10月新刊「おっちゃん、また記者やっとんやな」
頭のてっぺんから声が降ってきた。懐かしさを感じるイントネーションだ。
声は変声期にほど遠い、丸みのある子供のものだった。ロベルトは取材のために走らしていた筆を止め、音の主を探して視線をあげる。
エントランスから二階へと緩やかにのびる階段の最上段に子供が立ち、こちらを見下ろしていた。まだ片手ほどの年齢。園児と呼べる年頃の子供だ。真っ黒な髪に瞳。グレーのシャツと黒いパンツはからはほっそりとした手足がのびている。おさがりなのだろう、シャツ、ズボン共に裾が折られていて、服を着ているというよりは服に包まれているように見える。しっかりとこちらを見据える眼光は鋭く知的な印象をロベルトに与えた。
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