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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    いなばリチウム

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    複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり1.5
    さにみか要素がほんの少しある主清です。
    一個前の答え合わせだけど審神者メインで他の本丸の審神者との交流とかなので読み飛ばしてもいいやつです

    答え合わせ 審神者くわしくサイド 一応ね、俺も、俺がちょっとおかしいってことは分かってるんだけどね。おかしい、って分かった上で、今、ここにいる。

     審神者になる前、俺は常に最低3人、多くて6人、恋人ないしセフレがいた。
     昔から、俺はどうにも”重い”らしく、恋人が出来ても大体一ヶ月くらいでフラれるばかりだった。俺は毎日好きって言いたいし毎日キスしたいし毎日くっついていたいし毎日好きな子を抱きたいのに、それがだめらしい。体目当てみたいでいやだ、と言われたので、昼間のデートもみっちりプランを立てて楽しく過ごしてみたものの、大学に通いながらデートしてその上で夜は夜でセックスするの体力やばすぎるむり、って言われてフラれる。メンヘラも俺と付き合うと根負けするレベル、って大学の頃噂されたっけ……。非常に遺憾だった。なんでだ。幸い、縁があってフラれてもまた別の子と付き合えることが多かったけど、そんなことが続いたので遊び人と認定されちゃうし……。
     嘆いてたら同級生が言った「いっそその重いの、分散できたらいいのにな」という軽い一言に、それだ! と思ったんだよな。一人に集中しすぎるからいけないんだ。もちろん、相手を悲しませたくないから、同時に複数人と付き合っている俺のことを受け入れられる子に限ったけど。割り切れるタイプの子は思ったよりいて、たまに別れたり縁を切られたりしてメンバーは入れ替わったものの、大学を卒業するまで一日ごと、もしくは二日ごとに別の子と過ごす、という生活は続いた。

     審神者にスカウトされたのは、就職先も決まってあとは卒論を提出するだけ、という少し急がしくしていた頃だ。その場で簡単な説明をされたものの、分かったのは、審神者になるのは強制らしい、ということと、どういうわけか俺の内定は取り消されて行く先がないらしい、ということだけだった。特別やりたい仕事があるわけでもないから、まあ別にいいけど、と思いながら、更に詳しい説明会への案内をされた。

     それで、いくつかの簡単な試験や書類提出を経て、審神者就任に際しての説明会に参加した時のこと。
     審神者になるに向けてのあれやこれやをこんのすけがつらつらと説明し、その中で、就任してから数年、少なくとも一年は非常時を除いて現世との行き来はできない、って話をされて、周りはざわついていた。非常時っていうのは身内の結婚か葬式があてはまるらしく、それが最大の譲歩だとも言っていた。第一期生ということもあり、何が起こるか分からないのでなるべく管理できる範囲に審神者を置いておきたい、というのが理由みたいだけど、だったら最初にそういえって話だよね。聞いてない、現世に家族がいるのに、という声に、こんのすけはハイハイとまるい頭をふわふわさせた。
    「家族、結婚を前提に付き合っている恋人、ということでしたら政府内に施設がありますので、こちらで生活する設備を整えることは可能です」
     なんだ、まあ、それなら、とざわつきが少し収まる。他に質問は、とこんのすけが尋ねるので、俺は「はい」と挙手した。
    「それって、何人でも大丈夫なんですか?」
    「何人でも…? まあ、ご家族ということであれば」
    「あ、いや家族じゃなくて、恋人の方」
    「恋人の方……?」
     ざわざわ、とざわめきがまた戻ってくる。
    「恋人、何人かいるけど全員連れてきても大丈夫なのかな、って。あ、もちろんこれから確認してからではあるけど」
    「全員……? 確、認……?」
     まるいフォルムが、右、左、と傾いた。
    「……すみません、よくわかりませんので、後ほど改めて回答します」
     急に機械的に言ったかと思うと、「他に質問は?」とまた周りを見渡す。2,3人手が上がり、話は給与面や待遇の詳細にうつった。

    「なあ、さっきの質問、どういうこと?」
     説明会が終わり、初期刀選択の時間まで暇だなあ、という時に、隣に座っていた真面目そうな男が声をかけてきた。眼鏡の奥の目は面白がるように笑っている。
    「どういうこと、ってそのままの意味だけど」
    「え、恋人が何人もいる、ってこと?」
     そう尋ねてきたのは、眼鏡の男の更に奥に座っていて、どうやら立ち上がるタイミングを逃したらしい男だった。二人とも確か相模サーバーに配属されていた。同僚みたいなものだし、年も近そうに見えたので「そうだよ」と軽く答える。
    「いま続いてるのは六人かな?」
    「多っ」
    「そう?」
    「モテるんだ?」
    「うーん、そういうわけじゃないんだけど」
    「備前の方、先ほど質問された、XX年生まれの備前の方」
     なんて説明しようかな、と悩んでいると、さっきいろいろ説明していたこんのすけが足下で俺を呼んでいた。
    「俺?」
    「はい。先ほどの質問の回答なのですが、やはり結婚を前提とした恋人、なので、一人に絞っていただかないと……現在の日本は一夫一妻制ですので……あとはセキュリティ的にもちょっと……」
    「あ~、そっか。まあそうだよね。ダメ元で聞いてみただけなので、大丈夫です」
    「お願いします」
     ごねるとでも思ったのか、こんのすけは明らかにほっとした声色を出して、くるんと宙返りすると姿を消した。二人の方に向き直る。
    「あれ、どこまで話したんだっけ?」
     首をかしげたものの、眼鏡の方が、「XX年生まれ? 同い年だ」と俺の質問には答えずに目を丸くしている。隣のもう一人、優しそうな雰囲気の方も俺たちの顔を見比べている。
    「あの、俺も、XX年生まれ」
    「へえ。いろんな時代から人を集めてるって聞いたけど、かぶることもあるんだ」
     XX年生まれあるあるで少し盛り上がり、そうしている内に時間になってしまったので、その二人とは連絡先を交換した。今もよく連絡を取り合う仲である。

     まあ、それはおいといて。
     結論から言うと、俺は六人いた恋人全員にフラれ、身綺麗な状態で審神者に就任することとなった。

     いや~ びっくりしたなあ。一人くらい、頷いてくれるかと思ったんだけど、なんなら「冗談でしょ」って笑い飛ばされたもんな。
    「就職したら忙しくなってあまり会えなくなるだろうし、ちょうどよかったね!」みたいな感じの子がなんと四人。
    「結婚? 貴方とは絶対そうならないって思って付き合ってたんだけど」とむしろ怒ってガチャ切りしてきたのが一人。
    「体の相性が良かったから残念だけど、まあいい頃合いだよね」と言ったのは笑い飛ばしてきた子だった。さみしかった。俺がおかしいのはわかっていたけど、でも、全員のことが好きだったから、一人くらい、俺の気持ちに答えてくれる子がいるんじゃないかと思っていたから。ただ、仕方ないし、ちょうどよかったかな、というのは俺も感じてはいた。そもそも説明会で詳しく聞いた感じ、俺みたいな不真面目なのよく審神者にスカウトされたな、って思うくらい責任重めな仕事だもんな、審神者って。付喪神を従えるわけだし、一応、一城の主になるわけだし。
     これを機に、審神者業一筋でがんばるか、と心に決めたわけだ。

     いや~ 一ヶ月もたなかったよね。びっくりした。全然、だめだった。
     あの渇望をなんと言えばいいんだろう。とにかく人肌が恋しくて、大好きだよ、愛してるよと口に出せないのがつらくて。刀達はみんな懐いてくれているからそれも余計につらかった。なんせ恋人ないしセフレも結構な頻度で入れ替わっていたので、いつ誰が欠けてもいいように、良いな、好きだな、と思う子にはすぐアプローチする癖がついていた。けれど、相手は刀剣男士、俺の臣下、かみさまである。さすがにまずいだろ。政府も確か、線引きはちゃんとしろみたいなこと言ってたし。だからアプローチするのを我慢するのも結構しんどかった。審神者業務には慣れていったし、戦績も良くなってはいたものの、気持ちの方はそんなだったので特に近侍の機会が多い清光には心配された。清光を始め刀にはもちろんこんな悩みは打ち明けられず、かと言って誰にも話せないのもつらくて、比較的交流が頻繁な同い年の二人には相談したこともあった。
    「……セックス依存症的なやつかと思ったけど、そういう感じでもなさそうだな」
     相模の眼鏡の方が真面目な顔で言う。互いに本名を明かさないので、名前は知らない。名前を呼べないのは不便ではあったけれど、やはり最初に同い年だと分かった時の気安さがあったので付き合いは続いていた。一方、もう一人はセックスの単語が出た時点で真っ赤になって言葉少なになっていた。初だな……かわいい、と思いかけていかんいかんと首を振る。
    「……欲求不満なのは間違いないんだけど、セックスすれば治るんだったらそういうお店行くしさ。外出許可下りないだろうけど。でも、そういうんじゃないんだよな~」
    「な、なんか、全然アドバイスとか、できなくてごめん……俺そういうのあまり詳しくなくて……」
    「いいよいいよ。笑わずに話聞いてもらえるだけで気が楽です」
    「そう……?」
     口説きそうになった同僚は戸惑い顔に癒やされたものの、眼鏡の方は相変わらず難しい顔をしている。
    「真面目な話、解決策が見つかるといいけどな」
     言葉は少ないけど、俺のことを労っているのが分かった。
    「お前、多分自分が思っているよりも顔色が悪い」
     優しいね、好きになっちゃうかも、と思ったのは口に出ていたのかもしれない。怪訝な顔をされた。

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    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり3
    がっつり主清初夜 多分初夜
    主清初夜R18***


    「ん、んぅ、ん……っ!」
     俺がしたのとは違う、唇を合わせるだけじゃなくて、舌がねじこまれて、絡み合って、吸われる、そんな口づけだった。舌先を吸われる度、じゅる、くちゅ、といやらしい音が頭の中に直接響いて、ぼぅっとしてしまう。それだけでもういっぱいいっぱいなのに、主の手が俺の耳朶を撫でて、くにくにと触るものだから、そんなつもりないのに腰が浮いてしまう。
    「っあ、ん……やだ、それ……っ」
    「ふふ、耳よわいんだね」
     口づけの合間に、主が声を立てて笑う。顔が離れたと思ったら、今度は耳に舌がぬるりと這わされて、ぞくぞくした。
    「ひぁ……っ」
     耳の穴に舌を入れられて、舐られる。舌と唾液の音が直接聞こえてきて、舐められていない方の耳も指でいじられるからたまったもんじゃない。ぐちゅぐちゅ聞こえる音が俺の頭の中を搔き乱す。ついさっきまで俺が主を組み敷いていたのに、今はもう完全に逆転していた。暴れそうになる足は主が太股の間に体を押し込んできてもう動かせない。膝頭が足の間に入り込んできて、ぐりぐりと押される。
    3855

    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり2
    さにみか要素がほんの少しある主清です。
    答え合わせ さにみかになるまでと主清のはじまり だってさあ……悩みがあるのか、って聞かれて、実は欲求不満で、とか言えないでしょ、自分の刀に。完全にセクハラだもんな。
    「よっきゅうふまん……?」
     俺の体を跨ぐ形で覆い被さっている清光は、俺の言葉を繰り返して、ぱち、ぱち、と瞬きをした。かわいい。きょとんとしている。
     俺は簡単に説明した。清光に何度も心配されて、まずいな、とは思っていたこと。目を見たら本音を吐きそうで、ふたりきりになるのを避けていたこと。鏡を見れば、自分が思っている以上に陰鬱な顔をしていて、けれど解決策がないまま数ヶ月を過ごしていたこと。審神者になる前は恋人みたいなセフレみたいな存在が常に3~6人はいたんだけど全員にフラれて、まあなんとかなるっしょ、と思ったものの自分が思っていた以上になんともならないくらい、人肌が恋しくなってしまったこと。刀達のことはうっかり口説きそうになるくらい好きなこと。でも臣下に、それもかみさまに手を出すのはさすがにセクハラだし不敬っぽくない? まずくない? と思っていたこと。
    2337

    いなばリチウム

    DOODLE複数の刀に手を出すタイプのクズ審神者の始まり1.5
    さにみか要素がほんの少しある主清です。
    一個前の答え合わせだけど審神者メインで他の本丸の審神者との交流とかなので読み飛ばしてもいいやつです
    答え合わせ 審神者くわしくサイド 一応ね、俺も、俺がちょっとおかしいってことは分かってるんだけどね。おかしい、って分かった上で、今、ここにいる。

     審神者になる前、俺は常に最低3人、多くて6人、恋人ないしセフレがいた。
     昔から、俺はどうにも”重い”らしく、恋人が出来ても大体一ヶ月くらいでフラれるばかりだった。俺は毎日好きって言いたいし毎日キスしたいし毎日くっついていたいし毎日好きな子を抱きたいのに、それがだめらしい。体目当てみたいでいやだ、と言われたので、昼間のデートもみっちりプランを立てて楽しく過ごしてみたものの、大学に通いながらデートしてその上で夜は夜でセックスするの体力やばすぎるむり、って言われてフラれる。メンヘラも俺と付き合うと根負けするレベル、って大学の頃噂されたっけ……。非常に遺憾だった。なんでだ。幸い、縁があってフラれてもまた別の子と付き合えることが多かったけど、そんなことが続いたので遊び人と認定されちゃうし……。
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    枕がわりにしていた座布団から頭を持ち上げたのと勢いよく部屋の障子が開け放たれたのはほぼ同時で逃げ遅れたと悟ったときには腹部に衝撃が加わっていた。
    「から! りゅうみせて!」
    腹に乗り上げながらまあるい瞳を輝かせる男の子どもがこの本丸の審神者だ。
    「まず降りろ」
    「はーい」
    咎めるように低い声を出しても軽く調子で返事が返ってきた。
    狛犬のように行儀よく座った審神者に耳と尻尾の幻覚を見ながら身体を起こす。
    「勉強は終わったのか」
    「おわった! くにがからのところ行っていいっていった!」
    くにと言うのは初期刀の山姥切で、主の教育もしている。午前中は勉強の時間で午後からが審神者の仕事をするというのがこの本丸のあり方だった。
    この本丸に顕現してから何故だか懐かれ、暇があれば雛のように後を追われ、馴れ合うつもりはないと突き離してもうん!と元気よく返事をするだけでどこまでもついて来る。
    最初は隠れたりもしてみたが短刀かと言いたくなるほどの偵察であっさり見つかるのでただの徒労だった。
    大人し 1811

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     大倶利伽羅の周りをぐるぐる回りながら上から下まで眺め回す。
    「鬱陶しい」
    「んぎゃ!だからって顔つかむなよ!」
     アイアンクローで動きを止められておとなしく正面に立つ。
     ぐるぐる回ってるときに気づいたが角度によって模様が浮き出たり無くなったりしていてさりげないおしゃれとはこういうものなんだろうか。
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    「ねえ拝んでいい?」
    「……医者が必要か」
     わりと辛辣なことを言われた。けちーと言いながら少し長めに思える左腕の袖をつかむとそこには柄がなかった。
    「あれ、こっちだけ無地なの?」
    「あぁ、それは」
     大倶利伽羅の左腕が持ち上がって頬に素手が触れる。一歩詰められてゼロ距離になる。肘がさがって、袖が落ちて、するりと竜がのぞいた。
    「ここにいるからな」
     ひえ、と口からもれた。至近距離でさらりと流し目を食らったらそらもう冗談で 738

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    ちょもさんが女体化したけど動じない主と前例があると知ってちょっと勘ぐるちょもさん
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    「おお、美人じゃん」
    「呑気だな、君は……」

     ある日、目覚めたら女の形になっていた。

    「まぁ、初めてじゃないしな。これまでも何振りか女になってるし、毎回ちゃんと戻ってるし」
    「ほう」

     気にすんな、といつものように書類に視線を落とした主に、地面を震わせるような声が出た。身体が変化して、それが戻ったことを実際に確認したのだろうかと考えが巡ってしまったのだ。

    「変な勘ぐりすんなよ」
    「変とは?」
    「いくら男所帯だからって女になった奴に手出したりなんかしてねーよ。だから殺気出して睨んでくんな」

     そこまで言われてしまえば渋々でも引き下がるしかない。以前初期刀からも山鳥毛が来るまでどの刀とも懇ろな関係になってはいないと聞いている。
     それにしても、やけにあっさりしていて面白くない。主が言ったように、人の美醜には詳しくはないがそこそこな見目だと思ったのだ。

    「あぁでも今回は別な」
    「何が別なんだ」
    「今晩はお前に手を出すってこと。隅々まで可愛がらせてくれよ」

     折角だからなと頬杖をつきながらにやりとこちらを見る主に、できたばかりの腹の奥が疼いた。たった一言で舞い上がってしまったこ 530

    Norskskogkatta

    MOURNINGさにちょも
    桃を剥いてたべるだけのさにちょも
    厨に行くと珍しい姿があった。
    主が桃を剥いていたのだ。力加減を間違えれば潰れてしまう柔い果実を包むように持って包丁で少しだけ歯を立て慣れた手付きで剥いている。
    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
    溺れそうなほどの果汁を飲み込んでからうなづいて残りの果肉を味わう。甘く香りの濃いそれはとても美味だった。
    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
    「雛鳥に餌やってるみたいで楽しかったぜ」
    「…………わすれてくれ」
    差し 588

    Norskskogkatta

    MOURNING主くり
    花火景趣出たときにハイになってかいた。
    花火見ながら軽装姿の嫁といちゃつくだけ
    いつもの執務室とは違う、高い場所から夜空を見上げる。
    遠くでひゅるる、と音がしたあと心臓を叩かれたような衝撃とともに豪快な花が咲く。
    真っ暗だった部屋が花の明かりで色とりどりに輝く。それはとても一瞬でまた暗闇に戻るがまたひゅるる、と花の芽が音をなし、どんと花開く。
    「おお、綺麗だな」
    「悪くない」
    隣で一緒に胡座をかく大倶利伽羅は軽装だ。特に指定はしていなかったのだが、今夜一緒にどうだと言ったら渡したとき以来見ていなかったそれを着て来てくれた。
    普段の穏やかな表情がことさら緩んでいるようにも見える。
    横顔を眺めているとまたひゅる、どんと花の咲く音ときらきらと色があたりを染めては消える。
    大倶利伽羅の金色がそれを反射して瞳の中にも咲いたように見える。ああ。
    「綺麗だな」
    「そうだな、見事だ」
    夜空に視線を向けたままの大倶利伽羅がゆるりと口角を上げた。それもあるんだが、俺の心の中を占めたのは花火ではないんだけどな。
    「大倶利伽羅」
    「なんだ」
    呼び掛ければすっとこちらを見てくれる。
    ぶっきらぼうに聞こえる言葉よりも瞳のほうが雄弁だと気づいたのは付き合い始めてからだったかなと懐かしみながら、 843

    Norskskogkatta

    DONE主さみ(男審神者×五月雨江)
    顕現したばかりの五月雨を散歩に誘う話
    まだお互い意識する前
    きみの生まれた季節は


    午前中から睨みつけていた画面から顔をあげ伸びをすれば身体中からばきごきと音がした。
    秘宝の里を駆け抜けて新しい仲間を迎え入れたと思ったら間髪入れずに連隊戦で、しばらく暇を持て余していた極の刀たちが意気揚々と戦場に向かっている。その間指示を出したり事務処理をしたりと忙しさが降り積もり、気づけば缶詰になることも珍しくない。
    「とはいえ流石に動かなさすぎるな」
    重くなってきた身体をしゃっきりさせようと締め切っていた障子を開ければ一面の銀世界と雪をかぶった山茶花が静かに立っていた。
    そういえば景趣を変えたんだったなと身を包む寒さで思い出す。冷たい空気を肺に取り入れ吐き出せば白くなって消えていく。まさしく冬だなと気を抜いていたときだった。
    「どうかされましたか」
    「うわ、びっくりした五月雨か、こんなところで何してるんだ」
    新入りの五月雨江が板張りの廊下に座していた。
    「頭に護衛が付かないのもおかしいと思い、忍んでおりました」
    「本丸内だから滅多なことはそうそうないと思うが……まあ、ありがとうな」
    顕現したばかりの刀剣によくあるやる気の現れのような行動に仕方なく思いつつ、 1555