうしたんだよ」
     青宗は素直に右手を乗せて顔を上げる。その顔は汗で塗れていた。白い肌のせいか一層赤く見える。少しだけその体勢のまま息を整えて口を開けた。
    「いや、……ココが」
    「あー」
     成程な。大体を理解した。
     青宗はオレたち兄弟の中で一番旧友たちと関わりたくないと思っている人間だろう。だから色々と慎重に考えていたのはなんだかんだ青宗だし、オレが考えて導いても最終決定権は青宗だった。特にココくんに対しては、青宗自身のことを完全に忘れて欲しいようでチラつかせるようなこともしない。すれ違うことも許さない。あの業務用スーパーで出会ったのも偶然からきた割とやばいハプニングだったけれど、どうにか切り抜けたし。
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