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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    我が家のおっきい猫の話

    #あましの
    linen

    ボクノコネコ 仔犬か仔猫でも飼ってるみたいだよな、だなんてことを思うことが時折ある。
     すんすん鼻を擦り付けてあまえてくるのは日常茶飯事だし、休日の朝には毎回のようにこちらのベッドに潜り込んでくる。髪の毛をくしゃしゃなぞると(ふわふわやわらかい感触が指の間をすり抜けていくあたりもなんかそんな感じがする)嬉しそうに瞼を細めて擦り寄ってくるところとか、体温が高いあたりも。あと、たまにかぷかぷ噛んでくるし(別に痛くはないし、目立たないところなら気にはならない。まあ、こちらだっておあいこなところは大いにあるので)
     あとはほら、こんなふうに。

    「周きょうもおつかれ様、おかえりなさい」
     玄関のロックを解除する音を合図にしたように、毎回、パタパタと勢いよく短い廊下を駆けて玄関先までお迎えに来てくれる。律儀だよな、ほんとうに。
    「おうおつかれ。きょう発表だったんだろ、うまく行った?」
    「ん、」
     得意げな満面の笑みと共にダブルピースがかざされる。
    「周のおかげだよ、ありがとうね」
     にっこりと胸を張って、いかにも撫でられ待ちだと言わんばかりに期待に満ちたまなざしで見つめてくるのだから、たまらない気持ちにさせられてしまう。素直さは美徳ってこういうことを言うんだよな、きっと。
    「おまえが頑張ったからだろ、そんなん」
    「そうだけどさ、そんだけじゃないよ」
     すっかりお馴染みの手つきでくしゃくしゃとやわらかい髪をなぞれば(そういえば猫っ毛っていうよな)、肩口にぐりぐり顔を埋めて、ぎゅうっと背中に腕を回して甘えてくる。
     ずっしりした骨の感触とぬくもり、ぴったり重なり合う不揃いな心音、ほのかにたちのぼるみたいなあまい香りに混じり合った夕飯の匂い――言葉になんてなりようもないたまらない気持ちにさせられるのは、たとえばこんな瞬間だ。
    「晩御飯すぐ出来るからね、塩鯖とほうれん草のおひたし。あと、きのうの卵焼きとお豆腐のお味噌汁ね」
    「おう、ありがとな」
     答える代わりのように、申し訳程度にワックスで整えた髪をくしゃくしゃ掻き回される。

    「……ただいま、忍」
    「ん、おかえりなさい」

     じいっと見つめ合いながら、ありふれた言葉でしか伝えられない想いを届け合う。


     うちで飼っている猫は、自慢じゃないけれど中々いい猫だ。
     共通言語があるおかげで意思疎通には困らないし、気まぐれに甘えてくるけれどこちらの意思はちゃんと尊重してくれる。
     俺と違って素直だし、可愛げもある。毛並みはやわらかいし、抱きしめると温かくて気持ちいい。

     なによりものいちばんに愛おしいのは、毎日毎晩こうして「おかえり」を言ってくれるところ。
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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    raixxx_3am

    DOODLEきすひよ。いちゃいちゃしてほしかっただけ。相変わらず受けと攻めが不確定。欲望を明け渡しあうことよりも緩やかで優しいスキンシップでお互いを満たしあうことを大切にしているうちにゆっくりその先に進むこともあるんじゃないのかな、ふたりにはそんな関係でいてほしいなという気持ちで生産工場は稼働しています。
    (2024/07/19)
    butterfly kiss「あのね、遠野くん。ちょっとだけ聞いておきたくて」
     ふぅ、とひどく慎重に息を吐き、プレゼントの包みをそうっとほどくようなたおやかさで言葉が続く。
    「遠野くんはさ、僕にしてほしいことってあったりする? その、そういう時に」
     行儀良く膝の上に置いた指をもどかしげに絡ませるようにしながらぽつり、と吐き出されるおだやかな言葉に、息苦しいほどのあまやかな気配が立ちのぼる。こちらをまっすぐに見据えるかのようなまなざしはいつも通りにひどく穏やかで温かいのに、その奥には確かな〝予感〟を帯びた色が隠されているのがありありと伝わるから、いびつに揺らいだ心は音も立てずにぐらりと心地よく軋む。
    「あぁ……えっと、その」
     答えに窮したまま、手元のクッションをぎゅっと掴めば、気遣うようなやさしいまなざしがこちらへと注がれる。
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    raixxx_3am

    DOODLEひよちゃんは幼少期のコミュニケーションが足りていないことと「察する」能力の高さから本音を押し殺すのが常になってしまったんだろうし、郁弥くんとは真逆のタイプな貴澄くんに心地よさを感じる反面、甘えすぎていないか不安になるんじゃないかな、ふたりには沢山お話をしてお互いの気持ちを確かめ合って欲しいな、と思うあまりに話ばっかしてんな僕の小説。
    (2024/05/12)
    君のこと なんて曇りのひとつもない、おだやかな優しい顔で笑う人なんだろう。たぶんそれが、はじめて彼の存在を胸に焼き付けられたその瞬間からいままで、変わらずにあり続ける想いだった。


    「あのね、鴫野くん。聞きたいことがあるんだけど……すこしだけ」
    「ん、なあに?」
     二人掛けのごくこじんまりとしたソファのもう片側――いつしか定位置となった場所に腰を下ろした相手からは、ぱちぱち、とゆっくりのまばたきをこぼしながら、まばゆい光を放つような、あたたかなまなざしがまっすぐにこちらへと注がれる。
     些か慎重すぎたろうか――いや、大切なことを話すのには、最低限の礼儀作法は欠かせないことなはずだし。そっと胸に手を当て、ささやかな決意を込めるかのように僕は話を切り出す。
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