On your marks 「Scout、君は今から私の嫁だ」
「……………………は?」
訪ねたい場所があるのだが誰か護衛を頼めないか、というドクターの言葉にいちもにもなく手を上げたのはScoutだった。街道からも外れた小さな町は貧しいながらもどこか長閑な雰囲気が残っていて、空高いこの季節にいち早く収穫のシーズンを迎えているようだった。大仕事を終え一段落というタイミングは人心というものは寛大になるもので、あやしい風体の客人がふらりと迷い込んでも別段気にも留められないのは幸いである。サルカズの角を隠さずとも石も罵声も飛んでこないのは久しぶりだとともすれば緩みかける気を引き締めていると、ドクターが何度も引き止められながら扉から出てきた。
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