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DOODLESco博、博さんから吸いかけの煙草をもらった話。間接キッス!!!!!!!!私もモブ新兵になって密かなSco博を目撃してえーーーーcigarette break 天幕からふらりと現れたその姿に、今日はずいぶんとくたびれているなとScoutは火を付けたばかりの煙草をくわえながらゆるりと片手をあげた。
「火は要るか?」
「あー……すまん、たすかる」
ふらふらと覚束ない足取りで天幕から出て来るなり、Scoutの隣へと吸い込まれるように収まった男は、よれた煙草をくわえたはいいものの火種をどこかへやってしまったらしい。バタバタと死んだ目であちらこちらのポケットを叩いていたのを流石に見かねてScoutはライターを差し出してやったが、礼とともにしみじみと煙を吸い込んで天を仰ぐその目元には、くっきりと黒い隈が刻まれていた。
「信じられるか? この私が、本日最初の一本なんだ。この私がだぞ」
2027「火は要るか?」
「あー……すまん、たすかる」
ふらふらと覚束ない足取りで天幕から出て来るなり、Scoutの隣へと吸い込まれるように収まった男は、よれた煙草をくわえたはいいものの火種をどこかへやってしまったらしい。バタバタと死んだ目であちらこちらのポケットを叩いていたのを流石に見かねてScoutはライターを差し出してやったが、礼とともにしみじみと煙を吸い込んで天を仰ぐその目元には、くっきりと黒い隈が刻まれていた。
「信じられるか? この私が、本日最初の一本なんだ。この私がだぞ」
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DOODLESco博、成り行きで衆人環視の中でキスする話。「…というわけで私と彼の初キスはコーヒーとドーナツの味だったんだ」「キャー!!その話詳しく!!」(背後で盛大にビールを噴くSc)
キスの日記念日「本日は『キスの日』ですので、スタッフの前でキスをしていただきますとペア入場券が半額になりまーす」
「は?」
びしりと固まったScoutの視界の端で、形の良い頭がなるほど、と小さく頷いたのが見えた。
どうしてそんな事態に陥っているのかと呆れられたところでScoutに言えることはひとつしかない。ドクターに聞いてくれ、である。次の会合場所の下見のためにドクターとScoutがクルビアのとある移動都市に到着したのは昨日のことだった。しかし入管でのトラブルのためにドクターが持ち前の頭脳と弁舌と少しどころではない金銭を消費した結果、『些細な記載ミス』は無事に何事もなく解決し、しかし二人が街に放り出されたのは既にたっぷりと日も暮れた頃だったのである。ずいぶんと軽くなってしまった懐を抱えながらもかろうじて取り戻せた荷物を抱えて宿へとたどり着けたときには、あのドクターですら口を開くのも億劫といった始末であったので、定時連絡だけを済ませてこの日は二人とも早々にベッドの住人となることにした。そして翌朝、道端のスタンドで買ったドーナツとコーヒーを片手に地図を広げて予定を組み直していたドクターは、食べきれなかったドーナツの半分を(この時点でScoutは二つ目をすっかり平らげ終えていたというのに!)Scoutのスカーフに覆われていない口元に押し付けながら、まずはあの展望台に行こうと言ってこの都市のどこからでも見える高い塔を指さしたのであった。
2725「は?」
びしりと固まったScoutの視界の端で、形の良い頭がなるほど、と小さく頷いたのが見えた。
どうしてそんな事態に陥っているのかと呆れられたところでScoutに言えることはひとつしかない。ドクターに聞いてくれ、である。次の会合場所の下見のためにドクターとScoutがクルビアのとある移動都市に到着したのは昨日のことだった。しかし入管でのトラブルのためにドクターが持ち前の頭脳と弁舌と少しどころではない金銭を消費した結果、『些細な記載ミス』は無事に何事もなく解決し、しかし二人が街に放り出されたのは既にたっぷりと日も暮れた頃だったのである。ずいぶんと軽くなってしまった懐を抱えながらもかろうじて取り戻せた荷物を抱えて宿へとたどり着けたときには、あのドクターですら口を開くのも億劫といった始末であったので、定時連絡だけを済ませてこの日は二人とも早々にベッドの住人となることにした。そして翌朝、道端のスタンドで買ったドーナツとコーヒーを片手に地図を広げて予定を組み直していたドクターは、食べきれなかったドーナツの半分を(この時点でScoutは二つ目をすっかり平らげ終えていたというのに!)Scoutのスカーフに覆われていない口元に押し付けながら、まずはあの展望台に行こうと言ってこの都市のどこからでも見える高い塔を指さしたのであった。
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DOODLEScoさんの幽霊?と会う博の話。モブが博と喋ります「そういやドクター知ってます? そこの廊下に幽霊出るの」
「なにそれ怖い」
事務オペレーターたちによるドクターの出張土産を囲んでのささやかなティータイムのさなかにいきなり落とされた爆弾に、ドクターは思わず焼き菓子の包み紙をはがすのを中断して顔を上げた。
「有名ですよね、地下一階の背の高い幽霊」
「廊下の真ん中で黙って立ってるだけで、追いかけたりはしてこない無害なタイプらしいですよ」
「いやいや、十分怖いよ。ていうか初耳なんだけど」
確かに誰も使ってない区画だとは思ったけれど、まさかいわくつきだったとは。わいわいと盛り上がっているところを見るに、艦内ではそれなりに有名な話だったらしい。
「夜中ここ歩いてるとすれ違って、でも振り向いたら誰もいないっていう典型的なお化けで」
3918「なにそれ怖い」
事務オペレーターたちによるドクターの出張土産を囲んでのささやかなティータイムのさなかにいきなり落とされた爆弾に、ドクターは思わず焼き菓子の包み紙をはがすのを中断して顔を上げた。
「有名ですよね、地下一階の背の高い幽霊」
「廊下の真ん中で黙って立ってるだけで、追いかけたりはしてこない無害なタイプらしいですよ」
「いやいや、十分怖いよ。ていうか初耳なんだけど」
確かに誰も使ってない区画だとは思ったけれど、まさかいわくつきだったとは。わいわいと盛り上がっているところを見るに、艦内ではそれなりに有名な話だったらしい。
「夜中ここ歩いてるとすれ違って、でも振り向いたら誰もいないっていう典型的なお化けで」
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DOODLESco博、博が書類に集中して上の空なの確認した上でチョコレートを博の口に放り込んでいった奥手すぎるScoさんの話。 バレンタインデーにチョコレートを贈るのが通例となっている場所はなにも極東だけではない。例えば物資が十分にあるとは言いがたい傭兵集団の拠点など。
バレンタインという習慣がいつから始まったものであるのかをScoutは知らないが、少なくとも今のテラでは広く一般的に行われているイベントである。愛情、と言葉にするとむずがゆいが、ようは親しい間柄の相手に気持ちのこもった贈り物や普段は言えない言葉を告げる日だ。ヴィクトリアなどでは花を贈るのが一般的らしいが、あいにくとそんな豪華なものを用意できるほどの余裕は今のバベルにはない。その点、チョコレートであれば補給の際に運よくありつけさえすれば入手可能であるので、つまりはScoutが手にしているチョコレートもそういったひとつなのである。
3888バレンタインという習慣がいつから始まったものであるのかをScoutは知らないが、少なくとも今のテラでは広く一般的に行われているイベントである。愛情、と言葉にするとむずがゆいが、ようは親しい間柄の相手に気持ちのこもった贈り物や普段は言えない言葉を告げる日だ。ヴィクトリアなどでは花を贈るのが一般的らしいが、あいにくとそんな豪華なものを用意できるほどの余裕は今のバベルにはない。その点、チョコレートであれば補給の際に運よくありつけさえすれば入手可能であるので、つまりはScoutが手にしているチョコレートもそういったひとつなのである。
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DOODLESco博、両片思い。博がAに膝枕した結果Sco博の距離がちょっとだけ縮まる話。三人とも酔っ払っている。 買い出しから戻ると同僚と上司が取っ組み合いの喧嘩になっていた。
「いい勝負じゃねぇか。ドクター、筋肉増えたか」
「本当か!?」
「おい、Ace! 突っ立ってないでこの人を止めてくれ」
もちろん、取っ組み合いとして成立している時点で、Scoutの絶妙な気遣いの結果であることに疑念の余地はない。だがドクターのその反応で本人にかなり酔いが回っていることがわかったため、Aceは抱えたビール瓶を机に並べつつこっそりと手加減の達人である同僚へとアイコンタクトを飛ばした。が、サルカズの友人はといえばドクターを相手にしつつも首を横に振るばかりで、どうやらAceに黙ってこっそりと二人だけで秘蔵のボトルを開封したわけではなかったらしい。つまりこのドクターはおおよそ素面で、ただ単に妙なスイッチが入ってしまっているだけということである。酔っ払っているよりもなお悪い。
2981「いい勝負じゃねぇか。ドクター、筋肉増えたか」
「本当か!?」
「おい、Ace! 突っ立ってないでこの人を止めてくれ」
もちろん、取っ組み合いとして成立している時点で、Scoutの絶妙な気遣いの結果であることに疑念の余地はない。だがドクターのその反応で本人にかなり酔いが回っていることがわかったため、Aceは抱えたビール瓶を机に並べつつこっそりと手加減の達人である同僚へとアイコンタクトを飛ばした。が、サルカズの友人はといえばドクターを相手にしつつも首を横に振るばかりで、どうやらAceに黙ってこっそりと二人だけで秘蔵のボトルを開封したわけではなかったらしい。つまりこのドクターはおおよそ素面で、ただ単に妙なスイッチが入ってしまっているだけということである。酔っ払っているよりもなお悪い。
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DOODLE両片思い。好きな人の写真のパスワードに相手の本名設定してた博さんの話。!!注意!!Scさんの本名を捏造してます!!!
「ドクター、少し構わないだろうか」
「Scout? 珍しいな、どうした」
執務室を訪ねてきた友人の姿に、ペンを手にしたまま男は振り返った。仕事場として何とか体裁を整えただけの部屋はいまだあちらこちらに段ボール箱が転がってはいるものの、座って書類を裁くだけならば何の支障もない。そのうち手が回らなくなるだろうから専属の秘書役を置くべきだろうと進言されてはいたが、今のところドクターはひとりで机の前に座っていた。
「この書類なんだが、わからないことがあってな」
「先週の報告書ならすでに受け取ったはずだが……あぁ、そっちか」
サルカズの男が差し出してきたのは、最近配布された一枚だった。配られた当初から今さらすぎるだろうとブーイングの嵐だった書類を、彼は律儀に仕上げてくれているらしい。
3360「Scout? 珍しいな、どうした」
執務室を訪ねてきた友人の姿に、ペンを手にしたまま男は振り返った。仕事場として何とか体裁を整えただけの部屋はいまだあちらこちらに段ボール箱が転がってはいるものの、座って書類を裁くだけならば何の支障もない。そのうち手が回らなくなるだろうから専属の秘書役を置くべきだろうと進言されてはいたが、今のところドクターはひとりで机の前に座っていた。
「この書類なんだが、わからないことがあってな」
「先週の報告書ならすでに受け取ったはずだが……あぁ、そっちか」
サルカズの男が差し出してきたのは、最近配布された一枚だった。配られた当初から今さらすぎるだろうとブーイングの嵐だった書類を、彼は律儀に仕上げてくれているらしい。
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DOODLE猫博さんと帽子をベッドにされたScoさんの話すやすやにゃんにゃん「ドクター、そいつはお前さんのベッドじゃあないんだがね」
Scoutの困り果てた表情など意にも介さず、その小さな猫はにゃあんと誇らしげに鳴いてみせたのだった。
任務を終え拠点まで戻ると、今まで自覚できていなかった疲労がどっと襲い掛かる。それでもまだ休めるだけマシではあるのだ。自分のような長期間にわたる単独での任務を負うことの多い人間にとって、拠点の自分のテントで休める時間というのはとてつもなく貴重なものである。それを知っているからか、今のScoutには知り合いや部下たちもおいそれと声をかけてくることはない。ただひとり、いや一匹を除いては。
「なあん」
「ドクター、いつの間に。ああ、元気だ。怪我も大したことはない」
1348Scoutの困り果てた表情など意にも介さず、その小さな猫はにゃあんと誇らしげに鳴いてみせたのだった。
任務を終え拠点まで戻ると、今まで自覚できていなかった疲労がどっと襲い掛かる。それでもまだ休めるだけマシではあるのだ。自分のような長期間にわたる単独での任務を負うことの多い人間にとって、拠点の自分のテントで休める時間というのはとてつもなく貴重なものである。それを知っているからか、今のScoutには知り合いや部下たちもおいそれと声をかけてくることはない。ただひとり、いや一匹を除いては。
「なあん」
「ドクター、いつの間に。ああ、元気だ。怪我も大したことはない」
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DOODLEオフの日に角と尻尾ぴかぴかにして博に会いに来るScさんの話。両片思いすれ違いもだもだ美味しいーーーーーーーぴかぴか バベルがロドス・アイランドという陸上艦を拠点として運用し始め、しかしいまだそこでの生活に慣れるまでには至っていない頃。久方ぶりの休みをもらったScoutは、しかしドクターの執務室で居心地悪く尾を揺らしながら立っていた。
無論のこと狙撃兵でもあるScoutは命令があれば一日でも一週間でもその場で身じろぎひとつせずに静止し続けることは可能だった。だが今の彼はオフであったため、先ほど提出した書類とScoutをチラチラと往復するドクターの視線にとうとう耐え切れずに口を開いた。
「何か不備があっただろうか」
「あ、あぁ、いや。報告書は大丈夫だ」
とは言いつつもドクターの視線はScoutから、厳密に言えばScoutのやや頭上から外されることはない。何か粗相をしでかしてしまっただろうかと内心冷や汗をかきつつ、現在のおのれの恰好を思い返してみる。とはいえ私服というものを所持していないScoutの現在の姿はといえば、いつもの恰好から上着と装備を外しただけでしかなく、別段おかしなものでもないはずである。帽子だっていつもかぶっている愛用の品であり、目立つ穴やほつれがあったわけではなかったはずだ。ひょっとして同僚の誰かに恥ずかしいいたずらでも仕掛けられているのだろうかと不安になって来たScoutは――なにせ同僚は一癖も二癖もある連中が勢ぞろいしているため何をされてもおかしくはないのである――後ろ手に組んだ腕を握りしめ、言葉を発した。
2276無論のこと狙撃兵でもあるScoutは命令があれば一日でも一週間でもその場で身じろぎひとつせずに静止し続けることは可能だった。だが今の彼はオフであったため、先ほど提出した書類とScoutをチラチラと往復するドクターの視線にとうとう耐え切れずに口を開いた。
「何か不備があっただろうか」
「あ、あぁ、いや。報告書は大丈夫だ」
とは言いつつもドクターの視線はScoutから、厳密に言えばScoutのやや頭上から外されることはない。何か粗相をしでかしてしまっただろうかと内心冷や汗をかきつつ、現在のおのれの恰好を思い返してみる。とはいえ私服というものを所持していないScoutの現在の姿はといえば、いつもの恰好から上着と装備を外しただけでしかなく、別段おかしなものでもないはずである。帽子だっていつもかぶっている愛用の品であり、目立つ穴やほつれがあったわけではなかったはずだ。ひょっとして同僚の誰かに恥ずかしいいたずらでも仕掛けられているのだろうかと不安になって来たScoutは――なにせ同僚は一癖も二癖もある連中が勢ぞろいしているため何をされてもおかしくはないのである――後ろ手に組んだ腕を握りしめ、言葉を発した。
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DOODLEドキドキお泊りデート(自覚編)。添い寝までしたのに二人が奥手すぎて何も起こらなかった…「ドクター」
「ん、ああ、もうそんな時間か」
控えめなノックとともに姿を現したScoutに、私は執務机についたままぐっと背を伸ばす。手元の書類の山はいまだ片付く様子を見せないものの、今日はここでおしまいだ。
「すまないがシャワーを浴びてくる。十分待っててくれ」
「了解。いつも言っているが別に構わないぞ」
「私が構うんだよ」
すでに帰り支度を始めていた秘書役の事務オペレーターにいくつか明日の分の指示を出し、手を振って見送り端末の電源を落とす。その間Scoutはといえば、壁に背を預けたまま興味深そうに私の机の上に残されたエナジードリンクの空き缶を眺めていた。
「それだけ飲んでちゃんと眠れるのか?」
「私を舐めるなよ。どこであっても横になったら三秒で就寝できるのが自慢なんだ」
2981「ん、ああ、もうそんな時間か」
控えめなノックとともに姿を現したScoutに、私は執務机についたままぐっと背を伸ばす。手元の書類の山はいまだ片付く様子を見せないものの、今日はここでおしまいだ。
「すまないがシャワーを浴びてくる。十分待っててくれ」
「了解。いつも言っているが別に構わないぞ」
「私が構うんだよ」
すでに帰り支度を始めていた秘書役の事務オペレーターにいくつか明日の分の指示を出し、手を振って見送り端末の電源を落とす。その間Scoutはといえば、壁に背を預けたまま興味深そうに私の机の上に残されたエナジードリンクの空き缶を眺めていた。
「それだけ飲んでちゃんと眠れるのか?」
「私を舐めるなよ。どこであっても横になったら三秒で就寝できるのが自慢なんだ」
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DOODLE自分以外の誰かを博が「Scout」と呼ぶのが嫌だったので今わの際に愛用のボウガン破壊して逝ったScと、そんな事情一切わからないけどScさんの遺品の前でゲロ吐きかける今博の話。博がネガティブです。Call My Name この世の中には、散歩の途中でふらりと迷い込むにはふさわしくない場所というのがいくつかある。例えば遺品の収蔵庫など。
ロドス号の内部はとにかく広い。大きさだけならばもちろん大国の移動都市などとは比較にもならないが、問題は内部構造が複雑に入り組んでいて、艦内管理を担当する部署のスタッフですらその全貌のすべてを把握できていないというところにある。子どもたちが艦内図未記載の通路に入り込んで捜索班が組まれることも昔よりは減ったとはいえ年に数件は発生するし、利便性のための増改築も頻繁にくり返されているため最新版のマップを手にしていたとしても途方に暮れる住人の姿は後を絶たない。そして本日のドクターもまた端末のマップを片手に右往左往しているうちに、気がつけば総合感染生物処理室の一番奥、引き取り手のいない大量の遺品を収めた棚の真ん中に立っていたのだった。
4231ロドス号の内部はとにかく広い。大きさだけならばもちろん大国の移動都市などとは比較にもならないが、問題は内部構造が複雑に入り組んでいて、艦内管理を担当する部署のスタッフですらその全貌のすべてを把握できていないというところにある。子どもたちが艦内図未記載の通路に入り込んで捜索班が組まれることも昔よりは減ったとはいえ年に数件は発生するし、利便性のための増改築も頻繁にくり返されているため最新版のマップを手にしていたとしても途方に暮れる住人の姿は後を絶たない。そして本日のドクターもまた端末のマップを片手に右往左往しているうちに、気がつけば総合感染生物処理室の一番奥、引き取り手のいない大量の遺品を収めた棚の真ん中に立っていたのだった。
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DOODLE煙草と下品なジョークの話。後半いかがわしいけど本番はないです。Smoking kills「すまないが、火を貸してもらえないか」
そう言いながらふらふらと歩いてきた黒いフード姿に、Scoutはひとつ頷いて懐から先ほど仕舞ったばかりのライターを出した。
立ち並んだテントの影とはいえ、荒野の夜風は容赦なく体温を奪っていく。ましてや肉などほとんどついていないひょろりとした体格の彼だ、こんな時間までずっと作戦を練っていたのか、しきりに目元を押さえながらごそごそと懐から取り出した煙草のパッケージは、まだ封すら開けられていない新品だった。
「アンタそんなもん吸ってるのか」
「うん? 不味いと評判らしいな、だが新参者の私でも手に入る銘柄なんてこれくらいで」
その悪名高いパッケージにぎょっとしているScoutを尻目に、慣れた手つきで一本を取り出した彼は、再びすまないがと同じ言葉を繰り返した。その口元でライターを点火してやれば、一瞬目を見開いた男は嬉しそうに先端をつけ、吸い込む。
2755そう言いながらふらふらと歩いてきた黒いフード姿に、Scoutはひとつ頷いて懐から先ほど仕舞ったばかりのライターを出した。
立ち並んだテントの影とはいえ、荒野の夜風は容赦なく体温を奪っていく。ましてや肉などほとんどついていないひょろりとした体格の彼だ、こんな時間までずっと作戦を練っていたのか、しきりに目元を押さえながらごそごそと懐から取り出した煙草のパッケージは、まだ封すら開けられていない新品だった。
「アンタそんなもん吸ってるのか」
「うん? 不味いと評判らしいな、だが新参者の私でも手に入る銘柄なんてこれくらいで」
その悪名高いパッケージにぎょっとしているScoutを尻目に、慣れた手つきで一本を取り出した彼は、再びすまないがと同じ言葉を繰り返した。その口元でライターを点火してやれば、一瞬目を見開いた男は嬉しそうに先端をつけ、吸い込む。
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DOODLESco博がパートナー運び大会でぶっちぎり優勝して地方紙一面に載ってケル先がコーヒー噴きましたOn your marks 「Scout、君は今から私の嫁だ」
「……………………は?」
訪ねたい場所があるのだが誰か護衛を頼めないか、というドクターの言葉にいちもにもなく手を上げたのはScoutだった。街道からも外れた小さな町は貧しいながらもどこか長閑な雰囲気が残っていて、空高いこの季節にいち早く収穫のシーズンを迎えているようだった。大仕事を終え一段落というタイミングは人心というものは寛大になるもので、あやしい風体の客人がふらりと迷い込んでも別段気にも留められないのは幸いである。サルカズの角を隠さずとも石も罵声も飛んでこないのは久しぶりだとともすれば緩みかける気を引き締めていると、ドクターが何度も引き止められながら扉から出てきた。
3069「……………………は?」
訪ねたい場所があるのだが誰か護衛を頼めないか、というドクターの言葉にいちもにもなく手を上げたのはScoutだった。街道からも外れた小さな町は貧しいながらもどこか長閑な雰囲気が残っていて、空高いこの季節にいち早く収穫のシーズンを迎えているようだった。大仕事を終え一段落というタイミングは人心というものは寛大になるもので、あやしい風体の客人がふらりと迷い込んでも別段気にも留められないのは幸いである。サルカズの角を隠さずとも石も罵声も飛んでこないのは久しぶりだとともすれば緩みかける気を引き締めていると、ドクターが何度も引き止められながら扉から出てきた。
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DOODLE両片思いSco博。吊り橋効果と酔っ払いの話。博は当たり前のように全部おぼえていたし、その後数日はちょっとだけしょんぼりしていた。「吊り橋効果というものがあるだろう。危機感を共有した二人の間に緊張と取り違えた愛情が生まれるというものだ。ならなんで私とScoutの間には愛情が発生していないんだ?」
「ドクター、眠いならベッドまで運んでやるから」
「私は酔っていない」
「典型的な酔っ払いの言い訳をまさかアンタの口から聞くことになろうとはな」
思わずため息がこぼれるが、おのれの呼気ですら酒臭い。人のことは言えないくらいに酔っ払っているのだが、それでも目の前の彼よりは幾分マシな状態だと自信をもって断言できた。なにせドクターという男がここまで意味不明なことを口走るほどにまで酒を過ごしてしまったところを、Scoutは初めて目撃したからである。
2536「ドクター、眠いならベッドまで運んでやるから」
「私は酔っていない」
「典型的な酔っ払いの言い訳をまさかアンタの口から聞くことになろうとはな」
思わずため息がこぼれるが、おのれの呼気ですら酒臭い。人のことは言えないくらいに酔っ払っているのだが、それでも目の前の彼よりは幾分マシな状態だと自信をもって断言できた。なにせドクターという男がここまで意味不明なことを口走るほどにまで酒を過ごしてしまったところを、Scoutは初めて目撃したからである。
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DOODLESco博。料理上手だった人の話。実際そこまで上手というよりは器用にいろいろ作れる人、くらいだったら萌える。スプーンひとさじの幸せ「どうして君が作るとこんなに美味しいんだろう」
同じ缶詰なのに、とぼやくドクターの手元で、年季の入ったステンレスのカップがからりと音を立てた。
それがほんの短い期間であったとしても、荒野で生き延びるというのは苦難に満ちた行為である。たとえ十分な準備があったとしても、目の前に突如として天災が現れてしまえば何もかもが終わりであるし、そうでなくとも哀れな旅人の身包みを剥ごうと手ぐすね引いている連中など掃いて捨てるほどうろついている。だから、この頑強とは到底いえない元学者である男が荒野を渡るすべを知っているのは非常に奇妙なことだとScoutには思えたのだった。
荒野に点在する小さな集落への交渉役にみずから名乗りを上げたのはドクターだった。古い知り合いがいるから、というのがその主たる理由で、あまり警戒されたくないのだという言葉に従い護衛は最小限、率いる小隊は近くの渓谷に待機してもらいドクターとScoutだけが数日かけて谷の底の集落へと向かっている。進むスピードこそゆるやかであったものの、ドクターの足取りはしっかりしたもので、むしろ斥候であるScoutの足によくついてきているものだと感心するほどだった。
2854同じ缶詰なのに、とぼやくドクターの手元で、年季の入ったステンレスのカップがからりと音を立てた。
それがほんの短い期間であったとしても、荒野で生き延びるというのは苦難に満ちた行為である。たとえ十分な準備があったとしても、目の前に突如として天災が現れてしまえば何もかもが終わりであるし、そうでなくとも哀れな旅人の身包みを剥ごうと手ぐすね引いている連中など掃いて捨てるほどうろついている。だから、この頑強とは到底いえない元学者である男が荒野を渡るすべを知っているのは非常に奇妙なことだとScoutには思えたのだった。
荒野に点在する小さな集落への交渉役にみずから名乗りを上げたのはドクターだった。古い知り合いがいるから、というのがその主たる理由で、あまり警戒されたくないのだという言葉に従い護衛は最小限、率いる小隊は近くの渓谷に待機してもらいドクターとScoutだけが数日かけて谷の底の集落へと向かっている。進むスピードこそゆるやかであったものの、ドクターの足取りはしっかりしたもので、むしろ斥候であるScoutの足によくついてきているものだと感心するほどだった。
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DOODLE自分だけの特別っていいよね!!!という話。バベ博はめっちゃ字がきれいだといいなと夢を見ている。筆跡 ドクターという男は筆まめである。メールに書類に研究のためのメモ書きまで、ドクターは毎日大量の文字を書く。文面はわかりやすく、文字は読みやすく、走り書きでさえも可読性の高い彼の手書きの書面は基地内のあらゆる場所で喜ばれ、果ては子供たちの手習いの見本としてさえ使われている。だが、そんなそこかしこにあふれかえったドクターの手書き文書を、Scoutはひとつも持ってはいない。
「Scout、少しいいか」
テントの裏手で肺に深々とニコチンを吸い込んでいると、ふらりと現れた黒いフード姿がこちらの名前を呼んだ。慌てて火を消そうとするこちらをそのままでいいとジェスチャーで押しとどめて、彼はするりとかたわらへとやって来る。
981「Scout、少しいいか」
テントの裏手で肺に深々とニコチンを吸い込んでいると、ふらりと現れた黒いフード姿がこちらの名前を呼んだ。慌てて火を消そうとするこちらをそのままでいいとジェスチャーで押しとどめて、彼はするりとかたわらへとやって来る。
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DOODLEまったく劇的でない博の顔バレの話。この後の飲み会で普通に見せてもらえました。 Scoutが食事を終え立ち上がった時、食堂の入り口には人だかりができていた。
人だかりを覗き込むと、数名のオペレーターが足元のコンテナから細長い缶を取り出して周囲に配っている。鮮やかな色とわかりやすいイラストの入った細長い缶を受け取った面々は嬉しそうに彼らに礼を告げ、めいめい足取り軽く去っていく。それらの背中を見送りながら、適当なひとつに並んだScoutは缶を手渡してくれた男に話しかけた。
「昨日のミーティングで言ってた特別な支給品か」
「ああ、調達部門が期限切れを押し付けられたというのが真相だが、味は悪くなっていないし栄養的にも特に問題はない」
できるだけ穏やかな口調で話しかけると――というのもScoutは自身の長躯と様相が威圧感を与えることを十分に承知していたからなのだが――小柄な白衣の男は一瞬目を見開き、にこりと人当たりの良い笑顔で流れるように答えてくれた。もう何度も同じことを答えているのだろう口調はなめらかで、しかし特に妙な様子などないはずの目の前の男のことが少しだけ意識に引っかる。
1356人だかりを覗き込むと、数名のオペレーターが足元のコンテナから細長い缶を取り出して周囲に配っている。鮮やかな色とわかりやすいイラストの入った細長い缶を受け取った面々は嬉しそうに彼らに礼を告げ、めいめい足取り軽く去っていく。それらの背中を見送りながら、適当なひとつに並んだScoutは缶を手渡してくれた男に話しかけた。
「昨日のミーティングで言ってた特別な支給品か」
「ああ、調達部門が期限切れを押し付けられたというのが真相だが、味は悪くなっていないし栄養的にも特に問題はない」
できるだけ穏やかな口調で話しかけると――というのもScoutは自身の長躯と様相が威圧感を与えることを十分に承知していたからなのだが――小柄な白衣の男は一瞬目を見開き、にこりと人当たりの良い笑顔で流れるように答えてくれた。もう何度も同じことを答えているのだろう口調はなめらかで、しかし特に妙な様子などないはずの目の前の男のことが少しだけ意識に引っかる。
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DOODLESco博ギャグ。ドキドキお泊り会何も起こらなかったよ無自覚片思い編導入部分。「そこまでの護衛は必要ないと言っているだろう?」
ことの始まりはドクターの私室が爆破されたことだった。護衛として同行していたOutcastの機敏な判断によって怪我ひとつなく済み犯人の特定から再発防止策の策定までは速やかに終わったものの、このバベルという組織の重要人物の命が狙われたことは間違いようのない事実である。そこでクロージャによって”もっと頑丈なセキュリティ”の部屋が用意されるまで、ドクターには護衛がつくことになった。だが、
「仮眠室があるのは執務室の隣で、このフロアには二十四時間態勢で見回りを行っている。なのにどうして寝ている最中にまで護衛を貼りつかせていなければならないんだ?」
「アンタの部屋があるフロアだって、人の出入りは十分に多い場所だった。一度目は失敗したのだから、次のやり方はもっと巧妙になるに決まっているだろう」
1452ことの始まりはドクターの私室が爆破されたことだった。護衛として同行していたOutcastの機敏な判断によって怪我ひとつなく済み犯人の特定から再発防止策の策定までは速やかに終わったものの、このバベルという組織の重要人物の命が狙われたことは間違いようのない事実である。そこでクロージャによって”もっと頑丈なセキュリティ”の部屋が用意されるまで、ドクターには護衛がつくことになった。だが、
「仮眠室があるのは執務室の隣で、このフロアには二十四時間態勢で見回りを行っている。なのにどうして寝ている最中にまで護衛を貼りつかせていなければならないんだ?」
「アンタの部屋があるフロアだって、人の出入りは十分に多い場所だった。一度目は失敗したのだから、次のやり方はもっと巧妙になるに決まっているだろう」
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DOODLESco博、腕時計についての話。雰囲気死ネタ。石棺前後についての捏造があります。腕時計「Scout、今は何時だ?」
亡霊のように気配のない上司というものはどんな職場であれゾッとするものである。それが護衛対象であればなおのこと。
「ドクター、何度も言っているが俺はアンタ専用の一一七サービスじゃない。とうとうその持ってる端末の右上の数字が見えないほど目が悪くなったのか?」
「年寄りだと言わないでくれ、さすがの私だって傷つく言葉くらいはある」
左肩にずい、と顎を乗せながら、出会った頃からまったく変わらぬ相貌の男はじっとこちらの左手首を見下ろしてきた。そこにあるのは高級でも高価でもないただの古ぼけた軍用腕時計で、頑丈さから買い替える機会を失ったまま長らく使い続けていた品だった。
「現在、午後の十七時三十七分四十秒。俺はアンタのコートのどのポケットに懐中時計が入っているのかもおぼえてるんだがね」
3337亡霊のように気配のない上司というものはどんな職場であれゾッとするものである。それが護衛対象であればなおのこと。
「ドクター、何度も言っているが俺はアンタ専用の一一七サービスじゃない。とうとうその持ってる端末の右上の数字が見えないほど目が悪くなったのか?」
「年寄りだと言わないでくれ、さすがの私だって傷つく言葉くらいはある」
左肩にずい、と顎を乗せながら、出会った頃からまったく変わらぬ相貌の男はじっとこちらの左手首を見下ろしてきた。そこにあるのは高級でも高価でもないただの古ぼけた軍用腕時計で、頑丈さから買い替える機会を失ったまま長らく使い続けていた品だった。
「現在、午後の十七時三十七分四十秒。俺はアンタのコートのどのポケットに懐中時計が入っているのかもおぼえてるんだがね」
nbsk_pk
DOODLE作戦中に人目を忍んでいちゃつく二人の話。秘め事[Sco博♂] 作戦中のオペレーターのプライバシーなどあってなきが如きもの。ましてや指揮官の肩書を持つ身ともなれば。
「――以上でミーティングは終了だ。では各自配置に戻ってくれ。ああ、Scout、君は少し残ってくれるか」
呼び止められた上司への憐れみの眼差しを投げかける部下たちに小さく手を振りながら、男はやや足早に作戦机の前に立つ痩身の指揮官の元へと歩み寄った。
「ドクター、何か気がかりなことでも?」
「ああ、少し……いい、片付けの残りは私と彼で済まそう。そもそもここは私の天幕でもあるしな」
片付けの手を止めた後方支援担当の若手オペレーターたちは戸惑いながらも、暗に示された人払いの指示を見誤ることはなかった。めいめい手にした書類や機材をまとめながら、上官たちの邪魔にならぬよう速やかに去っていく。そうしてがらんとした空間に残されたのは、先ほどまでのざわめきの温度だけを残した空気と二人の男だった。
2586「――以上でミーティングは終了だ。では各自配置に戻ってくれ。ああ、Scout、君は少し残ってくれるか」
呼び止められた上司への憐れみの眼差しを投げかける部下たちに小さく手を振りながら、男はやや足早に作戦机の前に立つ痩身の指揮官の元へと歩み寄った。
「ドクター、何か気がかりなことでも?」
「ああ、少し……いい、片付けの残りは私と彼で済まそう。そもそもここは私の天幕でもあるしな」
片付けの手を止めた後方支援担当の若手オペレーターたちは戸惑いながらも、暗に示された人払いの指示を見誤ることはなかった。めいめい手にした書類や機材をまとめながら、上官たちの邪魔にならぬよう速やかに去っていく。そうしてがらんとした空間に残されたのは、先ほどまでのざわめきの温度だけを残した空気と二人の男だった。
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DOODLE博の本名が知りたかっただけなのに特大の爆弾落とされたScoutさんの話名前を呼んで[Sco博♂]「■■■・■■■■……ああ、呼びづらいでしょうから、よろしければ”ドクター”と」
彼はその立場が立場であるので、このような商談や交渉の席に呼ばれることが非常に多い。『私にもできる数少ないことなんだ。ほら、私のボウガンの成績は知っているだろう?』などと嘯く口調は本気そのものだったが、その内容を真実ととらえるような人間はどこにもいないだろう。不発に終わった冗句に肩をすくめながら、彼は本日もまたにこやかにそのふくよかなキャプリニーの男性と握手を交わすのだった。
「■■■・■■■■?」
「驚いた。君はとんでもなく耳が良いな。だがそれは今回だけの偽名だからおぼえておく必要はないよ」
ということは、ここに来ることはもう二度とないのだろう。交渉は順調に進んでいた様子に見えたのだが、彼の中ではもう終わりということらしい。せっかく、と思いかけてScoutはその理由を自覚し、そっと飲み込んだ。なにせその見つけた理由というものがあまりにもみっともない――せっかく彼の真実の一端に触れたと思ったのに、というものだっただなんてウルサス式の拷問にかけられたって口を割れるものではなかった。などと葛藤するこちらのことなどまったく気にも留めずに、彼はいつも通りの温度のない口調で言葉を続けている。
1247彼はその立場が立場であるので、このような商談や交渉の席に呼ばれることが非常に多い。『私にもできる数少ないことなんだ。ほら、私のボウガンの成績は知っているだろう?』などと嘯く口調は本気そのものだったが、その内容を真実ととらえるような人間はどこにもいないだろう。不発に終わった冗句に肩をすくめながら、彼は本日もまたにこやかにそのふくよかなキャプリニーの男性と握手を交わすのだった。
「■■■・■■■■?」
「驚いた。君はとんでもなく耳が良いな。だがそれは今回だけの偽名だからおぼえておく必要はないよ」
ということは、ここに来ることはもう二度とないのだろう。交渉は順調に進んでいた様子に見えたのだが、彼の中ではもう終わりということらしい。せっかく、と思いかけてScoutはその理由を自覚し、そっと飲み込んだ。なにせその見つけた理由というものがあまりにもみっともない――せっかく彼の真実の一端に触れたと思ったのに、というものだっただなんてウルサス式の拷問にかけられたって口を割れるものではなかった。などと葛藤するこちらのことなどまったく気にも留めずに、彼はいつも通りの温度のない口調で言葉を続けている。