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    n5_jt4

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    n5_jt4

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    またSCPと尾月。これも軍会合わせの予定だけど尻叩き用に進捗。

    #尾月
    tailMoon

    尾月と巡るSCP 3008 この話は、SCP_Foundationを題材にしたクロスオーバーかつパロディです。
     以下の記事を参考に作成しています。

     Author: Mortos様
     Title: SCP-3008
      - A Perfectly Normal, Regular Old IKEA(完全に普通の、ありきたりな古いイケア)
     Source:
     https://scp-wiki.wikidot.com/scp-3008(本家)
     http://scp-jp.wikidot.com/scp-3008(日本語Wiki)
     CC BY-SA 3.0

     元ネタからの自己都合改変、自己解釈がありますのでご注意ください。






     気が付いたらそこは知らない場所だった。
     建物系のオブジェクトに駆り出されることが多い月島の所属する機動部隊は、五人編成でとある建物内に潜入する、といったタイミングで月島一人だけ別空間に取り残されたようだった。月島が迷い込んだのか、他の四人が消えたのかまではわからない。直前まで北欧風の家具を販売する家具店であるイケアの入り口にいたはずだった。
     月島は視線を巡らせる。ゴーグル越しの世界は少し色合いを変えているが認識に不都合はない。
     目線を動かしながらも手は装備を確認していた。手には得物のヘッケラー&コッホHK416を財団が改造した銃を握ったままで、ベストやボディアーマー等の装備もそのままだ。
     月島は片手で頭部保護用のフードのマスク部分を少し引き下げて息を吸う。おかしな匂い、変わった感覚は無さそうだった。空気組成だけで言うならば通常空間と差異は見られない。
     常に周りに注意を向けながら改めて確認するとそこは屋内であることがわかる。大きなホールやドームなどのように高い天井、周りは様々な種類のベッドが並んでいた。
     並ぶと言うよりは陳列されているような形だ。
    「……店のようだが、普通ではないな」
     月島はぽつりと呟きながら、外部との連絡を試みようと通信機を操作する。しばらく弄っていたがどこに繋げても無機質な雑音が聞こえるだけだった。いつも思うが肝心な時に役に立たない。この調子ならば位置認識のGPSも仕事を放棄していることだろう。
    「となると、未確認のSCiPか、既存の何かか。尾形なら何かわかるかもしれんが」
     あいにくと自分は財団所属とはいえ、機動部隊員だ。研究職と違い異常存在に対する知識や造詣は深くない。潜入した建物の異常性からか、何かに巻き込まれたのか、少なくとも自分だけ別の場所にいることは間違いなさそうだった。
     離脱を第一に、逸れた味方がいる可能性も加味し、まずは探索するべきと判断した月島は銃を抱え直して立ち上がる。四方の何処を見ても壁が見当たらない。果てがないのか、相当広い空間である可能性が示唆された。
    「何処かで見たことのある内装なんだがな……やっぱりここはイケアの中なのか?」
     並ぶ家具は俗にいう北欧風というのだろうか、この辺りは寝具しかなさそうだが月島は片手を側のマットレスに押し付けた。見てくれだけではなくしっかりとした商品にも思えた。
     月島は記憶を辿りながら振り返る。
     店に入ってきた入り口は姿を消していた、扉どころか壁もなかった。入り込んだ道程が欠片もないと言うことはいよいよフィールドエージェントからの通達は真実味を帯びる。あのイケアは何らかの異常オブジェクトだろう。
     何にせよ自分以外の他の隊員を探すべく月島は当たりをつけて方位磁石が指し示す南へ向かうことにした。四方からの出口は無さそうならばまずは端を確認することが肝要だと判断したからだ。
     端が存在しない空間である可能性も一瞬過るが首を振り打ち消す。店のように陳列されているようで無造作に積み重なり雑然とした家具の山も見える。通常ではあり得ないのは明確だった。
     ベッドの陳列を抜けた視界の先は、在庫を並べた高い棚が並ぶ通路だった。高い所の物品を取れるようにはしごがいくつか見える。
     いよいよ店の体裁を隠さない室内に眉を寄せる。
     不意に襲う違和感に、月島は門のように積まれた家具をくぐり抜けようと進めかけた足を止めた。
     直後、数歩先で床面に何かがぶつかり弾けるのが見え、それとほぼ同時に乾いた音が響いた。
     発砲音だ。
     月島はそれを認識する前に反射的に物陰に身を躍らせた。地面への着弾は乾いた音とほぼ同時であり然程遠くない位置から撃たれたことがわかった。周囲を警戒しながら銃弾の先を辿ろうとすると離れたところから声が聞こえる。
    「出てこい。お前、あの珍妙な奴らの仲間か」
     その声に月島は目を瞠る。警戒が解けかけた。耳馴染みのある声だったからだ。
    「もしや尾形か?どうしてこんなところに」
     銃撃があった手前、姿を現すことはしないまでも声を上げる。
    「俺を知っているのか……いや、その声何処かで」
     月島は恋人である男の名を呼ぶが、向こうの様子に違和感を覚えた。そもそも尾形は研究員でSCPオブジェクトの中に巻き込まれるような立ち位置にはいないはずだ。巻き込まれたとしても、武器には然程精通していないはずだった。月島の数歩手前を離れたところから正確に撃つなんて、月島が知らないだけでやれるのかもしれなかったがその真偽の答えはここにはなかった。
    「ああ……月島軍曹か」
     軍曹とは随分古めかしい階級だ。月島が知る限り世界大戦後には廃れている。
     違和感は増えるばかりだが、向こうの声音から僅かに殺気が薄れた。このまますぐに殺し合いになる気配は薄れた月島には感じられた。
    「軍曹ではなく准尉だ。旧陸軍の階級だろ、それは。オブジェクトが俺の知っている姿に似たものを反映させて出てくるなんて罠じゃないことを祈るぞ」
    「旧陸軍におぶじぇくと……ははぁ、言ってることがさっぱりわからん」
     尾形に似た男の声は考えるのを投げ出したようにも聞こえた。月島が警戒しながら足先だけを出すともう一度発砲音が響き、直ぐ側の地面が僅かに弾けた。先程着弾した場所とほぼ同じだった。敢えてそこを正確に狙ったんだろう。
    「銃を下ろしてから出てこい」
    「……はあ、出た矢先に殺すなよ」
    「会話が成立してるうちは殺さねえよ」
     月島は銃口を地面に向けてわかるように先に物陰から突き出す。少し間をおいて門の外へ足を踏み出した。それと同時に両端に並ぶ高い棚の上から誰かの姿が見えた。
     片手に旧式の銃と思われる得物を構えたままの白い外套を纏い、フードを真深く被っている男は月島の姿を一瞥すると小さく息を吐いた。
     暗いフードの奥から覗く瞳は何故か猫の目を彷彿とさせるように光っている。外套の下から見え隠れする服装も月島には古めかしいものに見えた。
     月島軍曹、男は月島のことをそう呼んだ。
     後にも先にもそんな呼ばれ方をした記憶はない。
    「お前は尾形研究員ではない、んだよな?」
     軽い所作で棚の天井を伝い、はしごに片手をかけて降りてくる男に問いかける。それに視線を向けてきた男は小さく頷き、はしごを数段残した少しだけ上の位置で止まり腰を下ろした。銃の引き金から決して指を離さない辺り警戒は解いていないようだ。
    「お前の言う研究員がよくわからん。階級で言えば俺は上等兵だ、軍属から離反して久しいがな」
     また古い階級だ。月島は記憶を探る。それも旧日本軍のものではなかったか。声は知っているものより若干低く棘があるが、知り合った頃の尾形もそんな様子だったと月島は場違いにも懐かしく思った。
    「名前は尾形……」
    「尾形百之助だ」
    「あー……そう来たか」
     全く同じ名前だった。フードは取らないままの男だったが、その下も知った男と同じ顔の可能性に月島は僅かに遠い目をした。ゴーグル越しであり、防護用のフードをこちらも被っているため向こうに表情が伝わることはないが。
    「こっちに名前を聞いておいて、そっちはねえのかよ」
    「お前の言った通り、月島だ。月島基」
     言いながら月島はゴーグルを外す。その確認もしてしまいたかったが、まず自身の素顔を晒したほうが早いだろうとフードも取り外した。防具がなくなり肌に空気が触れる。少しひんやりしているような気がした。普段は晒すことはしないが、相手が知っている男と酷似しているからだろう、警戒が緩んでいるのを自覚していた。
    「……っ、月島軍曹と名前どころか顔まで一緒か。どうなってんだよ」
     晒した顔を見た目の前の男は驚いたように息を呑んでから、それを吐き出しつつ唸る。どうやら向こうの知っている月島と、この月島も酷似しているようだ。
    「SCPっていうのを知っているか」
    「えす、しー……なんだって?」
    「ああ、いや。知らないならいいんだ。こっちは顔を晒したがそっちは?」
     財団の秘匿性はまだ機能しているようだ。この場所にいる時点で秘匿も何もないが。
    「……これでいいか」
     ばさりと雑にフードを取り払う男は、月島の想像通り知った顔だった。
     造形をそのままコピーして貼り付け少し手を加えた程度の違いだ。髭や頬の傷まで同じだった。ただ、自分に向けられる目付きが違うのだけはわかった。
    「おい、月島」
    「なんだ」
    「俺の目は、両方あるか?」
    「……あるように見えるが」
    「そうか」
     問いかけの意図を測りかねて眉を顰める月島に、尾形は緩く首を横に振って目を伏せるだけで会話を切る。
     何かを考えるように額に手を当てて黙り込む尾形に月島はひとまず声をかけることは止め、辺りを見回す。
     先程の家具が並びあちこちに乱雑に積まれた場所と違い、この通路は整然として見晴らしがいい。敵性生物の有無は確認できていないが、あまり長居するも得策と言えまい。
    「ここについて何か知っているか」
     銃を構えるのもこの尾形を刺激する気がしたため、銃口は下を向け、引き金から指を離したまま問いかける。
    「よくわからん。ああ、だがもう少しで暗闇になる。おかしな奴らが徘徊しだすぜ」
     額から手を離し、緩く首を横に振って尾形は答える。月島は腕時計を見やった。時刻は二十一時半を過ぎていた。あくまで月島の持っている時計上ということで、この時間が正しいかはわからない。
    「おかしな奴ら?」
    「黄色の肌着に青の洋袴の集団がいる。あれはバケモンだな。腕が長く足は短い、手も異様にでかい、身長も縦に引っ張ったようなやつまでいる。そいつらが夜には大暴れだ」
    「その割には落ち着いてるな」
     異形を見たとは思えない冷静な反応に月島は怪訝そうに眉を潜めた。
    「現実感がない。だからだろうさ」
    「確かにな」
     肩を竦める尾形に月島は首の後ろを軽く掻いた。一般の人間がSCPオブジェクトに遭遇する機会などほぼない。非現実感があって当然だ。
     だからこそ調査が必要だと月島は思った。全容が掴めないまま、尾形の言う夜になっては対応が難しくなるだろう。
    「尾形」
    「なんだ」
    「偶然とはいえ知り合いに似てるやつをこのまま放っておけん。出るまでいい、手を組みたい」
    「へえ?なんだよ。一人じゃ心細いってか」
     誂うような言葉をあしらうように月島は息を吐く。視線を尾形が持っている三八式歩兵銃に留める。
    「旧式とは言え正確にその銃を扱える腕をかってるんだが?」
    「二度しか見てねえのにか」
    「二度見れば十分だろう」
     尾形はそこで黙り込んだ。頷くべきか否かを迷っているのだろうか。
     ややあって尾形は顔を上げてはしごから腰を上げるとそのまま床に飛び降りた。白い外套が後を追うようにふわりと浮いて垂れる。
    「お前のその銃――俺に貸すなら」
    「興味があるのか」
    「そうじゃねえ、殺傷力は高いほうがいい。少なくともコレを旧式呼ばわりすんならそっちの方が上だろう」
     自分の武器を渡すのは相手を信頼する証拠とも言えると月島は思った。目の前の尾形の意図はわからないが、純粋に触ってみたいようにも見えるその姿に断る理由が探せなかった。
    「わかった。使い方を簡単に教える」
    「いいのか、貰った途端ズドン、かもしれねえぞ」
    「人を見る目に自信はないが、それで撃たれるなら自業自得だ」
    「そうかよ」
     尾形に銃を手渡し、月島は身を寄せて操作の説明を始める。三八式歩兵銃と違い電子制御が関わる箇所もありかいつまんで撃てるようにだけ伝えた。狙撃手だということをぽろりと漏らした尾形にそれならばとスコープと双眼鏡も手渡す。これも電子制御で距離が暫定的に測定出来る代物だ。
     難しい顔でそんなもんに頼るのか、軟弱だななどと言いながらも興味津々な尾形の様子に微笑ましいものを見るように口元が緩みかけてフードの口元をそっと引き上げた。
     夜が近付いている。
     月島は空間の空気が変わっていくのを感じていた。



     というような話も間に合えば軍会に展示したいという意思表示。
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