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    アカリ

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    K暁の話その他小話とか絵置き場。

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    アカリ

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    妖怪×K暁シリーズ。リクエストで頂いた「尻目にドン引きするK暁」です!
    普段よりコメディ色が強いのでご注意ください。書いてる私はとても楽しかったです。

    #K暁

    unbelievable peach.河童、天狗、座敷わらし。大体の人間が一度は聞いた事のあるであろう妖怪は一通り出会えているとKKは自負している。
    マレビトには会いたくはねえが妖怪は、なぁ。
    油断してはならないが全く敵意の無いヤツも中には居る。故に心の底から困っているというのなら助けになってやりたいところだが──。

    「ね、KK。どうしよっか…?」
    「…………」

    こそっと耳打ちしてくる暁人の言葉にKKは眉間の皺をさらに深くする。どうするも何も。

    「悪いが俺達じゃどうもしてやれねぇなぁ」

    つい心の声そのままに放った一言に暁人も目の前に居る〈ソレ〉も「ええっ!?」と大きな声を上げた。

    『そんな…!私の姿を見て驚かない、引かない方は貴方達だけなのですよ!?どうかご助力頂けませんか!?』
    「えぇ…」

    意を決してキッパリ断ったのになんか食い下がってくるぞコイツ。暁人も暁人で「そうだよ、可哀想だよ」と呑気に加勢してくるが。

    ──尻相手にどうしろってんだ?

    いや、正確には妖怪〈尻目〉か。でも尻には違いねえ。
    大体がなんだって渋谷の路地裏でケツ突き出してんだコイツは?一応着物っぽいのを羽織ってるがケツ出すために捲ってるから着てても意味がねえ、いっそ真っ裸で良いだろナメてんのかこのヤロウ。
    依頼をこなして仕事終わりの一服を暁人と過ごしてたら「あの、もし」と声を掛けられて振り向いたらコレだ。ビビって煙草落としちまったのをまだ少し根に持っている。

    「通りがかって声掛けた人にはビックリされるし、他の妖怪や幽霊にもビックリされたんだよね?」
    『はい…。先程ろくろ首さんにお声がけをしたら「イヤー!痴漢よ!」と叫ばれてしまいました』
    「そうなんだ…大変だったね…」

    おいおい暁人も同情すんな。ろくろ首は…まぁ…災難だったな…今度暁人にご機嫌伺いさせてやるか。

    「…で?お前は何に困ってんだよ。いつまでもケツ突き出されたままじゃこっちも落ち着かねえ。サクッと解決できる事ならとっとと言えよ」
    『えっ、助けてくれるのですか!?』
    「出来る範囲ならな」

    本当は仕事終わりに面倒くさいことは請け負いたくないんだが、暁人も嬉しそうな顔してるしまあ良いだろ。このままじゃ帰って寝ても夢見が悪そうだ。

    「良かったね!」
    『はい!』

    俺の暁人が尻と仲良く喋ってる…。てか妖怪と仲良くなるなって再三言ってもアイツ本当に聞かねえな。

    『有難いお言葉ありがとうございます。あの、初対面でいきなりお願いするのも申し訳ないのですが…』
    「面っていうか尻だろ」
    「KK!」

    俺は間違ってないぞ、だってコイツ尻向けてるし。

    『私の目にゴミが入ってしまってですね。取ってほしいのですよ』
    「「…………えっ」」

    目?目って言ったか?
    暁人とすぐに目が合う。暁人の表情もおそらく俺と同じで、口パクで「目って言った?」と俺に問うてくるが最悪な事に聞き間違いじゃなかったらしい。

    「目…って、今俺たちに向けてるコレだよな?」
    『はい!なんならもっと近くで…』
    「いいから寄るな近付くな!ステイ!」

    ずいずいと迫ってくる尻の圧に俺ともあろうものが思わず後ずさってしまう。しかし暗くてよく見えないので暁人がスマホのライトで尻目の目を照らしてくれて事なきを得た。…なんで俺たちはこんな路地裏で尻にライト当ててるんだろうか、泣きたくなってきた。

    「あー…確かに白目が充血してるね」
    『そうなのです。ゴロゴロチクチクしてずっと我慢できなくて…逆さまつげかもしれないのですが』

    うわ、本当だよく見たらまつ毛少し生えてる。
    俺がそう思って瞬間暁人が笑いを堪えるような咳払いをした。お前も同じ事思ったのか…以心伝心だな(コレに関してはあんまり嬉しくないが)。

    「んなもん洗い流せば良いんじゃねえか、その辺の水道とかあるだろ」
    『私もそう思って試してみたのです』
    「ほお?」
    『なかなか狙いは定まらないし着物は濡れるし、犬には吠えられて…そして今に至ってしまいました』
    「……そうか」

    公園とかの蛇口は下に流れるタイプだからな。目を洗うのはなかなか難しいか。

    「だからみんなに声掛けて手伝ってもらおうとしたんだね」
    『その通りです。もう何日もこの状態で私もなりふり構っていられず、たまにお見かけする体の透けてらっしゃるサラリーマン風の方にも近付いたのですが…ことごとく逃げられてしまいまして』
    「マレビト追い払ってんじゃねぇよ、俺達の立場無くなるだろーが」

    道理で依頼の内容よりマレビトの数が少なかった訳だ…また暁人が咳払いしてやがる。まぁ確かに尻突き出した謎の存在に駆け寄られたらマレビトもさすがにビビるかもしれない。

    『なのでどうかお願いです!私の目からゴミを取り除いてください!!』

    ずいっと突き出される尻──もとい、尻目の目。俺と暁人はお互いに顔を見合わせる。

    「…KK、ここはお任せするよ」
    「は?いやいや何言ってんだ。こういうのはお前が適任だろ」
    「それこそ何言ってんの、KKは僕の師匠みたいなもんでしょ?お手本が見たいなぁ〜?」
    「ぐっ…お前、普段そんな事言わねえくせに…!」

    多分この一瞬にお互いがいろんなシミュレーションをしただろう。
    手袋をつけてゴミを取り除く、目薬を差してやる、ホースなどで目を洗ってやる…etc。どれも現実的かつ確実な手段だ。…その対象が尻だということを除けば。

    そして悩みに悩み抜いた上、俺たちが出した答えは。

    * * *

    『ありがとうございます!おかげで大変スッキリしました!』
    「あぁ…良かったな」
    「これから気をつけてね、ほんとに」

    すっかり充血した目も良くなった尻目は、暗い路地の中へ何度も何度も頭(というか尻)を下げながら立ち去っていった。

    「最後くらいきちんと立ち上がって歩くのかと思ったけどそのままだったね…」
    「尻目にしたら目を出してんのが礼儀なのかもしれないな」
    「もうどうなることかと思ったよ、僕」

    盛大に溜息を吐く暁人の背中を思わずトントンと叩いてやる。
    ──結局、俺たちはある閃きを得た。
    トイレのウォシュレットで目を洗わせれば良いのだと。
    しかしながら公共のトイレにはなかなかウォシュレットはない。アジトのトイレも残念ながら例に漏れず、やむなく俺と暁人はなるべく人目につかないように尻目を移動させながら夜中までやっている商業施設へと赴いたのだった。
    もはや必死すぎて道中のことなどほぼうろ覚えだ、ただひたすらに「祟り屋連中にだけは見られたくない」の一点張りで気を張っていたのだけは覚えている。
    見える人間には見えないように配慮しつつ…俺たちはなんとかこのミッションを乗り越えたのだった。
    尻目も意外と文句を言わなかったのでそこだけはやはりコイツも妖怪なんだなと実感したのはいうまでもなく、明るい所で見た尻目の頭──人間でいうところのきちんとした頭部に関しては…まぁ、プライバシーとして口を噤んでおこう。ていうか尻目の生態に詳しくなりたくない、絶対にだ。寝たら全部忘れたい。

    「あー…なんか、ヘタな依頼よりどっと疲れたな…。あんなに妖怪のケツを見ることなんてそうそうねえぞ」
    「言えてる。ていうか見たくないよ他人の尻とか」

    そう言う割にはずっと笑い堪えてたじゃねえかよ、とはあえて言わないとして。
    ──…ふぅん、なるほど。

    「ひゃわっ!?」

    思わず手が伸びてしまったのは目の前にあった形の良い暁人の尻。軽く撫でただけなのだがそれはそれは良い声を上げるこって。

    「わりぃわりぃ、ケツばっか見てたからつい」

    なんかもうひどく疲れてたので目にも手にも癒しが欲しかったのだ。いや、帰ったら存分に癒してもらうつもりだったが欲に負けてしまった。柔らかな脂肪の下にある、筋肉がなかなかどうしてしっかりとついた暁人の尻はKKもお気に入りの一品である。
    げっそりとした心に訪れたオアシスのような感触にしばし浸っていると──。

    「っ…何すんだよKKのバカ!!」

    べちん、と路地裏に響き渡る暁人の平手打ち。
    ………様式美も悪くねえな。
    こんな新しい扉を開きかけたのはあの妖怪のおかげだなんて思いたくはない、ないけれど。…とりあえず暁人にはラーメンたらふく食わせてご機嫌を取ろう。家に帰ったら──まぁ、そのあとは、な?

    悪い大人は頬の痛みをよそに、頭の片隅でそんな画策をしながらへらりと笑ったのだった。


    了.

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    na2me84

    DOODLE #毎月25日はK暁デー 
    お題【初デート】
    参加させて頂きました。宜しくお願いします。お題が可愛すぎて悩みました…
     渋谷駅前、かの有名な交差点は深夜になっても人も車も途切れることはない。煌々と輝くモニター画面には雑多な情報が流され続け、色鮮やかなLEDに彩られた看板は星の光をかき消すように輝いている。夜の闇さえ寄せ付けない光の奔流は、月の存在までも薄く儚いものに変えてしまったようだ。
     信号が青に変わると一斉に人の流れが動き始め、それぞれの進行方向へと、人々が双方向に入り交じりながら滔々と流れていく。その人混みから少し離れて道路を眺めていた青年が、隣に立つ男に話しかけた。
    「ここだったよね、KK」
    「ああ、そうだったな」
    あの夜、二人が『運命的』に出会った場所がここだった。

     
    「ねぇ、夜の散歩に行かない?」
    暁人がそう声をかけてきた。正直なところ面倒だな、とKKは思った。もう飯も食って風呂もはいって、後は寝るだけ、という状態だ。出来ることならこのまま暁人を寝室まで引っ張って行って、さっさと押し倒したいところだが。まるで飼い主に散歩をねだる犬のような目で見つめられては、異を唱えることなど出来ようはずがない。甘いな、俺も。そう思いながら答える。
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    りんご

    DONEまじない、あるいは、のろい (ここまで読みがな)
    K暁デー「スーツ」
    お題的なこともあって結婚と葬送の話をどっちも書きたかっただけです。あっきーがバカ重い感じですが、その環境ゆえにうまく隠すことがうまかっただけで彼の本質はこうだろうなーとか思ったり。いつものごとく二人で喧嘩して、戦って、駆け抜ける話です。
    中の人本当にありがとうございました、お陰で細々と楽しくK暁を追いかけられました。
    呪い短くも長くもない人生を振り返るにあたり、その基準点は節目にある行事がほとんどだろう。かくいうKKも、自らのライフイベントがどうだったかを思い出しながら目の前の光景と類比させる。
    準備が整ったと思って、かつての自分は彼女に小さな箱を差し出した。元号さえ変わった今ではおとぎ話のようなものかもしれないが、それでもあの頃のKKは『給与三ヵ月分』の呪文を信じていたし、実際差し出した相手はうまく魔法にかかってくれたのだ。ここから始めていく。そのために、ここにいる隣の存在をずっと大事にしよう。そうして誓いまで交わして。
    まじないというのは古今東西、例外なく『有限』である。
    呪文の効力は時の流れに飲まれて薄れてゆき、魔法は解け、誓いは破られた。同じくしてまさか、まじないの根本に触れることになるだなんて思わなかった、ところまで回想していた意識を、誰かに強い力で引き戻される。
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