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    nekosuki1230cat

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    nekosuki1230cat

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    銀博 どうにもえちくならない……。

    深夜に近い時間帯。
    タオルで濡れた髪を拭きながら私室にある浴室から出てきたドクターは、無造作にサイドチェストに置いた箱を見た。
    「(クロージャはシルバーアッシュが喜ぶと言っていたけど……)」
    ロドスのエンジニアであり購買部の運営者であるサルガスの彼女の選んだものである。
    色々事件を起こしている彼女の為、ドクターは小さく息をついて箱を手に取った。
    大手の取引先のCEOに何かをやらかしが発生すれば、その余波は間違いなくドクターに来るからだ。
    ――明日、来るんでしょう? 喜ぶものを用意したから渡してみてね! 
    「私も何か用意しようか……」
    公言しているわけではないが、シルバーアッシュとは恋人という関係になった。
    互いに忙しい身。どこかに行くわけでもなく。ロドスから離れられないドクターとカランド貿易の代表であるシルバーアッシュの逢瀬は短い。仕事の合間に少しだけ触れ合うことが多く、抱き合うことは互いの休みをようやく重ねた時くらいなものだ。
    ささやかな嫉妬に、良い齢の男が覚えるには随分と若い感情だと、自分のことながら苦笑する。
    ため息をつきながら、ベッドに腰をかけ箱を開ける。
    ボンッ! 小さな破裂音と煙にぎょっとする。心臓は急激な出来事に少々脈が速くなっているが、痛みはなく怪我などはないか、と体を見下ろしたドクターは別な意味で悲鳴をあげた。
    「な、何だ、これ!」
    自身に起きた出来事に慌てふためくドクターは端末を手に取った。クロージャに連絡を取らなければいけないと判断したのは当然だろう。
    パジャマを着ていたのに、どのような作用か、ドクター用に誂えたかのような黒レースの下着姿になっていたのだ。
    一般にブラジャーと言われるものを身に着けている事実に精神的ダメージ。
    混乱しつつ、お尻が随分とスース―すると思い振り返る。
    チリンと鈴の音がよく響いた。
    尻たぶ部分はレースで覆われているが、割れ目の部分はクロスした紐でつながっている状態と、長い黒猫の尻尾が目に入りめまいがする。
    チリンと、また小さな音がした。それが自分の首元からすることに気づき、恐る恐る首元に手をやれば革の感触。外そうと試みて、外せない事実に愕然とする。
    「うそ、だろう……」
    自分の声がやけに大きく聞こえて、ドクターはまさかと思い、頭頂部へと手を伸ばす。柔らかな毛の感触。むにむにと触ると非常に癒されるそれは猫の耳だと鏡をみずとも判った。
    ドクターの悲劇はまだ続く。
    明日、来訪(時刻的には既に今日とも言えたが)するといっていたシルバーアッシュが意気揚々とドクターの部屋に向かってきているなど予想はしていない。
    「クロージャ……、なんてものを」
    泣きそうな気分で手にした端末に視線を落とす。猫耳が廊下から聞こえる音を拾い上げた。コツコツと規則正しく響く音は、まさかの恋人のもの。
    ドクターは顔を引き攣らせる。こんな姿を見られたくなどなかった。
    咄嗟に端末を持ったままクローゼット内に隠れてしまったのは、猫の性質を有してしまったからなのか。
    無駄な足掻きともいえるが、それでも醜い格好を晒すよりと潜り込む。
    息を詰め、音を立てないように端末に置き、せめて下着だけでもと脱ごうと試みる。
    が、触れればするりと手が滑る。自分の手なのに自分の服を脱ぐことができない。
    「(どんなアーツを仕掛けたんだ……)」
    呻くこともできないまま、端末を操作する。暗いクローゼットの中で明かりが洩れた。
    クロージャに連絡を取ろうと思った矢先、カチャリとドアが開かれる音を発達した聴覚が聞き取った。
    私室のロックはシルバーアッシュのIDでも解除できるようにしてあったのが運の尽き。
    狭い空間で体を硬くさせる。
    シルバーアッシュの人を魅了させる低音がドクターの名を呼んだ。ぞくりと背中がざわつきドクターはごくりと息を飲む。
    普段であれば名を呼ばれただけで、動悸が早くなることなどないのに、と首を緩く振る。変な格好をしているから引きずられているのだろうか、と疑問に覚えかけたところで、小さく笑う気配があった。
    「かくれんぼ、など珍しいな」
    足音を立てないまま近づいたのか、クローゼットの扉が急に開かれる。
    「何か……」
    シルバーアッシュが硬直した。目が見開き、立派な尾が電撃でも受けたかのように真っ直ぐ伸び、毛が膨らむ。
    珍しい美丈夫の様子を堪能する余裕は残念ながらドクターには無かった。
    腕で身体を隠すものの、全てを隠せる訳はなく際どいブラとショーツを身に付けている姿を見られてしまう。見下ろす雪空の瞳に下がりようがないのに後退したくなる。
    「み、ない、でくれ……」
    最低限の服しか持ってない為、がら空きの中では、これ以上隠れる術もない。言葉でお願いするしかなく、俯きながら頼む。
    ドクターは、やはり自身のことを軽く考えてる節がある。本人は醜いと思っている姿であるが、シルバーアッシュからすると恋人の艶姿(なお、猫耳はぺしゃんと伏せられており、しっぽはぷるぷると震えていた)に興奮しないわけがない。
    「何故だ?」
    少しでも肌を見せまいと掛けてあるジャケットへと伸ばした手は、雪豹に捕まれる。
    「何故って……そんなの、私だぞ? こんな姿、おかしいだけだろう!」
    痩身はたやすく引き寄せられ、明かりの下に姿を晒されてしまう。
    羞恥でほんのりと肌を赤に染めている様子にシルバーアッシュは口元を緩めた。
    「いや、お前の煽情的な姿はそそられる」
    距離が縮まれば、二人の間にふわりと石鹸とは異なる蜜のような匂いがした。
    「そんなこと……?  ん、香水を変えたのかい?」
    「ボディシャンプーを変えたのか?」
    お互い首を僅かに傾げ、常とは異なる香りに疑問を持つ。
    「いや、いつ、もの……」
    先に自らの異変に気づいたのはドクターだった。腰に熱を感じ目を見開く。
    「え、あ……」
    シルバーアッシュは濃くなる甘い匂いから状況を把握した。
    「どうやら随分と猫に寄せられてるようだな」
    戸惑う身体を軽々と抱えベッドへと移動する。優しくシーツの上に横たえると外套を脱ぎ捨て、ネクタイを外す。
    ドクターは勝手に上がっていく熱と男の色気に当てられ、ふるふると首を振る。チリンチリンと鈴の音が響いた。
    「猫科の多くはメスの発情に合わせてオスも発情する」
    唐突な生態の話に目を瞬かせた直後、聡明な頭脳は意味に気づく。
    「わ、私は」
    雌などではないと訴えたいが、胎奥の疼きは目の前の美丈夫を欲しがっており言葉に出来ない。
    愛おし気に目を細めたシルバーアッシュは唇で弧を描くと指先をドクターの胸元に滑らせた。
    深い術跡をなぞり、布地を辿る。今は黒の下着で隠されている胸の小さな粒を擽れば、身体は隠しようがなく跳ねる。手袋越しの淡い接触だというのに、だ。ぺたりと伏せられた黒猫の耳を軽く噛んでやれば、
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