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    #来世兄弟
    brothersInTheAfterlife
    #リビルディング
    rebuilding

    来世兄弟4 ここからはオレと青宗が大寿くんとココくんに会った時の話なんだけれど。
     ……あ、最初は九井くんって呼んでたんだけれどココで良いって青宗が言うものだからこうなってる。
     その日はから揚げにしようとあらかじめ決めてあって材料も当日買おうつもりだった。我が家は育ちざかりの男四人家族だし、みんな割と普通に食べるしで生半可な量だとすぐになくなる。こういう“みんなが好き”という料理を作るときは、業務用スーパーに行くのが常だった。
     中学に上がって忙しくはなったものの、部活とかには入っていない青宗は割と早めに帰ってくる。空手に通ってる末っ子の方が遅いときがあるくらい。だから最近の御供はもっぱら青宗だった。
    「業務スーパー行くからついてきてくんね?」
    「いつものとこか。歩き?」
    「んー、鶏もも肉ある程度買いこむつもりだし自転車あった方が良いかな」
    「そうか」
     ウチから業務用スーパーまでは徒歩圏内にある。大変ありがたいことに。ただいつも買うときは大量になる事が多く、まだ小学生の腕では支えきれないことが多いので荷物入れを兼ねて自転車を使うことが多い。
     今日は青宗が居ると言っても大量になると予想できる。だから自転車を使うことにした。
    「付き合わせてわりぃな」
    「見てて楽しいから構わない」
     わかる。業務用スーパー見てるだけで楽しいよな。だから余計に買いこんじゃうことが多いんだけれど。

     前青宗、後ろオレで縦に並んで自転車を漕ぐ。勿論二つともママチャリ。何年選手だろうなー結構使ってるけれど。あ、まって青宗早い。くそ、まってほしい。足のリーチかくそ!! 青宗もう結構成長してるのもありそう。
     どうにか青宗と離されずに漕ぐ。徒歩圏内にあるのだから直ぐに到着。平日の夕方だから人は多そう。会社帰りのサラリーマンやOL、主婦とかも御用達であるし。駐車場も完備している此処は遠くからも来る人は来るので、いつも大体賑わっている。
     駐輪場に留めて施錠もして、大容量のマイバックを持って乗り込んだ。中に入るとやっぱり賑わっている。
    「今日は何がいるんだ?」
     えーっと今日の唐揚げ用の鶏もも肉。ニンニクと酒はあったはず……ショウガも残ってる、片栗粉と小麦粉は心もとなかった気がするから。
    「肉はオレが見てくるから片栗粉と小麦粉持ってきて。いつものやつ」
    「分かった」
     そうすると意気揚々と駆け出す。買い物好きなんかな青宗、今度もっと連れ出そうか。
     自分の目当ての鶏もも肉はこういうスーパーでは1kgごと冷凍で売っていたりする。目当てはそれ。
     冷凍肉コーナーに行くと丁度今月の特売品として安売りしていたので、有難く4袋かごにいれる。これ全部から揚げにしても良いし、他の料理に流用してもいい。因みに我が家はオレが料理しやすいように、と双子や青宗から言われて冷蔵庫だけは高いものを買ってもらっている。冷凍庫、めっちゃデカいから割と買い込んでも入らないということにはならない。マジで助かっている。
     から揚げなんて作りすぎても弁当に入れれるし、揚げる前に下ごしらえだけしたものを冷蔵保存しておけばある程度持つ。だから4kg買っても大丈夫だろう。
    「隆」
    「お、サンキュー」
     青宗がいつもの片栗粉と小麦粉を持ってきてくれた。これは割と普通のスーパーでも売っているようなサイズのものをいつも買う。使うっちゃ使うんだけれど粉類って管理がな……パンケーキシンドロームになんてなってもらったら困るし。
     これでから揚げはできるんだけれど、……あ、そうだ。
    「青宗、ハンバーグとコロッケどっちがいい?」
    「ハンバーグで」
    「おっけ」
     場所を移動して既製品の冷凍コーナーに行く。20個入ってて950円のハンバーグあんだよねここに。一個50円未満、財布に優しくて最高。
     ん、と……これで今日買うものは全部、か?
    「確かパスタが終わりかけてた気がする」
    「マジ? 買うか」
     パスタも我が家にとっては欠かせないもの。昼飯とかパスタが多いかな。一気に量作れるし、何より安い。まあ食べ過ぎると太るからほどほどに、って感じだけれど。これは炭水化物系全部に言えるか。
     えっとパスタ麺パスタ麺……、スーパーで上にぶら下がっている分類の看板を見ようと顔を上げた時だった。
     ――え、まって。
     それを見た瞬間青宗の腕を掴んだ。あれは、まずいだろ。青宗と共にスナック菓子類と粉類の陳列棚の間に滑り込んだ。のぞき込んだり入ってこないと見えない。
    「どうしたんだ隆、急に」
    「居た」
    「なにが、」
    「大寿くんとココくん」
    「ッ」
     籠を持って二人で歩いている大寿くんとココくんが確かにそこに居た。
    「見間違いでは、なく?」
     青宗の目が揺れている。分かるよ。
     オレの記憶上よりかは圧倒的に年上になっているけれど、たしかにあれは間違いないと思う。少なくとも大寿くんは間違いない、一瞬しか見ていないけれど首元から覗く刺繡はバッチリ見えた。
    「どうする」
    「……ココはマズい。見られたらバレる可能性が段違いだ」
    「幼馴染、だもんね」
     オレは大丈夫。大寿くんは交流はあったけれど、その交流が生まれたのはあの聖夜決戦のときから。八戒か柚葉だったらまずかった可能性はあるが。
     つか似合わねえ。なんでオレが前生きていたときからいくつかの店のオーナーやってた大寿くんと、東卍のCFOのココくんがこの業務スーパーにいるんだよ。
    「逃げるといっても……」
    「会計がな~……」
     終わってねえんだよな。パスタはまあまた次来るとして、一度かごに入れた冷凍食品を放置して逃げるなんてことしたくはない。廃棄の道しかないからだ。そんなの店にも食品にも申し訳ねえだろ。
     ここからレジダッシュ……いや現実的に考えて無理。なら大寿くんたちが退店するまで待つか? いやこの冷凍肉抱えたままいつ終わるか分からんことをしたくねえ……。
     どうにか頭脳を回しながら良い策はないか考える。
    「隆」
    「ン、なに?」
    「我儘を言っても良いか」
    「内容による」
     いつになく真顔できれいな顔を見せてくる。これは大体マジの顔、最近になってきて漸く分かってきた。
    「ココを一目見たい」
     ウンそう来ちゃったか……なるほどね。うーん……なるべく、叶えてやりたいとは思うけれど。
    「隆が会計している間に」
    「いやちょっと待って」
     青宗の言葉を遮って言う。
    「まずオレが会計する。その間青宗は此処に居て。終わったらまた戻ってくるから、そのときにしよう」
     会計して自転車の鍵だけ開けてくる。そして見られたらダッシュで外に出て自転車盛漕ぎ。多分これが一番活路を見出せる、気がしてくる。荷物もちょっと怖いけれど自転車の前かごに入れたままで。
     もし仮にバレて追いつかれたとしても相手はもう30代半ば。体力では中学生、小学生に軍配が上がる、筈。
     オレが戻ってくる理由としては追いかけられた時に分断しやすいから。1人より2人だ。
    「どう?」
    「どう、って……。それだと隆を巻き込むことに」
     青宗の顔が曇る。自分の我儘に他人を巻き込むなんてあまりいい気がしないのだろう。
     でもいいんだ。
    「どんなときも一緒。家族だから」
     オレたちは仲間だったけれど、今は家族。強固な絆を得ているのだから。

     作戦決行。大寿くんたちは酒のコーナーに居た。……あれかな、仲間内の宅飲みがあってつまみと一緒に買いに来たパターンか。大人数だったら業務スーパーを選んだのも何となくわかる。
    「会計してくるわ」
    「頼む」
     視線が酒を向いているときにそそくさとレジへ向かう。運が良いことに誰も並んでいなかった。夕方なら基本並ぶんだけれど、この時ばかりは運が味方したかな。
     籠にマイバックを掛けてそのまま入れてもらった。ポイントカードもバッチリ出して会計終了。そのまま自転車の籠にイン。自転車の鍵も開けていつでも逃げ出す準備は出来た。防犯はちょっと怖いけれど一瞬だ、どうにか持っててほしい。
     よし待ってろ青宗。今いく、と店の中を小走りで駆けて行った。
     一つ向こうの棚に居たはず。と人を避けながら歩いていると先ほどのスナック菓子類の棚に着いた。
    「せい、」
     普通の声量で声をかけようとした。待たせたな、とだけ言うつもりで。
     でも想定していた光景ではなかった。いや、ある意味想定内だったかもしれない。
    「イヌピー……?」
     オレの目の前に映るのは、互いが互いを見た状態のまま微動だにしない青宗とココくんだった。ココくんは酒が入ったかごを落としているおまけ付き。
     いやこれ……つ、詰み……。
     いやまだだ本人だと確定したわけじゃない。させるな。
     ココくんは夢か? 幻想か? とでも言いたげななんとも言えない顔をしていた。瞳孔が開いて揺れている。十数年前に死んだ親友だ、そういう反応をとられるのも分かってしまう。自分は置いて行った側なのに。
     青宗もこのままじゃ引きずられる。一目見たがった、ということはココくんに何かしらの感情を抱いている。言い方がアレだけれど未練があるということ。
     本当なら話をさせてあげたい気持ちはある。だって十数年以来の再会。話したいことや謝りたいことなんてたくさんあるに決まっている。
     でもこういうとき、オレたちはどうするか決めた。あいつらの中でオレたちが昇華されているのなら、オレたちもオレたちの新しい人生を歩もうって。そう決めたのだから。
    「――兄貴、お待たせ!」
     青宗なんて呼んだら確定してしまうから。
     その声が聞こえた青宗はハッとして“戻ってきた”。その目がしっかりこっちを見たことを確認して、青宗の腕を掴む。そのまま出口に向かって駆け出した。
     ごめんねココくん、青宗。胸にそう秘めて。
     ココくんがそのまま追ってくる気配は無かった。

     店の外に出て、自分達の自転車の前で息を落ち着かせる。心臓が煩い。思っていたより緊張していたのか。汗も急に出てきた。
     自転車を漕いで帰る気にもなれず、そのまま2人で自転車を押しながら帰った。追いかけてくる感じはしなかったから。
     迷惑だと思うけれど、2人並んで帰る。
    「……ごめん、青宗」
     顔が下を向く。なんか、本当に悪いことをしてしまった気になっていた。
    「謝るのはこっちだ。引き摺られそうだった」
     あのまま声を掛けなかったら、青宗はそのままココくんの手をとっていたと思う。オレが引っ張ったのが正解なのかは分からない。
    「あれが最善だったと思う。……この姿はダメだな」
     青宗が憂いを帯びた顔でいう。本当に絵になる男。今回は火傷痕もなく、以前も綺麗だったけれど今回は芸術品のようで。
     この姿がダメ、というのは中学生の姿。その時にはみんなと会っていたから。交流が深くなっていた頃だから。色々激動でもあったから記憶に染み付いている。
    「でも、ココの姿を見れて良かった。ありがとう隆」
    「いや、」
     オレは礼を言われるようなことなんて何もしていない。みんなで決めたことを守ろうとしただけのヤな奴だよ。
     そう吐き出したかったけれど飲み込んだ。青宗の顔が本音であると語っていたから。
     ……なんか気が沈んでしまったから、気分転換に鶏もも肉はすべて唐揚げにしてしまおう。



    「どうしたそんなところ突っ立って」
    「……なあ大寿」
    「あ?」
    「さっき、イヌピーが居た、気がして」
    「…………もう13年前、だぞ」
    「そうだよ、な……イヌピーは、もう」
    「ほら戻るぞ。あいつらも酒を待ってる」
    「……わかった」





     とあるマンションの一室。そこに入る男がいた。手には湯気が立つうどん。
     その男はノックもせずに入り、お咎めもなにもなかったのだから互いの関係性が深いことがわかる。
     部屋の主人はベッドに臥せっていた。入室してきた男はベッドの横にある椅子に腰掛ける。
    「調子は?」
     男がそう問いかけると掛け布団がもぞもぞと動いて部屋の主人が顔を出した。
     部屋の主人、佐野万次郎は気だるげでお世辞にも調子が良さそうとは言えない。隈も酷い。
     椅子に腰掛ける男、龍宮寺堅はそれを見てうどんをサイドテーブルへと置いた。
    「今日も悪そうだな。寝てろ」
    「……うどんありがと、後で食べる」
     寝てろと言った堅の言葉を軽く無視して、上半身だけ起き上がらせた。
     万次郎はここ暫く臥せっていた。医者に聞いても不明、だけれど関係者全員は何となく理由は分かっている。
     これは13年前から続いているのだから。
    「この時期はホントにだめ」
     13年前のあの日から万次郎は、この桜の舞う季節に決まって体調を崩す。
     愛した人と親愛なる仲間を亡くしたのも、この桜が舞う季節だった。
     桜が舞うように命が消えたあの日から、万次郎の何かが壊れていた。
     もう彼は戻ってこないから一生治ることがない彼の古傷。
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    PROGRESSリビルディング12話/久々更新で申し訳。🈁🐶につなげたい話。ちゃんと終わらせたいので少し駆け足気味になります。
    来世兄弟12「た、だいまっ!」
    「うお、おかえり」
     夕食の準備をしていたら青宗が勢いよくドアを開けて飛び込んできた。肩を思いっきり上下させて呼吸を整えている。全力疾走してきたということか。けれど青宗がこうなるってことは何かがあったんだろう。
     菜箸を置いて青宗の方へ近寄り片手を差し出した。
    「どうしたんだよ」
     青宗は素直に右手を乗せて顔を上げる。その顔は汗で塗れていた。白い肌のせいか一層赤く見える。少しだけその体勢のまま息を整えて口を開けた。
    「いや、……ココが」
    「あー」
     成程な。大体を理解した。
     青宗はオレたち兄弟の中で一番旧友たちと関わりたくないと思っている人間だろう。だから色々と慎重に考えていたのはなんだかんだ青宗だし、オレが考えて導いても最終決定権は青宗だった。特にココくんに対しては、青宗自身のことを完全に忘れて欲しいようでチラつかせるようなこともしない。すれ違うことも許さない。あの業務用スーパーで出会ったのも偶然からきた割とやばいハプニングだったけれど、どうにか切り抜けたし。
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