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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり
    さにみか要素がほんの少しある主清です。

     全部、腑に落ちた。

     主に、最近元気がなかったこと。
     戦績は良くなっていってるのに、反比例するように溜息が多かったこと。
     どうしたの、悩みでもあんの、俺にできること、ある? って聞いても、困ったように笑って、答えてくれなかったこと。
     それが、何日か前から嘘みたいに表情が明るくなって、俺が知らない内に解決したことはなんだかさみしかったけど、よかったなあって、思ってたのに。

     昨日の夜、そろそろ寝ようかな、って時間になってから、主に聞きたいことがあったのを思い出した。別に大した内容じゃなかったけど、本丸の仲間が増えて戦力的には安定してきたものの、初期刀のに、主とふたりきりで話す機会は減っていたから、ちょうどいいやとも思ってた。主がもう寝てたら、それはそれで朝起きてからにすればいいんだし、って。部屋を抜け出して廊下に出たら、まさに向かう先の部屋の主が、曲がり角を曲がっていったところだった。あれ? と首をかしげる。主が向かっていたのは、主の部屋とは反対方向だった。良くないと思いながら、俺はそっと後をつけて、見てしまった。三日月宗近の部屋の前で立ち止まった主を。その頬を、襖の隙間からするりと伸ばされた手が撫でたのを。そこは三日月宗近の部屋だし、伸びた手が纏っているのは紺青色の袖だった。廊下の角に隠れていたので声は聞こえなかったけど、主は二言三言口にして、目を細めて笑っていた。くすぐったそうに身を捩り、三日月の両手を絡め取ると、襖の方に顔を寄せる。両手が主の背中に回って、そのまま、主は倒れ込むように部屋の中へ消えていった。
     俺は、多分、無意識に自分の部屋に戻ったんだと思う。敷いてあった布団に潜り込んで、ぎゅっと目を瞑って、ああ、そういうことだったんだ、って思ったら、鼻の奥がツンと痛んだ。それから、俺ってなんてばかなんだろうって思った。主に元気がなかったのは、三日月宗近に片思いしていたからで、そんなの、俺にできることなんてあるわけがないのに。それで、知らない内にふたりは両想いになって、あんな風に、夜更けに部屋に行くような関係になって、っていうことは二人は両想いで、それって、うらやましい、って。ずっ、と鼻水を啜って、ばか、ばか、俺のばか、って呻いた。今、主のことが好きだって気付いても遅いのに。二人を祝福したい気持ちより、うらやましい、俺もあんな風に主に触れたい、触れられたい、って思ったって、遅いのに。

     でも、でもさ、俺、ずるいから、考えちゃったんだよね。
     主は優しいから、お願いしたら、俺のことも、抱いてくれるんじゃないか、って。一度だけ、今夜だけ、ってお願いしたら、聞いてくれるんじゃないかって。今夜だけ、俺のことが好きみたいに、恋人みたいに抱いてもらった、俺はもう、それで満足できるし、ふたりのことも、ちゃんと祝福できるから。

    「ねえ、主。おねがい……」

     昨日よりもずっと遅い時間、寝室に忍び込むのはどきどきした。すうすうと健康的な寝息をたてている主に覆い被さって、罪悪感に襲われながらも、そっと頬に触れると、それ以上の多幸感があった。頬や鼻先に口付けて、唇にも、と思ったけど、なかなか勇気が出なくて、主の体を跨いだままたじろいでいると、「んぁ……? だれ……?」と寝ぼけまなこの主が声をあげて、体を起こした。
    「きよみつ……?」
     ふにゃふにゃの声で呼ばれて、俺は泣きそうになりながらここにくるまでのことを話した。最初は半目で頭をぐらぐらさせながらうんうんと頷いていた主は、段々真面目な顔になっていく。あ、もしかしたら、だめかも、と思う。俺のお願いを聞いてくれるかも、って、楽観的すぎたかな。昨日の動揺を引きずったまま、もしかしたら俺は大胆になりすぎたかも、と段々恥ずかしくなってきたけれど、主が、「清光」と今度はしっかりした声で呼んだので、そっと顔をあげる。
    「とりあえず、大前提から間違ってるから、そこから答え合わせしていい?」
    「……え?」
    「それでね、誤解を解いてから、清光のこと、抱きたいんだけど、いい?」
    「……え、え?」
     昨日と同じかそれ以上に動揺してうまく声が出ない俺に、主は穏やかに笑っていた。


    次→答え合わせ
    次の次→抱く
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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    PAST主麿(男審神者×清麿)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    今まで審神者の分は買ってなかったのに唐突に自分の時だけ買ってきて見せつけてくる主におこな清麿
    「ほらこれ、清麿のうさぎな」
    「買ったんだね」
    主に渡されたのは最近売り出されているという僕ら刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。面白がって新しい物が出るたびに本刃に買い与えているこの主はそろそろ博多藤四郎あたりからお小言を食らうと思う。
    今回は僕の番みたいで手渡された薄紫色の、光の当たり具合で白色に見える毛皮のうさぎに一度だけ視線を落としてから主の机の上にあるもうひとつの僕を模したうさぎを見やった。
    「そちらは? 水心子にかな」
    「ほんと水心子のこと好きな」
    机に頬杖を突きながらやれやれと言った感じで言う主に首をかしげる。時折本丸内で仲のよい男士同士に互いの物を送っていたからてっきりそうだと思ったのに。
    「でも残念、これは俺の」
    では何故、という疑問はこの一言ですぐに解消された。けれどもそれは僕の動きを一瞬で止めさせるものだった。
    いつも心がけている笑顔から頬を動かすことができない。ぴしりと固まった僕の反応にほほうと妙に感心する主にほんの少しだけ苛立ちが生まれた。
    「お前でもそんな顔すんのね」
    いいもん見たわーと言いながらうさぎを持ち上げ抱く主に今度こそ表情が抜け落ちるのが 506

    Norskskogkatta

    PAST主般/さにはにゃ(男審神者×大般若)
    主刀でうさぎのぬいぐるみに嫉妬する刀

    主に可愛いと言わせたくてうさぎを買ってきたはんにゃさん
    「どうだいこれ、可愛らしいだろ?」
    主に見せたのは最近巷で話題になっている俺たち刀剣男士をモチーフにしたうさぎのぬいぐるみだ。といっても髪色と同じ毛皮に戦装束の一部を身につけているだけだが、これがなかなか審神者の間で人気らしい。
    「うさぎか?」
    「そうそう、俺のモチーフなんだぜ」
    うちの主は流行に疎い男だ。知らないものを見るときの癖で眉間にシワを寄せている。やめなって言ってるんだがどうにも治らないし、自分でも自覚してるらく指摘するとむっつりと不機嫌になる。そこがこの男の可愛いところでもあるがそれを口にすると似合わんと言ってさらにシワが深くなるからあまり言わないようにはしてる。厳しい顔も好きだがね。
    そんな主だから普段から睦言めいたものはなかなか頂けなくて少しばかりつまらない。そこでちょっとこのうさぎを使って可愛いとか言わせてみようと思ったわけさ。
    主に手渡すと胴を両手で持ちながらしげしげと眺めている。耳を触ったり目元の装飾をいじったり。予想よりだいぶ興味を示してるなぁと見ているときだった。
    「ああ、可愛いな」
    主が力を抜くように息を吐く。
    あ、これは思ったより面白くないかもしれない。そ 874

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    たまには大倶利伽羅と遊ぼうと思ったら返り討ちにあう主
    とりっくおあとりーと


    今日はハロウィンだ。いつのまにか現世の知識をつけた刀たちによって朝から賑やかで飾り付けやら甘い匂いやらが本丸中にちらばっていた。
    いつもよりちょっと豪華な夕飯も終えて、たまには大倶利伽羅と遊ぶのもいいかと思ってあいつの部屋に行くと文机に向かっている黒い背中があった。
    「と、トリックオアトリート!菓子くれなきゃいたずらするぞ」
    「……あんたもはしゃぐことがあるんだな」
    「真面目に返すのやめてくれよ……」
    振り返った大倶利伽羅はいつもの穏やかな顔だった。出鼻を挫かれがっくりと膝をついてしまう。
    「それで、菓子はいるのか」
    「え? ああ、あるならそれもらってもいいか」
    「……そうしたらあんたはどうするんだ」
    「うーん、部屋戻るかお前が許してくれるなら少し話していこうかと思ってるけど」
    ちょっとだけ不服そうな顔をした大倶利伽羅は文机に向き直るとがさがさと音を立てて包みを取り出した。
    「お、クッキーか。小豆とか燭台切とか大量に作ってたな」
    「そうだな」
    そう言いながらリボンを解いてオレンジ色の一枚を取り出す。俺がもらったやつと同じならジャックオランタンのクッキーだ。
    877

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    冬至の日に書いた
    いっしょにゆず湯に入るだけの話
    冬至の柚子湯


    一年で一番日が短い日、普段は刀剣男士たちが使っている大浴場に来た。仕事を片付けてからきたから誰もいない。
    服を脱いで適当に畳んでから、旅館のような脱衣籠に置いておく。磨りガラスのはめ込んである木枠の戸を横にひけばふわりと柔らかい湯気があたり、それにつられて奥を見てみれば大きな檜風呂には黄色くて丸いものが浮かんでいた。
    普段は審神者の部屋に備えてある個人用の風呂を使っているのだが、近侍から今日の大浴場は柚子湯にするから是非入ってくれと言われたのだ。冬至に柚子湯という刀剣男士たちが心を砕いてくれた証に彼らの思いに応えられるような審神者になろうと気が引き締まる。
    「柚子湯なんて本丸くるまでしたことなかったな」
    檜に近寄って掛け湯をするだけでもゆずの香りが心を安らげてくれる。
    さて洗おうかと鏡の前へ椅子を置いて腰掛けた時、脱衣所への戸が音を立てた。
    「ここにいたのか」
    「なんだ、まだだったのか」
    素っ裸の大倶利伽羅が前を隠しもせずはいってくる。まあ男湯だし当然なのだが。
    探していたのかと聞けばまた遅くまで仕事をしているのかと思ってなと返されてしまう。日頃の行いを振り返っている 1909

    いなばリチウム

    DONE情けない攻めはかわいいね お題ガチャより
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    >長谷部に告白している最中、好きすぎて感情が溢れて泣き出す審神者
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ① 長谷部のことが、ずっと好きだった。顕現した瞬間に綺麗で頼りになりそうな人が来てくれて良かった、好き、って思ったし、出陣すれば、時には無茶することもあったけどいつだって部隊長として他のみんなを引っ張ってくれたし、戦う姿は凛々しくてかっこよくて好き、って思ったし、近侍になって細かな事務作業やサポートを丁寧にしてくれる上にいつも俺のことを気遣ってくれて優しい、好き、って思ったし、とにかく好きじゃない瞬間がなかった。最初は、単純に臣下への好意だと思っていたけれど、そうじゃないよこしまな気持ちが溢れてくるのを止められなくて、枕や下着を濡らすことも一度や二度じゃなくて、そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。俺は主で、長谷部は臣下なのに、いわば上司が部下によこしまな気持ちを抱いているなんて、それも抑えられている内はいいけれど、いつか勢い余って長谷部を押し倒してしまいそうでこわかった。こわいのは、そんな自分もだけど、超絶仕事が出来て優秀で気遣いの天才の長谷部のことだから、主の俺に対しても気遣って拒絶しないかもしれないことだ。そんなの、長谷部が可哀想だし、俺は世界一最低の主だ。だから、せめて勢い余らない内に長谷部に心の内を明かして、落ち着いて話が出来るうちに長谷部を遠ざけるしかないと思ったのだ。理由を言わずにそうすることも出来たけど、長いこと近侍を務めている彼を急に遠ざけたりすれば彼自身が自分の中に非を探して気落ちしてしまうと思った。長谷部は全然悪くないのだから、理由を言わないのはあまりにも自分勝手だ。嫌われてもいい。気持ち悪がられてもいい。俺の耳に入らない範囲なら、「上司に性的な目で見られてるらしくてまじさいあくきもい」みたいな陰口叩いててもいい。一方的な好意の吐露って時点で絶対きもいよなとは思うけど、俺が過ちを犯す前に手を打つしかない。
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