Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 50

    いなばリチウム

    ☆quiet follow

    重傷進軍ボイスネタ極バージョン。青野原に出陣してる。
    一応前のと繋がってる。
    前の→https://poipiku.com/594323/5778421.html

    #主へし
    master

    「信念に沿っての選択であれば、それに従うだけですが……」 久々の苦境だった。
     新たに出陣許可が下りたエリアは精鋭部隊で進んでも数振りの重傷者が出ている。刀装もほとんど剥がされ、資材の在庫確認から見直す必要がありそうだった。
    「きっついなー、青野原」
     軽い口調で零しながら、加州は目をぎらつかせている。
    「でも、あと少しって感じ」
    「無理は禁物だ。半数が重傷ではな」
    「分かってるって。長谷部に諭されるとはね。……堀川の腕が見つかり次第、引き上げる?」
    「そうだな。一応主に連絡を取る」
     目の前には加州と言葉を交わす前からずっと『進軍せよ』という電子メッセージが浮かんでチカチカと光っている。長谷部は部隊に背を向け、慣れた手順で本丸へと繋いだ。
    「はい、何?」
     平素と変わらない、低く落ち着いた声だ。周りに敵の気配がないとはいえ、本丸で聞くのと変わらない声に心が安らいだ。しかし、
    「俺の指示、見た?」
     そう続いた声には苛立っている風な響きもあり、長谷部は思ったままを述べた。
    「……信念に沿って、ねえ」
     少しの沈黙の後、今度は揶揄するように面白がる声が鼓膜を揺らす。
    「信念も何もないって言ったら、どうする?」
    「ふふ」
    「何笑ってんだよ」
    「いえ、別に。……どちらにせよ、主の思うままに、従うだけですから。俺は」
     耳元で「チッ」と舌打ちされたのと、離れたところから「腕ありました~!」「ゲートも開いたよ~」と仲間の声がしたのはほとんど同時だった。
    「……睦言は戻ってからにしろ」
     早口でそう言われたかと思うと通信は途絶える。あとはいつもと同じようにすれば良いだけだった。重傷者の内、腕を切られた堀川を優先して手入れ部屋へ運び、手伝い札を使う。それでも待ち時間があったが、後は任せろという加州、大和守に託して報告へ向かうことにする。とはいえ、戦況は全て審神者側から把握出来るので、普段通りであれば情報の擦り合わせと今後の部隊編成等の簡単な確認で終わるはずだった。もちろん、そう簡単に終わらないことも、多々あるが。
    「主、報告です」
     執務室の前で声をかけると、すぐに「どうぞ~」と間延びした声が返ってくる。
    「失礼します」
    「……おかえり」
     審神者は部屋の奥でいつものように待っていた。窓辺に寄りかかり、書類に目を通している。
    「堀川はちょっと無茶しすぎだな。腕を切られるなんて珍しい」
    「そうですね。本人も反省していました」
    「刀装は?」
    「軽歩兵はほとんど破壊されました。投石兵も残りは少ないです」
    「破壊された分は補充しておいて。って言っても……、おい」
    「はい」
     戻ってから、初めて目が合った。いつものように灯りがついていない部屋でも、傍らに並べば当然のことだ。
    「近い」
     窓と長谷部との間に挟まれる形になった審神者は不機嫌そうに肩を押した。と、思えばその手がすぐに長谷部の顎先を掬い取る。顎を固定されて、交わった視線は外せなくなった。
    「……お前、可愛くなくなったなあ」
    「そうですか?」
     唇をへの字に曲げた審神者とは対極に、長谷部の頬は緩まっていく。
    「そうだよ。前は俺の一挙一動に狼狽えて、可愛かったのに」
    「……今も、ですよ」
     顎に触れた手に顔を摺り寄せた。確かに、以前と比べれば、心境に変化はあっただろう。けれど、審神者の表情の僅かな変化や、声色が長谷部を惑わすことに変わりはない。以前は審神者の機嫌を損ねてないか、自分に至らない部分があったのではないかと気が気でないこともあったが、今はどちらかというと、自分の変化で審神者が表情や態度を変えることが堪らなく嬉しいのだ。自分がそうさせているという事実に高揚感すら覚える。
    「……はあ、もういい」
     呆れたような声と共に審神者の手が離れていくので、今度はその手を長谷部が捉えた。びく、と審神者の肩が揺れる。その肩ごと抱き寄せれば、抵抗もなく長谷部の腕に収まったので益々口元が緩んだ。
    「あるじ……」
    「お前な、んっ」
     恐らく何かしらの文句を言いかけた唇を塞ぐ。やはり、抵抗はなかった。合わせた唇を食み、吸うように貪ると応えるように唇が薄く開く。合間から舌を差し込んで絡めると、唇の間で濡れた音が立った。
    「っ、あーあ、ほんと、かわいくない、な……」
     顔が離れた瞬間そう零した審神者の声は拗ねたような、むずがる子供のような甘えが混じっているので長谷部の笑みは益々深くなる。「ええ」と答えながら、また唇を寄せた。言葉とは裏腹に、腰に回された腕が長谷部を離さず、僅かに硬くなった股間を押し付けている。
    「貴方の、刀ですから」
     返事はなく、ただ熱い吐息だけが交わった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💞🇱💖🇴🇻🙏🇪💴👍❤😭🙏💘🍌😭👏🙏🌋💯💕💕💘💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

    related works

    いなばリチウム

    MOURNING六年近く前(メモを見る限りだと2016年4月)に利き主へし小説企画で「初夜」をテーマに書いた話です。他にもいくつか初夜ネタを書いてたのでまとめてpixivに載せるつもりだったんですけど全然書ききれないので一旦ここに載せておきます!
    当時いつも書いてた主へしの作風とすこし雰囲気変えたので楽しかったし、性癖の一つでもあったので今読んでも好きな話です。
    CPではない二人の話です。長谷部が可哀想かも。
    夜な夜な(主へし R18) その日は朝から体がだるかった。
     目を覚ますと、頭は内側から叩かれているように錯覚するぐらい痛み、窓から差し込む朝日や鳥の囀りがひどく耳障りで、長谷部はそう感じてしまう思考と体の不調にただただ戸惑った。しかし、昨日はいつも通り出陣したはずだったし、今日もそれは変わりない。死ななければどうということはないが、あまりひどければ出陣に、ひいては主の戦績に支障が出る。長引くようであれば手入れ部屋へ入ることも検討しなければ、と考える。
     着替えてからだるい体を引きずって部屋を出ると、「長谷部、」と今まさに長谷部の部屋の戸に手を掛けようとしたらしく、手を中途半端に宙に浮かせて困ったように佇んでいる審神者がいた。無意識に背筋が伸びる。
    6533

    いなばリチウム

    DONE情けない攻めはかわいいねお題ガチャ
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    これで出たお題ガチャは全部!微妙に消化しきれてない部分もあるけどお付き合いいただきありがとうございました!
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ④・長谷部にハイキックで倒されるモブを見て自分も蹴られたくなる審神者
    ・暴漢に襲われかけた審神者と、その暴漢を正当防衛の範囲内で捻りあげ社会的死に追い込み審神者を救出する強くて怖い長谷部。


    【報道】
     
     政府施設内コンビニエンスストアで強盗 男を逮捕

     ×日、政府施設内コンビニエンスストアで店員に刃物を突き付け、現金を奪おうとしたとして無職の男が逮捕された。
     男は、施設に出入りを許可された運送会社の制服をネットオークションで購入し、施設内に侵入したと思われる。運送会社の管理の杜撰さ、政府施設のセキュリティの甘さが浮き彫りになった形だ。
     店内にはアルバイトの女性店員と審神者職男性がおり、この男性が容疑者を取り押さえたという。女性店員に怪我はなかった。この勇敢な男性は本誌の取材に対し「自分は何もしていない」「店員に怪我がなくてよかった」と答えた。なお、容疑者は取り押さえられた際に軽傷を負ったが、命に別状はないという―――
    4579

    recommended works

    Norskskogkatta

    PAST主肥/さにひぜ(男審神者×肥前)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    おじさん審神者がうさぎのぬいぐるみに向かって好きっていってるのを目撃した肥前
    とうとう買ってしまった。刀剣男士をイメージして作られているといううさぎのぬいぐるみの、恋仲と同じ濃茶色に鮮やかな赤色が入った毛並みのものが手の中にある。
    「ううん、この年で買うにはいささか可愛すぎるが……」
    どうして手にしたかというと、恋仲になってからきちんと好意を伝えることが気恥ずかしくておろそかになっていやしないか不安になったのだ。親子ほども年が離れて見える彼に好きだというのがどうしてもためらわれてしまって、それではいけないとその練習のために買った。
    「いつまでもうだうだしてても仕方ない」
    意を決してうさぎに向かって好きだよという傍から見れば恥ずかしい練習をしていると、がたんと背後で音がした。振り返ると目を見開いた肥前くんがいた。
    「……邪魔したな」
    「ま、待っておくれ!」
    肥前くんに見られてしまった。くるっと回れ右して去って行こうとする赤いパーカーの腕をとっさに掴んで引き寄せようとした。けれども彼の脚はその場に根が張ったようにピクリとも動かない。
    「なんだよ。人斬りの刀には飽きたんだろ。その畜生とよろしくやってれば良い」
    「うっ……いや、でもこれはちがうんだよ」
    「何が違うってん 1061

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    軽装に騒ぐ主を黙らせる大倶利伽羅

    軽装に騒いだのは私です。
    「これで満足か」
     はあ、とくそでかいため息をつきながらもこちらに軽装を着て見せてくれた大倶利伽羅にぶんぶんと首を縦に振る。
     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
     普段出さない足も想像よりごつごつしていて男くささがでている。
     あのほっそい腰はどこに行ったのかと思うほど完璧に着こなしていて拝むしかない。
    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    支部のシリーズに出てくるふたりのその後
    煙草じゃなくて


     昼食も終わり、午後の仕事を始める前の煙草休憩。再び癖となってしまったことに蜂須賀は顔を顰めたが、すまないとだけ言っている。
     まあ、目的は単に紫煙を揺らすだけではないのだが。
    「またここに居たのか」
    「タバコ休憩な」
     玉砂利を踏み締める音を立ててやってきたのは大倶利伽羅だ。指に挟んだ物をみせるとあからさまに機嫌が悪くなる。それがちょっと可愛く思えてどうにもやめられずにいる。
     隣に並んだ大倶利伽羅をみて刀剣男士に副流煙とか影響するのだろうかと頭の片隅で考えながらも携帯灰皿に捨ててしまう。そうするまでじっとこちらを見ているのだ。
     しっかりと見届けてふん、と鼻を鳴らすのが可愛く見える。さて今日はなにを話そうか、ぼんやりしているとがっしりと後頭部を掴まれる。覚えのある動作にひくりと頬が引きつった。
    「ちょっ、と待った」
    「なんだ」
     気づけば近距離で対面している大倶利伽羅に手のひらを翳して動きを止める。指の隙間から金色とかち合う。普段は滅多に視線を合わせやしないのに、こういうときだけまっすぐこちらを見てくる。
    「お前なにするつもりだ」
    「……嫌なのか」
     途端に子犬 910

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    寒くなってきたのにわざわざ主の部屋まできて布団に潜り込んできた大倶利伽羅
    秋から冬へ、熱を求めて


    ひとりで布団にくるまっていると誰かが部屋へと入ってくる。こんな時間に来るのなんて決まってる。寝たふりをしているとすぐ近くまで来た気配が止まってしまう。ここまできたんなら入ってくれば良いのに、仕方なく布団を持ちあげると潜り込んできて冷えた足をすり寄せてくる。いつも熱いくらいの足を挟んでて温めてやると、ゆっくりと身体の力が抜けていくのがわかる。じわりと同じ温度になっていく足をすり合わせながら抱きしめた。
    「……おやすみ、大倶利伽羅」
    返事は腰に回った腕だった。

    ふ、と意識が浮上する。まだ暗い。しかしからりとした喉が水を欲していた。乾燥してきたからかなと起き上がると大倶利伽羅がうっすらと目蓋を持ち上げる。戦場に身を置くからか隣で動き出すとどうしても起こしてしまう。
    「まだ暗いから寝とけ」
    「……ん、だが」
    頭を撫でれば寝ぼけ半分だったのがあっさりと夢に落ちていった。寝付きの良さにちょっと笑ってから隣の部屋へと移動して簡易的な流しの蛇口を捻る。水を適当なコップに溜めて飲むとするりと落ちていくのがわかった。
    「つめた」
    乾きはなくなったが水の冷たさに目がさえてしまっ 1160