一幕「待ちさなさい」
「ま、まだ何か……?」
職員室で説教されたあと、ツナギを脱がされスーツに着替えさせられた。ようやく解放されると思った矢先に再び呼び止められ、声が震える。
氷室教頭はスーツに着替えた俺をじっと見つめたかと思うと「少しかがみなさい」と言った。
「? はい」
言われた通りに頭を下げる。
すると次の瞬間、大きな手が俺の顔を覆った。
「!?」
「髪が乱れている。きちんと整えるように」
「あ、いや、これはもともと――」
というか、無理やり着替えさせられたせいでもある。普段からくせっ毛だし、改めて整えようとすら思わなかったが、氷室教頭は気になるらしく、俺の縦横無尽に跳ねる髪をどうにかしようとする。
「ふむ……」
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