来世兄弟2「思ったんだけどさ」
三ツ谷くんが夕ご飯を食べている最中に言い出した。全員箸を止めて彼の方を見る。
「オレたち前世のことは置いておいて家族になろうって言っただろ。なら呼び方変えね?」
「それもそうか」
確かに一理あるかもしれない。ずっと前みたいにイヌピーくんや三ツ谷くんと呼んでいたけれど、彼らは今そのあだ名の由来の文字を持っていない。千冬はそのままだけれど。
「え、じゃあオレとタケミっちは2人のことお兄ちゃんって呼べばいいんですかね?」
あ、そうか。そうなるのか。2人を兄と……なんか気恥ずかしいかも。
「呼び方は好きにしてもらっていいんだが」
「どっちもお兄ちゃんだと区別つかなくね?」
じゃあ兄貴とお兄ちゃんと分けるとか。……いやなんか違うだろそれも。じゃあなんだ、えーっと。
「せい兄とたか兄、でどうです?」
あ、それいいかも。“せいにい”と“たかにい”。
「ちょっとエマちゃん思い出すけどいいんじゃない?」
「だよな」
千冬と顔を合わせて笑った。何故だかとてもしっくりきたし。うん、満足。
「せいにい」
「たかにい」
2人がちょっと照れている。特にイヌ、……せい兄のほうが。
……ああそうか、せい兄は今迄弟でしかなかったからか。兄と呼ばれるのはどの軸でも初めて。三ツ谷くん、たか兄はお兄ちゃんであったからそこまでって感じ。
「あ、千冬」
「はい?」
たか兄に千冬が呼ばれきょとんとしている。
「タケミっちもだけど、敬語辞めな。オレたち家族、だからさ」
……あ。
言われて気がついた。また千冬と目が合う。
「……完全に無意識だった……」
「なんか、2人と喋ってるって思ってたら敬語になってた……」
「なんそれ」
たか兄がくすくすと笑う。たか兄が言ったことは最もだ。家族なのだから、オレたちは。
「これからはなるべく外して、な?」
う、うわたか兄のウインク威力たか!! これは死人が出る。間違いない。
そんな風に言われてしまったら。
「……善処します!」
「頑張ります!」
「もう敬語に戻ってんだわ」
今度は割と豪快に笑い出した。
「――隆」
「ァ!?」
ここで今迄静観していたせい兄がたか兄に向けて声をかけた。それを受けたたか兄は割とすごい悲鳴を上げている。
でもそうなるのもちょっとわかる。あのせい兄の顔でそう言われたら……クるよね!
「武道」
「ンフゥ」
「何その声」
やばい、オレも割と変な声が出た。いや無理だってこの顔!
「千冬」
「はい」
なんっっで千冬は普通に返事ができてんだよ!!
そこまで動揺していないし。という目で見つめたら。
「流れで来るのが分かってたらそこまで」
そっか。逆に来ない方がおかしいもんな、武道理解した。
「3人とも」
その声でまたせい兄に意識を戻される。
「今迄もだったが、これからもまた大変なことが起こるだろう」
一息。
「それでも4人で手を取り合っていけば乗り越えられる、筈だ」
「これからもどうぞ、よろしく」
せい兄が宣誓する。そんなの、オレたちの答えはさ。
「当然」
「もちろん」
「よろしく!」
これからはオレたち4人で生きていく。でも、不思議と心配はしていない。だって、なんでもできてしまいそうな気がするから。
「ところで隆はオレのことをなんて呼んでくれる?」
「ぇあ!?」
因みにこれは青宗で落ち着いたらしい。
……あ、そうそう。オレを呼ぶのもタケミっちではなくそのまま武道になった。家族だし、らしい。千冬はそのままで申し訳ねえなってたか兄は言っていたけれど、千冬は嬉しそうだったから大丈夫。