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    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

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    おもち

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    PsyBorg。バーテン🐏パロ、これで三個目なので前の話を先にどうぞ。
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    ①→https://poipiku.com/5487879/7231467.html

    #PsyBorg

    そこまで度数の強いものを作ったつもりはなかったのだけれど、浮奇は俺が予想していたより早くに酔って顔を赤く染めていた。俺を見つめる瞳がゆるくとろけて引力を増している。さりげなく目を逸らしながら空になったグラスの代わりに水の入ったコップを渡せば、彼は可愛らしく小首を傾げた。
    「おみず?」
    「ああ、もうずいぶん酔っているようだからな」
    「んん〜……まだふーちゃんと飲んでたい……」
    「俺は飲んでいるだろう」
    「一緒に飲みたいんだもん……」
    「……酔った時のシュウに少し似ている」
    「シュウさん……? あそこのお店の?」
    「ああ、彼も酔うと甘えたになるタイプだから、呼び方も同じだと余計にそう思うのかも」
    「……じゃあ変える」
    「ん?」
    「ふー、ふぁ、んん……ふーふーちゃんは? ちょっと可愛くない?」
    「ふーふーちゃん? はっ、可愛すぎるだろ、俺のことそんなふうに呼ぶやついないよ」
    「じゃあそうする! えへへ、ふーふーちゃん、俺だけのトクベツな呼び方ね」
    「あー、……オーケー。それで、お水のおかわりをあげたいからそれをきちんと飲んでいただけませんか?」
    「はぁい」
    どうやらトクベツな呼び方を手に入れて満足したらしく、浮奇はさっきまでの駄々をこねていた様子から一転、機嫌よく水を飲んでくれた。ぷはっと思い切りよく飲み干す彼を笑い、おかわりを入れてやる。これですこしは酔いが覚めるといいけれど。
    浮奇のことを見ながら飲む酒は味わったことがないと思うほど美味しかった。飽きることのない美しく可愛らしい顔立ちに、酔ったおかげでころころと変わる表情、俺のことを上目遣いで見つめてみせるわざとらしいけれどグッとこないわけがない仕草まで、あまりに彼は魅力的で酒の肴で終わらせるにはもったいない。それ以上なんて、求めてはいけないけれど。
    「ふーふーちゃん……」
    「うん、どうした? さっきの話の続きでもするか?」
    「さっき、……なんの話してたっけ?」
    「前に付き合ってたヤツが最低のクソ野郎だったって話」
    「……俺そんなこと言っちゃってた?」
    「おお、少しは酔いが覚めたみたいだな? 冗談だったんだけど当たってたか」
    「え、うそうそ、あたってない、本当にそんなこと言ったのかってビックリしただけだよ! い、言ってないんだよね……?」
    「どうだったかな……俺も実は酔ってて」
    「少しも顔色変わってないくせによく言うよ!」
    「ふはは、オーケー、冗談だよ。じゃあ浮奇に酷いことするヤツはいない?」
    「……イジワルする人なら目の前にいる」
    「どこにそんなヤツが? 浮奇のためにどっかにやってしまうか?」
    「え、やだ。……まだ、一緒にいたいから、どっかにやっちゃだめ」
    「……まったく、この子は」
    遊び慣れているだろうと思った俺の考えは間違ってはいないと思う。飲みながらしていた話には最近の若者はすごいなと思うようなことだってあったし、ほとんど初対面の俺に対して警戒心を抱かせることなく自然に話を聞いたりできる。それはまあ俺が彼を好意的に思っているから、という理由もあるけれど、それだって彼の経験値によるものだろう。明らかに初心で恋を知らなそうな子にはそもそもこんな機会を作りもしない。
    それなのに、どうして浮奇はこんなにも無防備に感情を表に出してしまうんだ。計算尽くの女性のあしらいなら躊躇いなくできるのに、完璧な角度の上目遣いをするくせに俺なんかの言葉で本当に笑って、怒って、可愛らしくおねだりをする彼を、適当に扱うなんてできそうになかった。
    酒が残っていた自分のグラスの中身を空にしてしまうと、浮奇は不安そうに俺のことを見つめた。まだ水が入っているコップをぎゅうっと掴む手の指先まで丁寧に彩られていて、彼の真面目な性格が感じられる。
    洒落た服に身を包みヒールの靴を履いて、髪や化粧だけでなく爪先まで完璧に整えて、そうしてわざわざ俺のところに来てくれたって、自惚れたくなる。
    「そろそろお開きにしよう」
    「……んん」
    「帰りはバス? 電車? 時間は大丈夫か?」
    「……わかんない」
    「……浮奇、顔を上げて」
    「……」
    「これでさよならじゃない。またいつでも来ていい」
    「明日は?」
    「明日……は、もしかしたら開けてないかも」
    「次はいつ開ける予定?」
    「どうかな……」
    「……俺のために開けてよ」
    俺のはぐらかした答えに、泣きそうな声でそんなことを言う男、今まで出会ったこともなかった。年下に手を出したことがないからとかそういうことではない。最初はただ綺麗な男の子だと、場慣れしてそうな雰囲気に悪くないなと思って、それで、一緒に酒と会話を楽しんだら余計に惹かれてしまったうえに、可愛い顔を他の誰にも見せたくないだなんて。
    「……、……馬鹿だって笑ってくれてもいいんだけれど」
    「なに」
    「……連絡先を聞いても?」
    「……キスをしてくれるなら」
    「……酔っているだろう」
    「酔ってなかったらしてくれるってこと?」
    「大人を揶揄うなよ」
    「こどもはいつだって本気だよ。でも、うん、今回は冗談にしておく。俺もふーふーちゃんの連絡先知りたいもん。次お店を開ける時に連絡をくれる?」
    「本当に来るつもりなのか……?」
    「だめ?」
    「……毎回こうして構ってやることはできない」
    「分かってる。ふーふーちゃんのことだけじゃなくて、このお店も、あなたの作るお酒も、大好きなんだよ」
    ああ、大人を揶揄うな、なんてダサいセリフ、浮奇相手には二度と使わないことにする。
    スマホに表示された【浮奇・ヴィオレタ】という文字を見て「名前まで綺麗なんだな……」と呟いた俺に、彼はとびきり可愛い照れた笑みを浮かべた。
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