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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    めちゃくちょしょうもないことでケンカしたんだけどなんでこんなに意地張って怒ってたのかお互いにもう思い出せない。

    #あましの
    linen

    かえってきてね!!「ちょっと出るから……外から鍵かけるけど、戸締り気をつけてな。なんかいるもんある」
     ドア越しにおそるおそる声をかければ、ぐずぐずにほつれてくすぶった不機嫌そうな声が返される。
    「いーけど。ちゃんと帰ってくるよね」
    「晩飯までに帰るって」
    「二度と帰ってこないとか無しだからね」
     いじけた子どもみたいな口ぶりに、思わず苦笑いのひとつも洩らしたくなる。いや、映画とかドラマの見過ぎだろ。週明けには仕事だってあんだぞ。
     大げさに肩を落としながら、おそらく涙目になっているのであろう顔をぼんやりと想像してみる。
    「……ごめんなほんと、ちょっと頭冷やしてくるだけだから心配すんな。てかきょうのめし当番俺だろ、なんか食いたいもんある?」
    「なんでもいーって言ったらまた怒るでしょ。じゃあとんかつ」
    「味噌汁は? なめこでいい?」
    「てかケンカしてんのになんでそんなこと聞くの! 早く出たらいーじゃん」
     おっしゃる通りでございますね。つい売り言葉に買い言葉で答えそうになるのをぐっと飲み込み、極力優しい口ぶりで答える。
    「反省してんだよ、これでも」
    「……いいけどさ、なら」
     不満げに洩らされる声に、どうしようもなく胸の内を掻き乱されるのを堪えきれなくなる。
     引っ込みがつかなくなってるだけだよな、たぶん。まあしょうがない、そういう時だってあるもんな。そっと胸に手を当てながら、諭すような口ぶりで声をかける。
    「いいから戸締り気をつけろよ、買い物行ってくるから。さいきん何かと物騒だから、あやしいのが来ても出なくていいからな。宅急便とか、ほんとに来る予定あったか確認しろよ」
     いや、小学生か。さすがにますます怒られてもおかしくないよな。
     自分のことながら、どうにもあきれた心地のままずんずんと廊下を進めば、ぴったり閉め切ったドアの向こうから精一杯に張り上げた声が返される。
    「周も車とか気をつけないとダメだよ、ちゃんと帰って来ないと怒るからね」
    「おう」
    「……いってらっしゃい」

     涙まじりのぐずぐずの声に後ろ髪を引かれるような心地を味わいながら、履き潰したスニーカーに足を突っ込む。
     誰かと生きていくのってめんどくさいな、ほんとうに。それでも、こんなにも愛おしくてしょうがないだなんて気持ちはかけらも目減りしないのだけれど。
    「じゃあな、留守番頼んだからな」
    重い鉄扉にゆっくりと手をかけながら、深く息を飲み込む。

     帰ったらちゃんと顔くらい見せろよな、言うことたくさんあんだから。おまえだってそうだろ。
     数えきれないもどかしさを胸に抱えたまま、ふたりを閉じ込めてくれるこのひどく小さな世界から足を踏み出す。
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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