龍王の嫁取り「嫁入り……ですか？」
広大な蓮花塢の最奥、雲夢江氏の直系と宗主が許した者しか立ち入れない私邸の一室で、澄んだ鈴のような声が響く。思ったより高い声を出してしまった。気恥ずかしさと戸惑いに揺れるこころに感応したかのように、江澄の二又に割れた尾がぞわぞわと逆立つ。
「そうだ」
無慈悲な父の声が響く。常に穏やかな笑みを絶やさない江楓眠にしては珍しく、わずかに眉間に皺が寄っていた。なんで俺が。男なのに。なにより、雲夢江氏はどうなる。叫び出したい気持ちを抑えながら、そっと父の傍らを見遣る。こんなこと、母である虞紫鳶が許すはずがなかった。実際、その母は最大級に怒りをはらませた表情で紫電がばちばちと音を立てて煌めいていた。虞紫鳶が口を開こうとしたその刹那、傍らの男が立ち上がった。

月が昇り始めた夜半、蓮花塢の厨に男ふたりが忙しなく動いている。正確には一人が動き回り、もう一人がその男について回っているだけではあるが。

「魔法のようだ」

ついて回っている方の男がぽつりと呟く。藍曦臣は、意気揚々と料理の手伝いを申し出て、つい先ほど蓮花塢の主人にあなたは手を出すな！と免職を申しつけられたばかりだった。まな板の上で大ぶりの鯇魚(タンユイ)の頭を落としながら、江澄が片眉を上げてにやりと笑った。魚の下処理を終えてさっと油にくぐらせると、何やらみじん切りにした野菜と水に溶いた片栗粉を追加して、小鍋の蓋を閉じる。同時並行で細長い麺を茹でながら、今度は水にさらした蓮根を取り出し、目にも止まらぬ速さで薄切りにしていく。厨でひときわ存在感を放つ大鍋に油をうすく引き、葱、生姜、辣椒、そのほか藍曦臣の知らぬ色とりどりの薬味が放り込まれると、ジュワッという音を立てて水蒸気がもくもくと上がった。江澄の体格のわりに細い首筋から、汗の粒が流れ落ちていく。なんとなく、目を離せなかった。江澄が思い出したように呟いて、我に返る。

【主明】恶魔天使究竟什么关系两人回到去已经不早了，好在他们很快就整理完了屋内的一切。等真正躺在床上时，明智已经懒得再动什么，只一眼就望见那正在荧荧散光的小夜灯，白光不可忽视却不刺眼，让他生起了记忆——来栖晓主动给他挑的，理由是他对比过这种光最适合明智的需求。

看着一猫一恶魔没有怀疑过自己说的话甚至还自认为体贴的做了决定，“要是明智还是睡不好我们以后可以想办法改造一下房间。”来栖晓这么说，被明智随便找话揭了过去。明智真的想不通，地狱那种环境……居然还能有这样的恶魔吗？也许是自己存在对恶魔的刻板印象，毕竟自己早已经见过糟糕至极的恶魔，恶心得他次次都忍不住想什么时候才能彻底解决对方，超级期待那一天到来。

像来栖晓这样可以说是天真的恶魔与那人对比起来……算了，他怎么能拿来栖晓作比。明智深吸一口气，给正与自己一墙之隔的恶魔一个好人的评价——说不上喜欢，也说不上讨厌，仅此而已。明智打开手机，点进时事新闻，心里想着，若是来栖晓之后一直与自己井水不犯河水，那自己最终采取的方案会温和很多。