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    raixxx_3am

    @raixxx_3am

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    raixxx_3am

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    桐島くんは時々あまい香りを漂わせている。

    #あましの
    linen

    lingering scent「あれ、桐島くん香水つけてる?」
     いい匂いだね、どこのやつ? 挨拶がてらにかけられた言葉に、思わずぎこちなく身が強張る。
     いや、そんな憶えは――あったな、今朝方に。ぎゅうぎゅう擦り寄って来られたもんな。(なんでもちょっと面倒な用事が控えているせいで気落ちしていたらしく、朝からひっついて来られた)(あまやかしたい気分だったのでこちらとしてもちょうど良かった)
     犬か猫の子にでも構うみたいにわしわし撫でてやったら、いつもみたいなけろっと明るいようすになったからこちらとしても安心していたのだけれど――いやはや、想定外だ。
     思わず斜め上の方角へとぎこちなく視線を逸らしながら、ぽつりとちいさな声で答える。

    「聞いときます、こんど」
    「……へぇ」

     あ、しまったな。
    気がついた時にはもう遅い。先輩の瞳の奥にはかすかな好奇の色が光るのが見えるから。
     まいったな、ほんとうに――何よりも厄介なのは、こんなきまりの悪さを前に、それでもどこかしら浮き足だった気分を感じている自分自身だけれど。

    「きょうも一日がんばろーね、ぼちぼちでいいからさ」
    「はい」
     気遣うように掛けられる言葉を受け止めながら、ポケットの中にしまった手をぎゅうっと握りしめる。

     さて、きょうも一日、ぼちぼちがんばらないと。(だって、もうこんなにも会いたいから)
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    raixxx_3am

    DONEブックサンタ企画で書いたお話、恋愛未満。
    日和くんにとっての愛情や好意は相手に「都合のいい役割」をこなすことで得られる成果報酬のようなものとして捉えていたからこそ、貴澄くんが「当たり前のもの」として差し出してくれる好意に戸惑いながらも少しずつ心を開いていけるようになったんじゃないかと思っています。
    (2024.12.22)
     幼い頃からずっと、クリスマスの訪れを手放しで喜ぶことが出来ないままだった。
     片付けるのが面倒だから、と申し訳程度に出された卓上サイズのクリマスツリーは高学年に上がる頃には出番すら無くなっていたし、サンタさんからのプレゼントは如何にも大人が選んだお行儀の良さそうな本、と相場が決まっていて、〝本当に欲しいもの〟を貰えたことは一度もなかった。
     ただでさえ慌ただしい年末の貴重な時間を割いてまで、他の子どもたちと同じように、一年に一度の特別な日を演出してくれたことへの感謝が少しもないわけではない。
     仕事帰りにデパートで買ってきてくれたとってきのご馳走、お砂糖細工のサンタさんが乗ったぴかぴかのクリスマスケーキ、「いい子にして早く寝ないとサンタさんが来てくれないわよ」だなんてお決まりの文句とともに追いやられた子供部屋でベットサイドの明かりを頼りに読んだ本――ふわふわのベッドにはふかふかのあたたかな毛布、寂しい時にはいつだって寄り添ってくれた大きなしろくまのぬいぐるみ、本棚の中には、部屋の中に居ながら世界中のあちこちへの旅に連れ出してくれる沢山の本たち――申し分なんてないほど何もかもに恵まれたこの暮らしこそが何よりものかけがえのない〝贈り物〟で、愛情の証だなんてもので、それらを疑うつもりはすこしもなくて、それでも――ほんとうに欲しいものはいつだってお金でなんて買えないもので、けれども、それらをありのままに口にするのはいつでも躊躇われるばかりだった。
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