Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    MondLicht_725

    こちらはじゅじゅの夏五のみです

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 70

    MondLicht_725

    ☆quiet follow

    硝子姉さんハッピーバースデー🎂
    なのにシリアスですんません。

    #硝子誕
    glass誕誕

    【硝子誕】プレゼント まったくもって、不本意である。
     部屋に入ってすぐ右側の壁には、大小様々な青い目玉がぶら下がっている。ナザール・ボンジュウ。災いを跳ね除けるという異国のお守りだ。唯一残っている同級生が海外出張のお土産だと言って、勝手に飾っていったのだ。
    「ほら、僕がいつでも見守ってる感じしない?」
    「…きしょ」
    「ひどいっ」
     なんて会話も、随分前のことである。
     薬品やガーゼなどの衛生材料を収納している戸棚の上には、異国の神の像と招き猫が仲良く並んでいるし、机の上にもアフリカのなんとかという部族のお守りが鎮座している。
     年々増えていくものだから、家入硝子はそういうものが好きなんだ、収集家なのだという不本意な噂が高専内に広まっていた。
     まあ、否定も拒否もしなかったのだが。
     おかげで仕事場には、あの男以外からも贈られたお面やら像やらお守りやらが増え続けている。
     青い目の隣に飾られたが白い羽がついた円形の魔除け。家入でも知っている、アメリカ先住民のドリームキャッチャー。プレゼントだと言って持ってきたのは、6年前に入学してきた生徒。招き猫の前に置いてあるカラフルな骸骨は、その前の生徒。

    「家入さん!誕生日おめでとうございます!」
    「硝子さんにはいつもお世話になってるから」

     誕生日祝いだと言って笑顔で置いていった珍妙なプレゼントは、冗談のつもりなのか本気なのかはわからない。
     ――今はもう、聞くこともできない。
     どちらも変わり果てた姿で戻ってきて、どちらも家入が処置をし、葬った。
     ここでは、珍しくもない日常。こうして、思い出だけが残っていく。片付けようと思ったことはない。だから、増えていく一方だ。




    「来月、家入さんの誕生日なんだってよ!」
    「え、いつよ」
    「11月7日だって。五条先生が言ってた」
     立ち聞きするつもりはなかった。ただ、通い慣れた廊下を通り抜けて、自販機コーナーに向かう途中、たまたま聞こえてきただけだ。
     今年の新入生たちも威勢がいい。若干1名は一度死んだが、すぐに蘇って今でも元気に3人でいる。蘇生したことが本人にとっていいのか悪いのかは家入にはわからない。ただ、あの元気な声を聞けば、素直に嬉しいと思う。
    「いつもお世話になってるし、プレゼント用意しなきゃ」
    「なぁ伏黒、家入さんが喜びそうなもん知らねぇ?」
    「…なんで俺に聞く」
    「だってお前が1番付き合い長いじゃん」
     付き合いが長いのは事実だ。けれど、家入が本当に欲しがっている代物を理解できるのはきっと、夜蛾か七海くらいだろう。
    「…お守りとか、魔除けとか、スピリチュアルなもの、とか」
    「ああそういやあの人の部屋にいっぱい置いてあったわね」
    「スピリチュアルって…ドリームキャッチャーとか?水晶とか?」
    「どっちももうあったわよ」
    「ええ!?じゃあ何がいいんだろ」
     小さく笑って、踵を返す。そういえば、冷蔵庫にまだこの前買ったペットボトルが残っていることを思い出したのだ。
     彼らがどんな答えを出したのかは知らない。ただ、どんなものでも、きっとまた無言で受け取るだけなのだ。
    「久しぶりに、買い物に行くか」
     棚の中に保管している菓子とコーヒーのストックが無くなりかけている。消費するのは主にあの男だが、ときどきは生徒たちにも渡している。彼らは何が好きだろうか。

     昔はさほど、誕生日というものを意識していなかったように思う。特別な日だと感じるのは、高専に来てあいつらがウザすぎるくらいに祝うから。2人きりになっても、あいつが忘れないから。生徒たちにまで吹聴して歩くから。
     本当は、特別なプレゼントは必要ない。くれるものならなんでもいい。
     ただ、おめでとうと言いながら、訪ねてきてくれればそれで。
     今年は、どんな誕生日になるだろうか。








     ――――ハロウィンまで、あと■■日。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    時緒🍴自家通販実施中

    TRAINING1/22夏五ワンライ。
    お題【天井/プルタブ/映画館】
    映画を見に行った二人がいちゃいちゃするお話です。
    ライフ・イズ・コメディ! 傑と映画館に行くことになった。これって初デートだなぁ、俺たちも結構恋人らしいことをするもんだなぁ、そう俺は思って、なぜ傑がよりにもよってクレヨンしんちゃんの映画を選んだのか考えもしなかった。チケットまで事前に用意したのも怪しかったが、俺は傑と一緒に映画を観に行く、そんな事実だけに興奮してしまって、やっぱりなぜ傑って奴がクレヨンしんちゃんを選んだんだ?、恋愛映画でもないのに、とは考えなかった。でも『モーレツ! 大人帝国の逆襲』とか『アッパレ! 戦国大合戦』は俺を映画館に連れて行った五条家の呪術師も泣いていたから(俺は情緒の育っていない子どもだったので、結構長い間教育のために分かりやすい勧善懲悪のアニメ映画を見に連れて行かれていたのである)、映画の優しいジャイアンみたいに、クレヨンしんちゃんも映画は大人になると泣けるのかなって思った。それに傑と映画館に行けるんなら別に何の映画でも良かったから、もしこのチケットの映画で泣けなくたって、それはそれでいいだろうって。それで傑だけ泣いたら、ちょっと居心地が悪いかなぁ。
    2312