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    未月玲音

    @mtk_leon

    魔道祖師など投げていきたい所存。
    ツイッター(X)にそのまま上げるのが憚れるor4枚以上の漫画やらをぽいぽいしていくつもりです。

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    未月玲音

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    不夜天での温氏討伐後、の含らIF
    一人で何でも抱え込んでしまった魏無羨が、人を頼っていたらなもしも物。
    陰虎符をすぐに破壊しないと駄目だと思った先、頼ったのは「姑蘇に帰ろう」と呼び掛けてくれた藍忘機だった。江澄にも許可(というより宿題出されて追い出された)もらって、本格的に陰虎符破壊を共同作業する話。
    金丹に出来たらいいなぁなやつ

    #MDSZ
    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #忘羨
    WangXian
    #含ら

    姑蘇在住の夷陵老祖(途中)射日の戦後暫くして各仙門立て直しへと向かう中、雲深不知処に突如として夷陵老祖として名を上げた魏無羨が訪ねてきた。結界を守る姑蘇の門弟の前に立ち腕を組んで背を伸ばし小さく笑ってみせるとこう告げる。
    「含光君へ伝えてくれ。言われた通りに姑蘇に来てやったぞ、と」
    戦の中藍忘機が彼に投げかけた「姑蘇に帰ろう」を魏無羨は果たしにきたのだと。
    すぐさま伝令が走り藍忘機は規則である雲深不知処では走らない、と守りつつも早歩きで入口である門へと急いだ。魏無羨は指先で髪を弄って暇を潰していたが、藍忘機の姿を見ると目を弧にして真っすぐ見つめた。
    喜びと疑問の半々の気持ちの中出迎えた藍忘機は自らの私室である静室まで招いて「どうして」と問う。味方同士でありながらも邪術を使う魏無羨の凶屍を削り、歩みを止めたこともあった。怒鳴られ、怒りをぶつけられた、嫌われたと思っていた。隣に立つことは出来ないと、歯がゆく唇を噛んだこともあった。そんな藍忘機の姿に魏無羨は小さく笑うと
    「頼みがあるんだ」
    と相談を持ち掛けた。
    「どうしてもやりとげなくてはならない。俺一人では多分無理だ。だからお前を頼ってきたんだ。それが済めば…好きにすればいい」
    そう言って藍忘機へ頼んだのは共同で陰虎符を破壊することだった。過ぎた力を手に入れてしまった。不夜天で一度使ったあの時から思い知らされた。それでもまだ手元に残したのは、まだ若き雲夢江氏の宗主である江澄を支える為。一度温家に蓮花塢を滅ぼされた時に法具を根こそぎ奪われて陰虎符を持つ自分が居れば牽制になると考えていた。
    「江澄ににそれを話したら「そんなもん捨てろ」って言われちゃったんだ」
    江澄だって気づいていた。確かにそれは強大な力ではあるが諸刃の剣であることを。
    「蓮花塢を復興させたいなら、まずそれを壊せ。判っているだろう?すでにその陰虎符を狙っている者がいると!」
    戦時中から金氏、特に金光善から目を付けられているのは魏無羨も気づかない筈がない。雲夢江氏を再復興させる為に他家にちょっかいを出させないように持っていたそれは、新たな戦の火種になりかねないもの。しかもそれを狙っているのが蘭陵金氏となればな猶更である。
    「あいつらには腰巾着の仙門が沢山ついているし、そいつらに命じれば俺も陰虎符も邪悪な物、過ぎた力だと色々と弁を並べて取り上げようとするに決まっている。その為なら、謂れもない噂も流すだろうし江澄と俺との仲も引き裂きにかかるだろうさ…。だったら、そうなる前に欲しがってるものを壊してしまえば何もいえなくなる」
    そう淡々と述べる魏無羨の言葉に、仙門内の情勢には少しばかり疎い藍忘機も頷く。
    「だから雲深不知処にきたのか」
    その言葉の中には少しばかり、藍忘機自身の為に来たのではないのかと落胆する感情も込められていた。
    「…なんだ?お前に会う為だけじゃなくて姑蘇に来たんじゃなくて不満か、含光君。…拗ねるなって」
    「拗ねてなどいない」
    「まぁ…陰虎符の破壊も大事だけどさ、藍湛。あまりにも必死だったからさ…ずっと俺にばかり構ってきて…まず一番に頼るならお前しかいないって思ったから姑蘇に来たんだぞ」
    藍湛。久しぶりに魏無羨の口から自然に呼ばれた名前。彼の唇から放たれた音に心の水面に幾つもの波紋が広がっていくように感じた。
    「それに、何度も姑蘇に来いって言ってきたんだから俺を退屈させない歓迎の準備はいつだってできてるんだろうな?」
    にっ、と笑う魏無羨に座学の時の彼の面影を見つける。影を感じさせない笑みに心は確実に喜ぶように跳ねていく。
    「ならば夕餉は彩衣鎮へ、酒も飲みたいのなら頼んでいい。…雲深不知処は酒は禁じられているが外であるなら良い」
    いつも雲深不知処の外だろうと家規を頑なに守り、共にいる者にまで口を出していたあの藍忘機が酒を飲んでいいと言った。その事実に魏無羨は目をまぁるくしたあと大きく笑った。
    「はははははっ、そうかそうか!これは大層な歓迎だ。あの含光君の口から酒を飲んでいいと言われるなんて。ははははは」
    「雲深不知処では禁止だ」
    「わかってるわかってる。それでも、大した歩み寄りだよ、…もちろん奢ってくれるよな?」
    「うん」
    またこうして笑って嬉しいと、頬を緩めそうになるがまだ大切なことを魏無羨に聞くのを忘れていた。
    「魏嬰。暫くここに滞在するということでいいのか?」
    「あぁそのつもり。あ、急に押し掛けたからな…なんか横になれる倉庫とかでも寝られる場所を貸してくれればそれでいいや」
    あっけらんと寝所に関してはおざなりで良いという魏無羨に藍忘機は首を横に振る。
    「そのようなこと私が許すとでも。すぐに君の住まう場所を整えるから、そんなことは言わないで」
    「…わ、分かった…」
    静かながらも強く諭されて魏無羨はこくりと頷く。ただ魏無羨は邪道に落ちた人間でも、藍忘機の正道で雅正そのままの心が雲深不知処内で地べたで寝転がらせたくないのだろうと、人並みの場所を与えようとしているだけだろうと考えた。
    「…そういえば、今って沢蕪君…藍宗主はいるか?」
    「今の時間は、兄上ならば寒室にいるだろう」
    「そっか。じゃあ、挨拶しないとな…。陰虎符の話はまだ江澄と藍湛にしか話していないし、出来ればまだ手助けしてくれる人が欲しい。正式に、暫く雲深不知処に世話になりたいことも一緒に話さないと」
    早速と円座から立ち上がる魏無羨だったがちいさく、くん、と袖を引かれた感覚に視線を向ける。まだ座ったままの藍忘機は真っすぐと魏無羨を見上げてその薄い色の形の良い唇を開いた。
    「私も用事が済んだら寒室に行く」
    「お、おう。わかった、そうだな、俺一人より藍湛が一緒の方が信用してくれそうだし…待ってる」
    急ぐ様子もなく優雅に白い砂利道を歩いていく姿を眺めた後、藍忘機も追いつく為に早々と動き出すのだった。



    寒室の前に辿り着いた魏無羨は、「藍宗主」と軒下の前で呼ぶ。何拍かの後中から返事がこちらに届く。
    「開いているよ、魏公子。どうぞ、こちらへ」
    「急な来訪と宗主より先に、藍の二の若様の元へ行き挨拶が遅れたことをお許し願いたい」
    魏無羨はゆっくりと扉を開け、真っすぐに背筋を伸ばし微笑みを浮かべている藍宗主こと藍曦臣拱手をして小さく頭を下げた。
    「気にしてはいないよ。それに魏公子が姑蘇へと来てくれたとなって、まずは忘機を選んでくれた方が私は嬉しいんだ」
    「…嬉しい、ですか?」
    何故だろうと首を傾げると藍曦臣はまた話を続ける。
    「射日の征戦の時では他の仙士達にも噂されていただろう。君と忘機が火と油、犬猿の仲だと」
    「あぁ……」
    自分の中ではそれ程仲違いをしているとは思ってはいなかった魏無羨は小さく、指で顎を擦る。お互いに戦い方に譲れないことがあっただけだし、それに。
    「…まだ若いからってことにしてください。俺にはあの戦い方しか出来なかった、藍湛にいくら言われようとあの道しかなかったんです」
    含みを持たせた言い方に、おやと藍曦臣は気づいて視線をあげる。
    「その言い方では、仙術を使えなくなったように聞こえてしまう」
    「………」
    鋭い。いや含ませた意味を沢蕪君は誤解なく聞き取った。そして心に秘めずに聞き返すような言葉に小さく笑ってしまった。

    「…魏嬰」
    こんなに都合良く藍忘機まで現れてしまうとは、これも運だろうか。そう思いながら声のした方に振り向いた。
    「藍湛、丁度いい。お前も、俺の話を聞いてくれよ」
    長い話になるだろうから。


    それから今まで多少は誤魔化しを入れなければならない部分はあったが、魏無羨は自分にはもう金丹が無いこと、失った時期は乱葬崗に落とされる直前だと告げた。誤魔化しを入れたのはまさにそこで江澄に金丹を移植したなんて言えるわけがない。だから化丹手にやられたと告げた。
    藍忘機は、あの空白の三ヶ月の後再会し、鬼道を収めた魏無羨が化丹手と温晃に向けた憎悪を込めた瞳を思い出して少しだけ俯いた。
    鬼道を使っていたのは金丹が無く、乱葬崗に落ちた時空いてしまった丹田の中、霊脈にここかしこにある怨念を受け入れてしまったからだと答える。体中に陰気を纏い剣の道は目の前で大きな飛び越えられない崖と化したのだから約束を守る為にはもう鬼道を使うという暗闇に足を踏み込むしかない。
    「…約束?」
    「蓮花塢を焼かれたあの日、最後に虞夫人に言われたんです。江澄を死ぬ気で守れ、と。金丹を失った只人では江澄の隣に立てない、守るという約束を果たせない。俺には江家に拾われて育てて貰った恩がある、そして最後の最後に逃がしてくれて命を助けられた…だから」
    墓まで持っていく誰にも打ち明けないつもりだった故人との約束を、魏無羨は偽りなく隠すことはせずに答えた。何かも隠せば、何処かが嘘を交えなければいけなくなる、嘘は更に嘘を増やすだけだ。だからどうしても戦う力を得なければならなかったのだと沢蕪君、そして含光君に伝えた。
    約束、それは誰とでも交わせてそのたった一つが藍氏の家規全てを合わても釣り合うような重みにもなることもある。恩と約束、それはなんてまだ十代の若者が背負うには重すぎると藍曦臣は思う。座学でも彼は江晩吟と共に姑蘇に送り出された程に拾われ子だとしても破格の待遇だっただろう。家族同然に育てられそこに恩義を感じない者などいるだろうか。
    そこにさらに遺言ともとれる死を賭けた約束を告げられて、正義感の強い彼が誓いを破れるはずがない。なんて、残酷な約束なのだろう。
    魏無羨の横に正座し話を聞いていた藍忘機の手が固く筋が浮かぶほどに握られていることに、兄である藍曦臣は気づいた。似たことを思ったのだろう、魏無羨はその生涯を全て現江家当主である江澄に捧げることになるのだから。

    鬼道を使うのはそれしかまだ仙境に縋りつく手段が無かったから、金丹はすでに魏無羨の身にはなく再生する可能性は不可と言った方がいい。今まで守ってきた蔵書閣で読んだ本の内容を思い出そうとしても再度結丹したという文献は見たこともない。
    「守る為には並ぶための力が欲しかった。だが、陰虎符は駄目だ。射日の征戦で一度だけ使ったけど…俺の予想を超えた出来だったんです。ずっと笛で命令を出すのは疲れるから少し楽になる道具ぐらいの気持ちだったのにあれは…俺より強力だ」
    藍の兄弟の心情など気にせず続きを話す魏無羨は寄り道をしながらも本題を口にした。
    「あれはこの世にあってはならない物です。俺が姑蘇藍氏に秘密裏に願いたいことは、陰虎符を破壊する間匿って欲しい」
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    未月玲音

    PROGRESS不夜天での温氏討伐後、の含らIF
    一人で何でも抱え込んでしまった魏無羨が、人を頼っていたらなもしも物。
    陰虎符をすぐに破壊しないと駄目だと思った先、頼ったのは「姑蘇に帰ろう」と呼び掛けてくれた藍忘機だった。江澄にも許可(というより宿題出されて追い出された)もらって、本格的に陰虎符破壊を共同作業する話。
    金丹に出来たらいいなぁなやつ
    姑蘇在住の夷陵老祖(途中)射日の戦後暫くして各仙門立て直しへと向かう中、雲深不知処に突如として夷陵老祖として名を上げた魏無羨が訪ねてきた。結界を守る姑蘇の門弟の前に立ち腕を組んで背を伸ばし小さく笑ってみせるとこう告げる。
    「含光君へ伝えてくれ。言われた通りに姑蘇に来てやったぞ、と」
    戦の中藍忘機が彼に投げかけた「姑蘇に帰ろう」を魏無羨は果たしにきたのだと。
    すぐさま伝令が走り藍忘機は規則である雲深不知処では走らない、と守りつつも早歩きで入口である門へと急いだ。魏無羨は指先で髪を弄って暇を潰していたが、藍忘機の姿を見ると目を弧にして真っすぐ見つめた。
    喜びと疑問の半々の気持ちの中出迎えた藍忘機は自らの私室である静室まで招いて「どうして」と問う。味方同士でありながらも邪術を使う魏無羨の凶屍を削り、歩みを止めたこともあった。怒鳴られ、怒りをぶつけられた、嫌われたと思っていた。隣に立つことは出来ないと、歯がゆく唇を噛んだこともあった。そんな藍忘機の姿に魏無羨は小さく笑うと
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    「木に咲く蓮とは何だか妙だけど、雲深不知処で蓮を見られるとは思ってなかった 1893