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    yukuri

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    yukuri

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    🔗🎭
    警察と怪盗が出会うお話です。

    #Sonnyban
    sonnyban

    シークレットミッション 俺の名前はサニー・ブリスコー。バーチャルスペシャルフォース、VSFに所属する特殊警察官だ。普段の主な仕事は張り込みと乗り込み。悪い奴らをこの手で退治するのが俺の仕事だ。
     しかし、日に日に増えていく事件数に警察官不足が浮き彫りになってきている。そのため、最近は所属部署を飛び越えて管轄外の仕事を行うこともしばしばある。
     現在サニーが取り掛かっている捜査もその管轄外の仕事の一つだ。

     大怪盗、アルバーン・ノックスの逮捕。

     月夜と共に現れ美術品や宝飾品を盗んでいく怪盗、アルバーンを逮捕すべく、捜査に取り組んでいた。
     捜査上で問題になったのは、共犯者の有無。裏で繋がっている仲間がいるのであれば、アルバーン一人を力づくで捕まえたところで蜥蜴の尻尾切りにしかならないと議論になった。
     全ての懸念点を考慮した上で、捜査班はサニーを潜入捜査官として任命しアルバーンの住処及び仲間達の逮捕、その責任を一任した。

     二週間ほど前から開始した潜入捜査。捜査はサニーの警察官人生で初めてと言って良いほど難航していた。

     曇る気持ちを胸に帰宅したサニーは自宅のノブを捻る。
    「あ!おかえりサニー!」
     ぱぁぁと目を輝かせてサニーを出迎えたのは、アルバーン。
     そう、あのアルバーン・ノックスだ。
    「今日もお仕事お疲れ様」
    「ありがとう」
     慣れた仕草でサニーの上着と鞄を受け取り、鼻歌混じりにリビングへ向かうアルバーンの背中を見つめた。

     ことの発端は二週間前、潜入捜査初日。サニーは、アルバーン・ノックスと思われる男性が数回目撃されているというバーに入った。
     周囲を警戒しながら酒を煽っていると、栗色の髪をした男が隣の席に腰掛けた。
    「お兄さん、一人?」
     人懐っこい声が心地よく耳に届く。
     相手の容姿はアルバーン・ノックスの目撃情報と酷似していて、サニーはポーカーフェイスを装ったまま世間話を始めた。
    「あっはは、お兄さん面白い」
     カスタネットのように軽やかな笑い声。出会ってすぐにその可愛らしい笑顔に惹かれている自分に喝を入れ直す。これは捜査だと。
    「ところで君、名前は?」
    「僕はアルバーン・ノックス。お兄さんの名前は?」
     驚いた。本人だったとしても偽名を使うかはぐらかされるかと予想していたのだ。
     相手が自然体であるのに釣られ、サニーも本名を名乗り、仕事は公務員だと告げた。

     それから、同じバーで会って話を重ねた。アルバーンの軽快なコミュニケーションのお陰か予想していた倍以上のスピードで二人の距離は縮んでいった。
     そろそろ良いか、と住んでいる場所を聞き出しあわよくば宅飲みにでも誘おうと試みた。
     すると、サニーが住所を聞くより先にアルバーンが口を開く。
    「実は…住んでいるマンションで火事が起きちゃって、今日帰る場所がないんだよね」
     それは大変だと詳しい話を聞いているうちに、あれよあれよと会話が転がり気がつけば「うちに来る?」と口に出してしまっていた。
     焼失から逃れ無事だった分の荷物を取りにアパートへ戻るアルバーンに付いていくと、そのアパートはかなり焼け焦げていて、修復には時間がかかるとのことだった。
     修復までの一ヶ月間。サニーはアルバーンを自宅に住まわせた。

     ここまで、一見すると潜入捜査は順調なように思われる。対象に近づくどころか、同居にまで漕ぎ着けているのだから。
     しかし、難航していたのは捜査自体ではなく捜査官、サニーの心中だった。
     アルバーンと暮らしはじめて二週間。アルバーンを観察対象として見るには有り余りすぎるほどの感情を抱きはじめていた。
     全ての原因はアルバーンの人たらしとも言える言動にあるのだが。
     サニーは捜査の行く末を思わずにはいられなかった。

     纏まらない思案にため息をついたサニーをきらりと光る目が覗き込む。
    「どうしたの?今日お仕事大変だった?」
    「い、いや…はは。ちょっと疲れたかも」
    「今日は先にお風呂入る?背中流そうか?」
     元気分けてあげるね、と抱きついてくるアルバーンに癒され、事前に沸かしてくれていたお風呂で疲れを取る。
     一通りのルーティンを終えて布団に入ったところで、ふと我に帰った。
     何を絆されそうになっているんだ。相手は世紀の大怪盗、捜査対象だ。と何度も心の中で繰り返した文句を思い出す。
     捜査を進めなければという責任感と、アルバーンのことを知るたびに自然と解れていく心の狭間で揺れている。

     同居をするようになってから、二人で話す時間も増え、アルバーンについて分かったことはいくつかある。
     仕事はコンビニでのアルバイト。デタラメかと裏をとったところ、実際に勤務していて、入るシフトは平日の昼が多い。怪盗業のカモフラージュにしているとサニーは報告書に記す。
     友人は故郷に何人か。都会に上京をしてからは、電話でのやり取りしかしていないという。
     会話を通して知った情報が本当であるか定かではないが、住んでいるところを失い、出会ってすぐのサニーを頼るしかなかったところを見ると、共犯者の存在はいない線が濃くなってくる。
     ここ数日でまとめた資料には分かっている部分のみを記し、同居している事実は伏せて上司へと送信する。

    「今日も一緒に寝ていい?」
     髪を乾かしパジャマに着替えたアルバーンがサニーが作業をしていた寝室へとやってきた。
     同居を始めて分かったことはもう一つ。アルバーンは静かな場所で一人寝付くのが苦手だということだ。
     育って来た環境のせいだとアルバーンは話し、一人で寝る際はテレビやラジオなど、何かしらの音を付けたまま寝ていたという。
     サニーはテレビや照明を全て落として就寝していたため、同じような環境は難しいと話すと、せめて体温の分かる距離で寝てほしいと強請られた。
     一人暮らしはじめに奮発して買ったセミダブルのベッドとはいえ、成人男性が二人並んで寝るのだからお互いの存在を無視することは出来ない距離になる。
     アルバーンの望んだ通り、お互いが体温と呼吸を感じる距離にいるのだ。
     寂しい、と口にせずとも滲み出る。アルバーンが笑顔で隠している裏面に触れている感覚が擽ったい。
     こんなに無邪気な青年が、本当にあの怪盗なのだろうか。いくつもの裏付け証拠より、目の前にいるふわりとした癖っ毛とシャンプーの柔い匂いの確かさがサニーを悩ませる。
     すやすやと寝息を静かに立てるアルバーンの頭を撫で、ぐるぐる回る思考から意識を手放した。

     
    「サニー!次僕あれ乗りたい!」
     きらきらと目を輝かせるアルバーンは、浮き足だった様子で次なるアトラクションへとサニーの袖を引く。
     潜入捜査も三週間目に突入した。上司からは決定的な証拠と逮捕のゴーサインはまだかと問われ捜査の期限も迫って来ている。
     アルバーンを逮捕する。その目的が霞むほどにアルバーンとの生活は楽しく過ぎていった。
     アルバーンの人たらしとも言える性格に溶かされはじめた自分を取り戻すべく、二人で出掛けることにしたのだ。
     非日常な場所で舞い上がるアルバーンから、他の隠れ場所や仲間について聞き出そうという作戦だ。外出先を遊園地にしたのも、スリルを味わい興奮状態のところに質問を投げかけるためであって、決してアルバーンがテレビを見ながら「いいなぁ、楽しそう」と呟いていたのを覚えていたからではない。
    「わぁ!クレープだ!僕あれ食べてみたい!」
     次から次へと興味の対象が移り変わっていく様子はまるで子供のような無垢さを纏っている。
    「クレープ食べるの初めて?」
     大きく頷くアルバーンの口元にはクリームが付いている。ジェスチャーでそれを教えてやると猫のようにちろりと舌を出してクリームを舐めとった。
     先の子供のような無邪気さとは打って変わって色を含んだその一連にどきりとする心を抑える。
    「お父さんとお母さんは僕が小さい頃にいなくなっちゃったから、家族でこういうところに来たことがないんだ。甘いものもこっちに来て出来た友達に食べさせてもらったのが初めてだったよ」
     しゅんと耳が垂れたようなアルバーンに胸が痛くなったが、サニーはアルバーンから出た友達という単語を聞き逃さなかった。
    「いい友達ができたんだね。その友人とは今でも仲良いの?」
    「あのバーテンダーだよ。サニーと出会ったバーで働いてる癖っ毛の」
    「ああ、あの」
     アルバーンと出会ったバーで働くバーテンの妖艶な雰囲気を思い出す。
     隠れ家バーともいえる洒落た雰囲気の店だったが、地下ということもあり店の構造自体が分かりにくかった印象だ。裏に隠し部屋を持っていてもおかしくはないと、そのバーも捜査対象のリストに含める。
     こうやって一つまた一つと捜査が進んでいく度に逮捕に踏み切るその時を想像する。
     アルバーンは俺が警察だと知って本性を表すのだろうか、それとも俺に騙されたことを嘆くだろうか。どちらにしても、アルバーンの笑顔が失われる未来しか浮かばずに気が沈む。窃盗は犯罪、罪を償わせる手伝いをするのが警察。これまでいくつもの凶悪犯と対峙しても生まれなかった恐怖がサニーの心に湧いて滲んだ。
     ぐらりまた揺れる考えに浸るサニーの耳に、深い声が響いた。
    「こら!前を見て歩かないとダメだろう!」
     父親らしき声の矛先は小さな男の子。手に握られたソフトクリームがアルバーンの裾にべちゃりと付いていた。
     男の子が転んだ拍子に付いてしまったのだろう。
    「わぁぁん、お兄ちゃんごめんなさい」
    「はは、大丈夫だよ」
    「でも、ズボンが…」
    「洗えば元通りになるから。ちゃんと謝れてえらいね」
     耳に馴染んだアルバーンの声が頭に残る。「ちゃんと謝る」その言葉がヒントに思えた。
     逮捕以外の道もあるかもしれない。アルバーンが笑顔になれる、そういう未来があるのなら、試してみる価値はある。


    『今日は帰り遅くなるの?』
    『寄るところがあって、いつもより少し遅くなる』
     敬礼をする猫のスタンプが送られたメッセージを確認し、やってきた店へと足を踏み入れる。
     遊園地へ行ってから数日、今日はサニーにとっての決戦日だ。
     今日、サニーはアルバーンに全てを話し、自首をするように説得するのだ。
     サニーはアルバーンとの生活で今まで感じたことのない幸福感を味わった。
     しかし、一生をこのまま過ごせるわけではない。自分は警察、相手は怪盗。自ら出頭をして、反省の意を示せば、刑期は強制逮捕と比べればかなり軽くなるはずである。アルバーンが罪を認めて反省したその後に、また会えばいい。数年の辛抱をすれば良いだけだ。お互いのための決断だった。
     また、二人での生活を通してサニーの中に生まれたアルバーンへの気持ちも打ち明けるつもりだった。刑期を終えるまで待っていること、この気持ちは本当であることを信じてほしいとお揃いのものをプレゼントするのだ。

    「いらっしゃいませ」
     男性店員の上品な挨拶に会釈して、プレゼントを選びたいことを告げる。
    「大切な方へのプレゼントですと、こちらはいかがでしょうか。スクエアの一部が切り取られている珍しい形のネックレスです。ペアのものと合わせると完全な四角になるように作られています」
     きらきら光るゴールドの輝きがアルバーンの片目と重なり、ペアのセットを購入した。
    「こちらからお渡しさせていただきます」
     綺麗に包装されたプレゼントを渡す店員の、眼鏡の奥の瞳が優しく笑った。

    「ふぅ……」
     プレゼントの袋を握りしめ、深呼吸。真実を告げれば彼との生活が終わってしまう。これはお互いが本当の自分として改めて出会うための第一歩。
     気合いを入れてサニーはガチャリと扉を開いた。
    「………」
     玄関に響く静寂。不穏な違和感にサニーの心拍数はゆっくりと上昇していく。
     いつも一番に聞こえてくるはずの声がない。トイレや風呂に行っているのだろうか。それにしても静かすぎる。アルバーンが一人で留守番をしている時についているはずのテレビの雑音もない。
    「アルバーン…?」
     玄関で足元を見るとアルバーンの靴がない。買い物にでも出掛けたのか、ひとまず落ち着こうとリビングに行くと、一抹の不安はさらに現実味を帯びて広がった。
     明らかにリビングの物が減っている。それもアルバーンの持ち物が全て。
     一人暮らしをしていた時の状態に戻っており、ここ数週間の生活はまるではじめから無かったかのようにただ静かに家具があるだけ。これまでの出来事は夢だったのか、足元がぐらついてふらりとソファに座り込んだ。
     アルバーンは自分が警察だと気づいて逃げたのか。小一時間前までメッセージで会話をしていたのに。信じがたい現実に、深く息を吐く。
     何かアルバーンといた証拠を、と手元にあったプレゼントを徐に開く。たった今購入したプレゼント。綺麗に包まれたそれはアルバーンに開けてもらうはずだったのだ。そして、虚無と共に開いたペンダントボックスは、空だった。
    「はぁ!?」
     たった今、購入したはずのペアネックレス。アルバーンに渡すはずだったそれは何度開け閉めしてもそこにはなかった。
     どういうことだと自分の方の包装されていないネックレスの箱を開く。
     そこには、ネックレスと一枚のメッセージカード。
    『騙しちゃってごめんね。サニーと一緒にいれて楽しかったよ。また会うその日まで、このプレゼントは大切にコレクションしておくね。
    I love you too.
    アルバーンより』
     こうして、アルバーン・ノックスはプレゼントを盗みサニーの前から姿を消した。


     
    「隊長、隊長…!」
    「あ、ああ。聞いている」
     数日前、忽然と姿を消したアルバーン・ノックス。接触による情報源を失った捜査班は、強行逮捕に踏み込むことを決定した。
     乗り込む先はアルバーンと出会った隠れ家バー。友人が経営しているとアルバーンが話していた場所だ。
     アルバーンが姿を消した日に修復されたアパートへ行くと、既に退去済みで、アルバーンが身を隠すとすればここしかないと一縷の望みをかけて戸を突き破る。
    「VSFだ!!全員大人しくしろ!」
    「………」
     こだまする自分の声。店の中は間抜けの殻。たった一人清掃員が掃除をしているだけだった。
    「ここのマスターは?」
     勢い余って清掃員の胸ぐらを掴んで尋ねる。
    「マ、マスター?……ああ、バーのね。数日前に店じまいになったらしいっすよ。だからこうして次のテナントの為に今掃除を…」
    「はぁ……」
     またしてもやられた。友人だというバーテンもやはりグルだったという訳だ。一斉に姿を眩ませ、頼りになる情報は全て泡となって消えた。
     サニーは放心し、捜査は失敗に終わった。奪われた時間も手間も戻ってこない。サニーの心はとうに奪われ、サニーの元に残ったのは、アルバーンと過ごした思い出と胸元のネックレスのみ。
     サニーの脳内で軽やかに笑うアルバーンの声がした。

    ***

    「はっはは」
     栗色の癖っ毛にオッドアイ。スタッカートの軽やかな笑い声。
     アルバーン・ノックスは隠れ家のうちのひとつ、とある一室のソファに腰掛ける。胸元にはスクエアの一部が切り取られたネックレス。彼とペアになるそのチャームを大切そうに撫で、にこりと微笑んだ。
    「はぁ〜楽しかったぁ」
    「それで?これだけ手間をかけてアルバーンの報酬はそのネックレスだけ?」
    「そんな言い方しないでよ…!大切な人を見つけたんだから」
    「あの警察官か。まさかそこまでお熱になるとは」
    「もう!浮奇の分の報酬はちゃんと払っただろ。文句言わないで」
    「文句じゃないよ。金品にしか興味なかった男がさ、目輝かせちゃって、珍しいこともあるもんだなと思って」
     呆れた声を息まじりに吐き出したのは、浮奇ヴィオレタ。サニーとアルバーンが出会った隠れ家バーのバーテンダーだ。
     浮奇は悪党たちの中では何でも屋として顔が知れており、友人であるアルバーンに、手伝って欲しいことがあると言われバーを作り上げた。
    「その愛しの彼、今頃泣いてるんじゃない?プレゼント盗まれて仕事も失敗して」
    「もともと僕にくれるはずの物だったし!」
    「その件だけど、アイク先輩が暇でよかったね、アルバーン」
    「ははは。緊張したよ。僕はプロのマジシャンなんかじゃないし。なにより警察の前でやるのはね。なかなか味わえないスリルだし、刺激的だった」
     眼鏡を直して、微笑んだのはアイク・イーヴランド。アクセサリー店でサニーに対応した店員だった。普段は物書きをしているアイクもアルバーンの古い知り合いで、特技であるマジックをして欲しいと呼び出されたのだ。
     ラッピングしているふりをしてアルバーンのネックレスを手元に残し、サニーの箱には事前に渡されていたメモを入れた。
    「完璧だったよ!アイク先輩、ありがとう!」
    「いえいえ。僕を店員として忍び込ませる為に、ヴォックスも一枚噛んでいるらしいじゃない。そうまでして欲しかったものは手に入ったのかな?」
     不敵な笑みのアイクが問いかけた、その時。扉が開いた。
    「ユーゴ…!」
    「お疲れ様」
    「ユーゴ!ありがとう!」
    「もっとマシな役当てなかったのか?」
     清掃員の帽子を脱ぎ捨てた男、遊間ユーゴはソファに腰掛け寛げる。
    「ごめんって。次はもっと楽しいところお願いするようにする」
    「清掃員でも十分緊張している様子じゃなかった?」
     サニーとユーゴの一連を遠隔で聞いていたアイクが悪戯に笑いかける。
    「緊張なんかしてないっすよ…!あの警官、びっくりしすぎて俺のこと怪しむ暇もないって感じだったし」
    「そう?」
     遊間ユーゴは本職をDJとする音楽家。こちらもアルバーンの友人で、今回は清掃員として計画最後の部分を手伝ってもらうべく呼び出した。
     ふふふ、と笑うアイクの先の質問にアルバーンが答える。
    「僕ね、やっと欲しかったものの在処を見つけたんだ」

     サニーに近づくのは、ただの好奇心で練り始めた計画だった。
     盗みを働くうちに噂がついて周り、警察が自分の逮捕に踏み切ろうとしていることを、知り合いの探偵から耳にした。警察官を騙くらかして姿を消す。ちょっとした遊びのつもりだった。
     しかし出会ったのは、面倒見が良く優しい心を持つサニー。名の通りお日様のように温かい彼の部屋で、今までに過ごしたことのない陽だまりのような日々を過ごした。仕事に一生懸命な横顔も、自分を大切に思い始めて悩む優しさも、夜に頭を撫でてくれる彼の手も。どこを取っても愛おしい、そんな存在に出会ってしまった。
     サニーの思惑に気が付いて、計画を大幅に変更しアイクやユーゴに手伝いをお願いした。

     アルバーンが欲しかったもの。貧しく何度も心が擦り切れた幼少期から焦がれていたもの。心を照らしてくれる大きな愛。
     胸元に光るペアチャームのように、自分らしい自分を受け止め完成させてくれるサニー。
     楽しかった日々を心の宝箱に大切に仕舞い込み、次はどのようにして彼に会おうかと思案する。
     再開した時、彼はどんな反応をしてくれるだろうか。


     世紀の大怪盗、アルバーン・ノックスは人生最大のターゲットを見つけ心が浮き上がるようだった。
     窓外の星に目をやり、猫のように鋭い眼光に三日月がくるりと弧を描いた。
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    yukuri

    DONE🦁🖋
    ボスになりたての🦁くんが🖋くんと一緒に「大切なもの」を探すお話です。
    ※捏造注意(🦁くんのお父さんが登場します)
    題名は、愛について。「うーーん」
    「どうしたの。さっきから深く考えてるみたいだけど」
     木陰に入り混じる春の光がアイクの髪に反射した。二人して腰掛ける木の根元には、涼しい風がそよいでいる。
    「ボスとしての自覚が足りないって父さんに言われて」
    「仕事で何か失敗でも?」
    「特に何かあったとかではないんだけど。それがいけない?みたいな」
     ピンと来ていない様子のアイクに説明を付け加えた。
     ルカがマフィアのボスに就任してから数ヶ月が経った。父から受け継いだファミリーのメンバー達とは小さい頃から仲良くしていたし、ボスになったからといって彼らとの関係に特別何かが変化することもない。もちろん、ファミリーを背負うものとして自分の行動に伴う責任が何倍にも重くなったことは理解しているつもりである。しかし実の父親、先代ボスの指摘によると「お前はまだボスとしての自覚が足りていない」らしい。「平和な毎日に胡座を描いていてはいつか足元を掬われる」と。説明を求めると、さらに混乱を招く言葉が返って来た。
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