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    満ツ雪

    @32_yu_u

    相出しか書けません

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    満ツ雪

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    去年の書きかけで、来年の夏には絶対書くぞ!と思ってたのに叶わなかったからもう書くことも無いかなと悲しい気持ちになったので置いておきます。浮かばれろよ🙏
    金魚売り(相)×狐(出)パロ

    #相出
    phaseOut

    金魚売りと狐の少年むかしむかし、あるところに小さな村がありました。
    四方を山に囲まれた村には段々畑が広がり、村を半分に割るように小さな川が流れていました。

    村人たちは夜明け前から畑に出向き、朝日と共に東の山を越えて隣り町まで野菜を売りに行き、魚や塩、道具を仕入れて帰ってきました。
    山の麓と頂上にはお社があり、村人たちは昇ってくる太陽を朝に二回拝みました。
    そして夕方、村人たちが村に帰ってくる時は東の山から西に沈む太陽を拝みました。西の山にもお社がありましたが、行商に行く村人たちが訪れることはあまりありませんでした。代わりに子どもたちが一日一度、お供え物を持って山の上まで登ります。前の日に供えた物は笹舟を作って川に流しました。
    東の山にある神社は東雲のお社、西の山にある神社は黄昏のお社と呼ばれ村人たちに愛されておりました。

    今日もお供え物を持った子どもらが黄昏のお社目指して階段を登ってゆきます。しゅわしゅわと降り注ぐ蝉の声に負けない元気な声が山に響いておりました。
    ひとりひとつ手に持った小さな竹籠の中にはそれぞれ米と胡瓜と西瓜、そして油揚げが入っておりました。西の社を守るのはお狐様と信じられていたからです。
    階段の脇には小さな沢が流れておりました。夏でも冷たいその水をすくって飲んだりかけあったりしながら子どもらは頂上を目指します。
    そうして頂上に着けば笹で舟を作り、前の日にお供えした食べ物を乗せて川に流し、竹箒で掃除をしてから今日持ってきたお供え物を祭壇に供えるのです。この時だけはみんなしんと黙ってお社に手を合わせました。それから日が傾くまで境内で遊び回りました。

    境内と言っても、朱塗りの鳥居とお社の他には池と枝垂桜と石灯籠がひとつあるだけの小さな神社でした。それでも子どもらは毎日ここで遊んだのです。お腹が空いたら持ってきた握り飯を食べ、沢で冷やした胡瓜に齧りつきました。眠くなったらお社の中で眠り、日が傾きかけた頃に山を降りました。麓に着く頃には向こうの山から戻って来た村人たちと一緒になり、それぞれのおっ父と手を繋いで家に帰りました。

    けれどひとりだけ、寂しそうに家路に着く子がおりました。名を朔太と言いました。朔太には親がいませんでした。おじいとおばあがいましたが、二人は町に出なかったのでいつも帰り道はひとりきり。負けん気の強い朔太はいつも強がっていましたが、この時だけはどうしても弱い虫が騒ぐのです。

    少しずつ日が翳り、沢の音に混ざって虫が輪唱を始めます。ちらほらと蛍が舞うこの季節は、何故かいっそう朔太を悲しくさせました。

    ふと顔を上げると、登りきった先の道に誰かがいます。屋根のついた荷車を引いています。リーン、リーンと響くのは風鈴の音でしょうか。提灯の明かりなのかそのあたりだけぼおっと夜に浮かび上がったように見えました。

    「金魚はどうですか」

    遠くにいるのに、その男の声は耳元ではっきり聞こえたように朔太には感じられました。みみずくのように低く響くその声に招かれるまま朔太はその荷車に近付いてゆきます。
    不思議と、怖いとか不気味だとかは思いませんでした。どこか懐かしいような温かささえ感じました。

    「わあ、」

    まあるい硝子瓶が様々な色で編まれた糸によって屋台にたくさん吊るされていました。そうして硝子瓶の中には一匹ずつ赤い金魚が泳いでいました。優雅に揺らめく尾びれは光を受けて金色に輝き、まるで宝石のようです。そのどれもが違う赤色をしていて、朔太はそのひとつひとつをゆっくりと目に映してゆきました。

    「これが気に入りましたか」

    その中でも特に目を惹いたのは、橙がかった赤色に控えめな金色が混ざった金魚でした。その金魚をじっと見つめていた朔太に、男は網から外した硝子瓶をそっと手渡します。

    「綺麗、」

    沢の水と同じくらい冷たい水で満たされた丸い瓶の中を金魚はくるくると泳いでいます。この世のものとは思えない美しさに朔太は金魚から目が離せなくなってしまいました。

    「差し上げます」
    「え、でも、お代は、」

    お金なんて持っていません。慌てて着物の袖の中を探っても、出てきたのは神社で見つけた丸い石と蝉の脱け殻だけでした。

    「ではその社の石と交換しましょう」
    「え」

    どうしてこれが神社の石と知っているのでしょうか。朔太は不思議に思いましたが、どうしても金魚が欲しかったのでその石を金魚売りの男に手渡しました。

    「またご贔屓に」

    りぃん、と風鈴が鳴って、ゆっくりと荷車が動き出しました。藍色の羽織の男は闇に溶けるように見えなくなり、荷台の薄い明かりだけがいつまでもぼんやりと遠ざかっていくのが見えました。そちらは黄昏の社に続く道で、民家は一軒もありません。朔太は後ろ髪を引かれながらも手の中の金魚を早く見せびらかしたくて、家に向かって駆け出しました。




    月明かりにぼんやりと浮かび上がった石段を金魚売りの男はじっと見上げていました。
    握った手を開くとそこにはまんまるの石。風も無いのに風鈴が一度鳴りました。男は荷車を道の端に寄せて金魚鉢をひとつ手に取りました。男がふぅっと息を吹きかけると、生きていたはずの金魚は提灯の形に姿を変えました。その灯りを頼りに、男は音も無く石段を登ってゆきます。

    夜の森は真っ暗で獣の足音やみみずくが羽ばたく音が聞こえてきます。不思議と虫の鳴く音は聞こえませんでした。不気味とも言える山の中を男は静かに進んでいきます。ゆらゆら揺れる金魚はまるで水中を泳いでいるように尾びれを動かしておりました。

    ようやく鳥居が見えてきました。
    真っ暗なはずのお社に青紫色の光が揺らめいています。池のほとりの石灯籠に火が点っていました。枝垂桜がさわさわと揺れています。
    やがて、その石灯籠の上に小さな影が現れました。

    「今晩は。参拝……じゃあ、なさそうですね」

    白地に紺色の麻の葉模様が入った着物と深い緑色の膝丈の袴に身を包んだ少年が、石灯籠の上で裸足の足をゆらゆらと動かしていました。ふわふわした緑色の髪と瞳、頭上には大きな白い狐耳、足と一緒にしっぽもゆらゆらと揺れています。目元に入った朱色が白い肌に映えていました。

    「今晩は。商いです、それと、こちらを返しに」

    先程男の子からお代にと受け取った石を差し出すと、狐の子はふわりと石灯籠から降りて来ました。身軽な足下は裸足でしたが足音も立ちません。くるりと目を丸くした子の緑色の瞳が一瞬輝いたように見えました。

    「ここの石ですね、ありがとうございます」


    ═════════
    設定

    金魚売り(名無し)(相澤)
    人間の魂を食らう人外。悲痛や苦痛を食う。風鈴を売り歩きながら旅をしている。売り物は買いに来る人によって変わる。金魚、鬼灯、朝顔、蛍等々。失いたい魂がある人のところに吸い寄せられる。

    出久
    喋れない。記憶が無い。いつもニコニコしてる。危険という認識が無いため命がけで人を助けようとする。九つの魂を持っていたがその大半を失くしている。元々は神社に祀られていた狐。

    上記お話の後に事件が起き出久は記憶と言葉を失います。出久の失くした魂を探す旅のお話を書くつもりでした…
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    Replies from the creator

    満ツ雪

    DONE♀️装♂子な🥦くんは👀先生のことが大好き。今日も元気に猛烈アタック!
    普通のコーコーの普通のきょーしとせーとな👀🥦の話。👀の担当きょーかとか決めてません。自由に想像してほしい🙆
    がんばれ女装男子🥦くんあいざわせんせい。


    僕の担任の先生。

    僕の大切なひと。


    僕の大好きなひと。



    「失礼します!一年A組緑谷出久です!相澤先生!来ましたっ!」

    昼休み。
    職員室の入口でそう僕が声を上げると、先生方の視線が一斉に相澤先生に注がれた。呆れや羨望の入り交じったその視線を面倒そうな顔で受け止めながら、相澤先生が立ち上がる。

    「良いなあ愛妻弁当」
    「山田そういうこと言うとコイツが調子に乗る」
    「ふふ、相澤先生の愛妻でーす」

    そう言って先生の腕に絡み付くと、こらって軽く頭を叩かれる。優しいからちっとも痛くない。むしろ撫でられてるみたいで嬉しい。

    「良いわねえ相澤くん、かわい~い幼妻がいて」
    「やめてくださいよ香山先生」

    心底辟易した様子で相澤先生が睨みを効かせても、香山先生にはちっとも通用しない。「アオハルいいわ~頑張りなさい」って僕の背中をぐいぐい押してくれる。相澤先生とぴったりくっつく形になって、ぎゅうってその腰に抱き着こうとしたらさすがに相澤先生に本気で押し返された。
    1790

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    満ツ雪

    DONE俳優澤×ドル出勝手に書きました。すみません。え、ドル出が鈍すぎて俳優澤はいつまでも出くんとくっつくことができないんですか?ごめんなさい、もうくっつけちゃいました…ごめんなさい。
    俳優澤とドル出のお話『テレビ局の地下駐車場にいるよ』

    そんなメッセージをもらって僕は私物のパーカーを引っ掴んで慌てて走り出した。派手なステージ衣装のままだし、髪も瞼もキラキラしたままだけど、とにかく時間が惜しくて全力で走った。でもテレビ局は騒々しいから誰も僕のことなんか気にも留めない。おはようございます、お疲れ様ですって笑って挨拶しながら人の波をくぐり抜ける。もう1ヶ月も会っていないあの人の元へ急ぐため。

    ハア、ハアって息が上がる。
    さすがに駐車場だと真っ青な衣装の僕は悪目立ちする。荷物を搬入しようとしているスタッフさんたちがチラチラとこっちを見てくるから、パーカーの前を掻き合わせながら足早にその場を後にした。
    相澤さんの車は、柱の影になって一段と暗い一角に停まっていた。黒い二人乗りの、車種に詳しくない僕でも名前を聞いたことがある車。壁に向かって前向きに駐車されているから車内が見えなくて、何度もナンバープレートを確認してから助手席の窓をそっと覗き込んだ。
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