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    ろまん

    @Roman__OwO

    pixivに投稿中のものをこちらでもあげたり、新しい何かしらの創作を投稿したりする予定です。倉庫です。

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    ろまん

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    【まりすず】リングマリィを結成したばかりの時期、まりあちゃんのきらりヶ丘中学校でのとある1日の話です。第二回だいあフェス後の時系列になります。まりあちゃんと同学年であるキラッツ、メルティック、だいあちゃんも出ます。

    ♡キューティー・ハピネス・スクールデイズ♡ かわいい向上手帳記載『かわいい憲法』
     第二条 かわいいは一日にしてならず



     朝の七時半。小鳥さんのチュンチュンと鳴くかわいい声を目覚ましに、まりあは目を覚まします。
    「ふわぁ〜……おはようございます……かわいい朝です……」
     ふかふかのベッドから起き上がると、最初にまりあの目に入ったのは、リングマリィの超かわいいポスターでした。最近、ベッドボードの近くの壁に貼ったばかりのものです。このかわいいポスターのおかげで、まりあのかわいいの詰まったかわいい宝箱みたいなお部屋はさらにかわいくなりました。
    「かっ、かわいい〜〜〜!」
     まだまだ半分閉じていた目が、かわいくバッチリ全開になります。まりあの一日は、こうして特大のかわいいから始まります。
     きらりヶ丘中学校のかわいい制服に着替えて、鏡を見ながらチョココロネみたいな寝ぐせをブラッシングして、リビングへと向かいます。
    「パパ、ママ、お姉ちゃん達、おはようございます! 今日もみんなかわいい〜!」
    「おはよう、まりあもかわいいわ」
    「うん、かわいいな」
     朝ごはんが並んだテーブルには、すでにかわいいまりあの家族みんなが座っていました。今日もかわいい団らんタイムです。
     みんなで仲良しかわいくおはなししながらはちみつのかかったトーストとハート型の目玉焼きを食べ終わると、時計の長い針はすっかり家を出る時間を指していました。
    「いけない! もう時間です」
    「まあ、大変。忘れものはない? かわいいハンカチは持った?」
    「大丈夫ですよ。ママったら心配性かわいい〜」
     えいっと玄関のドアを開けると、ふわふわのわたあめみたいな雲と、どこまでも広がる青い空がまりあをお迎えしてくれました。玄関まで見送りにきてくれたかわいいママに、かわいく挨拶をします。
    「ではママ、いってきますね」
    「いってらっしゃい、かわいく頑張るのよ」
    「はい!」
     通学路を歩きながら、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みます。かわいい世界の空気は、やっぱりかわいい! それだけじゃありません。歩いているネコちゃんも、つゆに濡れた葉っぱも、道の端っこに咲いている小さなお花も、みーんなみんなかわいい。
    「ふふっ、今日も世界はかわいいでできています!」
     ……さあ、今日はどんな新しいかわいいに出会えるでしょう? 考えるだけで、胸がかわいいでいっぱいです!



     中学校に到着し、靴箱で上履きに履き替えていると、突然背後からまりあを呼ぶ声がしました。振り返ると、お昼寝してる黒ネコちゃんみたいなかわいいくせっ毛がまりあの視界に入り込んできたではありませんか。
    「まりあ、おはよう」
    「すずちゃんっ!」
     まりあの前に現れたのは、お月様みたいなまん丸なおめめが超かわいい、まりあが大好きなお友だち……黒川すずちゃんでした。
    「おはようございます、すずちゃん! 今日も超かわいい〜!」
    「うわあっ! ちょ、抱きつかないで……!」
    「困り眉もかわいいですっ」
    「もう、まりあ……!」
     朝からすずちゃんに会えるなんて! なんだか今日はとってもかわいい一日になりそうです。学校は元々とってもかわいい場所ですが、大好きなすずちゃんに会える場所になってから、もっともーっとかわいくなりました。だからまりあは、最近毎日幸せかわいいのです。
    「それにしても、なんだか、まりあとはここでよく会う気がするよ……」
    「ああ! まりあ、たまにここですずちゃんを待ってますから」
    「へ!? なんで!?」
     目の前にあるすずちゃんのまあるい瞳が、驚いてさらに丸くなっています。
    「すずちゃん、知ってました? かわいいはかわいい場所だとさらにかわいくなるんです! この靴箱の前は、すずちゃんが初めて『まりあ』って呼んでくれた場所だから、かわいいスポットなんですよ」
    「うっ……。そ、そうなんだ……」
     途端に、すずちゃんのほっぺたがつやつやのリンゴみたいに赤く染まってしまいました。
    「すずちゃん、ほっぺたが真っ赤でかわいい〜! かわいいシール、ペタリ!」
    「もう、まりあ……!」
     そうして靴箱ですずちゃんと楽しくおしゃべりしていると、しばらくして校内チャイムが鳴ってしまいました。
    「わっ、もうホームルーム始まっちゃうよ。そろそろ行かないと」
    「大変!」
     少し駆け足になりながら二人で階段を登っていると、すぐにすずちゃんの教室のある階に到着してしまいました。まりあ達は学年が違うので、ここでお別れをしなくてはなりません。ついついお別れがさみしくて、足が止まってしまいます。
    「まりあ?」
    「せっかく朝からすずちゃんに会えたのに、しばらくお別れですね……」
    「もー、何言ってるの。放課後会えるでしょ?」
    「でもでもっ。まりあ、ずっとすずちゃんと一緒にいたいんですよう」
    「それは……すずもだけど」
     それでも、すずちゃんはにこっと笑って足を進めました。
    「でも、お互いもっとかっこよくなるために頑張らなくちゃ! じゃあまたね、まりあ」
     軽く手を振って、教室へと向かっていったすずちゃんを見て、まりあはなんだかジーンとかわいい気持ちでいっぱいでした。
    「……すずちゃんは、やっぱりかっこいいですね。まりあもかわいく頑張らなくてはいけません」
     すずちゃんの言葉に背中を押される気持ちで一歩足を踏み出すと、自然と両足が軽やかにステップを踏むように動き出しました。
     階段を上がると、あっという間にまりあの教室である二年二組に到着です。すると、後ろドアに近い席に座っているかわいいお友だちが、まりあに気づいてかわいく挨拶してくれました。
    「まりあちゃん、おはよう!」
    「おはよー」
    「おはよう、まりあちゃん」
    「お、おはよう……」
     みらいちゃん、えもちゃん、りんかちゃん、虹ノ咲さん。全員まりあのかわいいお友だちです。
    「おはようございます! みんな今日もかわいい!」
     カバンを置いて着席すると、すぐに朝のホームルームが始まりました。
     さて、午前中はどんなかわいいが見つかるでしょうか?

     一時間目、国語。お友だちのために走るメロスさんのお話を読みました。友情の絆、かわいい!
     二時間目、社会。世界地図を見て、地球にある六つの大陸の名前を覚えました。大きくて、広くて、かわいい!
     三時間目、算数。一次関数と連立方程式……。数字がいっぱいでかわいい!
     ……あれれ? 瞬く間にお昼になってしまいました。かわいい授業は過ぎるのがとっても早いです。
     教室の中は、すでに給食モードに切り替わっていました。どこもかしこも、カレーの匂いでいっぱいです。まりあも自分の分の給食を、給食当番のえもちゃんのところに取りにいかなければなりません。聞くところによると、なんとえもちゃんは小学校一年生の二学期から永久給食当番だそうです。かわいい!
    「えもちゃん、次はまりあの分をお願いします」
    「ほーい」
     配膳をしているえもちゃんは、全員分を均等に分けるのも、綺麗にお皿に盛るのもとっても上手です。
    「もー限界! 算数とか全然エモくないし!」
     カレーをまりあのお盆に載せながら、えもちゃんはハァ、とため息をつきました。どうやら、前の時間の算数で疲れてしまったようです。耳を澄ますと、えもちゃんのお腹はきゅるるる……とかわいく鳴き声を上げていました。お腹が正直かわいくて、つい笑顔になってしまいます。
    「でもでも〜、数字の『9』なんて音符みたいでかわいいですよ?」
    「え〜? そう? ……あ、」
     えもちゃんが席に戻ろうとするまりあを見て、ニヤッと笑いました。
    「今日はデザートにプリンがついてるピョンよ〜。忘れないように気をつけるんだピョ〜ン」
     ピョン……? 突然いつもよりちょっぴり高い声を出してそう告げたえもちゃんに、まりあはハッとしました。
    「プリリンちゃん!」
     プリリンちゃん。それは、ニューヨークに行く予定だったすずちゃんをウソで送り出すために、まりあがえもちゃんに演技をお願いした架空のかわいいプリチャンアイドル・プリリン川ピョン子ちゃんのことです。
    「ピョコンピョコン!」
    「あははっ、えもちゃんったら」
     思わず、まりあは笑ってしまいました。
     まりあがすずちゃんに吐いた、最初で最後のウソ。そのウソのお手伝いをしてくれたえもちゃんやキラッツのみんなは、まりあのかわいい大恩人です。
     この間あったばかりのことなのに、えもちゃんにとってはすっかりかわいい笑い話になっている――それはなんだか、くすぐったくて、かわいいことのような気がしました。
     給食を机に運び、席に座ってみんなでいただきますをするのを待とうとした、そのとき。
    「まりあ……じゃない、えっと金森先輩はいますか?」
     廊下から誰かがまりあを呼ぶかわいい声が聞こえてきました。この鈴の音のようなかわいい声は、朝聞いたばかりです。
     ドア付近を見ると、やっぱりすずちゃんがまりあの教室にいるではありませんか! まりあは一気にうれしくなって、急いですずちゃんの元へと向かいました。
    「すずちゃんっ! まりあに会いにきてくれたんですか!?」
    「ま、まりあ! えっと、うん。ちょっとまりあに頼みたいことがあって……」
    「なんでしょう? まりあ、すずちゃんのためならなーんでもしちゃいますよっ」
     まりあがドンとかわいく胸を張ると、すずちゃんはもじもじとしながら、かわいい上目遣いでまりあを見てきました。そのかわいさに、まりあはノックアウト寸前です。
     その後もちょっぴり言いづらそうにしていたすずちゃんですが、数秒経つとこそっと小さい声でまりあに用件を話してくれました。
    「その、体操服を貸してほしいんだ……」
    「体操服?」
     詳しく聞くと、どうやらすずちゃんは今朝慌てていたらしく、体操服をお家に忘れてきてしまったようでした。
    「大丈夫ですよ、すずちゃん。まりあにかわいく任せてください! バッチリ持ってますからね」
    「ほんと!?」
     すずちゃんがホッとしたような表情になりました。すずちゃんのお役に立てて、まりあはとってもうれしいです。
    「はい、どうぞっ」
    「ありがと」
     早速ロッカーに取りに行った体操服を、すずちゃんに渡しました。洗ったばかりなので、布地からはほんのり甘いお花の匂いがします。
    「まりあ達も六時間目に体育があるので、それまでには返してもらえたらうれしいです」
    「うん、わかった! はぁ……なんかすず、カッコつかないなあ。かっこよくなろうね、って今朝言ったばかりなのに」
     すずちゃんが眉をしょぼんと下げてしまったので、まりあは慌てて「そんなことありません!」とその小さくてかわいい手を握りました。だって、まりあはうれしいんです。
    「すずちゃん、友だちに頼るってきっとすごくかわいくてかっこいいことですよ? すずちゃんがまりあを頼ってくれて幸せかわいいです。同じグループの仲間に、リングマリィになれたんだなあって思えて、うれしいです! ビックバンかわいいです!」
    「まりあ……」
     下を向いていたすずちゃんが、顔を上げて真っ直ぐまりあと目を合わせてくれました。かわいいお顔がよく見えてかわいいです。すると、すずちゃんは口角をキュッと上げてまりあに笑いかけてくれました。
    「……うん、そうだね。まりあ、ありがとう! 後で返しにくるから」
    「……! はいっ!」
     まりあもつられて笑顔になります。やっぱり、すずちゃんは笑顔が一番かわいいですから!

    「あら、すずちゃんはもう教室に戻っちゃった?」
     自分の教室に帰っていったすずちゃんを見送ってまりあも教室に戻ると、ドア付近にいたりんかちゃんに話しかけられました。こくりと頷くと、りんかちゃんは「そういえば、」とかわいく小首を傾げながら呟きました。
    「すずちゃんがこの教室に来るなんて初めてじゃないかしら。上級生のいる階ってなんとなく来づらいから、後輩はあまり来ないのに……。ふふっ、リングマリィになってから、世界が広がったのかしら」
    「世界が広がった……? それは、かわいいことですか?」
     りんかちゃんの言葉に、今度はまりあが首を傾げる番になってしまいました。りんかちゃんはくすくすと笑いながら、なんだか懐かしそうに、記憶を辿るように目を細めました。
    「ええ。勇気を持って一歩踏み出した先には、すてきな世界が広がってるものなのよ。まりあちゃんがいるから、すずちゃんはこの階段を上がってきた。プリ☆チャンもそうだわ。まりあちゃんがいたから、すずちゃんはキラ宿に残ることを決めた。私も前は踏み出した側だったから、なんだか親近感があるわ」
     りんかちゃんはそう言って、優しい目でみらいちゃんとえもちゃんのいる方を眺めました。きっとまりあは今、とってもかわいいキラッツの絆を目に焼き付けています。胸があったかかわいいです!
     そのときでした。
    「………一歩、踏み出す」
     まりあの近くで、かわいく透き通った声が小さく響いたのは。

     給食を食べ終わって、待ちに待ったお昼休みになりました。
    「虹ノ咲さん」
    「わひゃあっ!?」
     静かに読書中だったところをまりあがいきなり話しかけてしまったせいか、虹ノ咲さんはかわいくびっくりしてしまったようです。
    「驚かせてしまってごめんなさい! まりあ、虹ノ咲さんとおはなししたくて……」
    「う、ううん……! 大丈夫だよ。その、話って?」
    「この間のこと、ちゃんとお礼を言いたかったんです。まりあ達、虹ノ咲さんにいっぱいお世話になりましたから」
     まりあ達リングマリィの結成には、色んな人のかわいい後押しがありました。まりあとすずちゃん、それぞれに声をかけてくれたかわいい人達がたくさんいて、その中でもまりあは虹ノ咲さんにたくさん頼ってしまいました。
    「そんな、気にしないで! 私は全然……」
    「またまた〜、うさカフェにも一緒に行ってくれたじゃないですか」
    「そ、それは……」
     虹ノ咲さんは顔を赤く染めて、かわいく俯いてしまいました。そのときちらっと見えた瞳がなんだかとってもかわいい色をしていた気がしましたが、すぐに髪の毛のカーテンに覆い隠されてしまいます。しかし、はっきりと見えているほんのりピンクに色づいたその唇は、小さく動きました。
    「でも、良かった……。二人のグループ、見てみたかったから。ちぐはぐな個性を持つ二人のステージが、どんなものになるか気になってたし……」
    「ふふ、うれしいです。どうでした? かわいくてかっこいいステージになっていましたか?」
    「うん……! その、すごく素敵だった。なんていうか、ええっと……。あ、そう! さっきの給食のプリンみたいで……」
    「プリン、ですか?」
    「あっ、ごめんなさい。意味わからないよね……」
     声色が明るくなって上を向き始めていた虹ノ咲さんの顔が、また下を向いてしまいます。でもまりあは、虹ノ咲さんがとってもかわいいことを言おうとしてるんだってわかりました。虹ノ咲さんがかわいくて優しい人であることは、まりあにはすっかりお見通しです。
    「虹ノ咲さん、意味を教えてください。かわいいの予感がします!」
    「え……?」
     初めは躊躇っていた虹ノ咲さんでしたが、まりあがじっと待っていると、とうとう話してくれました。
    「あの、ね。うちの給食のプリン、カラメルソースがほんの少し苦いでしょ? でも、甘いプリンと一緒に食べるとすごく美味しいの。リングマリィはそんな感じがするかもって、そう思ったの……って、わあ!!」
     おそるおそる、というようにまりあを見た虹ノ咲さんが、肩を跳ね上げました。ああっ、いけません! かわいすぎることを聞いてしまったせいで、まりあの頭のお団子ことかわいいセンサーの回転が止まらなくなってしまいました! でも、かわいいから構いません。
    「ありがとうございます、まりあはとーってもうれしいです! ねえ、虹ノ咲さん。今度また一緒にうさカフェ行きましょうね。すずちゃんも誘って、三人で!」
     ――それに。もしいつか、虹ノ咲さんと一緒にプリ☆チャン配信ができたら! まりあのかわいいセンサーが反応している、きっと超かわいいはずのその瞳を閉ざしてしまっているカーテンも、いつか開いてくれたら。
    「う、うん! 行きたい……!」
     そのときはきっと、この世界はもっともーっとかわいくなっているはずです。

     お昼休みを虹ノ咲さんとかわいく過ごした後、四時間目は理科の授業でした。
     今日は実験なので、移動教室です。理科室の窓からは、まりあ達の教室からよりも校庭がよく見えます。窓際の席なのをいいことに、まりあがじっと目を凝らして校庭を眺めていると、サッカーの授業でかわいく大活躍しているすずちゃんのスポーティーかわいい姿を発見しました。運動神経バツグンなすずちゃんは、まるでボールがネットに吸い込まれるように、正確にシュートを決めていきます。
    「はわわ……すずちゃん、かっこいいかわいいです! ん? かわいいかっこいい?」
     それにしても。やっぱりまりあの体操服のサイズでは、すずちゃんにはちょっぴり大きかったかもしれません。半袖がすずちゃんのかわいいおひじまで隠してしまっているではありませんか。
    「でもでもっ、まりあの体操服を着てるすずちゃん超かわいい〜!」
    「まりあちゃん。おーい、まりあちゃん」
    「ハッ」
     トントンと肩を叩かれて振り返ると、そこにいたのはみらいちゃんでした。今日の実験で、みらいちゃんとまりあは同じ班になったのです。
    「そろそろ実験やろう?」
    「ごっ、ごめんなさい! まりあとしたことが……かわいいものを見るとつい我を忘れてしまうクセが出てしまってました……」
    「あはは……まあ、それがまりあちゃんだし。何かかわいいものでもあったの?」
    「はい! とーーってもかわいいものがありました!」
     へえ、なんだろう、と呟いたみらいちゃんは、窓の外へと顔を向けました。するとすぐに「かわいいもの」の正体が判明したのか、みらいちゃんは口元にかわいい笑みを浮かべます。
    「やっぱりすずちゃんのことだったんだ。わあ、すごい。活躍しててかっこいいね。あれ? でも少しぶかぶかな体操服を着てない?」
    「あれは、まりあが貸したんですよ〜」
    「そうなんだ……って、おしゃべりしてる場合じゃないよ、まりあちゃん! 実験始めなくちゃ!」
    「ああっ、そうでした!」
     用意した三本の試験管の中に、ピンセットで植物を入れるみらいちゃんを横からこっそり眺めます。
     みらいちゃんは、不思議かわいい人です。
     こうして一緒にいると、まりあの仲良しかわいい同級生なのに……ううん、配信をしているときも変わらず「みらいちゃん」なのに、たまに巨大な惑星みたいな、ビッグかわいい存在になるのです。
     リングマリィの初ライブの前、みらいちゃんはまりあのデザインしたコーデにさらにかわいくかっこよくなる魔法をかけてくれました。まりあの案そのままのジャンピンラビッツキューティーコーデと、みらいちゃんの魔法が一振りかかったジャンピンラビッツクールコーデ。まりあとすずちゃんが一緒のステージに立つのに、これ以上ないくらいぴったりなコーデです。リングマリィの最高かわいい初ライブは、みらいちゃんがいてくれたからこそ生まれました。かわいい宇宙の誕生です! でも――。
    「あれ? この緑色の溶液が入ってる試験管の一本にアルミ箔を巻くんだっけ?」
    「そうみたいです!」
     やっぱりみらいちゃんは、いつもと変わらずそのままの等身大かわいいみらいちゃんなのです。なんだかまりあはそれが不思議で……。でもきっと、みらいちゃんの内側にはとてつもないかわいいパワーが秘められているのだと、まりあはそう考えています。
    「実験、上手くいくといいね」
    「ふふっ、どんなかわいい結果になるんでしょう? 楽しみです!」
     
    「それでね、すずちゃん! 緑色だった液体が、日光が当たらない方は黄色に、日光が当たった方は青色に変わったんです! つまり……酸素も二酸化炭素もかわいいこの世界は、シンラバンショウかわいいってことがはっきりわかってしまったんです……!」
     五時間目の英語の授業が終わり、すずちゃんがまりあ達の教室に体操服を返しにきてくれました。まりあは四時間目の理科の実験で判明した世紀のかわいい大発見を、早くすずちゃんに伝えたくてずっとウズウズしていたのです。伝え終わってすっきりすると、すずちゃんはなんだかかわいい困り顔でまりあを見つめました。
    「……あの、まりあ。先輩達みんな着替えてグラウンドに行っちゃったよ? 次は体育なんでしょ?」
    「へ? ああっ、本当です! かわいいこととなるとつい夢中になりすぎちゃって……」
     仕方ないなあ、と笑うすずちゃんは、どこかうれしそうです。
    「すずも次は移動教室だからもう行かなくちゃ。体操服ありがとう。六時間目が終わったら放課後だから、また会おうね」
    「はい!」
     手を振ってお別れをすると、次の授業が始まるまであまり時間がありませんでした。
    「いけない! 急がないと!」
     着替えようと取り出した体操服からは、いつもすずちゃんからほんのり香ってくる、爽やかでやわらかなかわいい匂いがしました。
     息を切らしながら急いで校庭に向かい、みんなの元へと辿り着くと、ちょうど授業開始のチャイムがなりました。どうやらまりあはギリギリ授業に間に合ったようです。
    「やあ、珍しく遅刻かと思ったよ」
     必死で息を整えているまりあに、隣から誰かがそう言ってタオルを差し出してくれました。見上げると、ベリーみたいな瞳を細めて、さらちゃんが微笑んでいるではありませんか。
    「はぁ、はぁ……。あ、あれ、さらちゃん? なんでここにいるんですか?」
     お礼を告げてふわふわのタオルを受け取りながら、まりあは疑問を浮かべました。なぜなら、さらちゃんはまりあ達と別クラスだからです。
     そこへソフトクリームみたいなかわいいツインテールを揺らしながら、あんなちゃんがやってきました。
    「あら、ご存じないんですの? 今日の体育はわたくし達のクラスとあなた達二組との合同授業でしてよ」
     すると、キラッツの三人もこちらへと歩いてきました。えもちゃんとあんなちゃんの視線がバッチリぶつかります。
    「うわ、あんなじゃん」
    「あら、なんです? 黄色いの。何か御用?」
    「なんも用なんてないですけど〜!?」
     案の定、いつも通りの二人の仲良しかわいいやりとりが始まりました。
    「あらあら、またやってるわ」
    「フフ、そうだね」
     みらいちゃんとりんかちゃんとさらちゃんは、かわいく談笑しながら二人を眺めています。まりあも三人と一緒にかわいい光景を見守っていましたが、ふとメルティックスターのかわいいメンバーがもう一人足りないことに気がつきました。
    「さらちゃん、めるちゃんは今どこにいるんですか?」
    「める? ああ、めるなら――」
    「なになに? めるめるのこと呼んだ?」
    「へ!?」
     そのとき突然、頭上からキャンディのようにポップでスイートな声が降ってきました。驚いて空を見上げると、昼間の白い太陽を背にした黒い影が、くるっと回転しながらまりあを飛び越えていくではありませんか!
    「みんなー! 今日の授業は創作ダンスだよ! レッツダンシング!」
     体操選手のようにピタッと足を揃えて地面に着地しためるちゃんは、ピースサインを掲げて眩しくてかわいい笑顔でみんなを見渡しました。すごすぎかわいいです!!
    「もう、める! どこに行ったかと思いましたわ!」
     いきなり現れためるちゃんの元へと、あんなちゃんとさらちゃんが駆けていきました。超かわいいメルティックスターが三人揃い踏みです。
    「ソーリー! ダンスがわからないって言ってる子がいたから、一緒に踊ってたの」
    「アドバイスをしてあげたんじゃなくて?」
    「うーん……スキルも大事だけど、まずダンスはエンジョイすることが大切でしょ? だからめるめるは〜……ホイっと!」
     めるちゃんは一度屈伸をすると、その場でくるくるっとかわいい三回転宙返りをしました。しかし、それだけではありません。
    「わあっ」
    「すごーい!」
     バレエように可憐なステップを見せたかと思えば、次は自由なヒップホップを、そしてあんなちゃんとさらちゃんの手を取ると絵本の中の舞踏会のようにくるくるっとターンをして、色々なダンスを次々と披露していきます。とても楽しそうにダンスをする超かわいいめるちゃんに、この場にいる全員が釘付けになっているのがわかりました。あんなちゃんもさらちゃんもどこか誇らしげにめるちゃんを見つめながら、両隣でそれぞれの個性がかわいく光るダンスを踊っています。
     メルティックスターの三人はそれぞれ違うジャンルのダンスを踊っているはずなのに、なんだか完成された一つのダンスを見ているみたいで、まりあはあまりのかわいさに胸がドキドキしました。やっぱりメルティックスターは、お星さまみたいにキラキラと光るかわいいグループです。
     そのときです。三人にインスピレーションを受けて、まりあはとびきりかわいいダンスのアイディアをポンと思いつきました。
     その後も色んなかわいいダンスを眺めながら、まりあは授業の終盤になってようやく創作ダンスを完成させました。
    「みなさーん! まりあのかわいい創作ダンスもみてください!」
    「えっ、今度はまりあちゃん!?」
    「楽しみ〜」
     期待に満ちたかわいいお顔で、みんながまりあの周りに集まってきます。そのかわいい眼差しを浴びながら、まりあはまず一歩ステップを踏みました。
    「えっ!?」
     誰かのかわいい驚きの声が上がります。
    「すずちゃんみたい!」
     まあ! お気づきの方もいるようですね。そうです、まりあはすずちゃんに教わったダンスを創作ダンスに組み込んだのです! すずちゃんと出会ったばかりの頃、まりあがどうしてもすずちゃんと一緒に合同配信をしたくて、一生懸命練習したダンスを。あれからも、すずちゃんと仲良くなるために頑張って練習しました。今では苦労していた動きもバッチリ成功させられます。
     でももちろん、それだけじゃありません。
    「わあっ……かわいい……!」
     だってまりあの信念は、正義は、個性は、「かわいい」ですから!
     すずちゃんの「かっこいい」が「かわいい」であると知って、まりあのかわいいはさらに広がりました。新しいかわいい世界を知ったまりあは、かっこよくてさらにかわいいです!
    「まりあちゃん、かわいい! かっこよくて、かわいい!」
    「うん! 超かっこかわいいっ」
     かわいいお友だちの声援が、まりあのかわいいパワーに変わっていきます。ターンの瞬間に体操服からふわっと香ったすずちゃんの匂い。なんだかすずちゃんにまで「頑張れ!」って応援してもらってるみたいで、まりあのステップを踏む足は、まるで雲の上にいるかのように軽やかになっていきました。

    「ありがとうございました!」
     ダンスの披露が終わった途端、まりあはお拍手のお花畑に包まれました。
    「まりあ、すごくエモかった!」
    「なかなか良いパフォーマンスでしたわ」
     えもちゃんとあんなちゃんも仲良く隣同士で見てくれていたようです。かわいい二人にかわいく褒められて思わず花丸かわいい気分になっていると、その横にいためるちゃんにも声をかけられました。
    「まりまり、すごい! スージーの得意なダンスを取り入れてたね!」
     まりあの手を取ってぶんぶんとシェイクし始めためるちゃんの目は、とってもキラキラしています。
    「すずちゃんに教えてもらいながら、一生懸命頑張ったんですよ」
    「すっごくクールでキュートだったよ! バラバラなカラーを持ってる二人が、バラバラなカラーなまま同じキャンバスに混ざる……ベリーベリーナイスな化学反応が起こったね! ナイスエンジョイ!」
    「えへへ。はいっ!」
     そして授業が終わり、教室へと向かう廊下を歩いている途中、まりあの隣に並ぶ影がありました。さらちゃんです。
    「まりあくんは人気者だね」
    「そうですか? うれしいです!」
     さらちゃんは静かに微笑むと、まりあの顔をじっと覗き込みました。
    「気づいてるかい? みんな、キミ達リングマリィのグループ結成を祝福してる」
    「はい……わかります、たくさんのかわいい気持ちが伝わってきますから」
     さらちゃんは笑みを深めてゆっくり頷くと、「かっこいいとかわいい、か」とポツリと呟きました。
    「ボク達メルティクスターも、あんなと、ボクと、める……全員違う色を持ってる。でも、ボクらはボクら以外の形にはなりえない。すずくんとまりあくんも、気がついたんだろう? バラバラだから合わないなんてことはないって」
    「ふふっ、はい。実はすずちゃんを迎えに行く直前、同じことをなる店長さんからも言われました」
    「おや、そうなのかい?」
    「『二人が合わないなんて感じたこと、一度もない』って。まりあ達は、本当にたくさんの優しい人たちにかわいく背中を押されましたね」
    「うん。みんな、優しいんだよ」
    「本当に……。あっ、『みんな』だから、もちろんさらちゃんもですよ!」
     慌ててそう言うと、さらちゃんは目を見開いて、「敵わないなあ」と目を細めて笑いました。そのとき。
    「でも、これからはそれだけじゃないですわ」
     まりあ達の前を、くるくるのかわいいツインテールが通り過ぎました。体育の後でも一切乱れのないツヤツヤの髪の毛がとってもかわいいあんなちゃんです。
    「あんな」
     さらちゃんがあんなちゃんの名前を優しく口にします。するとあんなちゃんは立ち止まり、華やかにくるっと回ると廊下の真ん中からビシッとまりあを指差しました。
     まるでその場所だけ、スポットライトに照らされたステージになったみたいです。まりあと一緒に歩いていたさらちゃんが、今度はあんなちゃんの隣に、騎士のように寄り添いました。そこに、めるちゃんもやってきます。
    「わたくしから一言よろしくて?」
    「な、なんでしょう!?」
     なんだか、とっても熱くてかわいい予感がします。
    「第二回だいあフェスで優勝したあなた達リングマリィは、わたくし達にとってジュエルアイドルを目指すライバルになりました。しかーし! わたくし達メルティックスターは強力なライバルの出現を歓迎しますわ! 共に高みを目指しましょう」
     あんなちゃんは高らかにそう告げると、にこっと笑って二人とともに教室の中へと入っていきました。
     一人になった廊下で、まりあの心は静かに……けれど確かにかわいく燃えていました。
    「あんなちゃん……。やっぱり、あんなちゃんはかわいいです」
     あんなちゃんだけじゃありません。メルティックスターの三人は、やっぱり眩くきらめくスターのような人達です。夜空に浮かぶ星に手を届かせることは難しいけれど、それでもあまりにもかわいくて綺麗だから、人々は手を伸ばすことをやめられない――メルティックスターは、そんなかわいい魅力で溢れています。
     でも、リングマリィだって負けられません。リングマリィは、月を目指してジャンプする二匹のかわいいうさぎです。いつか夜空に浮かぶ星だって超えられるように。まりあとすずちゃんの二人でならどんなに高いところだって、辿り着けると信じています。
    「……はやくすずちゃんに会いたいです。すずちゃんとかっこかわいい配信がしたいです!」
     あと、もう少し。もう少しの辛抱です。帰りのホームルームが終わったら、その時間はやってきます。まりあははやる気持ちを抑えながら、教室の中へと入りました。

     とうとう放課後です。
     先生がホームルームの終わりの挨拶をするなり、まりあはカバンを持って一目散にすずちゃんのいる教室に向かいました。
     途中、階段を下りていたそのときです。下から黒ネコちゃんみたいなくせっ毛の女の子が階段を上ってくる姿が見えました。
    「……すずちゃん?」
     まりあが思わず足を止めると、顔を上げたすずちゃんは、黒髪の隙間から夕日みたいな綺麗でかわいい目を覗かせました。まるで運命の出会いのワンシーンのように、まりあ達の視線がぶつかります。
    「あれ、まりあ。ちょうど迎えに行こうと思ってたんだ」
    「そうだったんですか? まりあもです!」
    「あはは、そっか。同じだね」
    「はい、同じです!」
     すずちゃんは口元に柔らかい笑みを浮かべると、方向転換をして階段を下りはじめました。まりあもその後ろに続きます。トン、トン、と小さな靴音が二人分、放課後の校舎に響きます。
    「今日の配信も楽しみだね」
    「どんなかわいいプリ☆チャンにするか、やりたいことがありすぎて迷っちゃいます」
    「へえ、そんなにやりたいことがあるの?」
    「はい! 実はまりあ、すずちゃんと一緒のグループになれたら叶えたいことを、かわいい手帳に書いていたんです。その夢の一つ一つをかわいく実現していったら、きっといつかリングマリィはお月さままで届くと思うんです!」
     まりあがそう言い切ると同時に、一階に到着しました。さっそく靴を履き替えようと靴箱へと向かおうとしたとき、背後から手首がグッと掴まれます。すずちゃんがまりあの手首を掴んだのでした。
    「すずちゃん? どうしました?」
     外から差し込むオレンジがかった金色の光が、すずちゃんを眩しく照らします。足元を見ると、まりあの爪先からは黒くて立派な影が確かに伸びていました。再び目線を上に動かすと、すずちゃんが真剣な目でまりあを見ていました。すずちゃんの小さくてかわいいお口が、ゆっくりと開きます。
    「まりあ。これからたくさん、一緒にかっこいい……ううん、かっこよくてかわいい配信をやっていこうね」
     すずちゃんの手のあたたかさが、手首を伝ってじんわりとまりあに移ってきます。
     まりあはそのとき思いました。まりあが目指す平和でかわいい世界が実現したとしたら、きっとそれはすずちゃんのまあるくてかわいい瞳みたいにかわいく澄んでるんだろうなって。だって、すずちゃんの瞳に反射するまりあの顔は、とってもうれしそうです!
    「すずちゃん……だーいすき! 今日もかわいくてかっこよくてかわいい配信をしましょうね! プリズムストーンに着くまでに、アイディア会議をしましょう!」
    「わあっ! っと……はは。うん!」
     すずちゃんの優しい声が、夕方の空気に溶けていきます。きっと、また世界はかわいくなったことでしょう。
     今日も、明日も、その先も。まりあはすずちゃんと一緒に、新たなかわいいを見つけていくのです!
     
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    ろまん

    DONE【まりすず】20歳になったまりあちゃんに「大人」と「子ども」の壁を感じて焦っている19歳のすずちゃん。お互いを大切に想うあまり、ちょっとしたトラブルが起きてしまいます。
    リングマリィの2人とラビリィがこれからも共に生きていく決意や覚悟の話です。お酒に超つよいみらいちゃんが出てきます。
    pixivにも同じものを載せてます。
    ビタースウィートに溶ける すずがまりあと出会ってから、片手の指じゃ数え足りない年数が経過した。どんどんかわいくかっこよくなっていくまりあを、すずはいつも一番近くで眺めていた。
     そんな穏やかな日々を積み重ねた先で迎えた、半年前のアイスクリームの日。
     その日、まりあはとうとう二十歳になった。

     ……そう、まりあは一足先に「大人」になってしまったのだ。一つ年下のすずを残して。





     先日ブロードウェイでのミュージカルが休演期間に入り、リングマリィは久々に帰国していた。
     二人がキラ宿にいることは配信でも伝えており、みらい先輩から「食事でもいかない?」とメッセージがきたのが三日前のこと。すずとまりあは喜んで「いきたいです!」と返信し、トントン拍子でリングマリィとミラクルキラッツの食事会が決まった。
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